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SHIZUKUの不思議体験ツアー2006
サイト、ゴーストネットOFFのTOPにデカデカと
〈SHIZUKUの不思議体験コンサート2006〉
というロゴが貼られていた。
SHIZUKUの屋内外問わずのコンサートなのだが、そこは知られざる不思議スポット近くで行われるらしい。
自殺の準名所やら、古戦場跡だろうと思われるところとか、彼女の鑑識眼で“当たり”のところでやるらしい。もちろんこのバナーは公式サイトにリンクされているわけである。
ただ、SHIZUKUは、
「やっぱり友だちには確認して、コンサートをソデで観て欲しいからね♪」
と、希望者にメールする。
早乙女は止めることはしない。
|Д゚) ←これがADでいること自体が拒否できないのだ。
こういった事件を確認する事も彼女のライフワークだ。より一層知識が深まるというものだ。
今回のライブの場所は、実は江戸時代の処刑場と噂される、大きな公園であった。
「囚人達の憎しみの声が聞こえてきそう?」
「どうかしら?」
SHIZUKUは早乙女に一応の下見をして貰ったが今のところ何の異常もない。
夜になれば分かるだろうか。
それでも、ネットの掲示板での情報ではかなり“当たり”である。
あなた達は彼女のライブで何かを体験するだろう。
〈この話より数日前〉
神聖都学園。
学園の食道には沢山人がいる。昼休みか何かだろう。
アリス・ルシファールとそのサーヴァント『アンジェラ』はデバイスに隠している。こういう時以外は姿(ホログラフ)を現せる。コレはコレで良く役に立つ。無口の保護者などと口実が立てられるらしい。腹話術ソフトウェアでもあるとか変わるのだろう。
ジュースとパンを買って昼食を摂っているアリス。
「ここでもたいへんだね……」
溜息をつく。
転入したてで、まだ手続きのみの登校なので、全く分からない。
かといって、『アンジェラ』などを使いスキャンをすれば、本職の職権乱用かも知れない。ここはひとつ普通の学生でいる事が賢明なのだ。
――こっそりスキャンすればいいのだけど。外観や見取り図ぐらいは。
と、思ってしまうものだ。
人がまばらになってきた。そろそろ授業なのだろう。今日は単に手続きだ。ゆっくり学園散策が良いだろう。その時にアンジェラを出せば更によい(教諭たちにはそうしてごまかした)。
そして、アリスはアンジェラを連れて、色々見て歩くわけだが、思わず口ずさむ。
そこで……。
「ああ、良い歌! ねね、君君!」
「え?」
と、ショートカットの元気な女の子に呼び止められた。
アリスは目を丸くする。
SHIZUKUであった。
コレが、アリスとSHIZUKUの出会ったきっかけ。
歌の話と不思議話に盛り上がり、先輩後輩の関係となったらしい。
〈ライブを知ったときのデルフェスさん〉
「きゃー! SHIZUKU様がライブ!」
と、覆わず自室で黄色い声を上げて、
「うるさいよ、デルフェス! 壷がビックリして温泉出しているじゃないか!」
蓮の怒号が聞こえた。
「ああ、済みません!」
ビックリしてお湯を出す壷って……又変なモノを……と思ってしまう彼女だが、其れは心の中にしまって後処理に。それほど店に被害はなかった為に、風呂場に壷を置いてから……。
「わたくし、SHIZUKU様のライブに行きたいのですが……」
「ああ、かまわんよ。簡単な仕事は他の奴にやって貰うし。お前の仕事というのは『そう言った事』だからね」
と、壷から湧き出た温泉でゆっくりしている蓮が答えた。
『そう言った事』、デルフェスはボディーガードのゴーレムとして存在するのだ。本業として動くのが人造の責務である。
今の世の中ではそこまで頑固でいる必要はないのだが。
「ありがとうございます!」
デルフェスはとても喜んで一礼をし、プロダクションの方に向かっていった。
その前に、アイドルショップに向かって、ハッピやハチマキなどを買っているのは不問としよう。
〈集まりました〉
|Д゚) いたいー! へるぷー!
「かわうそ?さま、何て無茶な企画をしてくださったのですか?」
デルフェスさん、かわうそ?に出会うやいなや“うめぼし”する。つまり両こめかみを両手でグリグリして、圧迫させ激痛を与える技である。結構痛い。あなたもやられた事があるだろう、あの地獄を味わった事があるだろう。
|Д゚)ノ かわうそ? AD! タダのアシスタント!
「何言ってるのよ? 企画プロデュースは違うだろうけど、推し進めたのは助監督役でもあるあなた、かわうそ?じゃない?」
|Д゚) ! ぎくう!
小麦色が助監督らしい。
ADのフリをしてなかなかやるナマモノである。
「やっぱり、あなたのせいですわ!」
|Д゚;) いたーい、デルフェス、いたい! ギブギブ!
パワーがあるので、“うめぼし”のまま小麦色をつり上げる。
モチの様に伸びるナマモノ。
アリスは呆然と、そのナマモノを見ている。何なのか分からないが生き物の様だ。ぬいぐるみではないらしい。
|Д゚) ……
|Д゚)ノ おはようございます
つり上げられても芸能人挨拶を忘れないナマモノ。
「あ、おはようございます」
おどおどしながら、挨拶するアリス。
「デルフェスさんにアリスちゃん、おはようございます」
SHIZUKUが別の方向からやって来た。
「はい、おはようございます」
|Д゚) おはようございます〜
何事もなかった様に挨拶を交わす。
「さて、ライブだから
プロダクション内で打ち合わせが始まった。
殆どの仕事は、会社がするので、デルフェスもアリスもSHIZUKUと共に動く程度であり、マネージャーの礼子と打ち合わせするぐらいであった。
〈さて、遭遇〉
アリスもデルフェスもSHIZUKUの付き人としてロケ車で移動する。
なかなかのセットになっており、かなり本格的だとうかがわせる。
「アーティストの憧れの場所でのライブはまだまだだけどね。最も、憧れの場所でも“出ない”ところではしないけど。」
苦笑するSHIZUKU。
彼女はオカルトアイドルだ、縁のないところで支度はないと言うこだわりがあるようだ。
「しかし、全国規模になったのは素敵ですわ。SHIZUKU様」
デルフェス紅茶を持ってきてSHIZUKUと飲んでいる。
「ありがとう、コレもファンのみんなのおかげだし」
「芸能活動と学園生活の両立が出来る事も、とても素晴らしい事だと思いますわ」
と、デルフェスは良くあるアイドル親衛隊の格好で、SHIZUKUを褒めている。
思わずVサインするSHIZUKU。
「コレといって何も感じないけど、確かに色々噂はあるようですね……」
アリスが、端末でこの周辺の確認をウェブサイトにて調べる。
首切りの再現や、乱世で非業の死を遂げた絶叫。
「収録中にあると楽しいなぁ」
「SHIZUKU様……」
楽しいと言うより、ギャラリーがパニックになる、という間違いでは無かろうか?
デルフェスは、仕事で走っている小麦色を睨み付けた。
|Д゚) ……?
|Д゚)ノ だいじょうぶい
気付いた小麦色、動じない。
――また、うめぼしの刑ですわ……!
友だちのSHIZUKUを危険に合わせるこの小麦色を許せない様だ。最もそう言う感情があって当たり前であるが。
「私も手伝います」
「いいのよ。ゆっくりしてても」
「動かないと一寸、落ち着かなくて」
アリスは、他のAD達に色々お茶やお弁当を運ぶ手伝いをしている。流石に13歳の少女がするのはおかしい気もするが、隣に礼子が居たるのでおかしくはない。
アンジェラを起動したいところだが、人混みが多い為、そしてホログラフ特有の非実体である故に、起動していない。タダでさえ、此処では“出る”というのに、自分から幽霊話題を作りだしてどうする? という事もあるのだ。
其れを、言ったのは。なんとナマモノ。
「あの生物が気になるわ……」
|Д゚) 気になる?
|Д゚) にゃー
「タイミング良く現れないで……」
と、溜息をついた瞬間だった。
何か寒気を感じた……。
デルフェスも何かを感じる。
「? どうしたの?」
「何かが近づいてきますわ」
と、SHIZUKUを庇う様に立つデルフェスだった。
そして目の前には……
「!?」
過去の歌い手、作曲家といった、芸術に関係しそうな様々な幽霊が現れた。もちろん本職が違うとしても、歌に興味のある武士、町人、犬、猫等もいる。SHIZUKUの周りにしかそれらは見えない様だ。
『うたいたい〜』
『未だ、歌が完成……しない』
『私の楽器はどこ〜壊れた〜』
『にゃ〜』
「いきなり現れるなんて!?」
まだ、始まっていないのにどうして?
「此処が騒がしくなってきたからかも!?」
遠くでは、既にファンが集まっている。
今までと異なった騒ぎ方なので、幽霊達が起きてしまったのだろう。
SHIZUKUはあまりの数と妖気にあてられ、怯えている様にも見えるが、内心喜んでいる様である。肉体は怖がっても、好奇心はしっかり保っていると言う事だろう。
「うう、こんなに沢山……。私の目に狂いは無かったわ」
しかし動けない。
デルフェスが動いた。
「起こしてしまい申し訳ありません。しかし、お願いがありますわ!」
と、深々と頭を下げ、幽霊達に申し出た。
『?』
幽霊達が止まる。
礼子が急いで駆け寄るもデルフェスとSHIZUKUに瞳で止められた。
「今宵、わたくしの後ろに居られます、SHIZUKU様が歌の会を開かれます。其れを静かにお聴きになっては如何でしょうか?」
『……』
『むう』
『にゃー』
|Д゚) にゅー
「色々な苦労をされたと思います。しかし、世にしがみついても、苦しいだけでありましょう? 聴いて心が洗われるとすれば……。宜しいでしょうか?」
『合い判った。その娘の歌聴いてみよう』
幽霊達は納得した様である。
|Д゚) すごい、デルフェス
ひとまず何とかなった様だ。
しかし、アリスは不安を隠せなかった。
「デルフェスさん、SHIZUKU先輩のことはおまかせします」
「わかりましたわ」
頷く、デルフェス。
あの寒気は何だったのだろう? と考えるアリスだった。
〈開幕〉
舞台のソデには、デルフェスと幽霊達が見ている。何人かは、マイクの近くに、カメラに映ろうかと画策して移動しているが、元々このライブの趣旨としてOKなので不問である。
最初は怖がっていたSHIZUKUも慣れてしまい、楽しく歌い、トークも活き活きとしている。其れを見て居るデルフェスが先に天昇してしまいそうな顔だった。
「素敵ですわ、SHIZUKU様!?」
『しっかりしろー。あんたが先に逝ってどうするんだよ』
幽霊がデルフェスを揺さぶった。
|Д゚)ノ デルフェス、いつもそう。
|Д゚) きにするな
『なんと?』
アリスはライブ会場の裏に立っていた。ライブ開始から1時間は経っている。
「あなた方は楽しい宴を無駄にするつもりですか!? そこに座りなさい!」
と、13歳とは思えない威厳を発して、空に叫ぶ。
目の前には、悪霊の類。悪魔の憑依体になりかけの極悪なものだ。其れを一声で、正座させている。侮りが足し時空魔法使い。
「あなた方も目覚め、SHIZUKUさんに取り憑こうというのはもってのほかです。残念が残っているとはいえ悪しき事で取り憑くことは許しません……大体」
と、説教をして悪霊をライブ会場から入れさせなかった。
其の後、悪霊がどうなったか?
|Д゚) 足止めご苦労
|Д゚) この辺、かわうそ?するので、ライブ、楽しむ
「え? は、はい」
ナマモノと交代した為、分からずじまいになった。
ライブツアーは一応無事に終わった。やはりラップ音や、映像に何かが映るというハプニングは起こるものの、それは予想される範疇である。最後には皆で黙祷をする。SHIZUKUは面白おかしくしたわけではなかったらしい。
最初に出会った幽霊達は、一部成仏や天昇していったが、幽霊ライフを楽しむ事にした者も居た。
「2人とも、説得だけで幽霊を大人しくさせるなんてスゴイ!」
と、SHIZUKUは感激の様子。
「東京では凱旋ライブがまだあるけど、岩手、青森、北海道、大阪、広島、福岡、佐賀、鹿児島といってきます!」
と、先日の恐ろしさも忘れて、元気に旅立っていった。
「また、呼んで下さいね〜♪ 楽しみにしておりますわ♪」
「またね〜! アリスちゃん デルフェスさん!」
デルフェスとアリスがSHIZUKUと礼子を見送ったのであった。
|Д゚)ノ ちゃー
「ナマモノ! あなたも行きなさい! 助監督でしょ!?」
|Д゚) ! あ!
|Д゚) うっかり!
大丈夫なのだろうか? それは……誰かさんのみぞ知る。
END
■登場人物
【2181 鹿沼・デルフェス 463 女 アンティークショップ・レンの店員】
【6047 アリス・ルシファール 13 女 時空管理維持局特殊執務官/魔操の奏者】
■ライター通信
新年明けましてこんにちは、滝照です。
SHIZUKUの不思議体験コンサート2006如何でしたでしょうか?
無事に東京でのライブは済みました。何時かどこかで又やるかも知れないかも……と。
デルフェス様の、ハッピにハチマキという、現在でもあるのか分かりませんが、1980年代あたりの追っかけみたいに想像して執筆していました。もし客席にいれば、「きゃー!」叫んでいたに違いないと思いこんで執筆させていただきました。
アリス様の説教モードの描写はこんなもので宜しかったでしょうか? また、SHIZUKUとの出会い書きましたが、この様になりましたが如何でしたでしょうか?
では、今年は暖冬と予報されながらかなり寒いので、身体にはお気をつけて下さい。
又機会が有ればお会いしましょう。
|Д゚) にゃ
滝照直樹拝
20060123
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