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<東京怪談ウェブゲーム 神聖都学園>


フリーマッケット☆開催



☆オープニング☆

「神聖都学園、グラウンドにてフリーマッケット開催…ですかぁ」

神聖都学園の音楽教師である響・カスミが学校内の掲示板に張られたポスターを読み上げる。

「出店者は神聖都学園の教師、生徒に限らず、一般の方も広く募集しております。
 出店希望者はお気軽に校内事務所までお問い合わせください…
 ふぅん…なかなか面白そうね。休日だけど、フリーマーケット見に来てみましょうかしら♪」

響・カスミは軽やかに鼻歌を歌いながら、音楽室へと向かった。


☆自由なる売買☆

19歳という若さにして、すでに『敏腕新聞記者』との呼び声も高い、崎咲・里美(さきざき・さとみ)は、今日も大物文化人の取材を終えた後、その構成を考えつつ、夕暮れの道を歩いていた。
インタビューを録音した音源に、書きとめたメモ。
「う〜ん、なっかなか話の長いオジサンだったわね〜。全部載せたら長くなっちゃうし…だからと言って、端折れば上からクレーム来ちゃいそうだしなぁ〜」
うぅむ、と考えつつ、里美は歩いていた。
そこで、急に立ち止まる。
「あ!あたしの質問内容をQ&A形式で短く書けば相手の文字数減らさずすむわねっ。なぁんだ、簡単じゃな〜い♪」
先ほどまでの悩む表情とはうって変わって、里美の表情は急に明るくなった。そして…
「あれ?ここ、神聖都学園じゃない。」
考え事をしながら歩いていたためか、里美はいつのまにか神聖都学園の校門の前に立っていた。
さすがに中に入ろうという気にはならなかったが、外にある掲示板に目がいった。
派手に彩られたポスター。そして、書かれているのはフリーマーケット開催のお知らせ。

「へ〜フリーマーケットかぁ〜」
先ほどの記事の目処もついた里美は、自分のスケジュール帳を即座に開く。
「やたっ!今日中にさっきの記事書き上げちゃえば、全然参加できちゃうわねっ♪
 丁度売りたいものもあったし…面白そうだし!あたしも参加しようっと☆」

すぐさま神聖都学園の事務室に向かい、出店の希望を出す里美♪
かなり揺るやかな神聖都学園事務、すぐに「出店許可」の判子の入った書類を里美に渡した。
「んっふふ〜♪たぁのしみぃ〜☆」

こうして里美は、まずは家路に急ぎ、大物文化人のインタビューを記事に書き起こすのであった。
フリーマーケットの参加のことも考えると、早めに、かつ落ち度のないように終わらせなければならない。


無論、敏腕新聞記者な里美はその日中に記事を書き上げ、次の日には編集長からOKサインを貰ったのは言うまでもない☆


☆当日☆

神聖都学園。
幼稚園から小・中・高・大学、そしていくつかの専門学校がすべて終結している、超大型教育施設として有名な学園。
生徒だけでも1万人弱。それに、教師や運営事務者、食堂のオバちゃんなど加えたら更に膨大な人数が関わっていることだろう。

そんな、日々一万人以上が出入りする学園。
フリーマーケット会場となった校庭は、出店者は勿論のこと、買い物に来る客、遊びに来た教師、生徒など…
文化祭!?と思わせるほどに、いつも以上の人が集まっていた。

2月といえば、まだまだ冬真っ盛りである。

気は快晴、風もないのだが、いかんせん気温の低さからピリピリと寒さが痛みに感じる。

「近所の神社の初詣も、こんなに人多くなかったのにねぇ〜」
『神聖都学園主催 フリーマーケット会場』と、垂れ幕の下がった校舎、そして派手に装飾された校門を見て、この学園の音楽教師、響カスミはポカンと口をあけていた。

「って、気後れしてる場合じゃないわね♪掘り出し物、私も探さなきゃ!」
すでに始まっているフリーマーケット会場を見て、拳にグッと力を入れたカスミ。しかしちょうど同じタイミングで、カスミの横で冴えない眼鏡青年が肩を落としていた。
その、頼りなさげな男に、思わずカスミは声をかける。
「ど、どうしたんですか??お体の調子が悪いようでしたら、保健室へ案内しますが…?」
そう伝えると、冴えない男性は首をフルフルとふった。
「いえ、違うんです。僕、出版社の記者でして、ちょっと編集長の方から『取材してらっしゃい!』と言われやってきたのですが…まさか、こんなに広大だとは…」
今にも泣きそうなその男性に母性本能をくすぐられた…と、いうよりは、ただただ優しいカスミは声をかけた。
「あの、もしよければ一緒に回りませんか?私、この学園の教師ですし、何かお役に立てるかもしれません」
そう、微笑むと、冴えない男性は一気に明るい笑顔となる。
「ありがとうございますぅ〜!!あ、あの、僕は…こういうものですっ」
慌てて名刺入れから自分の名刺入れを取り出す。
「『アトラス編集部 三下 忠雄』…三下さんですね。私は響カスミと申します。この学園の音楽教師をやっております。
 よろしくお願いいたしますね」
微笑むカスミに、女神様ッ!と三下は思ったのは言うまでもない。


☆フリーマーケット 開催直前☆

「ふぁぁぁ〜寒い〜〜!」
思わず声を上げる、フリーマーケット出店者である崎咲・里美(さきざき・さとみ)。
勿論温かい服装をしてきており、防寒対策はバッチリである。
日頃、新聞記者として外を回ることも多いため、このような寒さの中に身をおくことに慣れてはいるのだが…

やはり、寒いものは寒い。里美は己の服の中にホッカイロをもうひとつ追加し、ポットに入れてきた暖かいレモンティーを飲みつつ、出店準備を始める。

里美が出品するのは、主に書物と、カメラ。
書物の方は、ほとんどが歴史関係のものである。里美の職業柄、歴史について深く学んでいなければ新聞記事に起こせないことも多々あった。
その時にお世話になった書物達である。
19歳、とまだ若いが、それより更に若い頃に読んでいた本なので、どの歴史書も随分とわかりやすく丁寧な解説がのっている。
歴史の初心者には最適、といったものであろうか。

カメラの方も、また新聞記者としては欠かせないものである。
かなりの台数のカメラを所有してきたが、使っていくうちにつれ主に使うものはおのずと決まってくる。
どれも思い出深い品物ではあるが、「飾られるよりは、色んな写真を撮ってもらえる方がカメラも喜ぶよねっ」と出品を決意した。
新人時代に購入したものでもあり、どれも使いやすさを重視したカメラ達。
きっと、プロではない普通の人でも欲しがりそうな品物であろう。

里美はあらかじめ丁寧に、本には一つ一つビニールブックカバーをかけ汚れないように、そしてカメラの方も無造作に飾るだけではなく、汚れないように箱に閉まっておき、お客さんが手に取りたいときに取り出す方式とした。
「あ・と・は☆あの準備だけね〜」
そう、ニコニコと準備を進める里美。

一方、その里美の隣のスペースには静修院・樟葉(せいしゅういん・くずは)が和服姿でしずしずと現れた。
トランク一つを持ち、里美の隣のスペースと、自分が持っている出店書類を見ては
「私の売り場はこちらみたいですねぇ」と呟く。

その呟きに、里美はすぐさま反応した。
「あっ、お隣さんですねっ♪あたしは新聞記者の崎咲里美って言います!よろしくお願いしますっ♪」
フリーマーケットの醍醐味の一つは、こうした近辺の出店者とのコミュニケーションもあったりする。
里美の挨拶に、樟葉もやんわりと微笑みながら自己紹介をする。
「私は、静修院樟葉と申します。洋服店に勤めているのですが、業者の参加も大丈夫だそうで出店いたしました。
 里美さん、どうぞよろしくお願いいたしますね」
ペコリ、とお辞儀をする。樟葉の物腰柔らかな姿に里美もニッコリと微笑む。
「寒いですけど、お互い頑張りましょうねっ♪」
そう声をかけ、里美はまた自分の準備の続きに取り掛かる。
そして、ひょっこりと疑問が湧いた。
『あれ?洋服の出店と言ってたけど、トランク一個しか持ってきてなかったような…??』
その疑問の答えを見つけるため、振り向くと…

樟葉は、トランクから洋服…正確に言うと『メイド服』を取り出していた。
そして、いつのまにか用意されているハンガーに、そのメイド服をかける。
また、トランクからメイドを取り出す。ハンガーにかける。
その繰り返しだ。その繰り返しなのだが…
いつのまにか、スペースには様々なメイド服がスペースをはみ出さんばかりに溢れていた。

「ど、どうしてあんな小さなトランクの中から、あんなにたくさんのメイド服が…」
あっけに取られた里美だが、もうすぐ来場者が入場してしまうこともあり、疑問は残したまま準備に取り掛かった。

樟葉の方も、里美がそんな疑問を抱いているとは露知らず、準備を進めていく。
「これだけあれば、十分でしょうね…。試着室も使うかどうかわかりませんが、準備できましたし…
 あら、もう入場時間ですね。私も着替えなければ…」
そうおっとりと言うと、樟葉はメイド服に着替えた。…………一瞬、で。

隣で里美が呆気に取られていたのは言うまでもない。


☆フリーマーケット開催☆

これだけ広い敷地内でのフリーマーケットなのだから、出店者の数は多い。
その分、来店者の数も多いのだが、なかなか普通のお店では目に留めてもらえることは少ない。
カスミ&三下コンビも、人ごみを掻き分けては、お店を物色する。
そんな中、三下は出店者の中に見知った顔を見かけた。
大盛況なスペースだなぁ、と覗き込んだ先にいたのは…
「あれ?里美さんじゃないですか〜!!」
お客さんとのやり取りを丁度終えた里美は、三下の声に反応する。
「三下さんっ!お買い物に来られたんですか〜??しかも、女性と…」
ニヤリ、と笑う里美に
「ちちちち違いますよぅっ!」
と真っ赤になる三下。それに対し、カスミは特に不快な顔をするわけでもなく、里美に
「私はこの学園の音楽教師をやってます、響カスミと申します♪」
とニッコリと挨拶をする。
「あたしは、新聞記者をやってます、崎咲里美です。よろしくお願いしますっ」
と、元気に挨拶をする。
「それにしても、大盛況ですね〜」
ほぇぇ〜と、次から次へと里美のスペースを覗きに来るお客さんを見る三下。
それに対し、里美の出品物を見るカスミ。
「カメラに、歴史の本が主なのね。流石新聞記者さんねっ」
「結構な数の本とカメラを持ってきたのですが、予想以上に本もカメラも売れてくれて…
 あの企画もはじめたい所なんですが、やっぱり一人だとなかなか難しいですね〜」
苦笑する里美に、「あの企画?」とカスミは尋ねようとする…が。
「ああああああ、これって、僕がずっと欲しかったカメラですよ〜!!!」
突然叫びだす三下。周りのお客さんも思わずビックリ顔をする。
そんな状況を把握し、思わず赤面する三下。
「や、あの、ずっと欲しかったカメラがあったんですが、絶版になっちゃって…まさか、こんな場所で出会えるとは〜!!」
目を輝かせる三下。
そして…値札を見て、肩を落とす三下。
三下のそんな姿を見て、カスミと里美は苦笑する。
「あ、あの、三下さん、もしよかったら値札よりお安くしますよ?」
里美はコソッと三下に値段を耳打ちする。
「えええええええっ!?そんな安くていいんですかぁ〜!?」
またも、絶叫。思わず『シィ〜〜〜!』と人差し指を口元に当てる里美。
「同じ『記者』仲間さんですし、三下さんなら丁寧に扱ってくれそうだし…特別ですよっ♪」
「ああああありがとうございます〜!!!」
ペコペコと頭を下げる三下…の目に、更に新たな獲物が映る。
「こ、この歴史書、編集長が『あんたはこれぐらいの入門的な歴史書から勉強しなさいっ』て言われた本だぁ〜!」
「ふふ、じゃあオマケにこの本もつけておきますね〜♪」
里美はカメラとその歴史書を丁寧に袋に入れると、お金と引き換えに三下に渡す。
「今日は大収穫ですっ!ありがとうございますっ♪」
「あたしも、これだけ売れれば目玉商品の方に取り掛かれそうだし、お互い様☆ですよっ」
そうニッコリと微笑む里美。
「目玉企画…面白そうだし、また後で覗きに来ますね」
カスミがニッコリと言うと、里美もまた微笑んだ。
「はい、お待ちしてますっ♪お買い上げ、有難うございました〜!!」

その言葉を背に、カスミと三下は隣のスペース、樟葉のスペースへと向かった。


☆コラボレーション☆

カスミがメイド服を購入し、ご満悦(しかも、まだ着ている)、
そのカスミの姿を見てキラキラといまだキラキラと悦に入っている樟葉、
そして、里美のスペースで買った歴史書やカメラを「うわーうわー」と喜び眺めている三下。
そんな中、やっとこさ、里美の『目玉商品』の準備が整った。
そして、声を張り上げる。
「みなさ〜ん!現役の記者が貴方の写真を撮ってミニミニ記事を発行しますよ〜♪
 数量限定!!その場でパソコンでプリントアウト!貴方のプロフィールととびっきりの笑顔を待ってま〜す!」

そう、里美の本日の目玉商品は現役新聞記者が作る『即興新聞』なのであった。
その言葉にドヤドヤと人が集まる。
あまりの人数の多さにビックリする里美。さすがに、この人数は裁ききれないことから、くじ引きで3名、当選者を決めることとなった。
面白そう!!と参加するのは勿論メイド姿のカスミ。そして、せっかくですから、と樟葉も店を一時休業し、クジを引く。
「僕なんてクジ運ないですから…」
と、今から涙目でありつつ、三下もくじもひいた。

ヤラセなし!!数十名の抽選者の中から見事に選ばれたのは…樟葉、カスミ、三下の三名であった。
「おめでとうございます〜♪それじゃあ、まずは個々の写真撮影からはじめますよ〜」
メイド服姿でやや照れつつ微笑みを浮かべるカスミ。
同じく、メイド服姿で…こちらは撮られ慣れている様子でにこやかな笑顔でポーズをとる樟葉。
そして、最後は三下の番。
カスミと樟葉のメイド服姿を見て「僕は、メイドさんはミニスカ派なんだよなぁ…」とポツリともらした言葉に、ピクリと反応する樟葉。
『ミニスカートはメイド服ではありません。あれは実用性に欠けます。優雅な奉仕向きではありません!』と心の中で思っていた樟葉に、ちょっとした悪戯心が芽生えた。

「はーい、それじゃあ最後に三下さーん♪いくよ〜」
里美がカメラを構え、三下は満面の笑みを浮かべる。里美がいざシャッターを切る瞬間、一瞬白いシーツが目の前を横切った…。

パシャ☆

カメラのフラッシュが止んだとき、そこにいたのは…見事に、メイド服な姿をした三下の姿が…。
「本来、当店では取り扱っていないのですが、我侭をおっしゃるお客様のために用意していたミニスカート型メイド服、こんなところで役に立つとは思いませんでいたねぇ〜」
コロコロと樟葉は笑った。
顔面蒼白な三下。
クックックと笑いを堪えるのに必死な里美とカスミ。

こうして、即興な新聞は見事に出来上がった。
個々に作られた新聞は勿論、里美は「三下さんの新聞、月刊アトラスの碇さん宛に郵送しておきますね♪」と微笑んでいる。
「ややややや止めてください〜!!」
涙目な三下に、「ほら、一番いいネタになったじゃない♪」と慰め(?)の言葉をかけるカスミ。

そろそろフリーマーケットの開催時間も終了する。
人が空いた頃合を見計らって、樟葉は里美に声をかけた。
「よろしければ、里美さんも試着いたしませんか?きっとお似合いになると思いますよ♪」
「えっ?あたし?メイド服っ???」
「そうよ〜、私より若いんだし、里美ちゃんの方がきっともっと似合うわ♪」
カスミの後押しもあり、結局里美も最後はメイド服姿をお披露目することになる。
恥らう姿が初々しく、とても可愛いメイドさんの出来上がり☆


なんとかすぐに普通のスーツ姿に戻してもらった三下は、珍しく、ピン!と良案を思いつく。
「それじゃあ、記念に…里美さん、樟葉さん、カスミさん、並んでください〜!」
「え?まさか?」
カスミが声をあげる。

パシャリ☆


三人の綺麗で可愛いメイドさん揃い踏みの写真は、樟葉のお店、職員室のカスミの机の写真たて、里美の家の写真たてに飾られた。

そして…三下のメイド服写真、『記事・崎咲里美』が月刊アトラスに載ったのは言うまでもなかった♪



☆END☆




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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【2836/崎咲・里美/女性/19歳/敏腕新聞記者】

【6040/静修院・樟葉/女性/19歳/妖魔(上級妖魔合身)】

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■         ライター通信          ■
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まだまだ稲穂なヘッポコライター、千野千智でございます!!
この度は、またしても里美ちゃんをお預けくださいまして
まことにありがとうございましたーーーっ!!
またお会いできて物凄く嬉かったですっ!!

里美ちゃんのアイデア溢れる出品物に「おおお!」とヘッポコライター、感心させていただきました。
本当に、フリーマーケットでこんな企画あったら私絶対見に行く!!と思いましたですよ〜!
前回よりはしっとり感がない依頼でしたので、里美ちゃんも元気さをアップさせてみましたのですが…
イメージ崩してないないかドキドキしつつ…

本当に、また可愛い里美ちゃんに出会えて嬉しかったです!

ご発注、本当にありがとうございました!
よろしければ、またお会いできることを願って…では!!

2006-02-05
千野千智