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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


『女神の池〜雫と〜』

投稿者:みゆみゆ 21:00

初めまして!
新宿に住んでる15歳女でーす☆
さっきね、新宿御苑の木陰で転寝してたら、うっかり閉園時間すぎちゃって〜。
慌てて帰ろうとしたら、指輪がすぽーんと抜けて、池に落っこっちゃったの。
そしたら池がぼんやりと光って、中から綺麗な女の人が出てきたの!
落としたのは、この金の指輪か、銀の指輪かって聞かれて〜。
私が落とした指輪って、彼氏が露店で買ってくれた300円の指輪なのね。でもとっても大切だったから、正直に金でも銀でもない玩具の指輪だって答えたの。
そしたら、正直者のあなたには全部あげるっていわれて、落とした指輪と、金、銀、全ての指輪をくれたの。
でも私、怖くなって、自分の指輪だけ受け取って走って帰っちゃったんだけれど、損したかなぁ?

投稿者:ななし 21:12
それって、童話の「金の斧、銀の斧」じゃねぇ?

投稿者:風間 21:33
寝ぼけてたんじゃない?

投稿者:cake 21:47
御苑に池って沢山あるよなー。

投稿者:縁 21:55
女神サマとは限らないだろ。金や銀のものを受け取った途端、池に引きずり込まれたりして。

投稿者:匿名
御苑にはいくつも池がありますけれど、みゆみゆ様が指輪を落とされたのは、どの池ですの?

投稿者:みゆみゆ
みんな、レスありがとー☆
私が指輪を落としたのは、玉藻池ってところ。
そうだよね。童話どおりとは限んないし、指輪拾ってもらえて、よかったって思うことにする〜♪

**********

「デルフェスちゃん、早く早く〜っ」
 少女が大きく手を振りながら駆けていく。
 そこは、大都市新宿とはとても思えない、自然溢れる場所である。
「雫様、余所見をしていますと転びますわよ」
 アンティークショップ・レンで働いている鹿沼・デルフェスは、ゴーストネットOFFの管理人、瀬名・雫と怪奇現象の情報を交換する仲であった。
 掲示板で気になる情報を得た二人は、雫の学校帰り、新宿御苑にやってきた。
「あ、この池ね〜っ」
 池の場所はデルフェスが掲示板で聞き出していた。
「きゃっ、ごめんなさいっ」
 付近を歩いていた男性に軽く接触した雫を、デルフェスは微笑ましげに眺めていた。
「雫様、身を乗り出したら、危ないですわよ」
 池に近付き、じっと水面を眺める雫の側にデルフェスは近付く。
 鴨が優雅に泳いている。
 夕日が水面に反射し、とても美しい。
 つい、ここが新宿であることを忘れてしまう。
 デルフェスが池に見とれていると……すっと雫の体が動いた。
 背後の風が動く。
 反射で、デルフェスは身を反らして振り向いた。
 途端!
 バシャーン!!
 派手な音が響いた。
「雫様!?」
「きゃ、あ……っ がぶくぶ……」
 池に雫が落ちたのだった。
「雫様!」
 デルフェスは服の裾を持ち上げて、池に足を入れる。
 多分、驚かそうと悪戯心で雫は、デルフェスを押そうとしたのだろう。
(わたくしが避けてしまったばかりに……)
 デルフェスは手をばたつかせている雫の元に駆け寄ろうとした。
 しかし、思いのほか池は深い。
「あぶ……っ」
 デルフェスが手を伸ばすも、雫の体は池の中へと沈んでいってしまった。
「雫様!」
 デルフェスが更に池に進み入ろうとした、その時。
 池が淡い光を放った。
 空間が変化する。
 光は次第に強くなり、デルフェスは目の前に手を翳した。
 池の中から、綺麗な女性が姿を現す。
 黒髪黒目、日本人形のような、清楚で美しい女性であった。
 その女性の細い手の中には、金色に輝く服と、銀色に輝く人形があった。
「貴女が落とされたものは、この金色の服ですか? それとも、こちらの銀の少女ですか?」
「いいえ」
 即座に、デルフェスは答えた。
「わたくしが落としたものは服ではありません」
 悠然と、池の女神に言う。
「そして、わたくしにとって大切なのは、お友達である生身の雫様であり、銀の動かない雫様は雫様ではありません。どうか、雫様をお救いください」
 デルフェスのその言葉を聞くと、女神は柔らかく微笑んだ。
「貴女は正直な方ですね」
 池が輝きを放つ……。
 眩しい光に、デルフェスは目を閉じる。
 世界の色が、ゆっくりと落ち着きを取り戻す。
 そっと、デルフェスは目を開けた――。
「ひぃぃぃーん。デルフェスちゃーんっ」
 水の上を走って、セーラー服姿の雫がデルフェスに飛びついてきた。
「雫様。ご無事でなによりですわ」
 そっと、雫の背を撫でてあげる。
「ありがとうございま……」
 顔を上げると、既に女神の姿はなかった。
 女神の美しい姿だけが、デルフェスの脳裏に焼きついていた。そして……。
「あ、雫様、それは……」
 雫の腕に、金色のセーラー服がかかっている。そして、腕の中には銀色の置物が。
「ん、確か、美人のお友達に差し上げますとかいう声を聞いた気が……ぐすん」
 涙を拭いながら、雫が言った。
「まあ、女神様からのプレゼントですのね」
「美人っていったら、やっぱりあたしのことかな?」
 雫がデルフェスの手にぎゅっとしがみついていた。
「そうですわね。雫様はお綺麗ですわ」
「んもうっ。冗談よ。デルフェスちゃんのことに決まってるじゃない。はいっ」
 雫は、金のセーラー服と、銀の置物をデルフェスに渡した。
 しかし、その目は非常に残念そうで、物欲しそうであった。
 そんな雫に笑みを浮かべながら、デルフェスは金のセーラー服を広げてみせる。
「わたくしでは、サイズが合いませんわね。仕方がありません。雫様に差し上げますわ」
「えっ、いいの!?」
 途端、目をきらきら輝かせる雫。
「ええ。わたくしは、こちらの置物だけで十分です」
 可愛らしい雫の置物をデルフェスは自らの頬に当てて微笑んで見せた。
「では、帰りましょうか」
「うんっ! あ、その前に写真写真っ。報告書作んなきゃ!」
「写真なら、もう沢山録りましたわ」
 デルフェスが首にかけてあったデジカメを指差す。
「えーっ、いつの間にっ!」
 女神が現れたその時も、デルフェスはパシャパシャとシャッターを切ったのだった。
 アンティークショップやゴーストネットOFF等でオカルトに携わるうちに身に着けた早業である。
 二人で、デジカメを覗いてみる。
 ……そこには……。
 光の塊が映っていた。
「日本人形のような綺麗な方でしたのに……」
「え? あたしもちらっと見たけれど、銀髪美人だったよ〜?」
 二人で首を傾げる。
 多分、どちらの言葉も真実なのだろう。
 人によって見た姿が違っていても。
 起こったことは真実であり。
 自分が見た女神の姿は、自分にとって真実なのだ。
「ホントはね、あたしがやろうと思ってたのに……」
 帰りながら、雫がぽつりと呟いていた。
 あたしが、デルフェスちゃんを落として、デルフェスちゃんは大切な友達だからって言いたかったのに……と。

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【2181 / 鹿沼・デルフェス / 女性 / 463歳 / アンティークショップ・レンの店員】

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■         ライター通信          ■
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初めまして、川岸です。
銀の置物は、雫の形をしています。
サイズは実物の1/10ってところです。友情の証としてお持ちくださいませ!
ご参加、ありがとうございました。