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<東京怪談ウェブゲーム アンティークショップ・レン>


ペピュー育成 〜金


*オープニング*

アンティークショップ・レン。


都会にひっそりと佇むこのお店、曰く付のシロモノばかりのせいか
よほどの通か、よほどの好奇心旺盛な輩しか訪れない。

ドアが開くと、椅子に腰掛けたまま気だるげにキセルをふかした碧摩・蓮 (へきま・れん)が
視線を向ける。



「あぁ、あんたかい。
 ねぇ、面白い商品を入荷したんだけど、見てかないかい??」

そう言うと、蓮は何やらゴソゴソと、袋を漁り、何色もの手の平大の卵を取り出した。


*金の卵と、鈴森・鎮 withくーちゃん*

ペピュー。
それはいまだかつてこの世界で見た者がいない、特殊な存在。
ペピュー。
昔々、あるところ、ある場所で、ある旅人が時空の狭間に挟まれ、異世界へと飛ばされた。
旅人はそこで出会った、なんとも形容もしがたい奇妙な存在に声をかけられた。
人語を解せたのか、それとも、旅人の意識下に話しかけられたのか。
今となってはわからないが、その旅人は様々な色の卵を託された。
ペピュー。
人間界にある「卵」。それを、この世界の者達は「ペピュー」と呼ぶのかもしれない。
人間界にある卵にも、ニワトリの卵を初め、鳥の種類は勿論、魚など、様々な卵がある。
この色とりどりのペピューの卵もそういった類なのかもしれない。
ペピュー。
『持ち歩かん。さすれば、卵は孵りよう』
なんとも形容しがたいその存在は、そう言うとまた、旅人を元の世界へと戻した。

ペピューの卵と共に…


「…これが、一緒に入ってたマニュアル。んーー…ま、小難しく書いてあるけれど、
 何が生まれるかわかりませんよ、って話みたいだねぇ。
 んでもって、約七日程度で孵化し、ペピューはペピューの国へと帰ります、と…
 あたしもまた、なんだかわからないもんを仕入れちまったもんだねぇ」

キセルの煙を吹きながら、碧摩・蓮が鈴森・鎮にマニュアルを手渡す。

鈴森鎮。
見た目は小学校四年生程度の、活発な印象を受ける小柄な男子少年である。
しかしてその実体は、イタチ。しかも、ただのイタチではない。カマイタチなのである。
年齢だって、もう497歳。人間で言えば立派な大人だ。いや、むしろ妖怪だ。
だが、鎌鼬の世界ではまだまだ子供に分類されるのだろうか、人間時は勿論のこと、鎌鼬時も見た目が小柄なせいか、やはり子供扱いを受けてしまう。

そんな鎮はちょくちょく遊び場として、このアンティークショップ・レンに顔を出す。
そして、このペピューの卵に興味を持ったわけである。

鎮は蓮から『ペピューマニュアル』を片手で受け取りながら
「うわー、色んな色があるんだなー!!!どっれにしよっかな〜♪」
と、嬉々として卵を見比べている。すっかり育てる気満々な鎮に蓮は思わず、フフと笑う。
「赤も捨てがたいなー…でも、銀ってのも珍しいし…悩むー!」
しばしあれやこれやとブツブツ卵選びをした結果、「じゃあ、コレっ!!」と、鎮が選んだのは金色の卵であった。
「はいよ、それじゃ、御代。」
蓮が鎮に手を差し出す。

「あ・・・う…い、いくら?」
やはり鎌鼬界ではまだまだ子供、見た目もまだまだ子供。そうそう財力があるわけでもない。
恐る恐る聞く鎮に、蓮はニヤリとして答えた。

「百円。」

「マジでっ!?」
ニパッ!とした笑顔で蓮に100円を渡すと、鎮は急いで、しかし大事そうに金のペピューの卵を抱いて家路を急いだ。


*金の卵 初日*

僕の名前はペピュー。いや、正確に言うと名前ではないね。
ここの世界で『私の名前は人間です。』と言ってるようなものだろう。
気づくと僕は、意識があった。僕という存在があること、七日すると孵化すること。少々の人間界の記憶。

そして…
「そりゃもう、これはあれをやるしかねーだろ。なー?くーちゃん♪」
と、楽しげに家路に急ぐ小学生の手の中にいた。くーちゃん♪と呼ばれている動物は…イタチ??かなり小さいが…。
「どんなもんが生まれてくるんだろーなー、くーちゃん♪」
小さいイタチに向かって話しかける少年。イタチの方も、「キュー♪」となんだか楽しげだ。
どうやら、僕を育ててくれるのはこの少年with小動物らしい。ふふ、元気いっぱいで天真爛漫な印象を受けるね。
なかなか楽しい日々が過ごせそうだ☆

しかし…
「♪たっまっご〜たっまっご〜♪ふっしぎっな たっまごぉ〜♪
 めだまや〜き たまごや〜き オームラーイス〜♪」

小学生が道中歌う、この歌。
僕…食べられてしまうのかな…。不安がよぎる。

だが、僕の不安などまったく気にしていない少年は、僕をしっかりと、しかし落とさないようにと丁寧に家まで運んでくれた。
少年の家につく。即座に少年はくーちゃんと共に彼の部屋へと入っていった。
そして、僕を机の上に乗せると、好奇心旺盛な、キラキラとした瞳でマジマジと僕を眺めた。
「すっごいなー、金ピカだなー!!」
くーちゃんも頷くように「キュー♪」と答える。
『ふふ、そんなに僕の中身が気になるかい?きっと美しく羽ばたくフェニックスのようになって、きっと君達をアッ!と驚かせて見せるからね☆』
僕が卵の中でそう言うも、こちらの言葉は少年達には聞こえないみたいだ。
少年は、金色の僕をツンツンと人差し指でつっつく。
つっつかれて揺れては、僕は元の位置に戻る。その「起き上がりこぼし」運動が楽しいのか、少年は何度もつっついては楽しんでいた。

しかし、事件が発生。
押しすぎて、僕がゆっくり転がってしまったのだ。
「あ、落ちるッ!」
と、少年が叫んだ途端、くーちゃんがボディアタックでキャッチング。
「さっすがくーちゃん☆」
ニコニコ顔の少年。
今度は、机の上で少年とくーちゃんのキャッチボールが始まった。
目が回るわけでもないし、僕は頑丈に出来ているから万が一床に落ちても割れないが…
そうこう遊んでいる(遊ばれている?)うちに、部屋の外から「鎮ー!ご飯だよー!」と声がした。
少年は大声で「はーーい!!」と叫ぶと、僕を机の安定した位置に置き、くーちゃんと共に部屋を出ていった。
きっと晩御飯なんであろう。

ココでやっと、この少年の名前が「鎮」という名だとわかった。
そして、卵の中から部屋を眺める。子供らしく、おもちゃらしきものがあったりと、見ていて飽きない。
しばらくすると、部屋のドアの外から「トタタタタッ」と足音が聞こえる。
そして、少年の声がした。
「さってっと!! やっぱり、卵が孵るってんだから、暖めないとな〜♪」
その声と同時にドアが開く。

…!?

そこにいたのは、くーちゃんと…先ほどいた少年ではなく…くーちゃんよりも大きな、イタチ。
『?????????ッ』と、僕はいささか混乱した。
その間にも、そのイタチくんはよいしょよいしょと、ベドの上にフリースで『巣』を作る。
「よぉし、くーちゃん!!巣作り完了!!」
「きゅー!」
…イタチ、喋った…そして、その声から察するに、先ほどの少年、鎮クンだと思われる。
「ふっふっふ、人間にこれはマネできまい!」
そのお言葉で、僕は鎮くんが普通の人間ではないことを悟った。
や、イタチになった時点でわかってたけどね、うん☆
何はともあれ、その晩僕は、イタチ状態な鎮くんと、くーちゃんに毛皮サンドイッチされ、なおかつベッドの中、という暖かい時を過ごせたわけである。


*金の卵 二日目*

二日目の朝。
基本的に、ペピューは眠らないのだ。常に意識がある。
しかし、イタチ状態の鎮くんの正体、それにともなうこのくーちゃんの存在のことを考えると、夜が明けるのなんてあっという間だった。
先に起きたのは、くーちゃんの方だった。
くーちゃんは、愛らしくイタチ状態の鎮クンの頬を撫でる様に触れる。「起きてー!」とでも言ってるみたいだ。実に愛くるしい。
そのくーちゃんの動作に、目を開ける鎮クン。『ふぁぁ〜!』とイタチ状態のままアクビをし、僕を確認する。
「別に、大きくなったりはしてないみたいだな〜」
ちょっと残念そうだった。
そして、鎮クンは窓際に顔を寄せる。
「おっ!いい天気だな〜!ちょっと寒そうだけど、これは絶好の『飯綱落とし』練習日和だなっ、くーちゃん♪」
くーちゃんも「きゅー♪」と頷く。
そして、イタチ状態の鎮クンは、僕に対し
「ペピュー!今日は外で練習するから、一緒に行こうな☆」といい、朝ごはんを食べにだか、くーちゃんと共に部屋を出て行った。
『飯綱落とし…??』
相変わらず、僕の頭の中は疑問符でいっぱいだった。

朝ごはんを食べ終えたらしき鎮くんは今度は人間状態であった。
手早く洋服を着替え、外に出る支度をする。
「おっと!」
何かに気がついた鎮クンが、マフラーを取り出し、僕を包んだ。そして、そのマフラーごと、鎮くんの上着のお腹の中に入れる。
「準備完了!公園行くよ、くーちゃん♪」「きゅー!」

こうして、僕と鎮クンとくーちゃんは公園へと向かった。
マフラーで巻かれていると、外の風景は見えない。
しかし、時々、鎮くんが僕を服の上から撫でているのがわかる。
…僕は、妊婦のごとき体型で優しき表情でお腹を撫でる鎮クンを暗闇の中で想像し、少し笑った。

公園につくと、鎮くんはイタチの状態に変化した。
そして、フリースマフラーにつつまれた僕とくーちゃんを公園のベンチに置き、鎮クンは砂場で『飛び上がっては、急降下!』という運動を繰り返す。
時々、その動作に合わせて、くーちゃんが「きゅっ!」「きゅーー!!(両手をペチペチしながら。拍手?)」する。
嗚呼、これが『飯綱落とし』というものなのだろうか。

だいぶの時間を、その練習に費やしていた鎮クンは砂だらけとなり、家に帰った。
「流石にお風呂に卵はマズイよなー」
と、鎮クンはくーちゃんと一緒に入浴。
一応、脱衣所まで持ってきてもらえた僕は、お風呂場での二人…ではなく二匹の会話を聞いていた。
「明日も天気だったら、公園でまた特訓だなっ!」
鎮くんの威勢のいい声が聞こえた。

そして、その夜も、昨日同じくダブル毛皮サンドイッチで眠ることとなる。
なんだか、僕もイタチの一員になれたようで…嬉しかった。


*金の卵 三日目*

あいにく、朝から雨だった。温度はそれほど低くなかったのか、雪ではない模様。
人間状態の鎮クンは口を尖らせて不満をあらわにしている。
「今日はコンディション、バッチリだったのになー」とくーちゃんにグチをこぼす。
そういえば…彼は、学校に行っていない模様だった。
昨日、平日だというのに昼間から公園にいたわけだし…
いや、もしかしたら学校が休みなだけ?そんな風に僕が思いを巡らせていると、鎮クンが「そうだっ!」と声を上げる。
その後、「ニヒヒヒ」と笑う。
僕もくーちゃんもハテナ顔だ。そして、鎮クンは高らかに宣言した。
「今日は一日、ペピューを育てる日にけってーーーい♪」
そう言うと、人間状態の鎮クンはくーちゃんにウィンクした。それでわかったのか、くーちゃんは外へ出て行く。
その間、鎮クンはイタチに変化。
毎晩眠るときにやっているような巣を作り出す。そして、その巣が出来上がった時、くーちゃんは戻ってきた。
あらゆる限りの食材(主に、お菓子の模様)を持って。
「サンキュー、くーちゃん☆」「きゅー!」
僕は二人のコンビネーヨンの良さに拍手を送りたい気分であった。
そして、イタチ状態の鎮くん、くーちゃんにはさまれる僕。…巣篭もり。
喋らぬ僕を優しく磨いたり、つついたりしながらも、鎮くんとくーちゃんは仲良く僕を暖める。
途中、鎮クンがトイレに行くときも、
「俺がいない間、ペピューのことは頼んだぞ、クーちゃん!」
「きゅー!!」
と、熱いやりとりを交わしている。
うん、鎮くんの部屋だからね、敵など現れないと思うんだけど(笑)

しかしながら、僕はその二人の関係…信頼感に、実際の体の温かさ以上の暖かみを感じた。

こうして、三日目は「巣篭もりデー」となったわけである。


*金の卵 四日目*

天気、快晴。
昨日の雨が嘘のようだった。
二日目と同じく、イタチ状態の鎮クンは窓から外を覗き、よしっ!と声をあげる。
今日も練習の日にするつもりみたいだ。
人間状態となり、洋服の中にマフラーに巻き巻きされた僕を入れ、妊婦少年状態となり、くーちゃんと共に外に出かける。
鎮クンのお腹の中…暗闇に身を潜めていると…
「やばっ!うるさいおまわりさんだっ」
と、鎮くんが小走りになるのがわかる。
結局、どこかに隠れたのだろう。そのおまわりさんにはみつからなかった模様だ。
「あいつ、いつも『学校は〜!?』とか、『連絡先は〜?』とかうるさいんだよな〜!
 カマイタチとイヅナが学校行くかってーの!」
そう、ブツブツと話す鎮くんに、「キュー!」と鳴く、くーちゃん。
そうだよね〜、カマイタチとイズナじゃ学校は行けないよね〜…って、あれ!?
カマイタチ…あの、風と共にやってきて、切り刻むという伝説の?
イヅナ?あの、伝説上の???

僕は、四日目にしてやっと二人のことを理解した。
そりゃあ学校も行かないよね☆人間状態と鎌鼬に変身もできるよね☆

ペピューの国にも色んな生物がいるけど、人間界って…凄い。
そう、心から思った僕だった。

二日目と同じく、鎮クンは公園の砂場で「飯綱落とし」の練習。それを見守るくーちゃんと僕。
四日目も爽やかな汗をかき終了した。


*金の卵 五日目*

鎮くんとくーちゃんとの同居生活ももう5日目となった。
早い。もの凄く早く感じる。
世間は冬だろうが、僕には心強く、暖かい親鳥がいる。
鎮くんとくーちゃんの可愛らしい寝顔を見ながらそう思った。
窓を見ると、今日も天気は晴れているようだ。今日も特訓かな?僕はそう考える。

しかし、だ。
目が覚めた鎮くんの行動はいつもと違った。
「今日は練習お休みの日〜!!たまにはくーちゃんも、ペピューも違うところ行きたいだろうし!」
と、鎮クはニパッと笑った。
くーちゃんも「きゅきゅ?」とハテナ顔(たぶん)をしている。

いつものように、人間形態の鎮クンは洋服とお腹の間に僕を入れ、くーちゃんと共にどこかへと歩き出す。
僕から見えるのは暗闇だけなので、どこに向かっているのかはさっぱりわからない。

しばらくそいて、どこかについたらしい。鎮くんの声がする。
「三下ー!遊ぼー!!」
ガチャリ、とドアを開け、ズカズカ部屋に入っていく気配。そして、男性との会話に僕は、耳をしのばせる。
「鎮くん、いきなりどうしたんですかー!?って、遊ぼうって、僕今仕事中ですよ〜」
…明らかに、気弱そうな男の声、そして、鎮くんの異変に気づく。
「編集長が出かけてるからいいものの…って、す、鎮くんっ!?そのお腹はッ!?」
鎮クンが僕を服越しに優しく撫でるのと、くーちゃんの「きゅー♪」という声がする。
「もももももももももしかしてっ!?ご懐妊ッ!?あああああっ!!」
明らかに動揺する、三下さんとやら。
鎮クンの反応と言えば…「くーちゃんとの愛の結晶だぞ!」と冗談を続けている。
「あわわわわわ、か、鎌鼬さんですから、そんなことがあっても不思議が…でも、鎮くんは男の子なわけで…」
明らかに、混乱している模様。
そこでやっと、鎮くんが種明かしをする。
「ホンット、騙されやすいよなー!子供なんてできるわけないじゃん!!」
そういって、僕を取り出す。
僕の視界には、冴えない眼鏡の男性の顔が間近に。
「な、なんですか?これ?卵??金色…」
「ペピューっていうんだ!!俺とくーちゃんで育ててんだぜ☆」
得意げに話す鎮くん。

鎮くんと三下さんからの話を察するに、三下さんは雑誌の記者をしているらしい。
『ぜひとも取材したい!』とか言ってたみたいだが、鎮クンは断っていた模様。
さんざおしゃべりをした後、(9割方、鎮クンが三下さんをからかっていた模様だが)、また元のように僕はプチ妊婦鎮クンのお腹の中に戻り、鎮クンの家へと戻った。

「ペピュー、見せてやっただけでもありがたい!と思ってもらわなきゃなー!」
「きゅー!」

鎮クンとくーちゃんはそのように楽しげに話していたが、まんざら三下さんとのやり取りも楽しそうだったように僕には見えたよ。


*金の卵 六日目*

鈴森家に来てから六日目。
今日は、雪だった。
窓越しに、始めて「雪」というものを見る。
鎮くんもくーちゃんもグッスリ眠っている。今日の特訓もなしかな…僕はそうボンヤリ考えていると、鎮くんとくーちゃんが起きだした。
そして、窓の外を眺めると「うっわーーー!雪だーー!!しかも積もってるぞ、くーちゃん!」「きゅー!!!!」
と、朝から元気いっぱいに声が響く。
「雪が積もったらやることと言ったら、アレだろー☆」
鎮くんは、急いで身支度を整えると、僕をいつものようにお腹の中に入れ、くーちゃんと共に外へ駆け出した。

行った先は、いつもの公園。
しかし、一面の銀世界。同じ風景でもまったく異なったものに見えるから不思議だ。

鎮クンは雪の積もったベンチから雪をどかし、マフラーが濡れてしまうのを覚悟で、僕をマフラーごと置く。
そして、鎮くんとくーちゃんは二人で雪だるまを作ったり、雪合戦をしたり…
思い切り、雪の遊びを満喫していた。
「ペピューも、もうちょっと早く孵化したら、一緒に遊べたかもしれないのになー!」
鎮クンはそう言いながら、雪遊びを満喫する。

安心したまえ、鎮くん。僕は、キミとくーちゃんの楽しそうな姿を見ているだけで満足だよ。


*金の卵 孵化*

毎晩のように、僕はイタチ状態の鎮クンと、イヅナのくーちゃんに毛皮サンドイッチされていた。
今晩も同じく、だ。
そして…ついにきてしまった、七日目。
僕は考えていた。
今日のいつ、僕は孵化するのだろう。
そして、いつ僕はペピューの世界に帰る事になるのだろう。
悶々と考えるも、答えは出てこない。その度に僕は、イタチ状態の鎮クンと、くーちゃんの安らかな眠り顔に癒されていた。

そして…初めて、僕の中で意識が途切れた。


気がつくと、僕は人間状態の鎮くんの手の上にいた。
鎮くんは目を真ん丸くしている。
「うわーーー…ペピューってこんな姿だったんだぁ…」
「きゅー…」くーちゃんも、同意している模様。
「朝起きたら、この姿だから、俺、ビックリしちゃったよ!!!」「きゅー!!」
「え?」
「あ、喋った!」
隣で、くーちゃんもきゅーきゅー喜んでいる(ように見える)
「僕、孵化、出来たのかい?」
恐る恐る二人に問いかけるも、「オスだ!」とか、的を得た返事が返ってこない。
ただ、僕の姿がくーちゃんと同サイズなのは確かだ。
そして、フと部屋の中にあった鏡を見ると……派手なぐらいに金色に光るくーちゃんが…
って、違うッ!くーちゃん隣にいるしっ!?僕!?僕なのっ!?
「なぁんだ、ペピューも鎌鼬の仲間だったんだー!」
と鎮クンは勝手に納得しているが……そ、そうなのか…な??
何はともあれ、お礼を言わなきゃ!と思った僕は、二人に礼を言う。

「鎮クン、くーちゃん。ずっと育ててくれてありがとう。
 二人のお陰で、孵化することができたよ。二人の暖かみ、十分伝わったよ」
そう、感謝の言葉を述べているうちに、自分の姿が透けていっているのがわかる。
嗚呼、もう、タイムリミットか。

「本当なら、この姿で、三人で遊びたかったけど…どうやら、無理…みたいだね。」
寂しげに言うと、鎮クンもくーちゃんも、寂しげな表情をする。
鎮くんにいたっては、目に涙が浮かんでいる気も…

「ありがとう、お父さん達…」

そのまま、僕は人間界から姿を消した。
僕が入っていた、金色の卵の殻を残して。

「たった一週間だったけど…孵化して嬉しかったけど…やっぱり、別れは寂しいな、くーちゃん…」
「きゅー…」

鎮クンは、金色の殻を手に取り呟いた。

「桃太郎のおじいちゃんとおばあちゃんが、桃太郎を送り出す心境ってこんな感じかな…」



うん、凄く違うと思う☆



*金の卵 その後*

その後、ペピューの世界に戻った金色に光るイタチは、『シズク』という名前がついた。
どうやら、育てた者の性質が多少なりとも影響するらしい。
シズクは、元気いっぱいに野原を駆け回る、ペピューの世界の郵便配達員として
今日も過ごしている。
身軽な動きと、風に乗れる能力により、優秀だ!と周りからの評判も上々だそうな。


「まぁ、あの二人が親だから当然だけどね☆」

金色の卵だったペピュー、シズク。
人間界での楽しい思い出はきっと忘れないだろう…。


☆END☆



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【2320/鈴森・鎮/男性/497歳/鎌鼬参番手】

【NPC/ペピュー・金・シズク/男性/18歳程度?/イタチ姿】

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■         ライター通信          ■
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毎度有難うございます!!イヅナを実在する動物だと思っていた千野千智です!
またも鎮くんを預からせていただき光栄でございます!!!!

いやはやいやはや、くーちゃん!!
もっともっと、くーちゃんと鎮クンの日常をクローズアップしたり、
あやかし荘にお邪魔させたい!などネタは尽きなかったのですが…
いかんせん、力不足で書ききれず…精進せねば!と思った次第です。
相変わらず鎮くんでかぁなりあそばせていただいちゃいましたが…
ま、まだ大丈夫な範囲でございましょうか?(ドキドキ)

本当に、謎な依頼にも関わらず、ご発注本当にありがとうございました!
よろしければ、また鎮くん&くーちゃんにお会いできることを願って…では!!

2006-01-31
千野千智