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<東京怪談・PCゲームノベル>


神の剣 後日談 Shard of Soul

 とある都内マンション。そこには田中裕介が住んでいる。
 徒歩10分程度に彼が営む洋服店があるのだが、マニアックすぎて問題がある。「メイド魔神」や「たこ足」と、異名を持つ。しかし、今回はそんなことはどうでも良かった。
 彼の魂のあり方とかけらについての話である。
 彼と、大鎌“Baptme du sang”の魂は融合している。大釜自体に本来意志はないのだが、ある一定条件を満たすと人格変更として田中裕介の肉体を支配する。いわゆる多重人格ということだ。
 先日、能力吸収の悪魔に田中裕介の能力を盗られ(戻ったが)、彼は少し疲労感を持っていた。倦怠感を押して普通に仕事をこなしていたが、ある日。
「厄介なことになったものじゃ」
 彼の魂が傷つけられたためか、朝に起きた人格は“Baptme du sang”の方であった。彼は驚いていた。
「この状態じゃと、二人とも滅びてしまうのう。どうしようか」
 と、いつものは異なる服装〜少し着物っぽいモノ〜に着替え、部屋をうろうろする。
 大鎌は考えた末に、
「あそこによるしかなかろうか」
 と、意を決し、外に出た。

 向かったところは長谷神社。
|Д゚) !?
「む……エロ仙人」
 巫女服で庭を掃除している長谷茜と、謎の生命体。茜は気配で今の人格を悟り機嫌が悪い。
「いきなりの挨拶じゃな。茜」
 ケタケタ笑う大鎌人格。
「何か用? セクハラなら出てって」
 茜はかなり険悪な態度で言う。
「そんなことはしないわい。裕介も儂もまじめに考えることがあるわ」
 と、飄々とした口調で言い返した。
「それなら、何のよう? エロ仙人」
「静香に会わせて欲しいのじゃが? どこに?」
 その言葉に、茜はハリセンを取り出し振り回した!
「たぶらかそうというの!? この変態!?」
「いきなり振り回すなぁ! 儂をどういう風に見てるんじゃ!?」
 逃げまどう大鎌に追いかける茜。
 まったり見ている小麦色といつの間にか居る天然剣客少年。
 何となく平和なひとときであるが……

「これ、茜。おやめなさい」
 と、さわやかな風のような静かな声がする。
「静香!? きちゃだめ!?」
 茜は叫ぶが静香は聞かない。
「私に用があるのでしょう。それも困った問題が」
「むう」
 ふくれっ面をする茜。
「そのとおりじゃ、若いもんは血気が有りすぎて困るわい」
 大鎌はため息をつく。
 一度リンクされたので、大鎌は静香を見ることができる。
「久方ぶりじゃ。元気にしておるか?」
 恭しく挨拶する大鎌。
「お久しゅうございます。はい、おかげさまで」
 静香もお辞儀をした。
「で、用とはいったい?」
 静香は訊いた。
「前の騒ぎで、裕介は悪魔に魂を傷つけられ弱っておる。魂の回復をしてもらいたいのじゃ、宿主の裕介のな」
「まあ……それは大変です」
 驚く静香だった。


「で、なんで二人っきりにするのよ?」
 茜はふぐ面をしているが、義明は
「ほぼ同じ時を過ごしているモノ同士、何か話したいことがあるのだろう」
 と、なだめていた。
「むぅ」


 ご神木である静香の本体・純真の霊木にたたずむ二人。
「前に儂がおぬしと手をつないでいたことと同じ要領。それで十分回復する。まあ、丸一日はかかるのじゃろうが」
「そういうことですか。それなら問題はありませんね」
 と、静香は裕介の手を取る。
 大鎌は彼女の手から力を注がれる感覚に
「ふぅ」
 と、ため息をつく。よほど気持ちいいのだろう。鍼を打ってもらうとか、マッサージをしてもらうようなあの快楽に近い。
「しかし、なにゆえにその若者の身体に憑依し、融合しておられるのですか?」
 静香が大鎌に訊いた。
「む、それは契約をしたからじゃ。本人から話すことは無かろうが。裕介が望んだ事じゃ。暇じゃろうし、話をしてみるか」
 と、うとうとする感じの大鎌は言う。
「昔のことでのう。裕介はある事件に巻き込まれた。そのとき儂に出会った。裕介は力が欲しいと言い、儂は条件を付けた」
「どんな?」
「奴の寿命が尽きるまで。つまり天寿を全うすると、この肉体は儂に譲り渡すこと。それまでは力を貸すということじゃ。それが今に至る。あやつが全部覚えているかは分からぬがの」
「……」
 静香は黙って聞いている。しかし彼女の取り巻く風の吹き方は、興味を示している。優しく、裕介の身体を包むように吹いている。
「能力開花の原点は儂にある。ただ、闘気の質も性格の一端も、儂の影響を受けている。ただ、他のけったいな能力は別じゃ」
「そうなのですか」
「ただ、それ以外の死によるモノだと両方滅びてしまうのじゃ。故におぬしを頼った」
「前に助けて頂いた恩義があります。それに……」
 静香は微笑んで答える。
「それに?」
 大鎌は訊いた。
「あなたは、宿主の田中様のほかに、茜や義明様のお役に立って頂きたいのです」
「小娘の方は嫌っているようじゃがな」
 彼は苦笑する。
「印象はよろしくありませんね」
 同じく苦笑する。
「しかし、彼の寿命はあなたには分からないのでは?」
「そうじゃのう。今は魂が傷ついているわけじゃが……それは、なんとかしようと……儂もおぬしも長……い……」
 と、気持ちよさからか大鎌はどんどん眠たくなっていった。
「肉体は人の物。しかしあなたは……どうするつもりなのでしょう?」
 と、今までの寂しさかなのか分からない感情が静香を支配する。
 眠ってしまった大鎌が支配している田中裕介の肉体を優しく抱きしめて、彼女は子守歌を歌った。

 それは風に乗り、周りの自然精霊、霊、妖精達を和やかな気分にしていった。


 次の日。
 田中裕介は自宅のベッドから目が覚めた。
「? 俺は……丸一日寝てたの!? あ、麗花さんとの約束が!?」
 全く昨日のことを覚えていない。しかも何か大事なことを忘れていたらしい。
 役得の後には災難があるのは自然の摂理というモノだろうか? それは……。


END

■登場人物
【1098 田中・裕介 18 男 めいどあいらんど店主/何でも屋】

【NPC 静香 精霊】
【NPC 長谷・茜 学生/巫女】
【NPC 織田・義明 学生/天空剣剣士】
【NPC かわうそ? 例の小麦色】

 名前だけ:「星月麗花」

■ライター通信?
静香「茜、茜」
茜「なに?」
静香「エロ仙人というのはおやめなさい」
茜「だってー私のおしりさわったのよー!?」
静香「それは今度わたくしが言っておきます。後々謝ってくれるでしょう」
茜「なに? 裕ちゃんじゃなくあっちにが気になるの?」
静香「そうでしょう。わたくしは恩人ですし、同じ精霊種です。長い間長寿の方とお会いしておりません」
|Д゚) かわうそ? は?
静香「あなたは違います。ナマモノです」
|Д゚) がーん しょっくー
茜「そう見えないけどね」
と、延々話が……

 滝照直樹です。参加ありがとうございます。
 静香はBaptme du sang人格が気になるようです。はい。
 田中様の運命がどうなるか今のところ分かりませんが、彼女が何か助けてくれるでしょう。大きな変動さえなければですが。

 また機会が有ればお会いしましょう。
 滝照直樹拝
 20060227