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<東京怪談・PCゲームノベル>


IF 〜神様と巫女〜


 この世界の人間は、二種類に分けられる。
 神様と、その神様に使える存在だ。
 後者に関しては巫女、もしくは斎とも言い換える事が出来る。
 神様はそれぞれ何かの能力を持ち、何かを統べる存在だ。
 後の半分は神様にお仕えし、共にあるお役目を頂いている。
 何もおかしな事はない。
 全てはそれで上手く成り立っているのだから。
 この世界において彼女、海原みなもは巫女の役目を担っていた。
 使えるべき神様も当然存在している。
 まだ幼く力も精神も未熟な方だが、みなもの大切な神様だ。
 少しばかり、困った人でもあるのだが……。
 それはまあ些細な事である。




「みなもです、ただいま戻りました」
 その日、頼事をすませる為に出かけていたみなもは、帰ってきたと声をかけたのだが返事がない。
「………?」
 大きな鞄を抱えたまま、神様の姿を探す。
 気まぐれで作り替えられる室内は、今朝みなもが出て行った時と同じ状態を保たれていた。
 それっぽいからと言う理由で神殿のように構築された室内。
 均等に並べられた柱と白い壁。
 今朝見た時はやや散らかりつつある部屋の中で、神様はゲームをしていたのだ。
 ゲームと言っても決して遊んでいる訳ではない。
 それぞれ操作をする方法が違うのだ。
 何も使わない人もいれば、道具も使う人もいる。
 みなもの神様の場合はゲームであったと言うことだが、これもおそらく個人的な好みの問題なのだろう。
 ある日突然変わっていたとしても、何もおかしくはない。
「神様? どこですか?」
 子供のような性格で、イタズラが好きな方なのである。
 気まぐれにどこかに出かけてしまったかも知れないし、姿を隠してみなもが探している姿を見て楽しんでいるのかも知れない。
 考えられる事は他に幾らでもあるのだが、みなもにしてみれば何かあったのではという考えも捨てきれない。
「神様?」
 何度も色々遊ばれているのだからもっと疑っても構わないのだが、それが出来ないのがみなもがみなもたる所以だ。
「お使い行ってきました」
 はきはきとしていた声も、少しずつ不安の色が混ざり始めている。
 とにかくもう少し探してみようと鞄を置いた途端、スルスルとその引っ張って行ってしまう。
「きゃっ!」
 スルスルと紐に引っ張られていってしまう鞄に驚いて手を引っ込めはしたが、直ぐに後を追いかけた。
 きっと神様が何かイタズラをしているのだ。
「待ってくださいっ」
 老いかけ始めたみなもをからかうように、もう少しという距離で鞄は動きだし、離れすぎたら止まってしまう。
 そのタイミングのなんと絶妙なことか。
 もっとも、直接引っ張っているのだとすればそれ程大変なことでもない。
 息が上がるほどに引っ張り回されてから、ようやく鞄を捕まえられた。
「はあ、はあっ」
「ただいま、みなも」
「……っ、はあ。おかえりなさ……?」
 言ってしまってから何かおかしいと言葉を詰まらせる。
 やりとりが逆なのだ。
「ひっかかったっ!」
「か、神様……」
 楽しそうに笑う神様にがっくりと肩を落とす。
 こういう方なのだ。
「ああ、たのしい。疲れてるところ早速だけど、開けて見せてよ」
「はい?」
「鞄だよ、お使いの中身」
 楽しそうに早く早くと催促される。
 何だろうと鞄を開けると、中に入っていたのはフサフサとした長い毛のような物だった。
 何かに例えるのなら猫のしっぽのような物。
「かわいいですね、触ってみても良いですか?」
「もっちろん」
 にぱっと笑う神様に何かを感じつつ、フサフサのしっぽへと手を伸ばす。
 ビロードのようになめらかな手触りのしっぽは、しっかり握っていないと手の中から滑り落ちてしまいそうな程だった。
 みなもが持っている、三毛模様の一つだけではない。
 真っ白なしっぽに黒いしっぽ。
 ふわふわのペルシャ猫のようなしっぽまで。
「すごい気持ちいいですね、数も沢山」
「集めてもらったんだ、好きな人が居たって聞いたから」
 どれもしっぽが好きな人が見たら、堪らないような物ばかりだ。
 もっとも何が堪らないのかはみなもにはさっぱりだが、気持ちよさそうだとは確かに解る。
「どれがいい?」
「どれって……?」
 猫のしっぽのような物を使って何をするというのだろう。
 神様が何をしたいかがさっぱり解らないみなもは首をかしげるばかりだ。
「しっぽ、とりあえず選んで」
 まずはそこからだと鞄を押され、みなもの方へと近づける。
「ええと……」
 選ばなければ話は進まないようだ。
 とりあえずと手に取ったのは三毛模様のしっぽ。
「それだね、じゃあ」
 パチンと指を鳴らすとぱたぱたっと元気よく動き出すしっぽ。
「きゃあっ」
 慌てて落としそうになるが、ぎりぎりで強く掴んだ。
「そうそう、そのままそのまま」
 人差し指を立て、くるくるっと空中に円を描くと、しっぽが腕にからみつき袖の中から服の中へと潜り込んでくる。
「な、なに……? っ、くすぐった。あはははは!!」
 完全に奥へと入ってしまうのを防ごうとしっぽを掴むが、するりと手の中から滑り抜けて中へと入ってしまった。
「やっ、あははっ!!」
 両腕を抱きかかえるように自らの体を抱きしめ、ぺたりと床へと座り込み笑いを堪える。
 フサフサとしたしっぽの感触が脇や腰へと触れる度に、くすぐったくて堪らないのだ。
「もうちょっとの我慢我慢」
「が、がまんって……―――っ!」
 涙を堪えつつ神様を見上げる。
 助けてくれるどころか、今のみなもを見て楽しそうに笑っているのだ。
「ひゃあ、あっ、とってくださっっ!」
「やっだよーだ。ああ、おかしい。みなもがこんなにくすぐったがりだったなんて」
 つうっと背中を撫でる感触にとうとう床の上へと転がってしまう。
 恥ずかしいとは思ったが、今のみなもにそれを考える余裕すらなかったのだ。
「きゃ!」
 無理やスカートの下へと潜り込んだしっぽが押しからからみつくように移動し、先端部分がお尻の少し上辺りでピタリと張り付きようやく動きを止める。
「はあ、はあっ」
「そろそろ良いみたいだね」
「……?」
 笑いすぎてぐったりしたみなもの後ろへ回り込み、スカートの中から出ているしっぽを握ってきゅっと引っ張った。
「いっ、ひゃああ」
 掴んだしっぽを、逆毛を立てるようになで下ろされてぞわっとした物が背中を駆け抜ける。
 予想外の感覚にずいぶんと情け無い声を出してしまった、恥ずかしいとは思ったのだがもっと気になることがあった。
 しっぽを触られて、ぞわっとした物を感じたのである。
「あ、あれ? え?」
 座り直してから後ろへと手を伸ばしてしっぽを触った。
 苦もなくつかめたのは、しっぽが動いてみなもの手の方に来てくれたからでもある。
 このしっぽは、みなもと繋がっているのだ。
「えええええっ!?」
「にあうねー♪ かわいいよ、みなも」
 両手でみなもの乱れた髪を直すように撫でる神様。
 いや、そうじゃない。
 良く聞こえるようになった周りの音と、頭の上でぴくりと動いた何かの気配。
「ま、まさ……か?」
 恐る恐る頭へと触れるみなも。
 手を伸ばした先には髪ではない、柔らかい感触のネコミミ。
「ほーら、みなもっ」
 目の前に突きつけられる猫じゃらし。
「にゃっ」
 アレにじゃれつきたい、捕まえたい。
 そうすればきっと楽しいと両手ではしっと捕らえてからハタと我に返る。
 いま、言葉までネコになってはいなかっただろうか?
「か、神様ぁ」
 言葉では否定していても、しっぽや体が勝手に反応してしまう。
「ほら、ほーら。こっちだよっ」
「にゃっ、にゃー」
 好き勝手に動く猫じゃらしに、必死になってじゃれつくみなも。
 夢中になっている間に、思考も何もかもネコの本能に乗っ取られていく。
 上や下へ動く猫じゃらしに追いつき、かぷっと歯を立てると気分が良くなって仰向けに寝転がる。
「よしよし、良い子だね」
「ふにゃあ……」
 喉やお腹を撫でられると本当にネコになってしまったようだ。
 ずっとこのままで居たいとすら思えてくる。
「いっぱい遊ぼうね、みなも」
「ニャア」
 大きく背中を伸ばして、しっぽを動かす。
 効果が切れるのはまだまだ先のこと。
 それまでたっぷりとネコの生活を満喫したみなもが神様にからかわれるのだが……。
 それでも、みなもにとって神様は大切な人なのだ。






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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【1252/海原・みなも/女性/13/中学生】

 →もしも、全人口の半分が神様だったら?
 そして、残り半分がその神様に仕える巫女だったら?

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■         ライター通信          ■
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※注 パラレル設定です。
   本編とは関係ありません。
   くれぐれもこのノベルでイメージを固めたり
   こういう事があったなんて思わないようお願いします。

発注ありがとうございました。
楽しんでいただけたら幸いです。