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<東京怪談ノベル(シングル)>


ゆったりと、ゆっくりと。〜サクラサク〜
 3学期が始まったかと思えば、あっという間に卒業式。神聖都学園も例外じゃない。
 いつもの賑わいはどこへやら、校内はシンと静まり返っている。
 今、俺は高等部の卒業式に出席している。
 開会の挨拶が始まり、国家斉唱…歌うのは苦手なんだが参加したからには仕方がない。
俺も送り出す側として歌う立場なのだから…

 そして、卒業証書授与が始まった。決まりきった物静かな曲と共に生徒の名前が読み上げられ、呼ばれた生徒は「はいっ」と元気に答えて、赤じゅうたんの先へ歩いていく。
 そんな生徒達を見て、様々なことを考える。

 一番に呼ばれた生徒は確か
『センセッ!、俺、サッカー部のエースになるためにがんばるぜ!!』
 といってたっけ。

 入学当初、そういって意気込んだあいつは今では立派な主将格。やんちゃっけが抜けて頼れる先輩になり、後輩も彼を目指してがんばっているくらいだった。
 大学もサッカーが有名なところから推薦の声がかかってきたらしい。短気な所はあるが、
あいつならどこへいってもがんばれると思っている。

 曲も終盤になってきて最後に眼鏡の女生徒が立ち上がった。彼女は
『私、本が好きだからそういう仕事につきたいんですけど…』
 といって不安がっていたな。 

 進路に迷っていた二年生のとき。あのころは不安そうにしていたが、今では未来(あした)を見つめるキリッとした表情で卒業式のいすに座っている。彼女は図書館の司書に合格。
 難しいところをがんばったようだった。彼女らしい仕事なのでこれからも大丈夫だろう。眼鏡に可愛らしい彼女なら図書館でもなじめそうだ。
 ただ、本にぼっとうしすぎて仕事を忘れないか不安だが…

 式は校長やPTAの偉い人の眠くなる挨拶が続く、体育館は少し冷えるので起きていられるが、春の暖かい日差しを浴びてやっていたらきっと寝ているだろう。生徒のほうの顔を覗くとがんばって耐えているのが伺えた。
 そいつらを見ていると、俺もがんばらなきゃと思う。目をしばしばさせて、式の行く末を見守ろうと少し腰を動かした。
 すると、門出の言葉になった。式も終わりに近づいている。

 壇上に立ったのは、上背のある男子生徒
『受験に失敗するのが怖い』
 と、おどおどしていたあいつだった。

 志望校がハードルすれすれで、親が同じところ出ということでかなり押していたようだった。
 本人もすごいプレッシャーを受けて、よく俺のところへ来てプレッシャーの話しをしたっけ。
 もっとも、一番おどろいたのは正月のときに自殺でもしないかといわんばかりの電話だったが…
 そんなあいつだったが、今はそんな面影もない。背筋をピンと伸ばし、門出の言葉を大きくはっきりと読み上げていった…。
 
 再び、卒業生の顔を見回した。
 皆、それぞれの旅立ちの時に緊張している。長いようで短かった3年間は、卒業生達にとってどういう感じだったんだろう?有意義だったと答えるのもいれば、悔いがあったというのもいるだろう。どんな思いがあるにせよ、無駄なんて何一つないはず。得られたものが何か一つはあるだろう。そんなことを考えているうちに、卒業生達が会場を後にした。

「うっ!」
 卒業生のあとを追うように外に出ると、目の前が光で真っ白になった。すぐに光になれると、今度は満開の桜が目に写った。
 思ったとおり暖かい…桜舞い散る道をあるき、診療所へと向かう。
 卒業生はそれぞれの道へ進むだろう。俺は俺の道を進む…道を見失いかけた人へ道しるべを指すという道…。
 そんな俺に幾人かの生徒が近づき、背中に声をかけてくれた。

「「「先生、3年間ありがとうございました!!」」」

 今日という日で一番うれしい一言だった。桜吹雪の散る中、軽く手を振ってその場を去った。

サクラサクカナサイタヨマンカイニ