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<東京怪談ウェブゲーム アンティークショップ・レン>
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オーパーツ! 〜2〜
------<オープニング>--------------------------------------
「曰く付き」の品物ばかり扱うアンティークショップ・レンで手に入れた、奇妙な物体「オーパーツ」。
何の気なしに、それを買い上げたのだが。
それは、世界存亡の危機の始まりだった。
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「まず…謝らせて欲しい。申し訳ない。君がこんな事に巻き込まれたのは、全て私のミスのせいなんだ…」
クミノの目の前まで来ると、黒衣の女はぺこりと頭を下げた。
彼女の背後に控えた、巨大な飛竜に似た生物兵器(これが先程、光弾で蟲を攻撃したらしい)も、同じような動作をする。クミノが普通の少女だったら、可愛らしいと思っただろうが、少なくとも今はそれどころではない。
黒いラバー素材のようなコートを纏い、顔の上半分を、例の「オーパーツ」に似た素材のゴーグルで覆ったその女は、九頭神・零(くずかみ・れい)と名乗った。ちなみに背後の飛竜はハイユラというらしい。
「いや。こちらこそ、助けてくれてありがとう」
クミノにしては、かなり愛想良い態度で接する。この訳の分からない事態の顛末をこの女が知っていると言うなら、最大限の情報を引き出さねばならない。
「でも、事情は聞かせてもらいたい。あの二人組は、私が手に入れた『オーパーツ』を寄越せと言ってきた。一体、あれは何なんだ?」
クミノはじっと女を見る。
ゴーグルのせいで分かり難いが、微かに顔を顰めた気配が伝わって来た。
「何から…話せば良いものか。まず、この時代で言うところの『超古代文明』ってヤツの存在を理解してもらわないと、話が進まない…」
いささか苦しげに、零が言う。クミノの目が細められ、鋭い光を帯びた。
「超古代文明…ムーとか、アトランティスとかいう、アレか?」
軽いジャブを繰り出しながら、クミノは密かに通信機器を作動させ、障壁内部に取り込んだ、零も含む存在のデータを、自宅の機器類に転送し始めた。
もし。零が、これからの会話で嘘をつけば、それはデータの食い違いとして即座に弾き出される。
信用に足る人間か否か、これで分かる。
だが。
…
… … …
対象・人間型生命体、並びに竜型生命体、詳細分析不能。
データに存在しない性質のフィールドにより、情報防御が施されています…
…
表情には出さなかったが、クミノにはいささか驚くべき結果だった。
これでは、兵器類は兎も角、零自身の事柄について誤魔化される可能性もある。
その時、零が何かに気付いたようだった。
「…ハイユラ。君も防御フィールドを切って。いいから」
竜のような生き物は渋ったように見えたが、結局従った。
「遠慮せず、存分に我々を調べてもらって構わない。今は、君の信頼を得る事が第一だ」
零は障壁の効果を見透かされて内心動じるクミノに陰りの無い笑顔を向けた。
…
人間型生命体、解析可能。
…種別・人類、ただし未知種。現生人類との遺伝的相違29・6%。
竜型生命体、解析可能。
…種別・人工生命体。口腔奥部並びに頭部突起部位下に生体光学兵器搭載を確認…
体内に反重力飛行器官の存在を確認…魔力感応器官の存在を確認…。
クミノが質問する前に、零は話し始めた。
「この私、九頭神零は、本来この時代の人間ではないんだ。人類ではあるが、君たちとはいささか種類の違う人類…この時代の知り合いは『旧人類』と表現していたかな」
…データと合致。
「超古代文明、ね。私が今まで耳にした説では、一万五千年も前に滅亡したって話だが。あなたは、そこの人間なのか? なぜ、ピンピンして生きている?」
「滅びた時期は、確かにその通り。私は、故郷の王国…この時代では『ムー』と呼ばれる文明が滅亡する直前、その文明を復活させる目的をもって、海の底の遺跡に封印されたんだ。お陰で、こうして生きている。旧人類は、大体二千年から四千年程度生きるんだが、それより永い時を渡るにはそれしか無かった」
…長命遺伝子の存在を確認。データと合致。
「この銃や、あの連中が使っていた銃は…その古代文明の技術を使ったものなのか? あの連中も旧人類という訳か?」
クミノは零が先程投げて寄越した銃を掲げて見せた。零が頷き、次いで首を横に振る。
「確かに君が持ってるそれは、ムーの技術で製造されたものだけど、あの連中のはどこぞの遺跡から掘り出したオリジナルをコピーしたものだ。だから不完全でね。あの連中も、一応能力者だけど、旧人類って訳じゃない」
…解析データと合致。
「弾丸が、高密度のエネルギー弾だった、ようだけど…」
「私は、この時代の人に説明する時、『アストラルガン』という言葉を使っている。ムーの文明は、この世界で言うところの『魔法科学文明』というやつでね。当然、武具や兵器類は霊的な存在にも対応するようになっている」
…データと合致。
「この部分で、モードを切り替えられる。マシンガンモード、レーザーモード、ショットガン、シングルアクション、ダブルアクション…といった具合にね」
…データと合致。
「属性設定も可能。聖、闇、火、水、雷、風、地、そして無属性、という具合」
…データと合致。
「私が使っている、こういう直接攻撃タイプの武器もあってね。これは、『アストラルアーム』と呼んでいる。こちらの武器と違って、これは刀身に当たる部分に攻撃用のエネルギーを充填することで、斬撃力を生み出しているんだ。持ち主の精神とシンクロするからね、腕が上がれば攻撃力も上がる寸法」
…データと、合致。
クミノは質問を変える。
「さっきの、あの蟲のような化け物は?」
ちらりと、零の背後に忠犬のように控える飛竜型の人工生命体を見る。
「あれは…このハイユラもそうだけど、君たちの言葉で言うところの『生命工学』によって作り出された、戦闘用の生き物だ。一般的には『生体兵器』と呼ばれている。まぁ、この子は私にとって、そんな簡単なものじゃないけどね。第一の仲間だ」
嬉しそうに、竜が声を上げる。零は竜の巨大な頭を撫でてやった。
「あの生き物は、多分どこかの遺跡の中で眠ってたのを掘り起こしたんだろう。ああいう甲殻獣タイプは、主に遺跡のガードとして使われるからね。普通の生き物と違って、生体兵器は完全にコナゴナにされない限り、『修理』して『再起動』させられるから…」
…データと合致。
「眠っているなら、眠らせたままにしてやれば良いものを。可哀想に、死の眠りから無理矢理呼び戻されて」
ぽつり、と呟いた零の一言に、クミノは妙な感覚を抱いた。自分でもよく分からない感覚。
「あなたは、さっき、あの銃を使っていた連中が旧人類では無いと言った」
クミノの言葉に、零が頷く。
「では…旧人類でもないのに、ムー文明の産物を使うあの連中は、何者なんだ?」
「さっきも言ったように、彼らはこの時代の人間だ。ただし、旧人類の文明を我が物とし、世界を自分たちの支配下に置こうと、本気で考えている。色々調べた結果、本格的に活動し出したのは、ここ十年くらいのようだね」
クミノが目を細めた。
「では…その旧文明の力を欲しがる連中が、何故こんな物を欲しがったんだ? これは、一体何だ?」
いよいよ本題。
クミノは、「オーパーツ」を手元に取り出した。
「簡単に言うと…それは、ある超破壊兵器を起動させるための、キーパーツなんだ。幾つか存在するが、それが最後に残った、そして最も重要なもの。それが無ければ、超破壊兵器は起動出来ないはず、なんだが」
零の口調が重苦しいものになって来る。
クミノは、最初これを見た時に感じた、何か大きなものから引き剥がした一部、という感想が正しかったことを知った。
「キーパーツ…これをその超破壊兵器とやらに嵌めこめば起動するという訳か。しかし、最初から不思議に思っていたんだが、そもそもこれは何で出来ている? 石でも金属でも無いようだが?」
くるくると手の中で弄ぶ。
「…この時代の言葉で上手く説明するのは難しいんだが…それは魔法的な技術も使った、金属・石材・セラミック等の、全ての性質を備えた特殊素材だ。生きている石、とでも言えば良いのかな。劣化現象を排した、素材自体が事故修復機能を備えたものでね。見ての通り、一万年以上の時を越えて劣化せず残っているだろう?」
…データ、合致。
この、昨日どこかの撮影所の小道具用スタジオで作られたような物体が、一万五千年以上前のものだとは、到底信じがたいものがあるのだが。
「この、透明な配線みたいな部分は?」
「見た通り、大部分配線なんだ。記憶装置もあるけどね。データの移動経路を示していて、幾つかのパーツを経由した情報を統括して、最終的に、この時代で言うメインコンピュータに当たる部分に起動の指令を下す。まさに、最後のキーなんだよ」
…データ…合致。
「では…最後の質問。その、『超破壊兵器』とは、具体的にどんなものなんだ?」
零は僅かな間を置いた。
「…確か、旧約聖書、だったかな? 『メルカヴァ』という『神の戦車』が出て来るだろう? あれさ。この記述ってきっと、あれが形を変えて伝わったものなんだろうな…」
「『メルカヴァ』?」
「見た目はね、恐ろしく大きな、空飛ぶ船、みたいに見える。実際には、無数の兵器が搭載された、空中要塞みたいなものだよ。生体兵器を含め、あらゆる武器が搭載されていると言って良い…」
「あらゆる? 具体的には?」
「最大のものは…連鎖的に核融合爆発を引き起こす『融合砲』か…それとも、一国を覆う程の高電磁波の嵐を引き起こす…『虹雷』だったかな…地殻を貫いて、地球の核そのものを刺激してスーパープルームを連鎖的に発生させる『湧竜』というのも忘れちゃいけないな」
流石に。
いやクミノだからこそ、背中に冷たいものが走る。
「これらをバカスカ撃ち合った結果…我々の文明は滅んだんだ。『メルカヴァ』は、かつて我々の戦争で使われた破壊兵器なんだよ…」
零は、はぁっと溜息を落とした。
「馬鹿馬鹿しい話だよ。何だって、わざわざ前の文明を滅ぼしたシロモノを再利用しようだなんて考えたのか。そんなもの、どう考えても扱い切れる訳が無い…」
全くだ、とクミノは内心で吐き捨てた。
「…これで、信じてくれたかな?」
零の言葉に、クミノは頷いた。
通信機器をオフにする。最早、確かめる必要も無い…。
「でも、具体的に、超破壊兵器の外観が分からないと困るな…」
何気なく呟いた言葉に、零が頷いた。
「…映像資料なら、私が拠点にしてる遺跡に残っている。超古代文明の話も、直接見た方が納得行くだろう。これ以上立ち話も何だし、良かったら来ないか? そのキーパーツについての話もゆっくりしたい」
君が、今ご自宅に戻るのは危険だ。零はそうも付け加えた。
クミノは頷いた。確かにその通りだ。
「あっと…遺跡に入るには、コレが要るな」
零が、何も無い空間をまさぐって差し出したのは、例の不思議な物質に近いが、色が白に近い、一種のゴーグルのようなものだった。
「装着型思考機械っていう物なんだ。色々と便利でね。それに、遺跡に入るパスコードを転送するから」
クミノが装備すると、何とも奇妙な感覚と共に、視界が昼間のようにクリアに見え出した。まるで眠りから覚めた時のような、意識が広がる感覚。
「大丈夫? 最初はヘンな感じがするけど、君なら向こうに着くまでに馴れると思うよ。さ、乗って」
ハイユラの背に、クミノは零とタンデムでまたがる。
巨大な翼が夜を打ち、二人は世界の命運を賭けた作戦会議の場へと向かった。
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
PC
【1166/ササキビ・クミノ(ささきび・くみの)/女性/13歳/殺し屋じゃない、殺し屋では断じてない。】
NPC
【NPC3820/九頭神・零(くずかみ・れい)/女性/15000(?)歳/復活を託された王族】
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■ ライター通信 ■
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こんにちは、愛宕山ゆかりです。「オーパーツ!」第2回をお届けいたします。
今回は、遺跡に入る関係で、「装着型思考機械」と「【零の遺跡】パスコード・レベル2」を進呈いたします。前者はクミノちゃんの好みっぽいかなと思っておりますがいかがでしょう?
さて、第2回目では古代文明関連の説明に終始しましたが、それっぽい感じをお伝えする事が出来たでしょうか?
第3回目では、超破壊兵器メルカヴァ(元々はそういう名ではないですが、便宜的に)の更に詳しい性能などをお伝え出来ると思います。ムーの遺跡の描写も出て参りますので、もう少し具体的な描写は次回をお待ち下さいませ。
それでは、第3回目でお会いしましょう。
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