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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


Seaven Colors −Volcanic Red−

 現在掃除を止めた草間・零の掌の上には頭には赤い三角帽子の、十センチくらいの身長の人形がいた。今回の依頼人たちは二人、ではなく二体。
「虹の赤色、灼熱の赤色を作る玉がなくなったんだ!」
「アレがないとお天気雨部虹課赤係のお仕事が出来ないんだ!」
 ぴょんぴょんと零の手の上で飛び跳ねる二体が出す声は大きく興信所内に響く。
「玉は空から落ちて」
「灼熱のあかを示すものに姿を変えてるんだ」
「みつけなくちゃ」
「探さなくちゃ」
「この近くにはあるんだ」
「でも何になっているかわからないんだ」
 交互に言葉を紡いで、二体は言う。
「次の雨が降るまでに、見つけなくちゃいけませんね」
 のんびりと、零は言った。
 窓の外は曇天。雨がいつ降ってもおかしくない。
「あら、それは面白そうね」
「あ、シュラインさん」
 と、どうしようかな、と少々のんびり目に考えていた零の前にシュライン・エマが現れる。どうやら話を聞いていた用で協力をしてくれるらしい。
「それと」
 そう言ってシュラインは後ろ、ちょうど自分の影にいた少女を前に出す。
「美猫も……手伝う」
 こそっとシュラインの影からでてきたのは中藤・美猫だ。興味はあるのだがひっそりと恥ずかしい、そんな雰囲気だった。
「本当に?」
「ありがとう!」
 人形の二人は零の掌の上で飛び跳ねて喜ぶ。
「美猫、ここへ来る途中で美猫をみたの。もしかしたらと思って……」
「じゃあ仲間を呼ぶよ! ボクはキミと一緒に捜しに行く!」
 ぴょん、と零の掌から一人、人形が美猫の肩へと飛び移る。ちょこん、とそこに座ってさぁ探しに行こうと意気揚々といったところだ。
「それじゃあ私はあなたと一緒に探しに行くのかしら?」
「うん!」
 もう一人、いた人形はシュラインの差し出した掌へと移る。そして零の方を向いた。
「もうすぐ仲間が来るからね!」
「もう来たけどね!」
 美猫の肩にいた人形が言う。振り向くともう興信所の扉からちょこんと覗いている人形三体。一体だけちょび髭が生えている。よいしょ、とちょこちょこ歩いてきて零が彼らを掌の上へと向かえた。
「係長です、捜索よろしくなのです!」
「じゃあ、手分けして探しましょうか。美猫さんは……自分を探すのよね?」
 こくん、と彼女は頷く。そして行ってきます、ととことこと興信所の扉から出た。
 とんとんとん、と階段を降りていく。その途中で草間・武彦と出会った。
「お、どうした?」
「こんにちは……私を探すの……」
 にこっと笑って言うと不思議そうな顔をしている武彦にお構いなく美猫はとんとん、と元気良く外へと出る。
 空は曇天だ。雨が降り出しそうで降り出さないといったところ。
「赤は好き?」
「うん、一番好き。今日も、赤い服」
「ボクも好き!」
 肩の人形は嬉しそうに言う。表情は変わらないけれどもその様子はよくわかる。
「じゃあ探そうね」
「うん!」
 美猫はどのあたりで自分にそっくりな女の子をみたか思い出す。
 とりあえずそこまで行ってみよう。
「きっとみつかるよね」
「見つけなくちゃ赤色出せないんだ。空から落ちて灼熱のあか、どんな形になってるのかな」
「姿形かわっていてもみたらわかる?」
「うん、わかるわかる!」
 そう言って人形は飛び跳ねる。バランスを失わずに美猫の肩に着地して結構居心地が良いらしい。
「雨が降った後、今日は虹が出るから急がなくちゃ!」
 そして美猫と人形は大通りから細い路地までくるっと一周。どこにもいないな、と少し疲れたときだった。
 鼻先にぽつりと雨が落ちる。
「雨だ! どうしようどうしよう!」
「まだ大丈夫だよ、落ち着いて」
 と、近くにいた猫がにゃあと鳴く。その声に美猫は反応した。
 そして歩む速度をあげて走り出す。
「どうしたの?」
「うん、多分こっち」
 とことこと、路地に入り角を右に左に。
 迷路のように入り組んだ街を美猫は軽やかに進んでいく。
 そして少し大きめの道にでて左右を見回す。
 右の方向、少し距離は遠い。瞳に映ったのは今自分が着ている服と同じものを着た少女。
「いた……」
「! あれだよ、そうだよ」
 肩の人形が今までより一層高く跳ねてその通りだと言う。
 まだ向こうは気がついていない。ゆるゆると歩を進めている。
「走るからしっかりつかまっててね」
「うん!」
 美猫の肩にひしっと捕まり振り落とされないように人形はする。
 美猫もそれを感じて気がつかれないよう少しずつ距離と縮めていく。通りに人はそんなに多くいない。
 と、ぴくりと前方の自分は動きを止め立ち止まる。美猫もそれに合わせて立ち止まった。
「……ばれちゃった?」
 そう美猫が呟いたときだった。突然前方の彼女は走り出す。
 彼女の姿を見失わないように美猫も走り出す。
 一定の距離以上縮めることが出来ない距離がある。
「がんばって、がんばって!」
「うん!」
 この道はしばらく一本道だ。迷うことはないけれども、だけれども開けた場所にでられてしまうと逃げられるかもしれない。
 美猫は一生懸命、走る。そろそろ全力疾走で息も辛い。
 と、一つ大きな通りを横断してそのまままっすぐ路地に入る姿を確認しそれに続く。
 走って走って、自分の姿を追いかける。
 先ほど自分が角を曲がった。それを追って曲がる。
 するとそこで自分が誰かに捕まえられている、良く見ると武彦もいる。
 自分を捕まえていたものがそれを放そうとするのが目に入る。途切れ途切れの息、それを振り絞って美猫は声を出す。
「その子……玉なの!」
 その言葉を相手は理解してくれたようで、手を放さず逆にしっかりと握ってくれていた。それに安心して呼吸を整えながら近づいていく。
 武彦と、そして知らない男だったが話し振りからどうやら依頼を達成するために動いていた人物だとわかる。
 そして偶然か必然か、シュラインもそこにいる。
 ぴょん、と美猫の肩と、シュラインの肩にいた人形ははねる。そして顔を見合わせたようだった。
「そっくりねー」
「灼熱のあかはきっとこの赤に惹かれたから」
「姿を変えたんだね」
「あったかい感じがするよ」
「するね」
 その言葉に美猫は嬉しそうに笑う。
「おばあちゃんの手作りなの、この服」
 きゅっと自分の服の裾を掴んで彼女は恥らう。
「さて、早く玉に戻した方がいいんじゃないの?」
「そうだね!」
「だね!」
 シュラインの言葉に美猫とシュラインの肩にいた人形達はぴょん、と勇吏が捕まえていた子の頭へと乗る。
 その瞬間に灼熱のあかはしゅわしゅわと霧状になり、そして丸い、ゆらゆらと光を放つこぶし大の玉になる。
 優しい、暖かい、そして穏やか、でも激しい。そんな色合いだ。
 美猫はその色が、自分が好きな赤の中でもとても綺麗な色に入ると感じた。
 そんな中マイペースに勇吏は酔っ払いの人形二体を武彦にぽい、と渡した。
「いい色してるな、さって依頼完遂だ。いやーごっそさん、旦那。報酬は別計算ね、よろしくゥ。後日取りに来るからな」
 勇吏はニヤリと意地の悪い笑みを浮かべて武彦に言う。もちろん武彦は文句を言おうとするのだがその言葉が始まる前にじゃあな、と勇吏は意気揚々、そそくさと退散だ。
 そんな背中を三人と四体で見送る。
 そして雨足が強くなる。これは不味いと適当な店の軒下に入って雨が軽くなるのを待った。
「もうお空に、帰っちゃうの?」
 美猫は人形達に問う。彼らはうん、と頷く。
「この雨が上がったら虹ができるんだ!」
「そうそう!」
「素敵な虹をお礼するからね!」
「それは楽しみね」
「うん」
 雨が小降りになってくると意識がしっかりしている二体は灼熱のあかを持って浮かび上がる。
「僕たち先に帰るね、その二人は係長にお願いしてね!」
「お願いしてね!」
 それじゃあ、と美猫は手を振って彼らを見送る。
 暫くして雨がやみ、そして雲の晴れ間から虹が覗く。
 ちゃんと七色。
「うわぁ……ちゃんと七色あるって、いいなぁ……」
 そう虹を見上げて、そして美猫は思う。この虹を祖母と見たいと。
 軒下からぴょん、と飛び出す。武彦とシュラインはどうしたのかと思ったらしく美猫を見た。
「美猫、帰ります。おばあちゃんと虹を見るの」
 そう告げてたたっと美猫は走り出す。
 早く家に帰ろう、そしてこの虹を祖母と、家にいる皆と見るんだと。
 気分は今からそれが楽しみでたまらないとうきうきしていた。



<END>



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号/PC名/性別/年齢/職業】

【0086/シュライン・エマ/女性/26歳/翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員】
【2449/中藤・美猫/女性/7歳/小学生・半妖】
【4483/平松・勇吏/男性/22歳/哲学専攻大学生】
(整理番号順)

【NPC/草間・武彦/男性/30歳/草間興信所所長、探偵】
【NPC/草間・零/女性/--歳/草間興信所の探偵見習い】

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■         ライター通信          ■
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 ライターの志摩です。Seaven Colors −Volcanic Red−ご参加ありがとうございました!まだまだ未熟っぷり発揮なのですが心を込めて書かせていただいております。今回変な書き方をしたのであっちに飛んだりこっちに飛んだりといっぱいいっぱいでした。またちょっとずつ話が繋がっていく使用なので他の方のノベルを読まれるとぴしっと繋がる、と思います。
 今回(というか次回もなのですが)玉が何になっているか全然考えていなかったので中藤美猫さまのプレイングをもとに玉の変化姿を作らせていただきました。世の中には自分に似た人がいると言いますが服までの偶然はないですものね。しかもお祖母さまの手作り…!ここにトキメキを感じて使わせていただきました。
 さて赤なので、まだ続きます。次は橙ですオレンジです。虹課の彼らは玉を無くしまくります(無能っぷり発揮)管理体制が悪いとかじゃないんです。これからそのあたりもちょこちょこと書きたいです、そのうちに、きっと(弱気)

 中藤・美猫さま
 はじめまして、ご発注ありがとうございました!
 美猫さまのかわいらしさが出せていれば良いのですけども…!今回灼熱のあかの変身姿を使わせていただきました。軽く追いかけっことちょっとした会話を楽しんでいただければと思っております。
 またご縁があってお会いできれば嬉しく思います。本当にありがとうございました!