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<東京怪談ウェブゲーム アンティークショップ・レン>


+ 異世界の玉〜3匹の子豚?〜 +


 見た目は占い師がよく使っている水晶玉に似ているが、これは人を呼び寄せ、前触れもなく中に吸い込むという代物であった。そして吸い込まれた者は必ず帰ってきて、様々な感想を漏らした。
 ある者は「なんていい所だったのだ」といい、ある者は「二度と行きたくない」と言った。さらに問うと、着いた場所はおとぎ話のストーリーで進行したり、外国の城で王様になっていたり、様々だ。このような感想を聞いた者たちは挙って水晶玉の所へ行ったが、既に姿を消していた。持ち主に聞いてみると、突然無くなっていたのだという。
 今の持ち主はアンティークショップ・レンの店長、碧摩・蓮。彼女はとある経路でこれを手に入れたらしいが、使うかどうか迷っていた。幸福をもたらすか、不幸をもたらすか、これは運次第だと聞く。
 とりあえず机の上で水晶玉を転がしていると、入口の扉が開き、扉に付けられている鈴が鳴った。
「いいところに来たね」
 蓮は事情を説明し、了承した貴方は、水晶玉に吸い込まれていくのであった。



――来たわね、新しい来訪者が。
『3匹の子豚』に擬えたストーリー。楽しいかしら?――



 朝早く、新聞紙と共にポストへ入れられた手紙にはこう記されていた。
『遺言。お前たちの姉である私は奴に見つかってしまった。これを読んでいる頃にはもうこの世にはいないでだろう。
 お前たちには生きていてほしい。
 私達『豚人(ぶたにん)』を滅ぼしてはいけない。いけないよ。
 奴は、狼はすぐに匂いを嗅ぎわけ向かってくる。姿を隠してお逃げなさい。
 狼が近づいてくると鼻が豚になるのでわかります。そんなことになったら、すぐにその場から逃げて。
 これは私からの、最後のお願い』

 意味が分からない。
 あるマンションの一室にいたシュライン・エマはチラシの間から出てきた手紙に目を通していた。
 何回読み直しても、『豚人』は今まで聞いたことがなかったし、もちろん自分自身そのような者ではない。
 と思う前に、ここが水晶玉の中なのであろうか。
「疑問に思ってしまうほど、平凡な部屋ね」
 部屋の中を調べてみると、100均一の品やダンボールで出来た棚など、質素で現実にしている人がいるような、そんな場所。普通と違うといえば、押入れと開けると諸外国の辞書がなだれの如く、覆い被さって来たくらいだ。
 その辞書を綺麗に整頓してから、ついでに掃除もしたので手が汚れてしまい、洗面台へ行き、鏡を見た。
――?
 触る。撫でる。突付いてみる……
「豚人の特徴なのかしら…」
 豚の耳に尻尾。そのためか、水の音が不思議な感じに聞こえてくる。
 蛇口を閉め、タオルで拭いた後、また鏡を見ると今度は、
「鼻?!」
 ピンポーン。
 そう叫んだ瞬間、インターホンが鳴った。
 もし狼だとしたら殺されてしまう。そう直感すると、さっき見つけたダンボールを開け、その中にあった帽子とマフラーを身につけた。
変装のつもりだが、狼は匂いでわかってしまう。香水もつけよう。

 不自然な格好のシュラインは扉を少しだけ開けた。
「大山新聞でーす! ぜひとっ」
 シュラインは扉を閉めると、帽子とマフラーを取り、コーヒーを入れに台所へ行った。

 ピンポーン。
 どうせさっきの新聞屋だろう。カップを置くと、そのままの格好で扉を開けた。
「新聞なんて結こ……」
 そして、後悔した。
「油断しないでください。おもしろくないですわ」
 シュラインは素早く後ろへ下がり、部屋の中へ戻ったが、狼は…というより狼の耳と尻尾と腕を持つ女の子。海原・みそのは部屋へ入り、獲物を見るような目でシュラインを見た。
「こんにちは、豚人様。おとなしくしたほうが痛くないですわよ?」
「あんたが狼ね。悪いけど、簡単に捕まりたくないの」
「そう。うふふ」
 睨み合う豚と狼。その決着は例え人間が強くとも、今は豚と狼の力量。
みそのはシュラインに飛びつくと、その衝撃で頭を強打してしまった。
 抵抗しようにも、手首を捕まれ、腹部に乗ったみそのは、その身に宿った狼の気質を剥き出しにさせ、こう言った。
「いただきます」

 ……

「ごちそうさま。
やっぱり豚人、それもイベリコブタ系は一味違うわ♪」
 みそのは、満足そうに黒い髪と尻尾を左右に振りながら、次の豚人を探しに行った。

 酷く静かな一室の扉は、半開きのまま放置され、
壁や床に散らばる書類には、戦いの跡が、コビリツイテイタ。

■□■

 気がつくと、ササキビ・クミノは知らない建物の中にいた。
 全面コンクリートの壁に、高く積まれた木箱の数々。ずっしりと重量感があるそれらは、小さな窓から入る太陽光によって照らされ、ようやく見ることが出来た。ここには明かりがそれしかない。
 木箱が積まれていないスペースがあったので行ってみると、そこには扉が一枚。開けてみると、足元に紙が置いてあった。
『遺言。お前たちの姉である私は奴に見つかってしまった。これを読んでいる頃にはもうこの世にはいないでだろう。
 お前たちには生きていてほしい。
 私達『豚人(ぶたにん)』を滅ぼしてはいけない。いけないよ。
 奴は、狼はすぐに匂いを嗅ぎわけ向かってくる。姿を隠してお逃げなさい。
 狼が近づいてくると鼻が豚になるのでわかります。そんなことになったら、すぐにその場から逃げて。
 これは私からの、最後のお願い』

 紙を手に持ったまま外へ出てみると、今までいた建物は『核シェルター』だということがわかった。それに耳も尻尾も鼻も、見事に豚。
 建物と紙とを見比べて、
『とりあえずココにいよう』
そう思ったとき、後ろに気配がした。
「豚人様、みーつけた♪」
 クミノは走って核シェルターに入り、鍵をかけた。
「あら? 恥ずかしがり屋なのね」
 みそのはゆっくりゆっくりと核シェルターに近づいていった。

 コンコン。
「大山新聞でーす! ぜひとってほしいのですが。今なら割引券と洗剤付きですよ♪」
「…」

 コンコン。
「今なら間に合います。邪教などに惑わされず、我と一緒に魂の救済を!」
「……」

 コンコンコン……
 みそのは七色の声で新聞屋、宗教家などを演じてみたが、一行にクミノは出てはこなかった。中では、出入り口を木箱で塞ぎながら策を考えていたのだ。
 ふと、部屋の奥にある黒い塊に目がとまった。
 黒い塊はギロリとこっちを見、クミノはその正体に気づいたとき、策を思いついた。

 コンコン。
「リンゴはいかがかな? 蜜入りリンゴじゃよ??」
「リンゴは結構。それよりも」
 核シェルターの扉は開き、中から巨大豚に乗ったクミノが木箱を飛び散らせながら、みそのに襲い掛かった。
「姉(たぶん)の恨み、はらさせて頂く」
 滅多に使われることがなかった核シェルターには、どこからか来た巨大豚が身を潜めていたのだ。
普段なら解らない豚の言葉も、今の豚人の状態でなら容易いこと。最初は警戒していた巨大豚だが、説得に応じたのだ。
「一緒に狼を倒すブヒー!!」
 上から覆いかぶさるように巨体を動かした巨大豚だったが、みそのにあっさりと交わしてシェルターの上に立った。
「そんな動きでは止まっているようですわ。もっと素早く、真剣になさってくださいな」
 プンプンと怒るみそのにクミノは狙いを定めようと見つめ、その瞬間みそのは宙に舞った。
「ご要望の通りしましたよ」
 地面に叩きつけられたみそのは、かろうじて上半身を起こした。
「ゆ、油断してしまいましたわ…」
 クミノの銃から放たれた弾丸はみその胸を貫通していた。
「観念しろブヒー」
 巨大豚の顔が目の前に来ても、みそのは驚きもせず、
「さっきの豚人様をバカにできないわ…」
「ちょっとは反応しろブヒー」
 巨大豚から降りたクミノはみそのの傍に寄った。
「調子に乗らなかったらよかったのに」
「そうね…。でも、銃を持っ、ているなんて…思わなかった、のだもの……」
 みそのは前屈みになるようにして――


――まぁ、
  私の世界だから何でもありって、ね。でも、大丈夫よ――


■□■

「おかえり、どうだったかい?」
 シュラインは蓮を目の前に、立っていた。
「え?」
 あまりにも突飛で、しばらく落ち着くために座ってから水晶玉の中での出来事を話した。
「ありゃ。じゃあ、あんたは二番目の豚になったんだよ。たぶん、あたしの予想だともう少しで二人も帰ってくるはずだ」
「何もなければいいけど。しかし、3匹の子豚なんてこんなに残酷だったかしら」
 ため息をつきながら言った。
「実際体験してみないとわからないものだよ」
「そうだと思いますわ」
「うわっ!」
 みそのとクミノの二人は揃って蓮の後ろに立っていた。
「世界観、その他諸々なんだか少しおかしな思い込みでできあがっていると思いました」
「わたくしは楽しかったと思いますわ♪普段体験できないことを体験させていただきましたから」
「私はもう二度と食べられたくないわ」
 それから三人はそれぞれの立場から感じ取った感情や、状況を話し合い、それを蓮はパイプを燻らせながら聞いていた。

 三人が帰った後、水晶玉は少し動いただけで、アンティークショップ・レンにあった。
まるで、次の者達を待ち構えるように中身を変えながら。


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【0086/シュライン・エマ/女性/26歳/翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員】
【1166/ササキビ・クミノ/女性/13歳/殺し屋じゃない、殺し屋では断じてない。】
【1388/海原・みその/女性/13歳/深淵の巫女】

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■         ライター通信          ■
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 はじめまして、ライターの田村鈴楼と申します。
 納品が遅れてしまい、申し訳御座いません。

 どうだったでしょうか。プレイングと水晶玉の特性と独断で進行しました、この「異世界の玉」
 シナリオ名はそのまま水晶玉の名前なのですが、内容は原作に擬えるつもりがほぼオリジナルストーリーになってしまいました。
 気に入っていただけたのなら幸いです。

 最後に配役を(敬称略)
「一番目の子豚:手紙の自称姉。
 二晩目の子豚:シュライン・エマ。
 三晩目の子豚:ササキビ・クミノ。
 狼:海原みその」

 ありがとう御座いました!