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<東京怪談ウェブゲーム アンティークショップ・レン>


わがまま姫君達のオルゴール

□Opening
 くるくる回るメリーゴーランド。大きな大きな観覧車。スピードに乗るのはジェットコースター。きらびやかに飾り立てられた遊園地の中で、子供達は無邪気にはしゃぐ。
 手のひらの中の楽しげな光景に、碧摩・蓮は納得したように頷いた。新しく入荷した商品、これこそが、自動で遊び綺麗な音楽を流すオルゴールだ。子供達が遊んでいる間、彼女達に合わせる様に楽しげな曲が流れるのだ。その動力は謎。
 しかし、蓮は、その商品に満足した。
「さ、あんた達、そろそろ箱に戻りな」
 商品確認が済んだので、蓮はオルゴールの遊園地で遊ぶ子供達に声をかけた。
 のだが。
「あたし……、三番目が良い……、それに黒い布に包まるのは嫌だな」
 ぽつり、と。その内の一人――サンゴが呟いた。
「ああ?」
 蓮はあからさまに嫌そうな顔をして、箱を覗き込んだ。横長の箱は、中を五つに区切られている。左から二番目には白の布が、四番目には赤の布がきちんと敷かれていたが、それ以外の区切りに布は無く、箱の外に無造作に色とりどりの布が積み重なっていた。
「それだったら、あたしだって五番目が良いよ!」
 ルリも声を張り上げた。
「メノウはサンゴちゃんよりも後ろが良いよ」
 その隣で、控えめにメノウが主張する。
「私は、順番なんて気にしないよ! 黄色の布だったらそれで良い」
 シャコはこう言う。
 つまり。
 自動で遊ぶ人形姫達。箱に戻るのにもきちんと主張があるらしい。
「あんたらねぇ……」
 絶対に自分の主張を譲らない――そんな人形達を見て、蓮は頭が痛くなってきた。
 蓮が確認すると、二番目の白い布・四番目の赤い布の他には、それぞれ黒・黄・青の布が用意されている。
 いくら綺麗な音だとは言え、ずっと鳴っているのではかなわない。
 どうか、人形達の主張が全て通る様に、収納を考えてあげて欲しい。

□01
 さて、このわがままな姫君達をどうしたものか。蓮は、ぶーぶー主張する人形達を適当に箱に投げ込んで良いものか、きっと本気で考えていた。
「遊ぶのは時間制限があるから楽しいんだからね〜」
 そこへ、現れたのは由良・皐月。
 皐月はそれぞれの人形をぐるりと見渡し、腕を組んだ。そして自分に考えがあるからと、蓮にちらり目配せ。
 人形達は、ビックリしたように皐月を見上げた。

□02
 まずは、収納する箱を蓮から受け取る。
 皐月は、てきぱきと、そこへ布を敷いて行った。
「左から、黄色・白・青・赤・黒ね」
 確認するように、蓮にその様子を見せる。
「……、何の事だい?」
 蓮は、良く分からないと言う風に眉をひそめ、箱を覗き込んだ。
「あたし、五番目ね!」
 皐月と蓮、二人の様子にはお構いなし。ルリが同じ事を主張する。
「メノウはサンゴちゃんよりも後ろが良いよ」
 あわてて、メノウも声を上げた。
「あたし……、三番目が良い……」
 サンゴもまた呟く。
「あんた達、いい加減に」
 ぴくりと、我慢の限界とでも言うのか、蓮のこめかみの辺りが痙攣を起こす。
「主張しないハリちゃんが無性に可愛いわ」
 蓮と人形達のやり取りを見ていた皐月は、ちょっとだけため息をついた。
「わがままな子って嫌われるのよ他四名」
 それから、ちろりと小煩い人形達に視線を落とし、ぴしりと釘をさす。ちょっぴり冷たい言葉に、人形達はようやくしんと静まった。
「蓮さん、表を作ってみたから、見てもらえる?」
 その様子に満足した皐月は、用意した収納箱を少し横に置いて、一枚の表を取り出した。

□03
 ┏━┳━┯━┯━┯━┯━┳━┯━┯━┯━┯━┓
 ┃★┃一|二|三|四|五┃黒|黄|青|白|赤┃
 ┣━╋━┿━┿━┿━┿━╋━┿━┿━┿━┿━┫
 ┃ル┃×│×│×│×│○┃□│×│□│□│□┃
 ┃ハ┃□│□│×│□│×┃□│×│□│□│□┃
 ┃シ┃□│□│×│□│×┃×│○│×│×│×┃
 ┃メ┃×│×│×│□│×┃□│×│□│□│□┃
 ┃サ┃×│×│○│×│×┃×│×│□│□│□┃
 ┗━┻━┷━┷━┷━┷━┻━┷━┷━┷━┷━┛
 ※:ル⇒ルリ、ハ⇒ハリ、シ⇒シャコ、メ⇒メノウ、サ⇒サンゴ
 
 それは、人形達の名前や順番が軸になった表だった。すでに、彼女達の主張が○×で一部書き込まれている。
「後は、条件を併せて行くだけで何とかなるの」
 既に考え抜いた後なのだろう、皐月は蓮に分かるよう表を指で追いながら、すらすらと説明をして行く。
「二番目と四番目は、白と赤って決まってるわね、つまり色の違うシャコは、二番目でも無いし四番目でもない」
 言いながら、表に○×を追加する。

 ┏━┳━┯━┯━┯━┯━┳━┯━┯━┯━┯━┓
 ┃★┃一|二|三|四|五┃黒|黄|青|白|赤┃
 ┣━╋━┿━┿━┿━┿━╋━┿━┿━┿━┿━┫
 ┃ル┃×│×│×│×│○┃□│×│□│□│□┃
 ┃ハ┃×│○│×│×│×┃□│×│□│□│□┃
 ┃シ┃○│×│×│×│×┃×│○│×│×│×┃
 ┃メ┃×│×│×│○│×┃□│×│□│□│□┃
 ┃サ┃×│×│○│×│×┃×│×│□│□│□┃
 ┗━┻━┷━┷━┷━┷━┻━┷━┷━┷━┷━┛

「ね? となると、シャコは一番目で決定、自動的に他の二人も順番は決まる」
 表を黙って覗き込む蓮に、皐月は更に説明を重ねた。
「ここまで分かれば、二番目はハリちゃんで白・四番目がメノウちゃんで赤、後は自動的に皆決定」
 ほらね、と言う風に、表を持ち上げ皐月はにっこりほほ笑んだ。

 ┏━┳━┯━┯━┯━┯━┳━┯━┯━┯━┯━┓
 ┃★┃一|二|三|四|五┃黒|黄|青|白|赤┃
 ┣━╋━┿━┿━┿━┿━╋━┿━┿━┿━┿━┫
 ┃ル┃×│×│×│×│○┃○│×│×│×│×┃
 ┃ハ┃×│○│×│×│×┃×│×│×│○│×┃
 ┃シ┃○│×│×│×│×┃×│○│×│×│×┃
 ┃メ┃×│×│×│○│×┃×│×│×│×│○┃
 ┃サ┃×│×│○│×│×┃×│×│○│×│×┃
 ┗━┻━┷━┷━┷━┷━┻━┷━┷━┷━┷━┛
 ⇒ルリ(五・黒)ハリ(二・白)シャコ(一・黄)メノウ(四・赤)サンゴ(三・青)

「へ〜え、凄い!!」
 ぴょんぴょんと、跳ねるように表を覗き込み、ルリが声を上げた。
「わぁいわぁい」
 つられるように、メノウがぱちぱち拍手し出す。
 皐月と蓮。その周りで、人形達がまたくるくるとはしゃぎ出した。
「あのねぇ、一度駄々捏ねたら次また遊べるか怪しいんだから、ほらさっさと戻る!」
 その様子に、皐月は腰に手を当て人形達を促した。
 収納箱を彼女達の目の前にドンと置き、さっと指差す。
「えぇ〜、もっと遊ぶぅ」
 サンゴは、それでも負けずに、頬を膨らませた。わいのわいの。彼女達は、楽しげに踊る。
「わがままばっかり言って通ると思ったら大間違いよぉ、お嬢ちゃん達!」
 皐月は、サンゴの言葉を軽くあしらい、そして、眉を寄せ一人一人を諭すようにじっと見つめた。
――戻りたくないならその首根っこ摘んで押し込んでやりましょうか
 そして、真剣に、ちょっぴり真剣に検討をはじめた。
「一応、確認しておくが、これで良いんだね? あんた達」
 その時だ。
 黙って表を眺めていた蓮が人形達に、確認を取った。
「うーん、いいよ!」
 ようやく、一人、ハリが大きく頷いた。
 最早これまでと諦めたのか、それとも遊び疲れたか。人形達は、ようやくおとなしく収納箱に向かって行った。
「あ、ごめん蓮さん。これ商品だったわね」
 いけない、いけないと、皐月は我に返る。
 肩をすくめて見せると、蓮は何も言わず、にやりと笑っただけだった。

□Ending
 綺麗に収納箱に収まった人形達を眺める。
「全く、賑やか過ぎるにも程が有る」
 蓮はそう言い、煙をゆっくりと吐き出した。
「でも、綺麗な音色だったじゃないの」
 人形達が遊んでいる間、流れていたのは上品で静かなメロディ。
 皐月は、今は静かに眠る人形達を見つめ、くすりと笑った。
 
 可愛い可愛い人形姫達。
 次に遊べるのは、いつになるのか。
 それまで、今は、おやすみなさい。
<End>


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【 5696 / 由良・皐月 / 女 / 24 / 家事手伝 】

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■         ライター通信          ■
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 こんにちは、この度はわがままな人形達にお付き合いくださいましてありがとうございました。ライターのかぎです。

□由良・皐月様
 毎度、ご参加有難うございます。そして、ご正解おめでとうございます。何より、手慣れた様子で姫達を軽くあしらう様子が、流石だなと思いました。
 少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
 では、また機会がございましたら、よろしくお願いします。