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<東京怪談・PCゲームノベル>


§デートでございます

 宮小路皇騎は汗だくになりながら走っている。
 普段着でモバイルバックを持っているので、修練のジョギングではないようだ。
 彼がこういう事になっているのはというと……

 つまりアレ。仕事から逃げているのだ。

 大学生でも、財閥御曹司。年度末のお仕事がてんこ盛り。つゆだく、ねぎだく、たまごつきで。メインとなる物が隠れほどだ。大学生の本分とやらがよく分からないとか何とかになりそうな予感。
「ふう、つぎは……うわ」
 追っ手が皇騎を見つけた。
「皇騎様! 戻りになってください!」
「いやだ! 絶対に!」
 追いかけっこ。
 捲くのは5分。しかし絶妙なタイミングに、新たな追っ手とエンカウント。
「なぜだ? おかしい……」
 と、思っても、逃げるのに必死。

|Д゚) えーっと、講演会に参加。遠縁の結婚式に参加。財界人パーティ。あと、……
「勝手に人のシステム手帳見るな!」
|Д゚) たいへんだねー
 皇騎は、いつの間にか走っている小麦色をつかみ……
|Д゚) ……
 次の角で遭遇した、追っ手に向かって投げつけた。
 ぎゃーす! と、叫び声。
 そして、なんとか追っ手をまいて、角を曲がり隠れた皇騎だが……
「皇騎さん?」
「あ、茜さん!」
 ばったり長谷茜に遭った。あかね さぷらいずど ゆー
「あせだくじゃない?」
「あの、じつは……」
「こういう状態は皇騎さんが悪いんだもん……」
 と、今逃げている最中という事を話す前に、茜がため息をついた。
 そうして、彼女は事も有ろうか、携帯を取り出そうとする。
「あああ! や、止めてください! この場は……」
 必死に茜の手を取って止める。
「……」
 むう、とふくれる茜。
「どうしようかな〜?」
 と、いきなりにこりを笑いかける。
 ふと、周りにある木々が笑いかけているようだ。
 茜の笑い顔で、そのまま沈黙中。道はふさがれたままだ。
 この沈黙と時間が皇騎にとってはかなり苦痛である。追っ手に追いつかれかねないのだ。
「えっと、あの、次の日曜日に何でも言うことを聞きますから! 今回は見逃してください! 茜さん!」
 と、かなりせっぱ詰まったよう。
 ――それほど、俗世の宴会がお嫌いな様で……
 ――庶民に分からぬセレブの苦しさって奴?
 謎の精神会話。
「いいよ♪ では、次の日曜日9時駅前集合。ここに連れてってね?」
 と、何かのパンフレットを渡して、茜は道をあけてくれた。
「あ、ありがとう! 茜さん」
 パンフレットを持って皇騎は走り出した。

 そのパンフレットはテーマパークの物だった。


 約束の日。つまり日曜日。
 宮小路皇騎はしっかり休みを頂いて、カジュアルな格好にて人を待つ。実は早起きしてしっかりおめかし、茜のために気合いを入れたのだ。茜もかなり気合い入れてやってくるだろう。何時だって勝負なのだ。
|Д゚) 何、勝負?
 茜は動きやすい格好で現れた。お気に入りのブラウスにジャケットみたいな物を羽織って、ミニスカート、そしてシューズである。何か大きめの鞄もあるが。
|Д゚) ミニスカ、動きやすいのかさておき。
「おまたせー。まった?」
「いいえ、今来たところですから」
 にこりと笑う皇騎。
|Д゚) うそこけ、1時間前に来てた
「?」
「どうしたの?」
「何かが居たような気がするけど……気のせいですね」
 皇騎はきょろきょろして気になったが気のせいと言うことにした。

 電車に乗って、1時間ぐらいかかった。メルヘンファンタジーを舞台にした心和むテーマパークだ。昨今のファンタジーブームにあやかって作られたのかというと、否なのであしからず。中にブーム物はあるだろうが。
「いつも、済みません。余りあえないで……」
「反省しているから良いけど。今日は……」
「はい?」
「思いっきり言うこと聞いて貰うから♪」
 茜の皇騎の腕に抱きついた。
「はい、茜さん♪ 仰せのままに♪」
 お互い微笑んだ。
 一寸だけ、皇騎の方は頬を染めているのだが。
 と、ここに居るのはごく普通のカップルに見えるだろう。


「どういうルートで行きますか?」
 ここのテーマパークはやたらと広い。リピーターにならないと制覇は難しいだろう。
「定番のアトラクションは乗ってみたいけど。既に予約取ってるの」
「あ、並ぶ時間などを短縮するシステムですか」
 そう、結構便利な物があるご時世、進化した物だと感心する。
 昔に、宮小路家にてそのソフトとハード開発していたような記憶がよみがえるが、今は遊ぶために奥に追いやる。
「アドベンチャーボートに……ジェットコースター、ウォータースライダー……ホラーハウス」
「びっくり系と恐怖系ばかりですね」
「だって、思いっきり叫んでみたいじゃない?」
「そうですね」
 もっとも、本当の理由はあえて言わない。
 其れが女の子と言うところか。

「皇騎さん! あれ! あれ!」
 アトラクションで子供のように笑う茜。茜は皇騎の手をずっと握っていた。
 ホラーハウスではずっと、皇騎にしがみついていた。超常現象の仕事をしているくせに、さすがにいきなり何かが現れることは怖いらしい。
 余りスキンシップしていないために、皇騎は茜のこんなにはしゃぐ姿にドキドキしている。
 ずっとどんな生活をしているのか、いつもあえない事が申し訳ないと言うこととか色々思いめぐらしてしまう。
「それほど怖くなかったね。ジェットコースター」
「いきなり出てくるのは怖いのですね?」
「うん、皇騎さんが居ないと入れないの」
 と、笑って茜は答える。
「お昼にしよう、皇騎さん♪」
 と、園内の公園に皇騎を連れて行く。
「お昼はレストランじゃないんですか?」
 茜の大きな鞄の意味を知る。
 お弁当箱だった。二人分が入る大きな容器。そして、大きな水筒。
「はい、皇騎さん」
「おいしそうですね。頂きます」
「お口に合えばよろしいですけど。 ……はい、あーん」
 茜は箸を持って料理をはさみ口元に……
「え? 人が見てるのに」
 赤面してあたふたする皇騎。
 しかし、にっこりして茜は言った。
「いいじゃない。恋人なんだから」
 クスクス笑う茜だ。

 |Д゚) にゃあ
 |Д゚) 良い感じ


 まったりと、散歩やアトラクションを楽しむ二人が最後に乗ったのは観覧車だ。
「世界って広いね」
「?」
「ここから眺める景色は広く感じるし遠く感じる。やっぱりちっぽけなんだなんだなぁって」
 遠くを見て話す茜。
「ですね。それでも私たちは生きているですよ」
 今までは茜先導だったが、皇騎は彼女の手を取り、そして肩を抱いた。
「皇騎さん?」
「いま、ここで。ずっと生きて居るんです。それに、私は茜さんと一緒にいたい」
「皇騎さん」
 一寸驚く茜。
「好きです。茜さん」
「なら約束して」
「はい?」
「ずっと一緒にいるって……。お仕事など忙しいだろうけど、一緒にいるって」
 笑う茜。
「はい。ずっと」
「嬉しい」
 皇騎は茜を抱きしめた。


 最後に二人でナイトパレードを見て、感動してから家路につく。
 しっかり手を繋いで帰る二人は、どこから見てもごく普通のカップルだ。
「今日は皇騎さんの家で泊まりたい」
「はい、良いですよ。その前に、どこか寄っていきますか?」
 二人は繁華街に消える。


 それから数日後。
 皇騎のパソコンにかわうそ?が泳いでいた。
「!?」
|Д゚) やー
「どうしたんですか? 何か様ですか?」
 ウィルスのように動く物だから、ワクチンを入れようとしたが止めた。初戦は
|Д゚) 思い出アルバム進呈
「どこから撮影したのですか? 盗撮はいけないですよ」
|Д゚) 片方から了承済み
|Д゚) 事後承諾
「……」
 そして、かわうそ?はデータだけを置いてどこかに行ってしまった。
「はあ、見られていたのか」
 公園での一部始終。
 抱きしめたところとか、いろいろなところとか……
 其れを見て思わず赤面するのだが、
「後で懲らしめておかなきゃ……かわうそ?を……」
 と、決意する皇騎君であった。

 長谷神社では。
 茜は写真を大事にアルバム納めて、にこにこ笑っている。
「こうして思い出が増えるんだよねw」
 と。
|Д゚) 秘蔵は無い。


END


■登場人物紹介

【0461 宮小路・皇騎 20 男 大学生(財閥御曹司・陰陽師)】

【NPC 長谷・茜 18 女 学生・巫女(長谷家後継者)】
【NPC かわうそ? ? ? かわうそ?】

■かわうそ?通信
|Д゚) ラブラブ? らぶらぶ? 
|Д゚)ノ せんせー! これはドキドキモノですか?!(謎の発言)
|Д゚)ノ せんせー! 砂糖はどれぐらいですか?!(更に謎の発言)
|Д゚)ノ バカップルの勢いになるのでしょうか?

|Д゚)ノ では、幸せになってくれい

 執筆:滝照直樹
 20060326