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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


正体探しに右往左往


●序

 草間は外出先から帰って来、ドアを開けた瞬間にドアを閉めてしまった。音にしたら、ガチャ、バタン。
「……見間違い希望」
 草間はそう呟き、再びドアを開けた。すると、ソファの方から「失礼ですよ」と声がした。声の主は、熊。
 熊といっても、登山者をがおーと襲ったり蜂蜜を求めて頭から突っ込んだりする訳ではない。中身は綿が入っているぬいぐるみ、いわゆるテディ・ベアだ。
「草間さん、何故さっきはいきなり閉めたんですか?」
「逆に問うが、何でお前がここにいるんだ?熊太郎」
 テディ・ベアは、熊太郎という名を持っている。以前、引越しの際に持ち主と離れ離れになった熊太郎は、草間興信所に再会したいがために依頼を持ちかけた。しかし、持ち主は新しいテディ・ベアを購入していた為、熊太郎はそのままはぐれテディ・ベアとして、子ども達の相談役として就職(?)する事にしたのである。
「何でって、依頼があるから来たに決まっているでしょう?」
 熊太郎はそう言い、零に出して貰ったらしき珈琲を啜った。中身は綿だろうに、どうして飲み物を口にできるかは不明だ。
「一体どういう依頼だ?そしてまた、報酬はそのチャックから出てくるのか?」
 草間はそう言って、熊太郎の腹部についているチャックを指差した。冬にはホッカイロを入れると暖かい、という機能である。
 熊太郎は「よく分かりましたね」といい、チャックを開けて中から百円玉を十枚取り出した。
「実は、最近公園で飴を配る女性がいるのです」
「飴?」
「はい。その女性の飴は、ベッコウ飴と言うんでしょうか。砂糖を煮詰めて作ったような感じですね。それを子ども達に一つ一つ手渡しながら、尋ねるのです」
 熊太郎は、カチン、と音をさせて珈琲カップをソーサーに置く。草間は「何を?」と言いながら、煙草に火をつける。半ば自棄になっているようだ。
「『何に見える?』と」
「……変なものなのか?」
「いえ、実際その女性から受け取ったという飴を子どもから一つだけ、頂いて食べてみたんですが」
「食べたのか?」
 草間が驚いて尋ねると、熊太郎は「ええ」と言って当然のように頷く。
「食べないと、変かどうか分からないでしょう?……味は、普通の飴でした。何の変哲も無い、美味しい飴でした」
「じゃあ、趣味か何かで配ってるんじゃないのか?」
「ですが、子どもの一人が彼女に『何故飴を配るのか?』と尋ねると、女性はもの凄いスピードで逃げていったそうなのです」
「……何故?」
「それが分かれば、子ども達も安心して飴を食べられると言うものです。……と言う事で、女性の正体と飴を配る理由を知りたいのですが」
「ぶっちゃけて言えば、逃げる女性を捕まえて聞けばいいだけだな」
 草間はそう言って、煙を吐き出す。すると、熊太郎は「ですが」と言って言葉を続けた。
「足、めちゃめちゃ速いですよ?そうですねぇ、新幹線も真っ青です」
 新幹線に謝った方がいいんじゃないか、と草間は突っ込みたいのを、ぐっとこらえるのだった。


●集

 草間興信所に集められたのは、全部で6名だった。
「……本当に、熊のぬいぐるみだ」
 梧・北斗(あおぎり ほくと)はそう言ってじっと熊太郎を見つめる。熊太郎は「あ、はじめまして」と言ってぺこりと頭を下げる。
「あ、ああ。……まあ、草間興信所だから別に何でも無いことか」
「どういう意味だ」
 妙に納得する北斗に、鋭い草間の突っ込みが入った。
「あら、そのままの意味よね?梧くん。……ご無沙汰してます、熊太郎さん」
 シュライン・エマ(しゅらいん えま)はそう言って熊太郎と握手した。テーブルの上にある熊太郎の飲みかけである珈琲カップを見つけ、そっと耳打ちする。
「水分で重くなったら、ドライヤー等お貸ししますからお気軽に仰ってくださいね」
「大丈夫です。珈琲とは飲むものであり、含むものではないと承知してますから」
 熊太郎はそう言って頭を下げた。
「相変わらずだな、熊太郎。久しぶりー」
 ぽむぽむと熊太郎の頭を軽く叩きながら、影崎・雅(かげさき みやび)はそう言った。ふわふわとした触感が気持ちいい。そんな雅の横から「兄さん、失礼だよ」と言って弟である影崎・弥珠希(かげさき みずき)が嗜める。
「すいません、熊太郎さん。お元気そうで何よりです。今年は雪が多かったし、風邪なんてひきませんでしたか?」
 弥珠希の言葉に、熊太郎は少しだけ考えてから前足で後頭部をふにふにと掻く。
「ご心配有難うございます。何分、僕はぬいぐるみなので風邪はひかないんですよ」
 熊太郎がそう言っていると、向こうから「こんにちはなのー」という元気な声が響き渡った。藤井・蘭(ふじい らん)だ。
「熊太郎さんなのー!……チャック、どうなってるの?」
「こんにちは。このチャックは……ほら、こうして中に物を入れておくことができるのです。小銭から鍵、ちょっとした小物まで幅広く入れられますよ」
 ホッカイロ専用とは言え、他の物も入って便利だと言いたいらしい。その場にいる一同が「通信販売?」という疑問を浮かべる中、蘭だけが「面白いなのー」と興味深そうに呟く。
「熊太郎さん、宜しければ一度触らせていただけませんか?」
 マリオン・バーガンディ(まりおん ばーがんでぃ)がそう言って微笑んだ。熊太郎は快く「いいですよ」と承諾する。マリオンは、ぱあ、と顔を明るくさせ「それでは」と言いながら熊太郎を抱き上げる。柔らかな素材が、妙に気持ちいい。
「ああ……お持ち帰りしたみたいくらいです」
 ふもふもとしながらマリオンがいうと、熊太郎は少しだけ恥らったように「ありがとうございます」と礼を言った。
「宜しければ、一度家に来ませんか?」
「有難うございます。では、いつしかお邪魔させて貰いましょう。……とはいえ、僕のようなテディ・ベアがお邪魔してよいのでしょうか?」
 寧ろ、テディ・ベアになりきればいくらでも大丈夫なのではないかというツッコミを草間はぐっと堪えた。マリオンは嬉しそうに「勿論です」と返事をしている。
「それにしても、また妙な事件に遭遇したもんだな?お前さんも」
 雅はそう言い、マリオンの腕からおろしてもらった熊太郎の頭をぽむぽむと叩く。
「なんか昔流行ったアレに似てるな。ほら……ええと、口裂け女」
 北斗がいうと、一同が「ああ」と納得する。猛スピードで駆け抜ける辺り、そっくりである。
「いえいえ、普通の女性だったように思いますよ」
 熊太郎がすかさず言う。北斗は苦笑しながら「いやいや、顔じゃなくて」とフォローを入れた。
「走って逃げてしまわれると言う事は、その女性は理由を知られたく無いと言う事ですよね。知られたくない事を追求するのは申し訳ない気もしますけど……」
 弥珠希はそう言って、小さく考え込む。
「そうですね。ですが子ども達にもしもの事があったら困りますし」
 熊太郎の言葉に、弥珠希は頷く。
「飴をくれるのなら、悪い人じゃないみたいなのー」
 蘭はそう言って熊太郎に「ねー?」と同意を求める。
「そうですね、なかなか美味しい飴でしたし」
「味までわかるのか、お前」
 思わず突っ込む草間。当然のように頷く熊太郎に、気を静めようと煙草を口に運ぶ。と、それをシュラインにすっと奪われた。
「駄目よ、武彦さん。熊太郎さんは子どもの傍が多いんだから、新しい煙草の匂いをつけないように我慢しないと」
「そう言ってもなぁ」
 口が寂しそうな草間に、熊太郎は「すいません」と謝る。
「煙草の匂い消しスプレーをやってもいいのですが、ちょっと湿った感じが苦手でして」
「あら、珈琲は平気なのかしら?」
 シュラインの問いに、熊太郎はこっくりと頷く。
「珈琲は飲むものですから」
「中、綿なんですよね?さっき触った時、ふわふわしてましたし」
 マリオンの問いに、熊太郎は頷いた。当然だ、と言わんばかりに。
「でもさ、飴を配って『何に見える』ってのも変だよな。何で飴を配るのか、分かんねーし」
 北斗はそう言って両手を頭の後ろで組む。
「そうね。もう一つ言えば、その質問が飴と女性自身のどちらに対するものかは分からないわよね」
 シュラインはそう言い、熊太郎を見て小首をかしげる。
「飴は、毎回形が違うのかしら?」
「どうでしょうか。僕はまだ一度しか見ていませんが……子ども達に聞いてみたらいいかもしれませんね」
「因みにお前さんが食べた飴は、飴以外の物に見えるような形状なのか?」
 雅が尋ねると、熊太郎は「いいえ」ときっぱりと言い放つ。
「手作りさ満点の、ちょっと歪んだ円形をした立派な飴そのものでしたよ」
 熊太郎はそう言い、前足でぽむ、と叩く。
「そうだ、皆さんとりあえず公園に行きませんか?今ならば、子ども達も遊んでいることでしょうし」
 熊太郎の言葉に、一同はとりあえず頷いた。草間はほっと息を吐き出し、皆に向かってひらひらと手を振った。
 口元には、シュラインに注意されて吸う事を許されなかった煙草がくわえられていた。


●公園

 熊太郎の案内によって訪れたのは、草間興信所からそう遠くない四葉公園だった。野球コートがギリギリ入るくらいの大きさで、砂場や滑り台やブランコと言った遊具がぽつりぽつりと存在している。見回すと、それらで遊ぶ子ども達がちらほらといる。子どもを見守る保護者もいる。
 本当に、何処にでもありふれている公園だ。
「結構大人の方もいらっしゃるのですが、熊太郎さんは大丈夫なのですか?」
 マリオンが尋ねると、熊太郎はこっくりと頷く。
「多分、ばれてないと思います。もしばれていたら、大変な事になりますよ。なんといっても、テディ・ベアが動いているわけですから」
 熊太郎はそう言って「ははは」と笑った。皆顔を見合わせ、ひそひそと「自覚はあるんだ」と口々に呟く。
「僕だったら、その女の人に飴をもらえると思うのー」
 蘭はそう言って、にこ、と笑う。
「僕は高校生だから、年齢制限に引っ掛かりそうですよね」
 弥珠希がいたって真面目な顔で言う。
「と言う事は、俺も駄目だよなぁ」
 北斗はそう言って、悪戯っぽく笑う。
「私は貰おうかと思ってたのですが」
 真剣な顔でマリオンが言った。マリオンの実年齢はとてつもないが、見た目は弥珠希や北斗と同じ高校生くらいだ。マリオンの一言で、弥珠希と北斗は思わず顔を見合わせる。
「いけますかね?」
と、弥珠希。
「いけると思うのです」
と、マリオン。
「……ちょっと難しくねぇ?」
と、北斗、
 そんな三人のやり取りを、雅は「無理だって」と苦笑する。
「そんな事言ったら、俺やシュラインさんだっていけるって」
「それは言いすぎでしょう?」
 シュラインは思わず苦笑する。熊太郎も「そうですね」と言って頷く。
「あくまでも対象が子どもですから。蘭さん以外の皆さんでは、恐らく子どもと認証されないでしょう」
「熊太郎さんはどうだったの?もらえたのよね、飴」
 シュラインが尋ねると、熊太郎は「いえいえ」と言って後頭部を前足でもさもさと掻く。
「僕は飴を貰った子どもから分けて貰いましたので」
「それじゃあ、やっぱり僕が飴を貰うのー」
 蘭はそう言ってにこっと笑った。他の5人も顔を見合わせて頷いた。この中で一番飴を貰うのに適しているのは蘭であり、逆に蘭以外にはありえないと思われる。
「蘭君が飴を貰っている間に、私達は逃げられないようにしないといけないわね」
 シュラインはそう言って皆を見回す。
「逃げ足って、新幹線より早いんだよな。反則じゃね?」
 北斗はそう言って苦笑する。
「でも、新幹線も真っ青って……実際どれくらいなんだ?」
 雅はそう言って熊太郎に尋ねる。熊太郎は「そうですね」といい、遠くを見つめる。
「……例えるならば、一陣の風、でしょうか」
「熊太郎さん、逆に分かり辛いです」
 遠くを見つめたままの熊太郎に、さらりと弥珠希が突っ込む。
「そうですねぇ……ならば、F1レースというのはどうでしょうか」
「F1レース、ですか?」
 きょとんとして尋ねるマリオンに、熊太郎はこっくりと頷く。そして、皆で想像した。
 遠くから、ウウウとマシン音が聞こえてくる。ヴヴヴとだんだん近付いてくる。そうして一瞬でヴィンッと通り過ぎて行き、またヴヴヴと遠ざかっていく……。
 それこそが、一瞬で通り過ぎるF1レースのイメージである。
「……あんななのか?」
「あんななのです」
 思わず尋ねる北斗に、熊太郎はこっくりと頷いた。
「それ、私達で捕まえられるかしら?」
 シュラインは苦笑混じりに呟く。そんなに早いスピードで逃げようとする女性を、果たして捕まえられる事ができるのだろうかと、不安になる。
「本当にそのスピードなら、絶対人間じゃねーよな」
 雅はそう言ってくつくつと笑った。そうして「ある意味俺の専門分野なんだろーけど」と付け加える。
「僕がひきつけておくから、入り口に障害物を置いたりすればいいと思うの」
 蘭はそう言って「ロープとか」と付け加える。
「じゃあ、障害物を設置して俺が立ちふさがっとく」
 北斗はそう言いながら挙手をする。それを見て弥珠希も「僕も」と微笑む。
「この公園には入り口が二ヶ所ありますから、僕も立ちふさがっておきますね」
「では、私は能力で先回りでもしておくのです」
 マリオンはそう言いながら、ぽん、と手を打つ。
「それじゃあ、俺はぽちを使って追いかけるか」
 雅はそう言い、にっと笑う。
「ええと……つまり、先に障害物を置いて入り口は北斗君と弥珠希君が塞いでおくのね。それで蘭君が女性をひきつけつつ、逃げたら雅さんのぽちで追いかけて、最終的にマリオン君が先回りして捕まえる……と」
 シュラインはそう言って確認する。皆はこっくりと頷く。
「それじゃあ、私は熊太郎さんと二人で待ち構えておくわ」
 シュラインがそういうと、熊太郎は少し照れたように「はい」と言いながら頷く。無駄にもじもじしている。
「まずは公園で情報を集めてみましょうか。子ども達もいますし」
 弥珠希がいうと、熊太郎はぽむ、と胸を叩く。
「では、子ども達に話を聞かせてもらえるよう、呼んでみましょう」
「保護者の人もいるぞ、熊太郎」
 北斗がいうと、熊太郎はぐっと前足を握り締めながら「大丈夫です」と断言する。
「僕は、隠密行動が得意なんです」
 その言葉に一同が「え?」という疑問を浮かべながら、熊太郎の行動を見つめる。熊太郎は本人だけがこそこそと動いている様子で、子ども達に近付いていっている。子ども達は、まだ遊ぶのに夢中で気付いていない。
「ばればれなのー」
 蘭が指をさしながら皆にいう。
「親御さんも、熊太郎を明らかに見てますよね」
 マリオンがじっと様子を見つめながら呟く。保護者の目は、明らかに熊太郎に向けられている。
「だけど、そんな保護者も温かな目で見守っているぞ」
 雅はそう言ってうんうんと頷く。保護者の面々は、こそこそと動いているつもりの熊太郎を見、くすくすと笑っているようだった。
「本人は思いっきりばれてないと思い込んでるけどな」
 北斗はそう言って、くつくつと悪戯っぽく笑った。熊太郎本人は影から影へと素早く動いているつもりなのだろうが、周りから見ればいたってスローリーな動きである。
「明らかに、熊太郎さんを指差してますよね」
 弥珠希はそう言って、保護者達を見て苦笑した。保護者達は熊太郎を指差し、子ども達に声をかけている。明らかに子ども達よりも前に保護者にばれてしまっている。
 子ども達は熊太郎を見、きゃっきゃっと言いながらやってきた。熊太郎は前足を顔の辺りに持って来て「しっ」といい、再び皆の元に返ってきた。ふふん、とやり遂げたような顔をしている。
「連れてきました!」
「……良かったわねぇ、熊太郎さん」
 シュラインは思わず熊太郎をよしよしと撫でる。熊太郎は訳も分からずに「はあ」と頷く。その場にいた全員が、うんうんと温かな眼差しを熊太郎に向けた。
「僕は得意なんですよ、隠密行動」
 誇らしそうな熊太郎に、ただただ皆は温かな眼差しを向けて「うんうん」と頷いた。知らない事が幸せな事だって、たくさん在る筈だ。
「それじゃあ、質問させて貰うわね。まず……この中で飴をもらったことのある人」
 シュラインはそう言って、子どもたちを見回す。小学生、それも低学年くらいの子どもを10人ほどいたのだが、そのほぼ全員が飴を貰っていた。
「みなさん、怖くなかったんですか?」
 マリオンが尋ねると、子ども達は口々に「そうでもない」と答える。熊太郎は「そうですね」と言って頷く。
「実際、足が速いのと飴を何故か配るというだけで、怖いという雰囲気は持ってませんね」
「じゃあ『何に見える』っていう質問に答えた奴っているか?」
 雅が尋ねると、2人だけが手を挙げた。元気の良い、男の子と女の子だ。
「何て答えた?」
「飴に見えるーって」
「美味しそうーって」
 二人は口々にいい、顔を見合わせて「ねー」と言い合った。
「それで、その人の反応はどうだったんだ?」
 北斗が尋ねると、子ども達は「うーん」と首を捻っていた。
「困ってた」
「えーって顔してた」
「望んだ答えじゃなかったようだな」
 雅はそう言って苦笑する。北斗も「みたいだな」と頷いた。
「素直に答えたら、だめなのー?」
 蘭がきょとんとして尋ね返す。雅は「んー」と言いながら苦笑した。なんとも言い難いところだ。
「逆に聞いてみれば良いんじゃないですか?」
 弥珠希はそう言い、ポケットから何かを取り出す。それは、お日様色をした丸いベッコウ飴だった。
「僕は、同じ質問をしたいですね。ちゃんと会えたら」
「そっか、そうすりゃ何て欲しいのか、分かるもんな」
 北斗は頷き、蘭も「なるほどなのー」と頷く。
「じゃあ、僕はもし飴をもらったら素直に答えるのー」
「そうだな、それでいいと思うぜ」
 雅はそう言い、わしわしと蘭の頭を撫でた。蘭は嬉しそうに「わーい」とはしゃぐ。
「あと、甘い匂いのする場所とか家とか知らないかしら?飴を作っているなら、そういう匂いがあると思うんだけど……」
 シュラインの問いに、子ども達はきょとんとして小首をかしげた。
「分からないみたいだな」
 北斗がそう言うと、子ども達は一斉に頷いた。
「飴を作る時間と、子ども達が動く時間はちょっと違うのかもしれませんね。それなら、仕方ないと思いますよ」
 弥珠希がそういうと、シュラインは「そうよねぇ」と苦笑交じりにいう。そして何かに気付いて「あ」と声を上げた。
「熊太郎さん、その女の人っていつ頃現れるのかしら?」
 シュラインが尋ねると、熊太郎は「そうですねぇ」といい、公園内にある時計をじっと見つめた。現在、午後2時50分。
「そろそろですね。大体午後3時くらいに現れるんです」
「おやつの時間なのですね」
 マリオンがぐっと拳を握り締めながら言った。それに呼応するかのように、子ども達と熊太郎もぐっと拳を握り締めながら頷いた。
「傍から見てると、変な集団なんだろうなー」
 ぽつり、と雅が呟いた。それに対し、シュラインは「あら」と困ったように苦笑し、北斗は「仕方ないって」と呟き、弥珠希は「失礼だよ」と嗜め、蘭は小首をかしげた。
 そして、マリオンと熊太郎と子ども達はそんな言葉が耳に入る事なく、ぐっと拳を握り締めているのだった。


●3時

 公園内で、皆は配置についた。
 公園北入り口には、北斗がロープを張ってスタンバイしていた。小さく「いっちにー」と言いながら、準備運動をしている。捕まえる気は満々であり、新幹線も真っ青なそのスピードが本当なのかどうかを確かめられるというのもあるのかもしれない。
 公園南入り口には、雅の力によって大きな石が置かれ、その前に弥珠希がスタンバイした。「兄さんならできるよね?」と笑顔で弥珠希に言われ、雅は苦笑交じりに「ああ」と頷くしかなかった。
 中央で、子ども達と一緒に蘭が遊んでいた。飴を配りに来たら一番に近寄り、接触を図るつもりである。勿論、子ども達と一緒に遊ぶのも楽しい。
 そこから少し離れた所に、黒い狼の形をした護法「ぽち」を携えて雅が立っていた。いつでもぽちにゴーサインを出せる体制を整えている。
 また別の近場に、マリオンが控えていた。北入り口と南入り口の丁度中間地点で待機しているので、女性がどちらに逃げたとしてもすぐに先回りできるようにしている。運良く、この公園から出てすぐの道は一本道だ。どちらに逃げたとしても、逃げた方向さえ分かれば先回りは充分可能だ。
 そうして、ちょっと離れた茂みに熊太郎を抱っこしたシュラインが待機していた。現れた女性から不思議な音がしないかどうかを確認する為である。変わった音、変わった香り。そういうものをすぐ辿れるように。
 こうして万全の体制を整え、後は女性が登場するのを待つばかりだった。
「ねぇ、熊太郎さん。いつもああして保護者の方がいらっしゃるのよね?」
「はい、おおよそはいますね」
「どうしてその女性に気付かないのかしら?」
 シュラインの素朴な疑問に、熊太郎は「そうですね」と言いながら保護者達を見た。保護者達は、自分達の話に夢中になっていた。
「……ああいう状態だからでしょうか?」
「どうかしら?」
 シュラインが熊太郎と一緒に首を捻っていると、ぶわ、と風が吹いた。熊太郎ははっとしてと圭を確認する。
 午後3時。
 遊んでいる子どもと蘭は、突如吹いた風に目を一瞬閉じる。そうして再び目を開いた瞬間、目の前に女性が立っていた。
 何処にでもいる、普通の女性……に見えた。若くて綺麗な、長い髪のさらりとした女性だ。ただ違うのは、頭に白い三角巾を付けて白い割烹着を着ていたと言う事だ。
 今時そのような格好をしているのは給食だとか調理実習だとか、あと食品工場だとか。そういう特殊な状況にならねば着ないだろうと思われる服だ。眩いばかりに真っ白ではあったが。
「いつ入ってきたんだ?」
 北斗はそう言い、辺りをきょろきょろと見回す。が、彼女が入ってきた様子はどこにもない。
 同じように弥珠希が見回したが、やっぱり分からなかった。いつの間にか現れた、と表現するのが正しいのかもしれない。
 彼女はポケットからビニール袋を取り出し、にこ、と微笑みながらその中から棒のついた飴を取り出し、子ども達に向かって差し出した。
「何に見える?」
 飴を差し出された蘭はそれを受け取り、じっと飴を見つめた。
 歪な円形をした、飴。よく見れば、飴の端がぴょんと刺のようなものが二つ出ていた。
「鬼さん?」
 蘭が答えると、女性はぴたりと動きを止めた。空気が凍りついた、という表現がお似合いである。
「……お、鬼?」
「鬼さんー」
 じり、と女性が動いた。蘭は慌てて袖をぎゅっと掴んだ。
「駄目なのー」
「は……離して!」
「駄目なのー!どうしてこんな事するのー?」
「離してぇ!」
 むーっと握り締めていた袖をばっと振り払い、女性は走り出した。一瞬クラウチングスタートを取り、爆発的なスタートを切った。そうして、弥珠希と北斗のいる入り口を一瞬で見渡した後、北斗のいる方に走っていった。雅に頼んで運んで貰った岩が気になったのだろう。
「こっち来た!」
 北斗はそう言い、走り出した。が、新幹線も真っ青、F1レース並と熊太郎が表現した通り、あっという間に走り去ってしまった。ロープを張っていたのに、ロープは風の刃ですっぱりと切られてる。
「ぽち、運動の時間だぞ!」
 雅はそう言い、ぽちを走らせる。ぽちも女性に負けず劣らず風のように走っていく。
「あっちですね」
 マリオンは小さく呟き、女性の行く方向に能力を使って先回りする。空間をつなげ、別の空間に一瞬の内に移動する能力だ。
「にしても、これじゃゴールできませんね」
 反対側にいた弥珠希が、去って行った北入り口にやってきた。綺麗に切れたロープを見、ゴールテープが彼女の前ではいかに意味の無いものかを実感する。
「あら、ゴールテープはまた違うんじゃないかしら?」
 同じくやってきたシュラインが苦笑しながら言う。
「俺、怪我しなくて良かった」
 少しだけ追いかけ、諦めて返ってきた北斗はロープを見て呟く。下手をすると、ロープの姿は北斗の姿だったのかもしれない。
「大丈夫ですよ。彼女、優しい人ですから」
 熊太郎はそう言い、小さな声で「たぶん」と付け加える。北斗はそれを聞き逃す事なく「熊太郎?」と言いながら熊太郎の頭をぽむ、と叩く。
「意味深な台詞は感心しねぇな」
「いえいえ。気にしない方が幸せな場合って、あるものですよ」
 そこに、蘭がぽてぽてと走りながらやってきた。手には、女性から貰った飴。
「行っちゃったのー」
「蘭君、それがあの人から貰った飴ね?」
 シュラインが尋ねると、蘭は「そうなのー」といって差し出す。見た目は、本当に普通の飴だ。ベッコウ飴、という種類のものに見える。
「味はどうだ?」
 北斗が尋ねると、蘭は貰った飴を口にくわえる。ほろり、と温かな甘味が口一杯に広がる。
「美味しいのー。ベッコウ飴なのー」
「蜂蜜かなぁとも思ったんだけど……違うみたいね」
 シュラインはそう言い、苦笑する。密やかに女性の正体を考えていたのだが、どうやら違うようだ。
「にしても、不思議な形でしたね。何を表現していたんですかね?」
 弥珠希が呟くと、蘭は飴を食べながら「違ったの」と呟く。
「鬼さんじゃなかったみたいなの」
「ま、それももうすぐ分かるさ。きっと」
 北斗はそう言って、にっと笑った。雅とマリオンの活躍を期待しながら。


 マリオンは空間をつなげ、女性の走っていった方向に先回りした。公園がはるか彼方に見える。
「あの速度なら、もうすぐ来るでしょうね」
 マリオンは呟き、じっと構える。すると、向こうからドドドドという音と獣の走っている音が聞こえてきた。
 おそらくは、あの女性と雅の護法、ぽちだろう。
 マリオンはばっと両手を広げる。目の前から、女性が走ってくる。そのすぐ後ろに黒い狼、ぽちが見える。
「待って下さい!何処に行くのですか?」
 マリオンが叫ぶと、女性は目の前のマリオンに気付いてキキキキとブレーキをかけた。同時に後ろからぽちがばっと女性に飛び掛った。
「ぽち、捕獲!」
 更に後ろから、雅の声が響いた。ぽちは女性の目の前に飛び出して体で女性を受け止めた。しばらくずずずずず、と女性の走っていた方向に体が進んでいき、やがてゆっくりと止まっていった。
「……慣性の法則ですね」
 ぐっとマリオンが拳を握って呟く。ぽちは女性が止まるのとほぼ同時に上に乗っかり、押さえつける。女性は慌てたようにぽちの体の下でもがいたが、捕獲されて動けない。
「よ、ようやく捕まえたか」
 向こうから、苦笑交じりに雅が現れた。
「さすがに、追いつけませんでしたか」
「追いつけるわけないって。凄かったじゃん、実際」
 苦笑交じりのマリオンに、雅は手をひらひらして答えた。そうして女性の前に二人は立つ。
「悪いけど、一緒に来てもらえないか?」
 雅の問いに、女性はふいと顔を逸らした。雅が「力ずくで……」と言いかけた瞬間、マリオンは「そうだ」と声を上げた。
「飴、ください」
「……いきなりだな」
「いえ、是非欲しいと思っていたのです」
 呆然とする雅に、きっぱりと真面目な顔でマリオンは言い放つ。女性はきょとんとした後、恐る恐るビニール袋から飴を取り出したマリオンに手渡した。
「……何に見える?」
「飴なのです」
 女性は一瞬動きを止め、大きく溜息をついた。マリオンは嬉しそうに飴を口の中に放り込む。ほろりとした甘さが、口一杯に広がった。
「美味しいのです」
「美味しい……?」
 不思議そうな女性に、マリオンはこっくりと頷いた。その様子を見、もう逃げないだろうと判断した雅は女性に向かって「ええと」と口を開いた。
「一緒に、来てくれないか?」
 女性は少しだけ迷った後、こくり、と頷いたのだった。


●飴

 再び公園に集結した。割烹着を着た女性を真ん中に、皆がじっと女性を見つめた。もの凄い速さで逃げ出す事を除けば、そしてまた白の三角巾と割烹着を着ていることを除外すれば、どこにでもいるような女性に見えた。
「何処に行こうとしてたのですか?」
 口の中で飴を転がしながら、マリオンが尋ねた。女性はぎゅっと手を握り「それは」と口を開く。
「じ、神社に」
 思わず、皆の目が点になる。突然の、思いも寄らない答えだ。
「あんた、神社の人なのか?」
 雅が尋ねると、女性はこくりと頷きながら頭につけている三角巾を取った。そこに、2本の角があった。
「実は、私は鬼なのです」
 一同は「へぇ」と頷く。あまり驚かない一同に、思わず女性はきょとんとする。
「皆さん、私が怖くないのですか?」
「別に怖くないわ。害を為そうとしている訳じゃないでしょう?」
 シュラインがいうと、女性は「もちろんです」と言い放つ。
「ですが、人々にとって私はきっと怖い存在です。だから、神社のお祭りの時に人々と触れ合いたくて……」
「あ、もしかして飴細工を目指していたとか?」
 北斗が尋ねると、女性はこっくりと頷いた。
「因みに、これは何を目指していたんだ?」
 雅はそう言って蘭が舐めているベッコウ飴を指差す。蘭が「鬼」と評したものである。女性はちょっと恥ずかしそうに俯き、小さな声で「兎……」と呟くように言った。
「……ごめん、見えない」
 思わず雅は謝る。聞いておいてなんだが、フォロー不可能な形である。
「私、不器用で……。なんとか来年のお祭りには形のある飴にしたくて。子どもなら、素直に答えてくれるし……」
 女性はそう言い、言葉を詰まらせる。雅は小さく「だからか」と呟いた。
「でも、美味しいのー」
 俯いた女性に向かい、蘭はそう言ってにっこりと笑う。その言葉に、女性はそっと顔を上げる。
「そうそう、味はとても美味しいのです」
 マリオンもにっこり笑って同意する。
「そうですね、大変美味しい飴です」
 熊太郎も頷きながら言う。ぬいぐるみに味がわかるのかどうかは、未だに不明だが。
「大丈夫です。味が美味しいのなら、あとは練習あるのみですから」
 弥珠希はそう言ってにこ、と笑い、ポケットから飴を取り出して女性に手渡した。
「これは……?」
「僕が作ったベッコウ飴なんです。……何に見えますか?」
「丸い……まるでお日様みたいな……」
 女性の言葉に、弥珠希はにっこりと笑った。
「良かったら、僕にももらえませんか?その飴を」
「あ、はい」
 女性は頷き、ビニール袋からベッコウ飴を取り出す。
「そんなに美味しいなら、俺も食べたいな」
 北斗はそう言ってにっと笑う。女性はきょとんとしながら、じっと北斗を見つめる。
「あ、俺も。美味しいっていうのなら、食べずにはいられないし」
 雅はそう言って、傍らにいるぽちに「な?」と同意を求める。ぽちはこっくりと頷く。
「そうね、是非いただきたいわ」
 シュラインはそう言って微笑む。女性は皆を見回し、笑顔で「はい」と頷き、ベッコウ飴を皆に渡していく。
「でも気をつけないと。最近はアレルギーとか持病のある子がいるから、お菓子をあげるにも保護者の許可を取らないと危ないのよ」
 シュラインは飴を食べながら女性にいう。女性は「そうですね」と言ってしょんぼりとうな垂れた。
「これ、何か秘密のレシピとかあるのですか?」
 マリオンが二つ目の飴を食べながら女性に尋ねる。女性は悪戯っぽく笑い、そっと「秘密です」と言った。
「それにしても、どうして保護者の方は気付かなかったんでしょうね?おしゃべりに夢中だから、というのはやっぱり弱い気がしてきました」
 熊太郎も飴を受け取りながら呟く。すると、女性は「ああ」と言って恥ずかしそうに頬を赤らめる。
「皆さん、私の逃げ足が速いので分からなかったそうです」
 女性の言葉に、一同は「ああ」と納得をした。そうして、顔を見合わせてくすくすと笑い合う。
 兎には見えない、ベッコウ飴を食べながら。


●結

 その後、草間興信所に熊太郎が一週間に一度現れるようになった。その度に手にベッコウ飴が入ったビニール袋を携えて。
「お前……今度は何の仲介を始めたんだ?」
 草間が尋ねると、熊太郎は出された珈琲を啜りながら前足をひらひらと振る。
「折角あの方が飴を作られているのならば、何かお手伝いできるのではと思いまして」
「それは構わないが……どうしていつも変な形の飴なんだ?」
「上達がゆっくりなのだとご自分で仰ってましたよ。最初に比べたら、何かの形をしているのだと思えるだけ、上達したのだと思うべきです」
 あれから、女性はちゃんと保護者の人々に許可を取ってから飴を配るようになったのだという。味が良いのと、逃げ足とは裏腹な穏やかな性格から、すんなりと受け入れられたのだとか。
 ベッコウ飴の形を作る練習は中々困難を極めているらしく、配っても配っても余るベッコウ飴の処理を熊太郎が手伝っているのだという。
「で、未だに『何に見える?』とか聞いているのか?」
「いえ。子ども達から何に見えるかをいうようにしたようです」
「逃げ出さないのか?その……新幹線も真っ青なスピードで」
「時折クラウチングスタートをしようとしているのですが、寸前ではっと我に返るようですよ」
「まだ、逃げようとするのか」
「ええ。回答が違っていたら、逃げ出したくなるそうです。子ども達は面白いクイズのようだと、喜んでいますが」
 熊太郎はそう言い、再び珈琲を口に運んだ。
「皆さん、遅いですね。飴の配給日は忘れないでいただきたいですね」
「お前……」
 熊太郎はカレンダーを見、ぽん、と前足を叩いた。
「いい事を思いつきました。そのカレンダーに飴の日を書き入れておきましょう」
「おい、あれはこの興信所のカレンダーだぞ」
 草間が思わず突っ込むと、熊太郎は「当然です」といって頷く。
「そうでなければ、意味が無いじゃないですか」
「……そうだが」
 熊太郎はその返答を聞き、赤いペンを持ってうきうきとカレンダーに大きな丸をつけた。
 週に一度ある、ベッコウ飴の細工を確認する日を。

<飴の日を書き入れつつ・了>

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【 0086 / シュライン・エマ / 女 / 26 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員 】
【 0843 / 影崎・雅 / 男 / 27 / トラブル清掃業+時々住職 】
【 2163 / 藤井・蘭 / 男 / 1 / 藤井家の居候 】
【 2198 / 影崎・弥珠希 / 男 / 16 / 高校生+安楽寺影の住職 】
【 4164 / マリオン・バーガンディ / 男 / 275 / 元キュレーター・研究者・研究所所長 】
【 5698 / 梧・北斗 / 男 / 17 / 退魔師兼高校生 】

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■         ライター通信          ■
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 お待たせしました、コニチハ。ライターの霜月玲守です。この度は「正体探しに右往左往」にご参加頂き、有難うございます。
 久々に熊太郎の登場です。熊太郎は以前出した依頼「持ち主探して三千里」に出てきたテディ・ベアです。その不思議なキャラクタが忘れられず、つい再登場させてしまいました。触れ合ってくださって嬉しいです。
 シュライン・エマさん、いつもご参加頂き有難うございます。熊太郎を気遣ってくださり、嬉しいです。草間はきっと、熊太郎が来るたびに煙草をすえなくて苛々する事でしょう。
 今回、テンポを重視した為に全員共通文章となっております。その分ちょっと長めになっております。長めの文章をものともせず、テンポ良く読んでいただけると嬉しいです。
 ご意見・ご感想等心よりお待ちしております。それではまたお会いできるその時迄。