コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<東京怪談ウェブゲーム アンティークショップ・レン>


オーパーツ! 〜3〜

------<オープニング>--------------------------------------

「曰く付き」の品物ばかり扱うアンティークショップ・レンで手に入れた、奇妙な物体「オーパーツ」。
何の気なしに、それを買い上げたのだが。

それは、世界存亡の危機の始まりだった。

------------------------------------------------------------


東京湾の一角、奇妙な岩礁のように見える場所が、零が住居として使用している遺跡の入口だった。

クミノと零を乗せたハイユラが近付くと、装着型思考機械を通じて、クミノの頭の中に奇妙な合成音声のようなものが響いた。
『…レベル2までの進入コードを確認。進入を許可します』
巨大な岩が動き、艦隊が隊列を組んで進入できそうな面積の進入口が開く。ハイユラにまたがったまま、二人は遺跡内部に進入した。

内部にしても、大概の物事にはいい加減驚かないはずのクミノが呆気に取られるほどの馬鹿デカさだ。まるで、人間ではなく、途轍もない巨神のための建造物のような。
遺跡を形作る材質そのものも、例の「生きている石」だ。色彩に変化はあるが、床や天井にはあの透明な物質で配線のようなものが引かれ、その中を常に様々な色彩の光の塊が走り回っている。あちこちに、恐らくムーの美術様式によるのだろう装飾が施されている。
幅が百メートル前後もありそうな回廊を進むと、そこここに、クミノを襲ってきたような昆虫のような殻を持つ巨大な生き物が悠然と動いていた。まるで見回りでもしているかのようだ。中には、翅を持ち、隊列まで組んで飛行するものさえいる。

これは、召喚武装に使えるな。
クミノは何種類かの生体兵器に当たりを付けた。

ハイユラに乗ったまま、家一軒くらいありそうな巨大な扉を潜ると、奇妙な機械と机や椅子の類がが多数設置された空間が広がっていた。
部屋、と表現すべきかも知れないが、あまりの巨大さにそれが間違いのように思えて来てしまう。

「さて、と。今、ドローンにお茶でも持って来させ…」
「結構。それより本題に入ってくれ」
立体映像を投影する機器類を、主に思考機械を通じていじりながら椅子を勧める零に、肝心の話題を促す。このような状況で、あまり茶を啜る気分にはなれない。
零はちょっとだけ肩を竦めると、彼女の前にある映像機器を起動させた。

ヴン…と鈍い音と共に映し出されたのは、異様なくらい滑らかなで有機的な、生物にも似た外殻を持つ、奇妙な形の、恐らくは船と思しい物体だった。ただし、水ではなく空中に浮いているが。
「これが…超破壊兵器。全長22.2km、最大幅11.4km、全高8.1km。総重量推定5000億t以上…」
装備した思考機械を通じて、クミノの脳裏にデータが流れ込んで来る。
現実感がおかしくなるような巨大さ。正直、超重量が空中に浮くのがいささか信じ難い。今まで色々な相手と戦って来たが、流石にここまでバカでかい相手はそういなかった。

「…入口が、無い様に見えるが? 乗り込んで動かすのかと思ったが、完全自律型か?」
まるであらゆる方向に自在に動くカメラで撮影しているような、その超破壊兵器の映像に出入りする部分が見当たらず、外殻が完全な一枚板のように見えることに、クミノは気付いた。
あらゆる兵器を搭載していると言っても、砲台らしきものも見当たらない。ぱっと見、恐ろしく巨大だが、ただ空に浮いているだけの奇妙な物体だ。一体、どうやって敵を攻撃すると言うのか。

「見ててくれ」
思念で機械を動かし、零が次に見せたのは、起動する超破壊兵器の映像だった。
「!?」
この世に存在するものなら、大概の兵器は見てきたクミノも、ぎょっとするような光景だった。
超破壊兵器の表面が、まるで水面のように揺らぎ、そして引っ込んでいたカタツムリの角が伸びるように、曲線で構成された砲身が突き出した。その先から閃光が迸る。
爆裂。
周囲が光に焼き尽くされた後も、超破壊兵器は傷一つ無く空を漂っている。

「超破壊兵器の外殻というのは、単に堅牢な物質だ、というだけでは無いんだ」
零の説明と同時に、数々の詳細な資料が、クミノの脳裏に流れ込んで来る。
「分子操作技術と空間操作技術を駆使し、通常表面は切れ目のない一体構造になっている。出入り口は搭乗員が乗り込む場合だけ開き、それ以外の場合は『存在しない』。兵器類も、今見てもらった通り、必要に応じて、内部から表面に『浮上する』形になる訳だ…」

よくもまぁ、ここまでにしたものだ、とある意味クミノは感心する。
旧人類という連中は、余程のマニア揃いに違い無い。零は何となくソレ臭いし。
しかし。

「内部に搭乗員が存在しない状態で入口を閉じた場合はどうなる? この船は人工知能を搭載して、搭乗員を見分けるのか?」
手元に取り出したキーパーツを、クミノは改めてしげしげ眺める。
「そういう事。搭乗員は、それぞれ持ち場に対応するパーツを所持し、それによって入船許可を得るんだが…その、『キーパーツ』は、この船の最高司令官と見做される者が所持するもの。それが組み込まれなければ、超破壊兵器は起動しないって訳だ」
「…なるほど」
「そればかりか…この船は、ある意味生きていると言えてね。単なる人工知能を越えた、神の如き知能を持つ。唯一、キーパーツの所持者が、この『世界を滅ぼす船』を自在に動かすことが出来る。『滅びろ』と命令すれば、自壊システムが作動して、超破壊兵器は自らを完全に滅して時空の渦の彼方に消え去るだろうね」
クミノは目を閃く。
「すると…キーパーツを持った人間が搭乗した上で、自壊命令を下せば、カンタンに壊せる、という事なのか?」
零は頷く。
「そう…だが、カンタンには行かない。超破壊兵器を手に入れた側も、その事を警戒はしているからね。忍び込んでキーパーツで超破壊兵器内部に進入して、『壊れろ!』『脱出!』『ドカーン!』という訳には行かないだろう…」
お手上げ、というように肩を竦める。

クミノは、鋭い目で零を見やって、ある質問を口にした。
「では…超破壊兵器ではなく、この『キーパーツ』を破壊すれば…どうなる? これが無いと、動かないのだろう? 超破壊兵器は、永遠にただのガラクタになるのではないか?」
途轍もなく巨大なガラクタだがな、と付け加える。

ところが。
零の答えは否、だった。

「そのキーパーツが無くても…恐らく、あと十年以内に、連中は超破壊兵器を起動させるだろう…」
どういうことだ!? とクミノは詰め寄った。
機械に手をかけ、記録の中で飛翔する船を睨みながら、彼女は重い言葉を落とす。
「雑な言い方をすれば…『合鍵』を作るのさ。キーパーツのコピーを作り、それで起動させる…本来、大変に困難なんだが、出来ない訳ではないんだ。それどころか、最初のうち連中は、そうやってあの船を動かそうとしていたんだよ。その内、『キーパーツ』が現存する事が分かり、連中はそれを手に入れる方針に切り替えた訳だ」
当然ね、と零は微かに首を振った。口元に苦い笑み。
「それに、そのキーパーツは特殊な造りでね。ほぼ、破壊不能、だ。どこかに封じる事は出来るんだが…」

…。
…本当に…旧人類って連中は徹底したマニア野郎だ…
零は否定するかも知れないが…少なくともコレを造ったヤツがそうでないとは言わせない…。
クミノは頭痛をこらえるかのように、目の間を揉んだ。

だが、頭を抱えてばかりもいられない。

クミノは、ほんの僅かに躊躇した後、口を開いた。
「…思い付いたことがある。しばらくの間…私を信用してくれないか?」
零が、何かに驚いたように、ふっとクミノに目を向けた。


ほぼ、丸一日の後。

「…まさか、君の方から接触して来るとは…いやはや、意外だったが」
クミノの周囲を取り囲むのは、つい先日倒した黒服に似た格好の男たち。所謂エージェントと呼ばれるような者たちであろう。

目の前に立っているのは、存外若い風貌の、眼鏡の男。
にこやかそうに見えるが、戦場で精神を病んだ人間など腐る程見てきたクミノには、その男の孕む闇が冷たい湿った空気の如くに感じ取れた。
こいつが、この組織の主だと言う。
告高(つげだか)、と男は名乗った。

「あなた方の、探している物を持って来た。こいつだろう?」
掲げられた華奢な手の中で、光る…「オーパーツ」。

東京湾の沖合い、一般に名が知られない島に、「組織」の拠点の一つがあった。
岩礁を削り、その巨体を露わにさせたのは、紛れも無く、零の遺跡で見たあの巨大な船。
いや。
この島自体が、巨大な超破壊兵器の上に蓄積したサンゴで出来ているようなもの。
クミノは今、超破壊兵器そのものの上で、「組織」と対峙していた。

海風が、クミノと告高の間を、渦巻きながら通り過ぎた。


□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

PC
【1166/ササキビ・クミノ(ささきび・くみの)/女性/13歳/殺し屋じゃない、殺し屋では断じてない。】

NPC
【NPC3820/九頭神・零(くずかみ・れい)/女性/15000(?)歳/復活を託された王族】


□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■         ライター通信          ■
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□

こんにちは、愛宕山ゆかりです。「オーパーツ!」の第三回をお送りします。
とうとう敵陣に乗り込んだクミノちゃんに、防具として「護りの輪」と「パーソナル・エアポケッツ・システム」を進呈します。

さて、いよいよ「超破壊兵器」とご対面…と言うか、超破壊兵器の上に乗っかって、敵のボスと対面ということになります。次回でいよいよ超破壊兵器の起動、となる訳ですが、同時に「組織」の詳細も織り交ぜる予定です。
最終決戦がどういう形になるかは、大体私の中で固まっているのですが、クミノちゃんの行動次第では変わるかも…とも考えております。どうぞお楽しみに(笑)。

では、次の最終回でお会いしましょう。