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『女神の池〜女神〜』
投稿者:みゆみゆ 21:00
初めまして!
新宿に住んでる15歳女でーす☆
さっきね、新宿御苑の木陰で転寝してたら、うっかり閉園時間すぎちゃって〜。
慌てて帰ろうとしたら、指輪がすぽーんと抜けて、池に落っこっちゃったの。
そしたら池がぼんやりと光って、中から綺麗な女の人が出てきたの!
落としたのは、この金の指輪か、銀の指輪かって聞かれて〜。
私が落とした指輪って、彼氏が露店で買ってくれた300円の指輪なのね。でもとっても大切だったから、正直に金でも銀でもない玩具の指輪だって答えたの。
そしたら、正直者のあなたには全部あげるっていわれて、落とした指輪と、金、銀、全ての指輪をくれたの。
でも私、怖くなって、自分の指輪だけ受け取って走って帰っちゃったんだけれど、損したかなぁ?
投稿者:ななし 21:12
それって、童話の「金の斧、銀の斧」じゃねぇ?
投稿者:風間 21:33
寝ぼけてたんじゃない?
投稿者:cake 21:47
御苑に池って沢山あるよなー。
投稿者:縁 21:55
女神サマとは限らないだろ。金や銀のものを受け取った途端、池に引きずり込まれたりして。
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自宅でゴーストネットOFFの掲示板を目にした阿佐人・悠輔は、翌日の学校帰り、一人新宿御苑に向った。
掲示板には池の場所はかかれておらず、悠輔はまず、園内を回ってみることとする。
新宿という都心に、このような自然溢れる場所があることに、毎度ながら違和感を感じる。
こういった場所には、所謂怪奇現象が起こりやすいのだ。
逞しい木々も、可憐な花々も、街中では見られるものではない。つい、目的を忘れ景色に見入ってしまう。
すれ違う人々の顔も、都心を忙しなく歩く人々と違い、穏やかで幸せそうである。
ただ、ふと顔を上げれば木々の上に高層ビルが映る。それが現実に引き戻してくれる。
悠輔は、数ある池の中から中央から少し外れた玉藻池に目をつける。
悪寒……ではないが、不思議な感覚を受ける。
新宿御苑の閉園時間は早く、既に人の姿はあまり見られない。
木々の間に身を隠しながら、悠輔はそっと池に近付く。そして、腕に巻いていたバンダナをふわりと舞わせた。
悠輔の投げたバンダナは水面をゆらゆらと漂っていたが、しばらくして、何者かに引っ張られるかのように、水中に沈んでいった。
コレクションにしているバンダナだ。さすがに気になり、悠輔は足を踏み出し池に手を伸ばした。
優雅に泳いでいた鴨達が、一斉に悠輔の側から離れる。
……その時。
水面が僅かに光り出した。
空間に異変が起きる。外界と切り離された異空間に、悠輔は取り込まれていた。
恐怖はない。危険な空間ではないようだ。
光は少しずつ強くなり、悠輔は眩しさに目を細めた。
「貴方が落としたのは……」
澄んだ声と共に、女性の姿が浮かび上がる。
ふんわりとした金色の髪、明るい青色の瞳。ぬけるような白い肌。
優しい雰囲気を纏った、とても美しい女性だった。白いシンプルなドレスがとてもよく似合っている。
「この、金のバンダナですか、それともこちらの銀のバンダナですか?」
女性の右手には、金色のバンダナが。左手には、銀色のバンダナが握られている。
悠輔は首を左右に振った。
「いや、俺が落としたのは、金でも銀でもない。赤いバンダナだ」
悠輔の言葉に、池の女神は微笑んだ。
「貴方は正直な方ですね」
微笑みとともに、女性の姿が消える。
そして、再び現れた時には手に悠輔の赤いバンダナが置かれていた。
「貴方には、この金と銀のバンダナも差し上げましょう」
すっと、池の女神が悠輔に近付く。
大体察知していたが、人ではない。淡い輝きを放つ身体は僅かに透けている。
悠輔はバンダナを受け取ると、女神の腕をおもむろに掴んだ。……悠輔には彼女の腕を掴むことができた。
「あんた、一体こんなところで、何をしているんだ?」
彼女は、真実を知っていながら悠輔を試したということになる。
人の心を計ることが、彼女にとって何の意味があるというのだろう。
女神は少し戸惑ったような顔を見せた。
「私はここに存在しているわけではありません。たまたま今はここにいるだけ」
女神に悪意は感じられない。悪しき存在ではないのは、分かっている。ならば……。
「何か訳があるなら、力になれるかもしれない」
悠輔の言葉に、女神は驚いた表情を浮かべた。
「私のことを……気遣ってくださるのですか?」
悠輔はゆっくりと、確かに頷いた。事情によっては、手助けをしたいと思っていた。
女神は、高みからではなく、少女のような恥ずかしげな微笑みを見せた。
「皆は私を女神様といいますが、私は神などではないのです」
女神……女性の手が、悠輔の頬にそっと当てられた。
「人間界での命を自ら断った者。……それが私達です。
私は魂だけの存在です。貴方が見ている私の姿は、貴方が作り出したものです。私達は、神から仰せつかった任務をこの世界で遂行しているだけ。神の使者として仕事をこなし、人々に理を教えていくことが私達の任務です」
「神、か……。神が死者を使うのか?」
「ええ。生きている人々だけではありません。神は私達をも教え諭してくれているのです。この仕事はこの世に絶望した私に適した仕事です。なぜなら……」
とても優しい目をした。
本当に少女のような、純粋な――。
これも、悠輔が作り出したものだというのだろうか。
否。
彼女の心を悠輔は見ているのだ。
「貴方のような人に、たまに会えるから」
女性の顔が近付く。悠輔は避けなかった。
悠輔の頬に、女性の唇が触れた……ような気がする。
「私を一つの人格として見てくださって、ありがとうございます」
その声は、悠輔の心の中に響いた。
「また、どこかで……」
その言葉を後に、女性の姿は消えていた。
暖かくはなかった。
温もりは感じなかった。
だけれど。
心に暖かな感触が、確かにあった――。
鴨の姿が現れる。
眩しい光が顔に当たる。
周囲はオレンジ色の光に包まれていた。
悠輔は、歩き出す。
都会の中の異空間から、再び現実世界へ。
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
【5973 / 阿佐人・悠輔 / 男性 / 17歳 / 高校生】
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■ ライター通信 ■
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川岸満里亜です。
金と銀のバンダナを入手しましたが、金のバンダナには特別効果はありませんので、悠輔さんのコレクションが増えたとお考えください。銀のバンダナはアイテムとして発行いたしました。
ご参加、ありがとうございました!
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