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花見に行きましょう 2006
3月末、ポカポカ陽気の洗濯日和。が、様々な温度の変化で、
桜前線は4月あたりかそれより早くか分からない。
あやかし荘管理人因幡恵美は、洗濯物を干している。嬉璃はぬくぬく縁側でひなたぼっこ。
いつの間にか居る猫の草間焔。
そろそろ本当の春も近い。
あやかし荘にある桜が、桜前線の予想より早くか遅くか分からないが、
少しずつ綺麗な花を咲かせている。
「そろそろあの時期ぢゃな」
「ええ、そうね、嬉璃ちゃん」
ふたりはにっこりと微笑む。
「花見をするべく皆を呼ぼうぢゃないか」
「はい、場所は大所帯を考えて近くの桜並木公園が良いでしょう」
「うむ。今から楽しみぢゃ」
桜は4月9日もすれば満開になるだろう。心躍る良い天気である。
〈予想よりも早く〉
東京の桜前線は、3月末だった。色々天候の変化があったが、4月頭にはすでに満開、ピークに達している。9日はそこそこの晴れ模様と思われる。
「良い天気ですねー」
「ぢゃな」
と、準備にいそしむ因幡恵美に、まったりしている嬉璃だった。
恵美は電話で様々な人と連絡を取り付け、買い出しに出るとか何とか言っている。
「途中で撫子さんに会うと思いますので。少し遅くなります」
「わかったのぢゃ、亜真知やデルフェスがきておるので、花見のことはいっておく」
TV見ながら反応していた。
シュライン・エマは興信所にて恵美からの電話を受けた。
「武彦さん、今年のお花見どうするかしら?」
「競馬のひじゃねーか」
競馬新聞見て、赤ペンを耳に付けている草間武彦。
「現場に迎えるほど余裕無いでしょ?」
苦笑するシュライン。
「そうそう、当たらないんだから」
「いや、今回こそは!」
などといっても、草間の手はジェスジャーにて“OK”みたいなことをしている。
「零ちゃん買い出しに出ましょうか?」
「はい お姉さん」
零が明るく返事する。
「わたし、お留守番〜」
五月はすぴをだっこしてにっこり笑っている。
春の日差しが穏やかで、此処の居候の赤い猫は窓際で眠っていた。
天薙撫子と影斬、因幡恵美は、買い出しのために集まった。
「花見ではやっぱり、保存が利くようなモノが良いか」
と、魚の鮮度を確かめている影斬。
「ですよね、義明君。卵焼きとかでしょうか?」
「佃煮、エビのボイル」
「おせちになるんじゃないかと」
「そうですよね」
計画的に、行楽弁当の食材を買う前には、撫子がこういった。
「あの、実は、こういう事を思っていたんですが。天空剣門下生と合同花見というのは、いかがでしょうか?」
と。
「いいかも? 皆で楽しめるならOKと思う」
影斬はOKのようだ。
「となると場所取りが結構しんどくないですか?」
恵美は不安になっていたが、
「楽しくやるには良いですよね♪」
やる気満々のようだ。
「多分来るとしても、元門下生の裕介さんに、現行の傘だけかなぁとは思うけど、まあ、私から他の子に訊いてみるよ。休み何で、暇をしているだろうから」
影斬は穏やかな笑みをみせた。
幼さが残っていた“織田義明”の笑みではなかったが。エルハンドに似た笑みである。
「大所帯になるから、共同炊事場で大丈夫なのかな?」
恵美は一寸考えた。
食堂用の厨房は余り使っていない。
「かわうそ?さんにお掃除お願いしましょう。うん」
これで、問題なくなった。
「あやかし荘近くで花見。参加したい門下生は必ず連絡すること。抽選で、場所取り兵する。しかし報酬は天薙門下生の手料理付き」
とか、少し茶目っ気のはいった、メールを送りつけている影斬だった。
来る人間は大抵、“力”を持っている門下生ぐらいだったが。撫子の料理は美味いので、それにつられてやってくる人間はいるだろう。
嬉璃と鹿沼・デルフェス、榊船亜真知とエヴァ・ペルマメントは、まったりとDVDの映画を見ていた。
「はなみだよねー」
エヴァが桜餅を食べて言う。
「そうですねー。すばらしいですわ。やりましょう」
「おう、そうじゃった。この日にするのぢゃった」
すっかり忘れていたようだが。
「場所取りはどうされますか?」
デルフェスが尋ねる。
「んーなもん、三下ぢゃ」
けっけっけと笑う座敷わらし。
「其れも可哀想ですね」
「わたくしが弁当を作りましょう」
亜真知が言った。
「エヴァ様、カスミ様やSHIZUKU様と一緒にお花見はどうでしょうか?」
「うん、いいよ!」
デルフェスの問いに、エヴァはにっこり笑う。
「ではわたくしは、カスミ様に連絡しますわ」
うかれ模様のデルフェスはスキップしながら圏内に向かう場所を探していた。しかし途中、何もないところでこけた。
「きゃう!」
こんどは、柱にごつん。
「い、いたいですわぁ」
「大丈夫ですかぁ?」
大曽根・千春がにこにこと、デルフェスがくらくらしているところを助けて上げた。
「ああ、ありがとうございますわ」
まだくらくらしているようである。
「おはなみはいいですよねー。でも、はしゃぎすぎで当日〜いけなくなったら大変ですから気をつけてくださいねぇ」
|Д゚) そーなり
|Д゚) 遠足風邪とかなって泣き見る
千春にくっついていた、謎のナマモノKが言った。
「ですわね。そうですわね……ありがとうございます」
デルフェスはにこりと笑って、携帯から誘いたい相手に電話した。
何故届くか? まだ此処は圏外では?
|Д゚) びびびびび
ということである。
「かわうそ?さぁん。恵美さんから言われたとおりに厨房お掃除しましょうね♪」
|Д゚) うぃ
「何か作るのですか? あ、お弁当ですわね」
「はい〜☆」
デルフェスがぽんと手を叩いて、使われていない厨房を、掃除する事情を理解した。千春はにっこりと笑う。
かわうそ?をモップにするとどうなるのでしょうか? 楽しみですわ。
とか、デルフェスさんはおもったとか、思わなかったとか。
デルフェスはエヴァと楽しみたいので、掃除は小麦色と千春に任せて、スキップして戻っていった。
「場所取りってか? しかも撫子さんの手料理?」
御影蓮也。通称傘は悩んだ。
影斬から合同花見が催されるという。
|Д゚) 傘― 掃除手伝え
とか、同時にナマモノからの電波。
「俺は行くけど、狂華の弁当があるので、それに、其れだけ多かったら俺もを手伝うよ」
と、返事のメールをした。
「ナマモノ、おまえだけで十分だろう」
と、こっちも返信。
つか、どこに受信されるんだ? あいつ携帯持っていたか?
蓮の間には、元の主は居ない。
代わりに、御柳狂華が桜餅を食べていた。
「よ、元気か? 独り暮らしはどうだ?」
「蓮也」
と、狂華は抱きついた。
甘えている狂華。
「寂しかった」
「ああ、余りあえなくてごめんな」
と、蓮也は狂華の頭を優しく撫でる。
誰も居ない、いや、子犬みたいなオオカミが一匹いるだけ。
「れんや、こんにちは」
「ああ、義姉さん」
このオオカミは、九条・真夜。
|Д゚) おもうに、義姉弟とかっていつなったんよ
と、どこからともなく小麦色が訊いた。
|Д゚) いつくっついたんよ。
「何時だったんだろ?」
3人は目を見合わせた。
其れは別のお話ですが。
「それはそうと、花見に行かないのかな? 狂華」
と、切り出す蓮也だった。
「行くよ♪」
「又楽しみましょうね」
「と、言う訳なんですが。麗花さん一緒に行きませんか?」
と、ニコニコと笑う田中裕介。
「え? 私とですか?」
「他に、誰が居るというのです?
映画館の帰りである。
麗花は動物映画を観てぐしぐしないて居るところを何とか隠し、裕介につつかれそうなところを何とかごまかして、一寸落ち着いたところだ。
田中裕介はナマモノ同士なので、電波から受け取ったようだ。
――今の私はナマモノじゃないって……
麗花は少し嬉しそうに笑うのだが
「えっと、うーん。何ですか? ニコニコして! べ、別に私は、好きで裕介さんと一緒に行きたくないんですから! ほら、皆さんが楽しそうだから行くんです!」
彼女もまんざらではないのだが、素直になれない。
|Д゚) ところで、帰俗、いつよん
例のアレが顔を出していた。なんと、麗花のポーチから。
「かわうそ?さん。まだ手続きがありまして……ちょっと……」
かわうそ?に耳打ちする麗花。
そう、メイド魔神に聞こえないように。
と、この二人のほうも平和なようだ。
宮小路皇騎は、メールを見た。
――花見これる? 無茶しちゃ駄目だよ。 茜☆
と、言うメールを確認したのち、
今まで逃げて、溜まっていた仕事をものすごい勢いで片づけていた。
「死、死ねる。でも、この日には間に合わせければ、茜さんが」
|Д゚) そっぽむくとかー
|Д゚) ありそー
|Д゚) 軽い訳じゃないけど
「……おまえも手伝えー!」
どこからでも来る小麦色に式神で攻撃する。
|Д゚)))) ふははは!
からかいに来ただけの小麦色。
本当に何もしない。
「ああ、あと5件……全ての手がかりを10秒以内に」
と、配下に言う。
「無理です!」
「ならクビ」
「休んでください! それ以上は無理ですから!」
「私はやると言ったらやる!」
そう、茜さんとゆっくりしたいから。もうその当日以降、しばらくの仕事は入れられない!
と、仕事に燃える皇騎であった。
天薙撫子と、御柳狂華、因幡恵美、長谷茜、榊船亜真知と、大曽根千春は、土曜夜からあやかし荘の厨房で食材とにらめっこしていた。大人数なので、それなりの量が多くなる。ちなみにシュラインさんは別で作ると言うことに。其処までこの厨房は人が入れないのだ。
一方、三下は既に桜の木の下で場所取り準備をせっせとしている。嬉璃にせっつかれながらの支度だ。
実際近くの公園は、あやかし荘の先祖代々からの私有地扱いらしいので、場所取りは必要ないのだが、弁当を持ってくる前に、シートを広げておく必要がある。それに、かなりの人数になるために困ったことになるだろう。さすがに三下一人で其処まで出来るわけはない。
|Д゚) ほれ、かわうそ? も手伝うから、はやくする
「とっとと、容量悪いのう……」
「ひえええ!」
と、ぺんぺん草の間はいつもの慌ただしさだ。
朝になった厨房は戦場だった。
「えっと、汁物はしっかり汁気を切ればいいかしら?」
「ですよね」
「エビのボイルできましたよー」
「焼き魚も、1、2、3……」
「おにぎり、サラダは当日が良いですね」
揚げ物焼き魚をまず作っていく。日持ちするモノなので。
「チーズやおつまみになるモノも作らないといけないですねー」
|Д゚) にゃー
「はい、ナマモノは三下を手伝って」
狂華はかわうそ?に言う。
|Д゚) うぃー
「あ、かわうそ?さん 三下さんや下準備参加の人にはこれを」
亜真知さんがなにやら小さい箱を手渡した。
|Д゚) あ、弁当
|Д゚) OK
と、かわうそ?は箱を持って去っていく。
「又楽しくなればいいですね」
草間興信所では、
「あの猫さん達はどうして居るんでしょうか?」
草間零がシュラインの手伝いをしながらぽつりという。
「エヴァちゃんに様子訊かなきゃならないよね」
「ええ。大丈夫かしら? あの子」
生き物を育てた(一度だけ植物はあったが)事はない。彼女の情緒の安定として里親になって貰ったわけだが、どうなっているだろうか?
大丈夫よね。嬉璃ちゃんが居ることだし、義明くんたちもいるし、とシュラインは思いながら、ベーコンにアスパラを捲いて、バターで焼く。
相変わらず草間はデスクで寝ている。一緒に猫が寝ていた。焔である。
疲れているのか単に暖かさでうとうとしているのか、のどっちかだろう。
「幸せそうな寝顔」
シュラインはクスクス笑った。
そして、そうっと彼に毛布を掛けてあげた。
〈当日〉
朝が来た。
弁当は今でも作られている(おにぎりなど)
予想人数は20。つーか多すぎ。と、三下は思っている。
休日はまったりしたかったのが嬉璃や亜真知に言われてこんな目に遭っている。
「はああ、僕はどうして」
「三下さん、其処しっかり持って」
と、御影蓮也が言う。
「あ、はい」
「あたしも手伝う〜」
エヴァも何か楽しそうだったので、加わっていた。
「お、結構可愛い人!? ぢゃなく! 手伝いに来ましたー」
天空剣門下生も数人やってきていた。
“力”を持っている門下生だ。
エヴァの可愛い容姿に、ときめいている男もちらほら。
20人じゃなく、37名ぐらいとか思う。正確に数える気なんてさらさら無い。
そして厨房の戦場は激化している。
「おにぎりこれぐらいで足りる?」
「ジュースやお酒は冷蔵庫に入っているから! 勝手に持っていって!」
「焦げないように! しかり見て!」
それを、ぼうっとみている様に見える千春。実は手伝っているのだが、
「大変ですねぇ〜。えっとこれは〜」
全く大変そうじゃない。
彼女の世界だけ理解できないのだ。
|Д゚) ←何か考えているナマモノ
「あれ? デルフェスはどうしたのかな?」
エヴァが首をかしげるのだが、3人の人影が見えた。
「やっほーい」
「今日はお世話になります〜」
と、SHIZUKUと響カスミを連れてきたのだ。
一部男衆が「おおっ」と叫ぶ。SHIZUKUは有名人だからだ。
謎に大きな鞄を持っているデルフェス。
「どうしたの? それ?」
首をかしげるエヴァ。
「其れは秘密ですわ」
と、デルフェス。
|Д゚) ! 何か宇宙の意志を感じる!
と、驚いているナマモノ。
「??」
首をかしげるのはエヴァや蓮也以外にも多かった。
そのあとに、田中裕介と星月麗花、シュライン・エマに零と武彦、五月が、影斬と猫たち、門下生がやってきたのだ。
「今日はお世話になります。お誘いくださってありがとう」
とか、色々挨拶。
「あ、メイド魔神だーおはようございます!」
「こらー! いきなりそのあだ名で言うな! ナマモノ! 貴様の所為だな!」
「いや、私が前に言っていたからアレの所為とは一概に言えない」
と、天空剣門下衆に言われる田中裕介、訂正させる影斬や。
「エヴァちゃん、猫の調子は?」
「うん、とっても可愛くて♪ 大事に育ててるよ」
シュラインとエヴァのまえに拾った猫の会話。猫はというと、3匹そろったので一緒に遊んでいる。悲しいかな、九条・真夜が3匹の標的になっていた。
「あう、あうう。や、やめてくださいー」
子犬が逃げる。
『にゃーにゃーにゃ』
好奇心旺盛。さすが猫。
「ああ、その狼さんいじめちゃだめー!」
エヴァが止めに入る。
「おねえちゃん!」
狂華が真夜を庇うが、一緒に巻き込まれてしまう。
「義明! 笑ってないでとめろよ!」
蓮也が叫ぶが、
「遊んで欲しいみたいだぞ?」
と、笑うだけの影斬だった。
シートを広げて終わったので、
「今度はあやかし荘から飲料運ぶぞ〜手伝ってくれー」
蓮也が言った。
「はい!」
そして色々機材や道具、食事が運ばれてくる、大人数でもこれだけ手際が良ければ早くすむのだ。
「たぶんですねぇ、すぐ無くなりそうですね〜」
とか、千春が言った。
皆に様々な飲み物を渡し、草間やよく飲み食いしそうな人にはまず胃薬を飲んで貰って……、
「お花見会を始めます! 乾杯」
と、立案者因幡恵美がマイクを持って音頭を取った。
『かんぱい!』
と、飲んで食べての色々な会話でもあり上がる。焼き魚とエビのボイル焼きは好評。サラダも色々具の入っているおにぎりもどんどん無くなる。シュラインのアスパラベーコン巻きや鰯の梅煮なども瞬く間になくなっていく。
「お酒おいしいねぇ」
と誰かが言った。
ふと、何度もこのイベントに参加している人は思い出す。
「お父様はゆっくりとお酒をお飲みになってましたね」
と、榊船亜真知が遠くを見た。
「そうですね、いきなりいなくなったので挨拶が出来なかったです。お父様」
「わたくしもですわ」
田中裕介と、鹿沼デルフェスがしょんぼりした。
「そうよね、居なくなったよね。色々お世話になったよねぇ」
シュラインがぽつりという。
考えてみれば、今居るほとんどが、蓮の間にいたあの剣客と関わりがあったのだ。余り深く話はしていない人もいるが。
「彼のことだ、どこかで蕎麦と酒を楽しんでいるさ、」
蓮也がにっこり微笑んだ。
「そうだよね。うん。そうだよ」
狂華がうんうん頷く。
「エルハンドさんは、いつも蕎麦食べていましたね」
恵美が言った。
「お酒にもうるさかったし」
「そうそう、猫がいっぱいになってた」
「其れは影斬が引き継いだ感じだよねぇ」
と、エルハンドの事を思い出す。
何か欠けた気持ちも、桜の舞い散る中でははかなくとても良い思い出だ。
「ところで、亜真知や。寂しいのと違うのかの?」
嬉璃がにやにやと言ってきた。
「……そうですよね。懐いていましたし」
零が言う。
「わたくしは、そ、そんなことないですよ」
と、苦笑する。
「でも、そのうちおじゃましますから覚悟してください」
と、にっこり言った。
既に別れをすましている数名は黙っていた。
「彼のことだ、どこかで此処を見ているかもしれない」
「ああ、そうだと思う」
影斬と草間は酒を酌み交わして静かに言った。
門下生Aは狂華や千春を見てBに言う。
「可愛いよなぁ」
「あ、でも、あのショートカットの女の子は蓮也先輩の恋人らしいぞ」
「えー信じられねぇ」
「何が信じられないんだ?」
AとBに寒気が走った。
後ろに蓮也がにっこりと、しかし少し怒気をはらんで言っていたのだ。
相変わらず真夜は猫に遊ばれている。
「きゃー」
「だめだよー!」
「おねえちゃん!」
狂華が真夜をまた庇ったのだが、猫にダイビングに一緒に倒れてしまう。
何とも賑やかなことだ。
〈お酒とか色々〉
1時間ぐらい遅れて皇騎がやってきた。
「皇騎さん、おそーい!」
茜がぷんすか怒っている。
「ご、ごめんなさい。これ大吟醸追加ですよ」
謝る皇騎。
「あはは、仕事が忙しく、何とか間に合ってきたんだ。起こるな茜」
草間が笑っていた。
「生酒や焼酎のロックもうまいよ」
一寸有名な吟醸酒や焼酎がたくさんあった。
ほとんどが天薙家や宮小路家からの物であり……。
「あ、これ、飲んでみたかった逸品じゃないの?」
とか、酒飲みには楽しし状態だ。
「未成年は飲むなよ! 捕まったら大変だ!」
と、誰かが言う。
しかし時既に遅い人もいるものだ。
間違って飲んだのは狂華だった。
「あうーあついなー れんやー! れんやー!」
と、蓮也に抱きついてゴロゴロ懐いている。
「あついなー! あついー!」
門下生ABCがちゃかしはじめる。
「うるせー! ああ、」
「ちゅうしよう。れんや〜。 ね?」
「きょ、狂華!」
「出来ないの? うう…… きょうかのこときらい?」
涙目になる狂華。
「いや、其れとこれとは違うから!」
慌てる蓮也。
それをみて、慌てる女性陣にそのまま笑いながら、酒を飲む大人と別れる。
「狂華ちゃん、狂華ちゃん、落ち着いてね?」
と、シュラインが言った。
「素敵なお姉さんだぁ」
と、シュラインに抱きついて……懐いている。
「あらま、一寸飲んだだけで」
一寸したハプニング。
まあ、これから起こることに比べれば……。
デルフェスがエヴァとカスミ、SHIZUKUとわいわい話している中、
「キミ可愛いね。いくつなの? 一緒に食べよう」
と、門下生ズ乱入。
「義明さん所の門下生?」
SHIZUKUも
「はい! サインください! ファンなんです!」
どこから情報を仕入れていたのか色紙を持ってるし!
ナンパしている。まさしくエヴァにはナンパ。カスミには
――わたくしのエヴァ様を! カスミ様を!
目が笑っていない、デルフェスさん。
そんなこと、門下生は風邪をよけるようにエヴァと会話している。
――責任者 何とかしなさい!!
デルフェスは影斬を睨んだ。こっちも柳に風みたいに笑っている。
――悪意はないんだ。一緒に楽しめばいいじゃないか?
――そうはいけませんわ! 変な虫が付かないようにするのもわたくしのつとめですわ!
と、さすが神格持ち&神格の肉体を得たゴーレム。テレパシーで喧嘩中(?)
エヴァははじめてみた人々に怯えて、デルフェスに抱きついてきた。
それで、今までの怒りが収まったかのように至福な気分になるゴーレムさん。
|Д゚) 単純
「だな」
|Д゚) 鼻血でてるしw
「? どうかしました? 義明君」
撫子、影斬カップルはまったり中である。ちなみに、桜色の着物を着ている撫子さんと亜真知さまである。桜の散る風景と相まって美しい。
「師範代――! うらやましいなぁ!」
「俺も彼女欲しい」
「私は彼氏だよねー! ああ、茜さんも良いなー」
門下生、浮かれ気味。
「酒は飲んではいけませんよ? カスミ先生が居るんですからね!」
撫子が門下生に注意しておく。
「ですよ、織田君の言うとおりだからね! 先生怒りますよ!」
「はーい。でもさぁ影斬になってても……いえ、ごめんなさい」
何か口を紡ぐ門下生。
それ以降は、エヴァもデルフェスも彼らとうち解けたようだ。
「どうなることかと思いました」
「大丈夫だよ。彼らは」
撫子と影斬は苦笑していた。
皇騎は、眠っていた。お酒をコップ1杯だけだった。それでも眠ってしまったのだ。
いまでは、シュラインさんが持ってきた毛布にくるまり、茜の膝枕で眠っている。
「はやくも、脱落者が2名って言うところでしょうか?」
亜真知様が皇騎を見ている。
「落書きしたくなりますね〜」
|Д゚) お!? 千春酔った?
「のんでませんよ〜」
「こらー 後でどうなっても……でも楽しそうだなぁ」
茜も一寸やる気がありそう。
「だめよ。疲れてるんだから」
シュラインさんが止めたのであった。
「おいシュライン、花びらが」
草間がコップを指さす。
シュラインのコップに桜の花びらが浮かんでいた。
「風流ね」
にっこりと微笑むシュラインだった。
真夜はこっそり狼の姿で酒を飲んでいた。否、なめていたとも言う。
|Д゚) ……ナマモノになりたい?
「そ、そんな、おそれおおい」
真夜が首を振る。
猫たちは疲れて眠っている。
|Д゚) ……
「……」
ナマモノが狼をみているが
「かわうそ? さぁん 遊びましょう♪」
|Д゚) む、しばしまつ。
「あらぁ。他の方も遊びたいと」
千春は、有らぬ方向を指さしていた。
見える人には見える。幽霊さん達。
「幽霊さんとは遊べません! 守護者として天に召すことが!」
「きゃあ! 幽霊が!」
麗花が驚く。
「だいじょうぶですよう」
千春がにっこり微笑むのである。
「そういう問題じゃないデスよー。しっかり成仏か昇天させなきゃー」
茜が酔った感じで言い始めた。
〈コスプレカラオケ大会〉
「メイド魔神様 メイド魔神様」
デルフェスがメイド魔神を呼ぶ。
「だから……その呼び方は……勘弁して欲しいのですが?」
メイド魔神こと田中裕介が苦笑する。
「じつは、コスプレカラオケ大会をしたいと思いまして。しかし、着替える場所が無くて困っていたんです」
失策だった。着替える場所を考えていなかった。
|Д゚) そこで、宇宙の意志。メイド魔神、出番
「おまえか! おまえなのか!」
と、裕介は小麦色のクビを絞める。
――まあ、メイド服の他の服なども用意されて、楽しそうですね
――でしょ? いろいろな女の子のコスプレをみたいでしょう?
――特に全員メイド服とかが私としては嬉しい
と、邪な(?)アイコンタクトがテレパシーのように……。
|Д゚) ……
|Д゚) でー、歌自慢お方
|Д゚) ここらで、カラオケというのはどうでしょう?
「いいな。それ」
「やるやる〜」
「たのしそうですね〜」
と、わいわいと
|Д゚) しかしコスプレ
「え?!」
固まった人多数。
「桜にちなんで、新学期! 制服姿でやりたいですわ! もちろん用意しておりますわ!」
キラキラしながらマイクを取るデルフェスさん。
「さて、最初の方は! 亜真知様どうぞ!」
デルフェスが亜真知の名を挙げた。
「いきなりわたくし!?」
メイド魔神が素早く亜真知に布をかぶせて、はい、でき上がり。どこかの有名女子校の制服を着せ替えられた。
「曰く付きの袴でして、唄わずにいられないものなのですわ♪」
「デルフェスさーん!」
コスプレカラオケの始まりになった。
ノリノリなのはSHIZUKUに茜にまだ酔っぱらっている狂華だ。伴奏は蓮也のギター。
アニソンやら懐メロなどが入り交じって大盛り上がり。デルフェスは有名女子校の制服をきて、エヴァにはブレザー。カスミにはセーラー服を着せたのであったが。
「なんちゃって女子高生?」
とか、男の誰かが言った。多分門下生A。
「なんですって! 若返りも必要なのよ!」
カスミ先生、ご立腹。
しまいには……
「ああ、裕介さん、撫子にもお願い」
「え? ええ?!」
「好きですねぇ。義明君」
これも又やる気満々のメイド魔神に影斬だった。
「あたしは、一寸散歩しようかなぁ……」
シュラインさんは席を外そうとしている、が
「お姉さん♪」
「シュラインさん 逃げるのは良くないですよ?」
楽しみにして色々着せ替えを楽しんでいる零と、犠牲者第一号になった亜真知さまが両腕をがっしりつかんで……。
「あ、あたしはもうそんな歳じゃないし! それに」
「歌唄えばいいじゃないか。上手いんだから」
草間にも期待されている。
哀れシュラインさん、大正時代の女学生の袴姿で唄わされる羽目になりました。
当然のごとく……デルフェスさんは
|Д゚) 鼻血出してる
|Д゚) 萌えすぎで
とのことだった。
こうして、お酒もお弁当も無くなり、わいわい楽しい花見になったのであった。
〈たけなわ〉
そして、花見という名の宴会は、たけなわ。
雰囲気によって眠っている人もいれば、まだ遊び足りない人もいるが、明日を考えて、お開きになった。
夜桜を楽しむモノ。眠った人を解放しているモノ。二人だけの時間を大切にしたいモノ。片づけが終わった後にそれぞれが好きなことをするのであった。
《シュライン》
彼女は片づけの手伝いはそこそこにして、草間と一緒に帰っていく。
今回は草間も酔いつぶれていなかったことも珍しい。
興信所で、桜餅を用意して桜茶を入れる。
「はい、どうぞ」
「さんきゅ。歌、上手かったぞ」
「あまり、唄いたくないのに」
シュラインはまだカラオケ大会のことが恥ずかしかったようだ。
「そういうな。楽しかったんだから」
ニヤリと笑う草間。
「武彦さんはねぇ……」
一寸ため息をつく。
しかし、盛り上がれば其れも又ノリノリになる、其れが人の不思議な性。其れも楽しい思い出となる。
色々あったよね。楽しかったよね。と草間とあったわいのない話をする。
「綺麗な桜だったわ。来年も又楽しめると良いわね」
「ああ、そうだといい。去年も色々あったが。今年も色々あるだろう」
「よね。どんなことが待っているか……」
と、二人で窓を見る。
この周りに桜は植えてないのだが、彼らを追ってきた花びらが舞っていた。
END
■登場人物
【0086 シュライン・エマ 26 女 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員】
【0170 大曽根・千春 17 女 メイドな高校生】
【0328 天薙・撫子 18 女 大学生・巫女・天位覚醒者】
【0461 宮小路・皇騎 20 男 大学生・財閥御曹司】
【1098 田中・裕介 18 男 孤児院手伝い+なんでも屋】
【1593 榊船・亜真知 999 女 超高位次元知的生命体…神さま!?】
【2181 鹿沼・デルフェス 463 女 アンティークショップの店員】
【2213 御柳・狂華 12 女 中学生&禍】
【2276 御影・蓮也 18 男 大学生 概念操者】
【3071 九条・真夜 22 女 守護者】
■|Д゚) 通信
|Д゚) 参加さんきゅー
|Д゚) ドタバタ騒ぎはあまりなく
|Д゚) コレといった事件もなく
|Д゚) 平和なり
|Д゚) んではまたきかいがあればー
滝照直樹
20060410
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