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【オークション】序章 迷子の子猫
『ん?子猫か…いや、こいつは…猫又だ』
ネコマタって何だろう…
でも、疲れた…なんだかとても…眠い……
scene 1
〜草間興信所〜
「衰弱しているわね、暖かくして食べられそうなモノあげましょうか? 武彦さん」
猫を撫でながらシュライン・エマ(0086)はこの事務所の主である武彦に投げかけた。
「それはいいんだが…どうにもおかしい」
エマが来てから吸い始めて6本目のタバコに火をつけながら武彦は呟いた。
「そいつは猫又だ」
「ええ、そうね? 尻尾が多いし」
「それがおかしいんだよ…」
武彦のいうことが分からないという顔でエマが首をかしげた。
「猫又は本来、長生きした猫が変化したものと言われている。つまり…子猫が『猫又』になることはまずありえない」
怪しいと断定している視線で子猫を見つめる、いや睨む。
「それは、そうだけど…ほら、そんな目をしないで怯えているじゃない」
武彦と目があって震えだす子猫をエマは優しく抱きしめて撫でだす。
ちょうどそのとき、零が暖かいミルク粥を持ってきた。
「エマさん、これでよろしいでしょうか?」
「ええ、ありがとう…でも、猫ちゃんには少しさめたほうがいいのよ」
苦笑しつつもスプーンで掬い、ふーふーと息を吹きかけて猫へスプーンを差し出す。
子猫は少し舐めて、エマのほうを見る。エマが頷くとミルク粥を食べだした。
「ねぇ、貴方。前足で床叩ける?」
子猫を床に下ろし、隣にミルク粥を置く。子猫は前足で、コツンと床を叩いた。
ふむ、と武彦は唸り様子をじっと眺める。零もその猫のしぐさに興味津々だ。
「オーケー子猫ちゃん。 それじゃあ、一回がYes,二回がNoよ。 わかった?」
コツンと一回叩いた。
「じゃあ、貴方は飼い猫かしら?」
コツン。
「捨て猫じゃないようね…でも、どうして逃げていたのかしら?」
「さぁな」
エマの問いかけにそっけなく武彦は答えたが、その顔は真剣であり、少ない情報から真実を推理しようとしている。
そんな武彦にちょっとくらっと来たが、咳払い一つ尋問を再開した。
scene 2
「お疲れ様です」
そういわれて差し出されたハーブティを飲み、エマは一息ついた。子猫も長時間の尋問で疲れたのか今はソファの上でぐっすり眠っている。
「分かったのはこれくらいか…」
武彦が興信所に備え付けの黒板にメモを書き出した。こんなことをやっていると刑事ドラマのワンシーンのように思える。
『子猫の飼い主は少年』
『大人の男たちに追いかけられていた』
『飼い主の住まいは新宿方面』
『猫又である自覚がない』
『逃げてきたのはお台場方面』
チョークでかかれ、ライン引きされている5つの項目。Yes、No形式ではあったが情報としては集まったほうだ。
「聞き込みして飼い主を探すところかしらね? ますます刑事ドラマみたいだけれど…」
「そうだな…悪いがその件は任せる。俺は少し寝るよ」
そういって武彦は自分の寝室へと動いていった。
「わかったわ、さ、猫ちゃんが起きたら行きましょうか…」
バタンと武彦が寝室のドアを閉じたとき猫が目覚めた。
「あらあら…まぁ、ちょうどいいし行きましょうか。 零ちゃん、お留守番おねがいね?」
「はい、いってらっしゃいませ」
scene 3
エマを零が送っているとき、武彦は寝室で特殊な携帯で誰かと連絡を取っていた。
服装はいつものものとは違い、防弾チョッキに防刃繊維のロングコート…脇のホルスターには拳銃が用意されている。
そして何よりも武彦らしさをなくしているのは目を覆っているサングラス。
「…ということだ、どうも臭い。 謎の組織のほうをおってみるとする」
『分かった証拠が少ないので、捜査官は出せない。状況次第ではこちらでも手を打つ…続報を待つぞ…ディテクター』
携帯の相手は渋い声でそういった。
Scene 4
〜住宅街〜
夜の住宅街はひっそりとしていた。繁華街ほど騒がしくないので、小動物は活発に動き出す。猫は当然である。エマは2月の肌寒さを防ぐためにジャケットを着、猫にもファーで用意した尻尾カバーをかぶせた。猫又であるのを防ぐとともに多少の防寒にでもなればと…
「すみません、この当たりで猫を探している少年とかいませんでした?」
「そうねぇ、そういえばここからちょっと進んだところの門にいる、山崎さんところの隆君が急に猫がいなくなったとかいって探しまわっていたわね。
もう一年くらいになるかしら? その猫は大切な猫だって大事にしていたわね」
「そうですか…」
買い物帰りの主婦を捕まえて聞き込みを行うと、情報が出てきた。猫の顔を見ると分かっているのかいないのか多少震えていた。
(事実はどうあれ、飼い主と認めているのは隆君みたいね…)
「その隆君のお宅を詳しく教えていただけませんか? もしかしたら、その猫は私の拾ったこの子かもしれませんし…」
「そう? それじゃあ…」
エマは主婦から隆の部屋を教えてもらいその場を去った。
Scene 5
隆の家は両親が仕事がちなため、隆はこの時間でも一人でいた。両親のしつけがしっかりしていたので、なかなか入れてもらえなかったが子猫の鳴き声を聞くとすぐに入れてもらえた。よほど、この猫ことが心配だったらしい。
「わぁ! ミーアだ、お姉ちゃんありがとう!!」
嬉しそうに隆は猫を抱き上げて頬ずりをする。年齢は小学生くらいだろうか、子供
特有のあどけなさが印象的だった。
「この猫は貴方の?」
「うん、ミーアは僕の猫だよ。一年前にいなくなっちゃったけど戻ってきたんだ」
冷蔵庫から牛乳を取り出して器に注いで出す。子猫ミーアはファーに包まれた尻尾をゆらしながらぺろぺろと舐めた。
「尻尾に変なのがついてるね」
「うん、ちょっとね……隆くん、ミーアちゃんの尻尾って一本だけだったかしら?」
言葉を濁しつつもエマは真相に近づきたいと質問を投げかけた。
「猫の尻尾は一つだよ? お姉ちゃん変なの〜」
「隆くん、その尻尾のカバーは実は怪我を保護しているの。はずしちゃだめよ?」
少し考えたあと、エマは隆にファーのことをこう説明してこの日は帰ることにした。
Scene 6
〜草間興信所〜
「くそっ…予想以上に面倒だ」
エマが隆のところに行っているとき、興信所にボロボロになった武彦が戻ってきた。
「ど、どうしたんですか!?」
駆け寄ってくる零を制して、武彦が指示をする。
「ネットの掲示板ゴーストOFFに書き込み…『日が沈み夜が来る。夜明けまで何をしてすごそう』」
そういい残し、武彦は気を失った。その跡にエマが帰ってきて大変なことになったのはいうまでもない…
see you next stage…
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┏┫■■■■■■■■■登場人物表■■■■■■■■■┣┓
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┗━┛ ★PCゲームノベル★ ┗━┛
【PC名(ID) /性別/年齢 /職業】
シュライン・エマ (0086)/女/26歳/翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
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■ ライター通信 ■
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>エマさん
どうもはじめまして。ありがとうございました(ぺこり)
序章ということでかなり導入のみなリプレイで申し訳ありません(吐血)
次回は三月上旬になるかと思います。参加していただけたらなぁと思います。
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