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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


『君は一人じゃない』

〜あらすじ〜
 気がついたら、僕は泣いていた。
 お母さんと一緒にバスに乗っていて、気持ちのいいゆれで眠っちゃたったことは覚えている。
 けど、目が覚めたらどこかの野原で寝ていた。体中が痛いし、肉やゴムの焼ける変なにおいがきつかった。
「おかーさーん」
 広い野原にただ声だけが反響し、消えていった。僕は寂しくなった…泣きながら歩いていると何かに躓いてこけちゃった。
「ひゃう!?」
 砂が舞い、顔や唇に引っ付いてきて、いやーな気分になった…。
そして振り返り、僕が躓いたものを確認する…躓いたものは…運転手さんだった…。

 周りを確認する。横倒れになってスクラップ同然のバスが僕の目の前にあったんだ…僕は如何したらいいの…誰か、教えてよ…


〜遭遇〜
「坊主、何ないてるんだ名前は?」
 僕が不安になって泣いていると、お兄さんが僕の頭をなでながら声をかけてくれた。
「僕はケンタ。お兄さんは誰?」
 僕はお兄さんを見上げながら聞いた。背が高く、すごく頼りがいのありそうな人だった。
「俺は門屋…大学生だ。自分はどうしたらいいのかわからなくて泣いてるのか?」
 僕はこくりと頷いた。そして、僕はこの門屋お兄さんに状況を話した。僕のわかる範囲で…そういえば、あんなに寂しかったのにそんな気持ちはどこかにすっとんじゃっている。
 このお兄さんはすごい人なんだなって思った。そんな目で見ていると、お兄さんが少ししゃがんで僕の目を見つめながらいってくれた。
「お前、親が一緒じゃないのか?母親と乗ってて、事故に遭っちまったのか。おふくろさん…まだバスの中にいるかもしれないな」
 焦げ臭い風の服中、お兄さんは立ち上がってバスのほうを見た…ううん、多分にらんだ。
「バスはまだ炎上していない。探すのは今しかない!ケンタ、お前のおふくろさんを探すぞ。顔知らないから、お前も手伝ってくれ」
 僕の肩をぽんと叩いて門屋お兄さんは僕の顔を見た…
 僕はまだ不安だった、バスはぼろぼろで、周囲が燃え上がっていて、やっぱり怖い。
「俺が身を挺してでもお前を守る。お前も男だろう? お前にできることを考えるんだ」
 僕のできること…そうだよね、お母さんを探さなくちゃ。僕はお兄さんの言葉に勇気をもらい、首を縦に振った。

〜捜索〜
 僕が足を引っ掛けた運転手さんは息がなかった。お兄さんは運転手さんの目を閉じさせて、両手を合わせてお祈りをした。
「さて、行くぞ!」
 伏せた目を開いてお兄さんは僕に声をかけた。
「うん」
 僕はそれに答えて、ぼろぼろのバスに近づいていった。バスはフロントガラスが割れていて、それで運転手さんは外に飛び出してしまったんだと思う。
 シートベルトが引きちぎれていて、すごい事故だったんだなって感じた。
「ひどい状況だな、これは…」
 足元にきをつけろよと付け加えてお兄さんは進んでいく、僕も後ろから安全な―といっても、ガラスとかが飛び散っているから気をつけないといけないけど―道をついていった。
 横出しになったバスの中に入る。苦しくて声を上げる人、助けを求める人…外にいると気がつかなかったけど、バスの中にはいろんな人たちがいた。
 怖くなって、お兄さんのズボンにしがみつく。お兄さんは僕をなでて、
「大丈夫だ」
 といってくれた。
「助けがすぐ来る、騒いでいても体力を消耗するだけだから。落ち着いて待っていろ」
 と、お兄さんは声をかけていく。不思議なことにそれで騒がしかったバスの中が静かになった。
 普段僕が外を見る窓枠の上を注意しながら歩いていく…窓には草木、そして土が引っ付いていた。
「この席だな…ここにはいないようだ」
 僕が座ったを見て、お兄さんはいった。お兄さんは僕の席の裏だったので、案内しなくてもすぐにお母さんと僕のいた席には着いた。
 けれど、そこにはお母さんはいなかった。
「お母さん、どにいっちゃんたんだろう…」
 僕はまた泣きそうになった。僕を放って、逃げちゃったのかなとかさっきの運転手さん見たいに死んじゃっているのかなとか、ぐるぐると嫌な方向に頭が回っていく。
 うつむいた僕の顔を上げさせて、お兄さんは僕の目をじーっと見つめてきた。
「お前、こういうときはいい方向に考えるもんだぞ。マイナスに考えてばかりじゃ、どうしようもない。前向きに行こうぜ」
 肩をぽんぽんと叩いて、お兄さんは笑った。
「あれ、ケンタの母親じゃないのか?」
 バスの裏のほうに僕のお母さんと同じ服装をした人をお兄さんは見つけてくれた。
 僕はおそるおそる近づいて、顔を見た。
「お…かぁ…さん?」
 その顔は『確かに』お母さんだった…けど、眠っているように目を閉じて、ぴくりとも動かない…

−あの、運転手さんのように−
 
「お母さん!! おかぁあさぁぁん!!」
 僕はつかみかかって揺すった、手とかを触ったけど、冷たい。
「おい! おい!」
 静止するお兄さんの声は聞こえず、泣きじゃくってお母さんを揺すった。
 認めたくない、死んでいるなんて認めたくないから…
「おい、もうやめろ!!」
 暴れる僕をお母さんから引き剥がして、お兄さんはぴしゃりといった。
「お前のおふくろさんはボロボロになっているんだ…むげに扱うんじゃない」
 確かに、お母さんは全身が血塗れでボロボロだった。
「……」
「わかっただろ?」
 僕は首を振る。そしてお母さんにしがみつく。
「ケンタ、つらいだろうがお前は生き延びなきゃいけない。それが死んだおふくろさんのためだろ?」
「いやだ、僕はここにいる」
「ケンタ!!」

 〜事変〜
 そのとき、バスがドォンという音を出してゆれた
「危ない! ケンタ早く逃げるんだ!!」
 ボウと火の手が僕のすぐ近くから上がった。
「い、いやだ! お母さんとずっと一緒にいるんだ!!」
 そう叫んで僕はしがみついた。でも、本当は怖くなって動けなかった。
「くそ!」
 お兄さんは僕から無理やりお母さんを引き剥がしてバスの外に走り出た。
ドォォン!
 僕たちが飛び出すとさらに激しい音がして、バスが爆発した。
「お母さん…」
 粉々になったバスを見ながら僕はポツリと口に出した。お母さんはあの中で死んでしまった。僕は一人だ…。
「おい、ケンタ。お前、自分が一人ぼっちとか考えてるだろ?」
 ドキッとしてお兄さんを見上げた。どうして、このお兄さんは僕の考えることがわかるんだろう…
「お前は一人じゃない。俺が助けなくても、必ずそばには人がいて、助けてくれる。だから、信じろこの世界を…」
 お兄さんはそういって僕をなでてくれた。力強く、そしてやさしく。
「うん…わかった、お兄さん…ありがとう…」
 僕は生きていける…お母さんがいなくなったのは寂しいけれど、僕が生きることがお母さんのためならば…生きていける。



〜その後〜
 再びフラッシュバックを感じて、門屋は目を覚ました。
「あれ、ここは…」
 周囲を見るといつもの診療所。どうやらいすに座ってて眠っていたらしい。
「夢…か」
 ふとTVをつけた。ニュース番組のようであり、キャスターが事件を読み上げていく。
『今日、未明。先日のバス転落事故で昏睡状態だった、中村健太郎君が目を覚ましました。医師たちの話しによると……』 
 そして、その中村健太郎という少年の写真が出てきた。その顔は、あのケンタだった。

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
1522/門屋・将太郎/男/28歳/臨床心理士

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■         ライター通信          ■
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 どうも、橘真斗です。
 シチュノベ以来ですね。二回目の参加ありがとうございます。門屋さんの能力に関しての表現はこのような感じでしょうか?
 変則的なリプレイではありますが、いかがでしたか?なお、タイトルが変わっているのは仕様です。説明せず申し訳ありません(汗)
 また、参加してくださるとうれしいです。それでは、古書店でお待ちしております。