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憎いアンチキショウを捕まえろ!
------<オープニング>--------------------------------------
「ぬああああ!!」
草間興信所に黒い物体が突入してきたのは、いつもどおり暇なある日だった。
「頼む、怪奇探偵!俺に力を貸してくれ!」
「誰が怪奇探偵だっ!!」
草間は力いっぱい否定する。
黒い物体は、学生服の上からアサルトベストを着込んだ、あまり一般的でない格好をした少年だった。
「中国の奥地でようやく見つけたんだ、俺のスウィート・ハニィ!あれだけの大きさは滅多に出回らないのに!」
「つーかなんなんだ、お前は。とっとと出て行け、こっちだって暇じゃないんだ」
いや、暇である。
しっしっ、と犬を追い払うようなしぐさをしてみても、少年は両膝と両手を床に着いたまま嘆いている。草間の言い分は全く聞いていないようだ。
「知らなかったんだ、まさかあんなに足が速いだなんて・・・・・・。とにかく、俺の話を聞いてくれ、怪奇探偵」
「何度も言わせるな、誰が怪奇探偵だ!」
「俺は昨日中国から帰ってきたばかりなんだ」
「聞けよ」
「チベットに近い所で、ようやく見つけたハニィ・・・・・・。マンドラゴラって知ってるかい?」
「だーかーら」
いい加減、草間は堪忍袋の緒が切れそうだった。零はといえば、接客用テーブルにお茶を出して、この少年の嘆きを真剣に聞こうとしている。素直な性格が、草間にとって味方とはならなかった。
「引き抜くときの泣き声を聞くと死ぬっていう植物。あれなんだ。本来ならイヤホンをして音楽でも聞いて抜けば何の問題もないんだけど、今回は大きさが大きさでさ、150cmくらいある大きなものだったんだ。今じゃマンドレイクはすっげぇ貴重だから、大きさによって値が変わる。ハニィほどの大きさなら億単位だったのに・・・・・・」
「お、億ぅ!?」
「でも大きくなればなるほど、意思を持つようになる。さっきアパートで一息ついたところで隙を付かれて・・・・・・」
少年は零の入れたお茶を行儀悪く音を立てて飲んだ。草間は“億単位”という言葉に興味を惹かれたのか、椅子から立ち上がって少年を食い入るように見つめている。
「ダッシュで逃げられた。慌てて追いかけたんだけど、見当たらなくてさ・・・・・・アパートの住人に、怪奇事件なら、ここがいいって聞いて・・・・・・」
「・・・・・・ウチは一体どんな興信所だと思われてんだ・・・・・・」
「勿論タダで見つけてくれなんて言わない。ハニィには高額の懸賞金が付いてる。それをギルドに出せば俺にその金が入ってくる。そこから2・・・・・・いや、3割!」
「!!」
億単位の金が三割!これは草間の心を揺さぶる。それはそれは大きく、果てしない海のように揺さぶる。
そこに、零が致命的な一言を放り込んだ。
「お兄さん、今月の家賃、明後日までにお支払いしないと立ち退きって、大家さんが仰ってましたよね」
・・・・・・。
草間興信所は、いつだって、貧乏なのだ。
(なるほど、私に適した内容だな。報酬の額も悪くない)
こっそりと、黒・冥月は笑った。
彼女の能力−“影”を使えば、拿捕も追跡も簡単なことだ。しかしまずはそまマンドラゴラがどういう形状のものか確認しなければならない。いくら彼女の能力をもってしても、何の情報もなければ探すのは困難だ。特徴は聞いておくに越したことはない。
「そもそも、お前は何者だ?」
草間は問いかける。当然だろう、学生服の上にアサルトベスト(色々詰まっているのか、所々膨らんでいる)を着込んだ少年なんてあまり・・・・・・普通、見かけない。
「あ、俺?俺は藤代・柾弥。トレジャーハンターなんだ」
トレジャーハンターとは、世界各地に散らばる宝探しを生業としている者達だ。まだ10代後半に見えるが、それでいっぱしのトレジャーハンターだとしたら、腕は中々のものなのかもしれない。
「それでマンドラゴラとやらの形状はどういったものだ。詳しく話せ」
相変わらず行儀悪くお茶を飲んでいた柾弥冥月がに問いかける。
「おっ、アジアン美人なおねーさん、手伝ってくれるの!?」
「手伝うわけではない。お前は依頼したんだろう。ならばこれは仕事だ」
「冷たいなぁ。でもキレイなおねーさんが冷たいって結構萌えるよね」
「−お前は本気で探す気があるのか?」
冥月は呆れた。行儀悪くお茶を飲んでいる柾弥に冷たい視線を投げる。
「あるってば。はい、これ。俺とハニィのラヴラヴ写真」
学生服の懐から差し出された一枚の写真。
この21世紀にあって何故セピア色なのかは判らない。そして、何故、体長150cmのマンドラゴラと柾弥が抱き合っている写真なのかも判らない。ていうか、誰が撮ったんだ、この写真?
背景は雄大な山脈に雪化粧。その山を越えればチベットなのだろうか?
冥月は写真を受け取り、しっかりとその姿を目に焼き付ける。
マンドラゴラの形状は柾弥の肩より少し上までの長さ。頭頂についている茎と葉を入れれば、柾弥よりも大きいだろう。茎は途中でぐにゃりと曲がっており、セピア色なので色までは判別できない。だが茎なので、恐らくは緑色の系統だろう。
顔、も一応ある。まるで大きな木のウロの様に黒々とした闇が三つ。目と口だろう。絡まった根が柾弥の両肩にまわされている。腕だ。植物なのに腕があるらしい。足もある。モジモジしているかの様な組み方をしていた。
正直な所、気持ち悪い。
いくら仕事とはいえ、あんまり見て気持ちのいいシロモノではない。写真の柾弥はこれ以上ない位に幸せそうだった。何がそんなに幸せなのだろう?この少年、アホなのかもしれない。
「なるほど、これがマンドラゴラというものか・・・・・・」
「ちなみに、学生服着ていないほうがハニィね」
「見れば判る」
今日は晴天だった。影を操るにはちょうどいい天気だ。絶好の狩り日和。
「引き受けても良いが、一つ確認しておこう」
「はいはい」
「報酬は見つけた奴の総取りか?それとも山分けか?」
「だからさっき言ったじゃん。3割だよ、3割」
「それではお前が一番得をするじゃないか」
「だってハニィを見つけたのは俺だぜ?」
えへん、と柾弥は胸を張る。だが冥月も引かない。彼女の主張にはきちんとした理由がある。
「見つけたのはお前だ。しかし、逃げられたのにはお前に責がある。後始末を人にさせて自分一人が丸儲けか?それは少し虫が良すぎるのではないか?」
冥月の言葉に、うーん、と柾弥は考え込む。その隙に気づかれない様にマンドラゴラの現状を探るため影を操る。
尤も、万が一気が付かれた所で困る事はない。草間も零も冥月の能力は知っているし、柾弥に至っては、そもそも何をしているのか判らなさそうだ。弱点という弱点らしきものがない特異な能力だから、知られても困る事もないのだ。
影が影を伝い、距離や物体を無視しマンドラゴラを補足する準備に入る。
瞳を閉じて情報入手に専念する。草間は相変わらずだし、柾弥はまだ悩んでいる。零は冥月にもお茶を淹れてくれた。それに気配で気が付き、零にだけ聞こえる様な小さな声で「ありがとう」と言った。零は笑顔の返事をした。
「お兄さん、さっきからあんな感じなんですけど、大丈夫でしょううか?」
「なに、あいつは大丈夫だろう。後で頭の一つも殴れば正気に戻るさ」
「だといいんですけど・・・・・・」
零は心配そうに、冥月は面白そうに、草間を見やる。
草間は放心状態のまま、何やらぶつぶつ呟いている。所々聞こえる単語を拾うと、“億”とか“家賃支払える”とか“風呂上りにはフルーツ牛乳”とかだ。金に目が眩んでいるんだろう。
可哀相に、貧乏生活が長い所為か、現実味を帯びない金額を聞いて意識が冒険に出かけてしまったのかもしれない。
「さらばタイノーセイリマン!!」
いきなり草間が叫んだ。なんなんだ、タイノーセイリマンって。
「判った少年、この草間興信所の威信にかけてお前のハニィは見つけ出そう!」
「マジでか、怪奇探偵!」
「あたりまえだ、痩せても枯れてもこの草間武彦、困っているやつの味方さ!」
「怪奇探偵!」
「少年!」
二人ははっしと抱き合う。はっきり言って鬱陶しい事この上ない。
一応草間は正気には戻ったようだ。草間興信所の威信、とか言っているが、そんな物があるとは冥月は知らなかった。草間のロコツな変貌振りも閉口しつつアホ丸出しで少し笑ってしまった。
その暑苦しい光景を目に入れていた時−
ぴく。
冥月の神経の一端が反応する。影がマンドラゴラを補足した。一度捕捉してしまえば話は簡単だ。糸を巻きつける様に、影は対象物から離れない。これで後は傍観を決め込む事も出来る。慌てふためく草間を見るのも面白いかもしれない。
「よっし、俺も男だ、腹を括るぜ!見つけたやつの総取りな!」
「判った」
ニヤリ。
自然と笑みがこぼれる。
横目で草間をチラリと見やると、目が真剣に訴えていた。
−冥月お前・・・・・・全部取る気か!?
と。
「あ、冥月、ちょっとちょっと」
「なんだ」
デスクまでわざわざ冥月手招きで呼び寄せ、草間は耳打ちした。
「お前十分生活潤ってんだろ?俺みたいな貧乏人に少しは回してくれよ。いいか、日本には、“金は天下の回り物”っていう標語がなぁ・・・・・・」
「標語ではなく諺だろうが」
ふん、と鼻で笑ってやると、草間は「わざとだ、わざと」と言ってコーヒーを一口。
「あ。お前まさかもう見つけているんじゃないだろうな?」
「さて、な」
捕捉した今、影を伝って引き寄せる事も勿論出来る。しかしそれでは面白みが足りない。
惚けた冥月に対して、草間は苛立った様だ。がしがしと乱暴に頭を掻き、ちびた吸殻に再び火をつける。新しい煙草に手を付けられない当たり、貧乏さを顕著に表している。草間はクールでハードボイルドを気取っているが、基本的に表情が多くて、それらになりきれないところが面白い、と冥月は思う。表情が豊かなやつは、つついて色んな表情を見てみたくなる。
だからちょっとオアズケしてやるのも、また一興だ。
「よーし、一服したし、俺は早速ハニィを探しに行ってやるか!」
お茶を飲み干した柾弥が椅子から立ち上がる。
「ん?ああ、待て。お前背中が随分汚れているぞ」
「マジで?」
ぱんぱんと軽く柾弥の背中を叩き、冥月は汚れを落としてやった。
「そんじゃ、怪奇探偵とおねーさんも頼んだよ!」
言うが早いか、二人の返事も聞かずに柾弥は興信所を飛び出していく。足は中々に速いようだ。
「冥月、教えろ、あのガキいなくなったんだから、いいだろ!?」
「・・・・・・まぁ、そうだな・・・・・・」
勿体ぶって思案している風を装う。草間は祈るような顔で冥月を見つめている。
「しかし草間、時には運動するのもいいんじゃないか?」
「なにぃ!?」
「しばらくしたら、お前の携帯にかけてやるから、電話番号をメモに書け。だからそれまでは自分で探してみるんだな。あまり私を頼るな、探偵だろう」
「何言ってやがる!」
がたん、と大きな音を立てて草間は椅子から立ち上がった。その様子は今までのものとは違い真剣そのもので、さすがに恐怖こそなくとも、冥月は少し驚いた。
「俺は・・・・・・俺はなぁ・・・・・・!」
ごくり。草間は声を絞り出す。
「ケータイ持ってねぇんだよ・・・・・・」
・・・・・・21世紀のこのご時勢、しかも探偵という職業で、携帯電話を持っていない者がいたとは。
草間興信所の困窮振り、ここに現れり。
「仕方がないな・・・・・・私の携帯をお前に貸してやる。そこからこの事務所に電話をかけて来い」
「結局俺が探すのかよ・・・・・・」
「当たり前だ。まあ安心しろ。依頼人には盗聴器をつけておいた。先を越される事はない」
「おおっ、やるな、冥月!」
勢い余って草間は冥月の肩をばしばしと叩く。
「これは一つ貸しだぞ?」
ふふん。
得意気に冥月は笑う。
対照的に、草間は嫌そうな顔になった。“貸し”という響きが気に入らなかったのだろう。
「−男前な冥月さんに、恩に着ま」
どがっ。
最後まで述べる前に、冥月の一撃が草間の頭にクリーンヒットする。
「誰が男だ」
しかし草間からの反応はなかった。合掌。
ザザ。ザザザザ。
ノイズが興信所の中に響く。
柾弥に付けた盗聴器が雑踏の音を拾っている。あれから小一時間ほど経ったが、柾弥の方には目立った変化はないようだ。草間からの連絡もない。少しは頑張っているようだ。
「お茶、新しいの入りましたよ」
「ああ、ありがとう」
窓から外を見ると相変わらずいい天気だった。まだ肌寒さの残る今の時節、空気が澄んでいるので、きっと夏よりも空が綺麗に見えているのかもしれない。
『すいませーん、マンドラゴラ見ませんでした?』
『・・・・・・なに、それ?』
盗聴器からは、9割方そんな会話が聞こえてくる。
というか、あんな目立つ生物が東京の街中を走っていたらもっと騒がれているだろうに。トレジャーハンターのくせに気が付かないとは、まだまだである。
草間のデスクに座りながら、冥月は零の淹れたお茶をのんびりと飲みながら電話を待った。
実のところ、マンドラゴラは一度隠れた場所から動いていない。場所柄を考えると、もしかしたら余程の事が無い限り動かないのではあるまいか。
影で捕捉している間冥月は能力を使い続けているわけだが、疲れは感じない。人が目で物体を見るが如く自然に、冥月の能力は発揮されるのだ。尤も、あまりに使用頻度を上げれば疲れが来るかもしれないが、今回の様な事象の場合、疲れとは無縁でいられる。
「お兄さん、ちゃんとマンドラゴラさんを捕まえられるでしょうか。何だか心配です。ちゃんと捕まえてくれないと、わたし達追い出されてしまいます」
「大丈夫だ。私に任せておけ」
不安そうな零を安心させるため、冥月はあまり人には見せない、優しさを含んだ笑みを浮かべた。
時代がかった黒電話はまだ沈黙を守っている。
なかなか頑張るじゃないか。
冥月はほくそ笑む。
なんだかうきうきしてきた。草間は何時まで意地を張って頑張る気だろう?
と。そんな時だった。
昭和の遺跡ともいえる黒電話が、けたたましい音を立てた。
零が駆けつけるよりも早く、冥月が受話器をとる。
「はい、草間興信・・・・・・ふふ、やはり草間か」
意外に電話対応も出来そうである。零は冥月が受話器をとり応対しているのを見、兄からの電話であると判り、台所へと戻る。
「新宿方面に逃げていることは突き止めた?そうか、なかなかやるじゃないか。褒め言葉はいいから教えろと?判った判った・・・・・・」
再び瞳を閉じて、影の場所を再確認。
「新宿御苑の玉藻池の近くに植わっている」
『植わっているぅ!?』
ひっくり返った草間の声が受話器を通して興信所に響く。
「これは推測だが・・・・・・」
足を組み直し、冥月は話を続ける。
「あれは、土恋しくて逃げ出したのではないか?もともと土に埋まっていたというではないか。今も土に植わっている。植物にも心があるというのだから、その方が安心するのだろうさ」
『植物の分際で、ココロ、ねぇ・・・・・・ま、いいや。ありがとな。冥月』
ぶつっ。
携帯が途切れる音。
「どれ。私も行くとするか。零、出掛けるから、留守を頼むぞ」
「はい。冥月さんもお気をつけて下さい。お兄さんの事、よろしくお願いしますね」
軽やかに椅子から立ち上がり、颯爽と事務所を出ていく冥月に、零が手を振る。
盗聴器のスピーカーからは相変わらずノイズと柾弥の声が響く。
『すいませーん、マンドラゴラ、知りませんかー!?』
新宿御苑、玉藻池 側。
冥月は影が捕らえたマンドラゴラの前にいた。
やはりこれは地面に植わっていた。心なしか・・・・・・そう、確かに心なしか、幸せそうな顔をしている。様に見える。写真で見た印象とは少し違うのは、その為だろう。
例えば、木のウロの様に見えていた目の部分が横に細くなっているのも。
例えば、木のウロの様に見えていた口の部分が逆三角に伸びているのも。
上50cmばかりを地上に出して、日光浴をしている。
−こんなものが億単位の金で動かされているのか。
そう思うと冥月は何だか情けなくなってきた。
はぁ、とため息を一つ吐くと、聞き慣れた草間の声が耳に入った。
「おぉーい、冥月ー!」
満面の−寧ろ、悦に入ったような笑顔で草間は駆け寄ってきた。
三十路男の悦にいった顔。うーん、これも見ていて気持ちのいいものではない。
「これで家賃なんてもう心配しなくて済むぜーっ!」
そこから先は、ストップモーションに見えた。
目が横一線になるほどの悦にいった顔の草間がスキップの様な足取りで冥月に駆け寄る。冥月に、というよりもマンドラゴラに、が正解なのだが。
スキップスキップランランラン。スキップスキップランランラ・・・・・・
ぐぎっ。
途中、嫌ぁな音がした。草間が右足のつま先を左足のかかとに蹴躓いたのだ。
危ない、というよりも早く、草間は地面に突っ伏した。
ぼぎっ。
ステキな音がした。
とてもステキな音がした。
恐る恐る草間の身体の下を見ると、マンドラゴラが元の絶叫したような顔に戻り、地上の部分と植わっている部分が真っ二つになっていた。
「あ痛ぁ〜・・・・・・ったったったって・・・・・・」
腹をさすりながら草間は起き上がる。冥月は引きつったまま、草間を見おろしている。
−草間の顔も引きつるまで、そう時間はかからないだろう。
当然、マンドラゴラは現金還元できなかった。
柾弥は真っ二つに割れたハニィを抱きしめ、泣きながらアパートへと帰っていった。なんでも、愛情が湧いたらしくアパートへ連れ帰り何とか生きながらえさせようとするらしい。どうにかなるものなのか不思議だが、コンクリートから生えた大根だって折れても生きているのだから、まあ不可能ではないのだろう。
冥月としては、困る事は無かった。確かに金は有るに越したことは無いが、草間のように赤貧ではなく、潤っている。収入が無ければ無いで構わない、と言えるほどに蓄えがある。
問題は、草間の方である。
デスクに突っ伏したまま、エクトプラズムが口から放出されている状態なのだ。口からは出る言葉は“家賃”とか“立ち退き”とか“路上生活”とか、景気は悪い聞こえも悪いものばかりだ。
零もすっかり意気消沈してしまっている。
仕方が無い。
冥月はまたため息を吐いた。何だか最近ため息が増えてきたような気がする。
「・・・・・・やむを得まい。今月分は払ってやる。これで貸し2つだからな、草間」
「ほっ、本当か冥月っ!」
「このまま路頭に迷われては目覚めが悪いからな」
「冥月・・・・・・お前って・・・・・・お前って・・・・・・!」
涙目になりつつ、草間は冥月の両肩を再び叩く。。
「冥月、お前こそ、男の中の男だ!」
「誰が男だ!!」
冥月の一撃が再び草間に決まる。
やはり、草間の反応は無かった。
取り敢えず草間興信所は、今月何とか生き延びられるようだ。
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【2778 / 黒・冥月 (ヘイ・ミンユェ) / 女性 / 二十歳 / 元暗殺者・現アルバイト探偵&用心棒】
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■ ライター通信 ■
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はじめまして。八雲 志信と申します。
初めての経験で至らぬ点も多々有るかと存じますが、少しでも楽しんでいただけたら幸いに存じます。
またご縁があることを願っています。
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