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<PCシチュエーションノベル(ツイン)>


見えない追いかけっこ

◇Side Elizabate

  すっかり北風が凪いでしまった上に今日は動物たちには心地よい小春日和。
 窓の外を見つめながら思わず溜息をついてしまったわ。
「当分は…雪が降りそうもないわね」
 ぽつりとそう呟いてまた窓の外を眺めていると、後ろでカチャリと何かをおく音がしたの。
 驚いて振り返っても、部屋には自分以外誰もいないの。いつもそう。
 今日は今用意されたばかりのお茶があるわ。
 誰が用意してくれているのか全くわからないのだけど…せっかくだからいつも頂いてるの。
 でも本当に不思議ね。
 ここにご厄介になり始めてから数日経つけど…あの人と私以外に誰の姿も見えないのよ。
「…メイドさんか、執事さんか…それとも使い魔さんとかいる筈なんだけど…」
 過ごしやすいようにいつもいつも、何もかもキチンと先に整えてくれている「誰か」
 あの人が居る時でも居ない時でも、何処かしらに気配はあるけれど、急いで見に行ってもやっぱり誰も居ない。
 避けられてるのかしら…?もしそうだとしたらちょっと哀しいかも…
「…でも、食事や洗濯、ベッドメイキング…いつもきっちりしてくれてるし…」
 いつも十時と三時に出してくれるお茶と御茶請けもとても美味しい。
 もしかして気を遣われている?
「…本気で探してみようかしら」

◆Side Clri

  ふぅ〜今日も見つからずにお茶のご用意ができました〜
 お嬢様は何分繊細な方ですから…私の姿を見たらきっと怖がらせてしまうか…もしかすると気絶してしまうかするかもしれません。
 聞けば窓越しに旦那様と目が合って、それに驚いて気絶してしまったそうですし〜
 触手モンスターの私の姿などとても見せられません。何より恥ずかしいです。
 見つからないように、見つからないようにそっとお仕事をこなすのです〜
 あらら?この足音はお嬢様?
 この洗濯室に向かってらっしゃる?
 大変大変、見つかってしまう前にお洗濯を済ませなきゃ〜



 「ああっまたいない」
 さっきまで水音がしていたのに。
 使われていた形跡はあるけれど、洗濯物なんて一つも残っていない上に濡れた所を拭いた跡さえある。
「むぅ…他の部屋へ隠れたのかしら?」
 屋敷をうろうろしながら目に付いた部屋の扉を開けようとしたけど、書斎や寝室、小食堂、洗濯室…そして玄関ホール以外の場所は全て鍵がかかってるし。
 ずっと開けた形跡のない感じがするところも多いから、普段使わない部屋なんでしょうね。
 とすれば…毎日の事だし動く範囲もそんなに多くないってことになるのだけど…
 洗濯物をしていたってことは、次は干し場ね。
 覚えたばかりの屋敷内から日当たりのよい庭へ…さすがに冬といえどもそこは私にはちょっと暑いわね。
 案の定、干し場のあるお庭に続く勝手口の戸が開いていたわ。
「み〜……つからない〜〜〜〜」
 パンパンとシーツか何かの皺を伸ばしている音がしたのに、もう誰の姿もないまま干されたばかりの真っ白な洗濯物の数々。
「どこへ行ったのかしら…」
 勝手口には私がいたし、遮蔽物の少ない広いお庭には隠れる所もないし…
「ん〜〜…」
 とりあえずまた中を探してみよう。



 「危なかったです〜お嬢様…私を探していらっしゃるようですね」
 さてどうしたものでしょう。
 会ってしまえばいいのでしょうが、私の不完全な変化ではきっと怖がらせてしまうでしょうし…
 足を人間に出来たとしても、目はどうしようもありません。
 だって私一つ目の触手モンスターなんですもの。
 ない目を増やす事はできません。
 髪で隠していてもふとした拍子にないことがわかったら、お嬢様は卒倒してしまうかも。
「どうしたら諦めて下さるでしょうね〜」
 でも悩んでいても仕方がないし、洗濯籠を洗濯室に置いて、さて次のお仕事にかかりましょう。
 とりあえずはお嬢様の気配がしたらまた急いで次のお仕事に移ればいいのです。
「次はお掃除をしなくては〜」
 広いお屋敷ですがそれだけに遣り甲斐もあるというものです。
 旦那様とお嬢様が快適に過ごせるようにしておくのが私のお仕事なのです〜
「広いお屋敷ですからたった一日でも使わない所は埃が堪ってしまいますからね〜こまめにお掃除しませんと…」
 毎日こうして壁や床、窓を徹底的に磨くのです。
「む?」
 この気配はお嬢様。
 さて最上階は終わりましたし、別の階へ早く移動しましょう〜



  「あぅ…またぁ…」
 最上階はピカピカに磨かれ、塵一つない。
 こんな短時間でやってのけるなんて尊敬してしまう……じゃないじゃない。
 そうじゃなくて。
「意地でも見つけたいけれど……ふはぁ…」
 ダメだ。
 この広い屋敷をずっと走り回るなんてとてもじゃないけど体力が続かない。
「………今日のところは諦めましょ…」



  「あらら?お嬢様とうとう諦めてくださったようですね〜」
 とりあえずは一安心、でしょうか?
 一日中走り回ってさぞ御疲れでしょうから、お嬢様が御部屋にお戻りになられる前にもう一度御茶をお出ししておきましょう。
 丁度アフタヌーンティーの御時間ですし。
「疲れた時には甘いもの。さぁ、今日のケーキは自信作ですよ〜」


― 了 ― 

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】


【6071 / クルリ・コロリ / 女性 / 10歳 / メイド】
【5986 / エリザベート・ノース / 女性 / 15歳 / スノウホワイト】


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■         ライター通信          ■
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こんにちは、鴉です。
この度はシチュノベ・ツインの発注有難う御座いました。
一人称での追いかけっこ、コミカルに可愛らしい感じに仕上げられたと思いますが如何でしたか?

ともあれ、このノベルに際し何かご意見等ありましたら遠慮なくお報せいただけますと幸いです。
この度は当方に発注して頂きました事、重ねてお礼申し上げます。