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<東京怪談・PCゲームノベル>


夜闇に鮮烈



 暗がりの中、前に見える人影。
 見覚えのある姿に小坂 佑紀はふと表情を緩めた。
 忘れはしない。
「あら、久しぶり」
「うお、誰かと思ったら……久しぶり」
「そうね……この前言ったこと覚えてるかしら?」
「あー……缶ジュース奢る、だっけな」
 佑紀はにっこりと笑った。その有無を言わさない強さに相手は、空海レキハは違ったっけ、と表情を固まらせた。
「缶ジュースだけで満足するわけないでしょ」
「そうきたか……! しょーがねーなぁ……何なら満足するんだよ……」
「あら、物分りが良いわね」
 くすっと笑いながらそう言うと、レキハは溜息交じりに笑った。
 どうやら逆らわないほうが身のためだと学習していたらしい。
「それじゃあどうしようかなぁ」
「あんま高いもんは無理だからな」
 念を押すような言葉にわかってるわと佑紀は頷く。
 と、ふっと頭上が暗くなった気がして見上げた。
 きらりと輝く刃が佑紀の視界に入る。
「え」
「!!」
 一瞬何が起こったのかわからなかった。
 瞳に写ったのは、なびく銀色の髪だった。どう見ても年の頃は自分と同じかそれ以上の少女だった。そして片目には眼帯。レキハとは対照的な印象。
 佑紀は自分がレキハに一瞬で腕を引っ張られたのに気がつく。
 そしてそのまま、先ほどの場所にいたならば彼女の攻撃を受けていたかもしれない、と冷静に思う。
 きっと避けることはできただろうけれども、それでもかすり傷くらいは負っていたかもしれない。
「危ないわね、最近こんなのばかり」
「暢気にそんなこと言えるのはさすがだ……」
「何関心してるの、余裕みたいね。とりあえず、何か用? もしかしてまた暗殺?」
 レキハにいつものように言葉を返して、そして佑紀は落ちてきた少女にいつもと変わらない様子で声をかける。
 地に突き刺さった武器、鎌の刃を彼女は抜き、そして佑紀の方を見た。
 じぃっとその視線は足元から頭の先までまじまじと見つめられる。
「あなたは……レキハ、この人は誰ですか?」
 一通り佑紀を見た後、視線を移動させ彼女はレキハに問う。
 レキハは、というと嫌悪あらわに彼女を睨んでいた。
「お前になーんで言わなきゃ何ねーンだよ!」
「そうですか、そうね、あなたに聞いたのが間違いだったわね。私は凪風シハルと言います。あなたは?」
「あたしは小坂佑紀よ。なんで鎌なんて持ってるのかしら、危険でしょ?」
「これは私の……体の一部みたいなものです。巻き込んでしまってすみません、でもレキハの姿を見たらどうしようもなくて」
「それはこっちもだっての。言いつけ破りやがって……」
「それは、お互い様です」
 ぴりぴり、と緊張した空気。
 佑紀は二人が知り合いだということを知り、そして仲が悪いことを感じた。
 そして何か揉め事を起こしそうな予感。
「そうだな、じゃあ決着つけとくか」
「ええ、今日こそあなたを消せるかと思うとうれしいです」
 ああ、やっぱりと佑紀は思う。
 関わらずにいた方がいいのだけれども、ほっとくこともできない。
「待って、私の目の前で何する気なの。もしかして鎌とか刀とか振り回すとか……」
「決着つけるって言ったらそうだろ、当たり前だろ!」
「駄目、そんなの駄目よ。迷惑じゃないの」
 溜息をつきつつ、どうしてこんなに好戦的なの、と佑紀は思う。
 血の気が多いのか、戦うことしかできないのか。
 なんとなくほかの方法を知らないような気もする。
「そんなこと言われてもなー、決着つけねーとなんねーことってあるだろ」
「そうです、あなたにご迷惑をかけないようにしますから」
「そうじゃないの、迷惑をかけないようにって言われてももう迷惑かかってるの」
 いっていることが通じるかどうか、それはおいといて、それでも佑紀は口にしなければなんとなく収まりがつかない。
「あなたの言いたいこともわかりますけれども、これは私とレキハの問題です」
「あんたたちが戦いだしたら、力ずくで止めるなんてできないわ。それは確かね。でもその前にできるなら話したいんだけど、そうね、二人が戦いあおうとしてる理由とか」
「それは一つです。レキハが嫌いだから、大嫌いだから。一緒にこの場で空気を吸ってることも許せません」
 きっぱりと、一息でシハルは言い切った。
 その様子に佑紀は苦笑いを浮かべた。どれほど嫌いかよくよくわかった。
「俺もシハルが大っ嫌いだ! あーもう本当ウザイしムカつくし態度悪いし」
「どっちかというとあんたの方が態度悪いと思うわよ」
「なっ……そんなことねーって!」
「いえ、彼女の言うとおりですね」
 意見の一致、レキハは黙らずにいられない。
 佑紀はシハルの方をまっすぐ見た。何ですか、と問うような視線が返ってくる。
「その物騒なものはしまってくれる?」
「あなたには関係ない事だと思うんですが」
「そうだけど、こういうことほっとけないし。それにまだ奢ってもらってないから死なれちゃ困るし」
「お前……俺が負けると思ってるのか……」
 佑紀はええ、と笑う。勝ち負けがどうなるのかは本当はわからないけれども、なんとなくそう思える。
「……わかりました」
 シハルはしょうがない、といったような雰囲気で構えていた鎌を下ろす。そしてそれを自分の影の中へと落とし込んだ。
 あっさり引いてくれるのね、と佑紀は笑いかける。それにシハルは淡々と答える。
「私もちょっと頭に血が上っていました。あなたのおかげで冷静になれました、ありがとうございます」
「ありがとう、なんて言われる事はしてないわ。ま、せっかく出会ったんだし何かの縁でもあるのかもね」
「あー……ったく、決着つけるチャンス潰しやがって……」
「文句言わないの。いいじゃない、何もないのが一番よ」
 それはそうだけどな、と言いつつもまだ納得できない様子でレキハは不機嫌そうだ。
 そんな彼に、佑紀はにこりと笑いかける。
「いつまでもぶつぶつ言ってるとまた口に……」
「わーかった! 何も異存ねぇよ!」
 前回のことを思い出してかレキハは固まる。どうやら佑紀には絶対服従というの身体に染み付いてしまっているようだ。その様子を興味深そうにシハルは見ている。その視線に気がついて、佑紀はどうしたのかと問う。
「いえ、レキハが先生以外に従うの、初めて見ましたから」
「そうなんだ、へー」
 面白いことを聞いた、というような視線をレキハに送る。すると気まずくなったのか視線をそらせた。どうやらそれは本当らしいな、と思う。
「じゃあ、これからレキハにお茶を奢ってもらおうと思ってるんだけど、来る?」
「え……あなたとは良いかもしれませんがレキハがいるのは嫌なので遠慮します」
「そう、残念ね。じゃあまたどこか別の場所であったらしましょうね」
 こくん、と頷くとシハルは二人に背を向けて歩み始める。
 暗がりの中に姿を消して、残ったのは佑紀とレキハ。
「さて、じゃあ俺も帰……」
「待ちなさい、奢るのから逃げようなんて思ってるんじゃないの?」
「うっ……!」
 何事もなかったかのように帰ろうとしたレキハにぐさっと釘を刺すような言葉。
 図星だったのね、と佑紀は微笑む。
「や、そんなことはない、ないからな! 奢るって!」
「そう、ならいいのよ。さて何にしようかしら。ほら、ちゃんとついてきなさいよ」
 佑紀は数歩歩き、そして振り返って言う。
 しぶしぶとその後ろをレキハがついてくるのがわかる。
 佑紀はまだ何にしようか纏まらない思考の端っこで、シハルのことも少し、思う。
 もう少し色々知りたい、まだ名前くらいしか知らない。
「うん、まぁ……ちょっと楽しそう」
「あ? 何がだ?」
「なんでもない。さ、奢ってもらうもの決めたわよ」
 楽しげな声色でレキハに告げると苦笑交じりの声色でそーですか、と返答があった。
 まだもう少し、このレキハとは一緒にいるのだから、彼女のことももう少し聞けるかもしれない。嫌な顔をするかもしれないけれどもそれは気にしない。
「とりあえずおいしいお茶、あと甘いものは……」
「夜食うと太るぞ」
「たまにだからいいの。余計な心配よ」
 そうか、とレキハは言う。
 そうなの、と佑紀は返した。



 小坂 佑紀と、空海レキハ、そして凪風シハル。
 今の関係は相変わらず。そしてまだ名前くらいしかわからない人。
 佑紀にとってはまだまだ未知である二人。
 次に出会う時、この関係がどうなっているのかは、まだ誰も知らない。
 知るわけが、無い。



<END>



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号/PC名/性別/年齢/職業】

【5884/小坂・佑紀/女性/15歳/高校一年生】


【NPC/空海レキハ/男性/18歳/何でも屋】
【NPC/凪風シハル/女性/18歳/何でも屋】

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■         ライター通信          ■
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 小坂・佑紀さま

 いつもありがとうございます、今回は無限関係性二話目、夜闇に鮮烈に参加いただきありがとうございました。ライターの志摩です。
 色々おまかせも頂き楽しく書かせていただきましたー!佑紀さまらしさをまた出せていればと思っております…!とりあえずこのあとレキハとデートですねデート!(エェェェ)一人でその様子を妄…想像してにたにたしております…(…)
 次に二人と出会ったときどうなるか、これもまた佑紀さま次第です。三話目は二人はでてこないのですけどもね。
 ではでは、またお会いできれば嬉しく思います!