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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


風狸を追え!

  中国の記述に風狸の事を記したものがあるが、実は日本にも風狸がいる。

 その名からする狸の類とは些か異なるらしい。

 どこに生えているのか、ある種の不思議な草を採り、

 樹の枝に止まっている鳥にそれをかざすと、たちまち枝から落ちるという。

 そしてその鳥を餌にして、風狸は生きている。


 これはそんな風狸とアナタの出会いの話――


【草間興信所】
 「フーリの退治?」
 そもそもフーリとは何か、と依頼主に問う草間。
「へぇ、風狸とは風の狸と書きやして…怪しげな術を使って鳥を落としてそれを食っている妖怪なんでさぁ」
 妖怪…またそういう類の話か。僅かに眉を寄せるも、仕事ならば致し方ないと、話を聞く事にした。
「で?その狸退治を俺に依頼しようってのか?というか怪しげな術と言っても鳥を落とす以外は普通の狸と変わらないんじゃないのか?」
「いや、風の狸と書きますが、実際に狸かどうかはわからねぇんでさ。なんせ普通の人間にゃあアイツ等を見ることはできねぇ」
「それなのに風狸とわかるのか?」
「村に伝わる言い伝えでさぁ。普段の風狸は見ることはできねぇが、風狸は大入道や黒坊主になって人を脅かし追い払う」
 里山と風狸が住まう山との境界線を侵せば脅してくると、そういう民話が残っていると言う。
「自分が食う分の獲物を獲るだけならそれは構やしねぇんでさ。問題はそれ以上の事をしてるってトコなんでさぁ」
「人を襲っているとでも?」
「何時頃からか、鳥以外の他の獣や人が、木の上にいたが為に転落させられるってぇことが度々起きまして」
 共存の境界線を越えた行為に、村民が怒り、山に生息している風狸を退治しようと言うのである。
「――なるほど…だがそれは、やめさせるってことじゃ駄目なのか?」
 妖怪の類であるからして、人語を解す可能性は高いし、百の齢を生きるかもしれない。
 しかしこれまでの経験上、妖怪だから退治するというのは気が引ける。
 現に手を貸してくれる者の中にも人外は多い。
「人死にが出る前にやめるんでしたらねぇ」
 これまでに木から落とされた小動物は皆、打ち所が悪かった為に死んでいるのである。
 勿論、普段から木登りが生活の一部になっている動物ばかりだ。
 そしてついに村の職人までが犠牲になった。
 幸い命に別状は無いが、腰を強く痛めた為に当分の間仕事に復帰できそうもないらしい。
「頼んます、草間さん。村のモンの大半は老人だで、風狸とやりあうほどの力はねぇんでさ」
「…わかった。とりあえず動いてくれそうな奴に声かけてみる」

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■草間興信所

 「…風狸、ねぇ…」
 内容を聞き、王道を走ってきたような依頼ね、とシュライン・エマ。
「今更ながらって感じはしないでもないが…まぁ依頼だからな。妖怪なのか、はたまた妖怪を装った何者かの仕業か…何れにせよこれから調べていく」
「…文献及び伝承を対処の基本とするが、それに依存する事は避けたい」
 文献に頼り過ぎて見落としてしまう何かがある可能性を考慮した上で、ササキビ・クミノは発言する。
 依頼人が風狸の仕業と位置づけているも、村に伝わる伝承からそう思っているだけかもしれない。
 調査において先入観は禁物だ。
「それじゃ、少しばかり遠出になるが…二人とも宜しく頼む」
 
■村と風狸

 「術じゃなくて痺れ草と思われる草を使ってるそうよ、武彦さん」
 草を媒介とした術か何かだろうか、と呟いていた草間にシュラインはそう告げる。
 木の上の鳥を落とす時も、風上からその草をかざして、風下にいる鳥をしびれさせて捕獲するという。
「ちなみ外見は猿っぽいって記述もあるわ。まぁ詳細はわからないけれど。とにかくその草があれば誰でも出来ることなのよ。その草が生えているところは風狸しか知らないから、風狸からその草を横取りした何者かの仕業って可能性もあるわ」
 もし、本当に犯人が風狸だったとしても、人に危害を加えるようになるからには、それなりの理由があるだろう。
 だが現時点では文献による記述だけの知識でしかない。
 村人の話を聞かなければ、風狸と諍いがあったかどうかもわからない。
「そのことも含めて、村人には一度しっかりと説明しておくべきね」
 人が怪我をしてしまったことでかなり頭に血が上っていることだろう。
 そんな状態で放っておけば、誰かが山狩りをすると声を上げるだけで、村人が行動を起こすのは明白だ。
「風狸にしろ、人にしろ…次は悪戯では済まないだろう。こういうことは次第にエスカレートしていくものだ」
 山に入り込む準備を進めるクミノは、衝撃緩衝に重点をおいた内蔵装備を用意し、偵察用プローブを放つ。
「聞き込みはする。だが全ての証言は人間視点である事を忘れるべきでは無い。誰しも自らが不利になる証言はしないものだ」
 情報を収集しつつ、その中から確実な事実のみを元として、事件に至る経緯時期事例と対処方法を推測しなければならない。
「小さな村だし、まずは被害者からあたっていこう」
 隣町から診察の為に医者を呼ぶだけで、病院などない無医村のこの村は実に閉鎖的で、迷信が深く浸透しているように思えた。
 そんな空気が、村中に漂っている。
 被害にあったという職人の家に出向いた三人は、職人の奥方に案内され、寝込んでいる職人に話を聞いた。
「……ありゃあ風狸じゃ。間違いねぇ。朝方のことだ。ワシが枝落としとると、急に体が動けんくなって、踏ん張りがきかんようになっての。そのまま落ちてしもうた」
「その時、周囲に誰かいたりしませんでした?」
 シュラインの問いに、普通の人間には風狸は見えん、と答える。
 文献どおりの返答しか返ってこない。
 風狸の仕業と妄信している相手に、どうしたらよいやらと考えあぐねていると、職人はふと思い出したように言った。
「…落ちた時、人かどうかもわからんが、走っていく足音が二つ、聞こえたなぁ」
「音だけか?」
 クミノの問いに、腰を痛めてしまったのでその場から自分ではピクリとも動けなかったといい、その状態でわかったのは視界の外で走っていく二つの足音を聞いたことぐらいらしい。
「二つ…か…」
 一先ず、風狸の草についての話を聞かせ、風狸以外の可能性もまだ捨てきれないことを告げ、三人は職人宅を後にした。
「ササキビさんと武彦さんはどう見る?」
 二つの足音、犯人が複数いるということだろうか。
「足音というからには、それなりに重さのある生き物よね」
「一つは人の可能性が高いかもな」
「人が風狸を追っていたか、その逆か…はたまた二人組みでの犯行か…」
「この村周辺の地図を貰ったから、各現場の位置を確認していきましょ」
 依頼人からもらった村周辺の地図の複製を見ながら、シュラインは被害者が倒れていた場所に印をつけ、死んでいた動物の種類や場所なども地図に書き込んでいった。
「…異変が起こり始めた時期は、詳しくはわからないのよね。それにしても動物の屍骸があったところ…随分距離が近いわね」
「縮尺から見ても…一つ一つの距離が一キロも離れていない。こんな狭い間隔で荒らしまわったのであれば、人間が怒るのは当然だろうな」
 それはあくまでも、風狸が犯行を行っている場合の話だが。
 動物の屍骸を見つけた村人それぞれに、思い出せる限りの詳しい日時や状況を話してもらう必要がある。
「…地図上で見るからに、だいたいの予想はつくのだけど…」
「こういった閉鎖的な集落の場合、よそ者にはみな閉口なところが問題だな」
 村人を取り巻く空気が、クミノに溜息をつかせていた。
 奇異の目。
 眉をひそめ、身内ばかりでひそひそと囁きあう。
 依頼してきたのは紛れもなく村人なのに。
 困っているというのに非協力的で、民間伝承を妄信している。
 簡単に片付きそうな内容だが、村人の協力が殆どないのではかなりやりにくい仕事だと、溜息の数がまた増える。
「――…目撃証言を揃えたら、山のほうへ向かおう」
 人間に聞くより風狸を探して話を聞いたほうが早そうだ、と草間は皮肉った。

■見えぬが故に

 「これで全員の証言は取れたかしら?」
 証言といっても、大半が村の伝承に基づいた内容ゆえ信憑性は薄い。
 ここまで徹底して風狸という存在が根付いているのもまたおかしな話だが。
「…現在二人ほど帰郷している若者がいるそうだが、昼間は大抵隣町に出かけていていつも帰ってくるのが遅いらしい」
「…若者が、二人…ねぇ」
「話を聞ける者には聞いた。若者二名は後回しにして、風狸を探しに行こう」
 偵察用プローブの様子は相変わらず何の反応もないことを確認しつつ、クミノは装備を再確認して山へ赴いた。
 草間とシュラインも同様に、念のためにハンカチを用意し、地図上でポイントの集中する場所をピックアップし、道なき道を登っていった。
「風向きに注意してね、武彦さん」
 別段、しびれ草の匂いを嗅いでしまったとしても死ぬわけではないが、倒れる場所や倒れ方一つで重症という可能性もないこともない。
 何にせよ、注意するに越したことはないということだ。
「この辺りか…」
 草間とシュラインを下がらせ、障気で自身を持ち上げ、大振りの枝へ腰掛けると、クミノは複数機放ってある偵察用プローブに搭載されたスピーカーを通して山全体に響くよう話し始めた。
『――風狸に告ぐ。我々は村の依頼で来た草間興信所の者だ。人語が解せるのであれば出てきて欲しい。話が聞きたい』
「村で騒ぎになっている一連の出来事、アナタの仕業なの?アナタの仕業なら何故急にこんなことを始めたのか教えて欲しいの!」
 シュラインも山目掛けて声を張る。
 山にこだまするばかりで、何もない。
【ありゃおれじゃねぇ】
「「「!!」」」
 足元からいきなりそんな声がした。
 上ばかり向いて声をかけていたので、足元は視界に入っていなかったが為に一同は当然ながら驚いた。
「ど、どこ!?」
【ここだ、ここ。】
 シュラインのすぐ傍の茂みからのそりと出てきたのは紛れもない狸。
「……狸ぃ?」
 どこぞの狸合戦ではあるまいに。草間は説明と違うじゃないかと、訝しげにその狸にみえるものを見る。
 そもそも風狸とは字の如くの外見をしていないはずではなかったか。
「…アナタが、風狸…?」
 何処をどう見ても狸にしか見えないそれは、いかにも、と短い鼻っ面を少し下げ、うなづく様な素振りを見せる。
 ちょっと可愛かったりする。
【これはおれのほんたいじゃねえ。わかりやすいからだをつくってるだけだ】
 風狸が出現したことにより、クミノはいったん木から降りて二人の下に駆け寄る。
「まさかこれほどあっさりお出ましとは、予想外だ」
【むらのモンにたのまれたといったな?】
 こちらの返答はおそらくわかっているのだろう。それでも風狸は姿を出した。
 それだけで一連の騒動の犯人は自分ではないと言っている。
 潔白だからこそ、堂々と姿を現したのだ。
「ああ、山に住む風狸が自分が食う鳥以外のモノまで落とし始めて、最近では人まで落とされたと言って退治してくれと言われたんだが…」
【ありゃおれじゃねえ】
「犯人を知ってる?」
 シュラインの問いに、風狸はあれは人間の仕業だと言った。
「人間の仕業ということは、しびれ草をとられたのか?」
 クミノの問いに風狸はうなずく。
 普通の人間に風狸の姿は見えない。
 能力者であっても見える場合と見えない場合がある。
 風狸は畑を荒らす狸を捕獲すための罠の一つに、うっかりはまってしまったというのだ。
 無論、鉄製の檻の中に餌を仕掛けた罠に捕まるほどマヌケではない。
 というより、最も古典的な方法で罠にはまってしまったのだ。
【たぬきようのワナがあった。おりゃあそれをよけてとおった。そしたらすぐそばにおとしあながあった。】
「それで、その落とし穴に落ちて、草を失くしてしまったのね?」
 風狸は浅くうなずく。
【おちたときにてばなしてしまってわからなくなった。さがしてたらにんげんのこどもがふたりきた。】
 普通の人に姿は見えないのだが、しびれ草は別だ。
 上からライトで中を照らす人間の姿が見えたが、中には風狸しかいないので人間の目には何もいないように見える。
【にげられた、と、にんげんのこどもはいった。そしたらもうひとりがあなのふちにしびれぐさがおちてるのをみつけた。】
 都会に出ても、元々はこの村で育った人間。
 祖父母に風狸の話は当然何度となく聞かされていよう。
「民話もここまで浸透すると恐ろしいものだ」
 溜息まじりに呟くクミノ。
【ヤマとサトヤマのさかいめ。にんげんをおどかすのはそこでだけ。ヤマはおれらのとちだ。】
 山と里山の境界線を侵そうとすると大入道に化けて脅かしにくる。
 依頼人はそう言っていた。恐らく自身もその経験があったのだろう。
【くさはまたとれる。だがにんげんにとられたくさはとりもどさないとだめだ。ぜんぶおれらのせいにされる。】
「…偶然にも風狸の言い伝えを知る若者に、しびれ草をとられてしまった…と」
「しびれ草を手に入れた青年たちは興味本位でまず動物を落とした」
「それがエスカレートして、ついには人を落としてしまった…というところか」
 シュラインとクミノはそれぞれ予想していた幾つかの中の一つに当たった。
 犯人は風狸ではなく、風狸のしびれ草を手にした人間の仕業だと。
「――真相はわかったとして、どう説明する?」
 あの依頼人たちに。
「現行犯で捕まえるしかあるまい。口頭の説明で納得するようには見えなかったが?」
 頭をぼりぼりとかきながら、草間は面倒だが仕方ないな、と、溜息混じりに呟く。
「一芝居、うつとするか」
 一先ず風狸と別れ、村に戻った一行は依頼人宅へ向かった。
 そこで依頼人に話を持ちかけたのだ。
「風狸に罠を仕掛ける、と?」
 依頼人に真実を見せるためにも、何がなんでも依頼人を協力させなければならない。
「そうだ。そこでアンタに頼みたいことがある。ああ、でも他の連中には他言無用だ。どこで風狸に聞かれているかわからないからな」
「へ、へぇ…それで、何をすれば?」
 草間はニッと笑い、用意して欲しいものがある、と告げた。

■幕引き

 早朝、朝もやが山を包み、早々と起きて仕事に取り掛かるものや、食事の支度を始めるものもちらほら出始める、そんな時分。
「…地図を見た上では、周期的に今日ぐらいにまた行動を起こす筈だが…」
 予想はあくまでも予想。
 捕まえてみせると言ったが、青年たちが今日犯行を行わねばそれも叶わない。
「――二人がそれぞれ家を出たわ」
 クミノの偵察用プローブをチェックし、待機中のクミノと草間にそれを伝える。
「探偵さん、いったい何をする気なんです?それに二人って…」
「アンタが見なけりゃ終わらないんだ。ちゃんと手拭いで鼻と口おさえとけよ」
 依頼人は何が何だかわからない。
 今隣にいる草間とシュラインは、視線の先にある木の上を見つめるだけでなく、村の方まで見ているのだから。
 村に何があるというのだろう。
 依頼人はそれが気になって仕方がない。
「来たわ」
『こちらも準備完了。実行に入る』
 クミノが無線でそう伝えてきたと同時に、カーン…カーン…と村の職人が木を切る音と同じ音が山に響いた。
 形ばかりの命綱をつけ、職人から借りた衣服を衝撃緩衝に重点をおいた内蔵装備の上から羽織り、あたかも職人が仕事に復帰したように見せかけて。
「瀬野の息子に豊田の息子…あいつら、何でこんな時間に?」
「静かに」
 声をしのばせながら、立ち上がろうとした依頼人をおさえつけ、草間は静かに様子を見るように告げる。
 茂みに草間たちが潜んでいる事に気づかず、青年二人は辺りを見回していた。
「なんだ、牧村のオッサン大した怪我じゃなかったんだな」
 木を切る音がする方へ視線をやり、ぽつりと呟く。
「どうせならもう一回落とす?今度は死ぬかもよ」
 そんな青年たちのやり取りに思わず叫びそうになった依頼人を、草間は力ずくで押さえ込む。
 依頼人は目の前で起こっていることが信じられなかった。
 否、信じたくなかった。
 村の青年が手に草を持っている。
 その草を風下に向けてかざしている。
 木を切る音がやみ、代わりにドサッと地面に何かが落ちた。
 一部始終を依頼人に見せ、草間は押さえつけていた手を放した。
「ぉ、お…お前らああああああああああああッなんてことを!!」
 赫怒した依頼人が青年に掴みかかる。
 突然出てきた村の者に、驚き逃げ出そうとした所で、草間の拳が鳩尾に埋まる。
「手加減してやってるんだから感謝しろよな」
 一人を行動不能にしてから、依頼人と取っ組み合っている青年の関節を固め、地面に突っ伏す。
「ちくしょう!何だってんだ!誰だよお前ら!!」
「やかましいぞ」
「………なんて事をしてくれたんだッ!!お前ら!」
 脱力してその場にへたり込みながらも、肩は怒りに震えている。
 そんな依頼人の肩に触れ、シュラインはささやかな慰めの言葉をかける。
「しびれ草、返してもらうわね」
 青年が手にしていた草をとり、ハンカチにそっと包み込んでポケットにしまう。
「――成功したか?」
「勿論。ササキビさんは大丈夫?」
「特に問題ない」
 それほど多く吸い込まなかったので、地面すれすれで障気を制御し、軽くしりもちをつく程度で済んだという。
「こいつらの処遇はアンタとほかの村人に任せる。ただ…風狸が犯人でなかったことだけはキチンと伝えて欲しい」
 草間の言葉に依頼人は静かにうなずいた。
 そんな中、シュラインは辺りを見回り、風狸の姿を探した。
【ここだ。にんげんのねえさん】
「今度も狸なのね。はい、約束どおり…草を取り返してきたわ。これで合ってるわよね?」
 ハンカチをそっと開き、中に包んであった草を風狸に渡す。
 風狸は草を眺め、狸の顔でにやっと笑った。
【あってる。ありがとうな、ほかのふたりにもつたえてくれ】
「今度は落とさないようにね」
 踵を返す風狸に、苦笑交じりにそう告げる。
 すると風狸は狸の姿を解き、別のものへ変化していく。
【ああ、きをつける。ありがとうな】
 一瞬のことだったが、透けたその体は文献が示すような具体的な姿ではなく、よく確認しようと目を凝らすも、すぐに見えなくなってしまった。
「本当に、人間には見えないのね」
 やや残念そうに呟くシュラインは、風狸が消えた方向を暫し見つめた後、草間たちのところへ戻っていった。

 真の姿を知るということは、妖かしにとっては力を奪われるも同然のこと。
 探究心から少し、本当の姿を見てみたいと思ったが、かえってはっきりと見れなくてよかったのかもしれない。


 あとは文献を見て、こんな姿か、あんな姿かと想像するとしよう。
 


―了―
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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【0086 / シュライン・エマ / 女性 / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員】
【1166 / ササキビ・クミノ / 女性 / 13歳 / 殺し屋じゃない、殺し屋では断じてない。】

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■         ライター通信          ■
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 こんにちは、鴉です。
【風狸を追え!】に参加下さいまして有難う御座います。
結果はお二方の推理の範疇となりました。如何でしたでしょうか?
結局の所風狸の姿をはっきり確認することはできませんでしたが、
またどこかで会う事もあるかもしれません。

ともあれ、このノベルに際し何かご意見等ありましたら遠慮なくお報せいただけますと幸いです。
この度は当方に発注して頂きました事、重ねてお礼申し上げます。

<追伸>
※すみません、とんでもない誤字がありました!本当に申し訳ありません。
一度納めたものですが、改めてお手元にお届けいたします。
ご迷惑をおかけしてまことに申し訳ありません。