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<東京怪談ウェブゲーム アンティークショップ・レン>


温泉壺 本番?

------<オープニング>--------------------------------------
 壺が泣いている。
「ああ、泣かない。泣かない」
 と、碧摩蓮が壺をあやしている。
 何故そんなことになったのか?

 原因は分かった。草間の手により。
 壺に住んでいる精霊が泣くといろいろな効果を持つ温泉をわき出すということ。
 しかし、涙腺がもろいのか、一寸したことでも泣くそうだ。
 こんな事では湯あたりしてしまう。
 精霊はとても可愛い女の子みたく、例の小麦色の好みらしい。

 この魔境とも入れるアンティークショップでの、騒がしいところで、この壺を飼うのは無理なのかもしれない。
「こわい……です……ぐす」
「いや、なんていうか、あんたも怖い類か不思議な類に入るんだけどねぇ」
「う……うえっ うえっ」
「ああ! ごめん! ごめん! 温泉で床上浸水されたら商売あがったりだから! 泣きやんでおくれ!」 
 つまり、温泉の湧きすぎにほとほと困り果てていると言うことだ。
 

《泣きやんでくださいね》
 柏木・狭波がアンティークショップ レンに訪れた。
「精霊が泣いている……」
 彼女にとって精霊は友達。
 泣いている友達を見過ごすわけにはいかない。
「こ、こんにちは……話を聞いてきました」
「ああ、助かるよ。この子を何とかしておくれ」
 狭波の登場で、碧摩蓮は喜んだ。
 狭波は頷いて、壺の前に屈む。
 壺の中から女の子が顔を出している。まるで捨て猫のよう。
「今日は。初めまして、あたしは柏木狭波。宜しく……」
 と、微笑みながら壺の精霊に挨拶した。
 壺はきょとんとしている。
「どうしたの? 何が怖いの?」
「……こわいです……この……ひっくひっ……」
 壺が泣き始めた。
 涙は温かく。仄かに硫黄か何かの香りがする。
「本当に温泉なのね」
 と、ゆっくり壺を持ち上げた。
 優しく。
 子供をあやすように。
 彼女は壺を抱きかかえる。
「何が怖いの?」
 狭波がもう一度訊いた。
「……」
 壺の精霊は、周りを見て、蓮を見てから……
「ひっく ひっく」
「あたしかい!」
「わあああああん」
 蓮が怒鳴った時に、精霊は泣き出した。
「蓮さん……おこっちゃだめです」
「む……原因が、あたしだと封印か何かしかないのかねぇ」
 蓮は色々扱っているが商品に泣かれるのはそうそう無い。
「少しお借りしても宜しいでしょうか?」
「ああ、解決できるならいいよ。他の商品が温泉漬けになっては困るからね」
|Д゚) 温泉たまごー
「あんたはお呼びでない」
|Д゚) なぅー

 狭波は壺を抱きかかえて、外に出る。壺の女の子は、びくびくして壺の中に閉じこもっているが、中から狭波を眺めている。
「お外も怖いのかな?」
 と尋ねると頷いているようだ。
「どこが良いのか……あたしに出来ることが有れば……。あ、そうだ」
 と、彼女は人混みを避けて、都内にまだ残る自然まで向かっていった。
 当然、壺が怖がらないように、割れないように、ゆっくりと……。
 付いた先は、自然がウリの公園。彼女は良く此処で犬の散歩をする。
 おどおどと、精霊は顔を出してみた。
「わああ」
 何かに感動しているらしい。
「こういうところ好き?」
「……うん……懐かしい……うう」
 又、泣き出すが、涙をこらえている。
 狭波は何か思った。
 この子は何かしら感情のコントロールが出来ないのかもしれない。ショックな事件があったのだろうか?
「あたしは、巫女さん。わかる?」
「うん、……力感じる」
「あたしには精霊の友達が居るの」
「へぇ……じゃ、“みゅう”ともともだち?」
「……“みゅう”っていうの? うん、友達」
「ともだち、ともだち♪」
 壺の中で喜んでいる様子の“みゅう”。
|Д゚) 可愛い
「!? いつのまにいたの? 付いてきたの? 店番は?」
 いきなり現れたナマモノに驚く狭波。
 “みゅう”も驚く。
|Д゚) 分裂
「そう……べんりね……」
 驚きと呆れが入り交じる返事。
「うううう」
 “みゅう”は驚いて泣きそうになるが
「ああ、大丈夫、変な生き物だけど、害がないから、ね?」
「? う、うん」
 何とか、狭波のあやし(?)で泣きやんでくれた。
|Д゚) 変とは失敬な
「本当の事じゃない?」
|Д゚) なぅー


《遠くを想う》
 この奇妙な3人組はこの公園のベンチで色々話をしていた。狭波の好きなモノ、友達のこと、昔話やかわうそ?のバカさ加減とか。“みゅう”もどんどんうち解けてきたので、笑顔を見せる。
「ね、“みゅう”はどんなのが好き? 他に知り合いの精霊さんは?」
「いたけど、居ない」
「そっか、長いこと会ってないんだ」
「うん……寂しい。みゅう……綺麗な場所……いきたい」
 と、“みゅう”が少し“希望”を言った。
「綺麗な場所?」
「ヒトの言葉で“自然”ここではない」
「ここではない……もしかして……」
 狭波は考える。
「温泉街でも、更に奥地?」
 その言葉に“みゅう”は頷いた。
「でも、無くなった……世界からの人の力でなくなった……」
 “みゅう”は悲しい出来事を思い出したかのように、泣き始める。
 狭波は彼女をずっと抱きしめていた。壺を介してだが。
 温泉で自分の服が濡れようとも、そのまま抱きしめている。
「そっか、怖いこともあったし、寂しかったんだ。だったら……」
 狭波は、一呼吸おいて、
「思いっきり泣いて、すっきりした方が良いよ」
 と、微笑んで言った。
|Д゚) うみ
 かわうそ?も頷く。
「うわあああああん」
 壺の中から半身まで身を乗り出し、狭波に抱きついて“みゅう”は泣いた。そのときの涙は温泉ではない、普通の涙だった。

 温泉壺の精霊は、この都会の中では壺の中でしか生きていけないらしいこと、目覚めたばかりなので、驚いたり悲しいことで泣いたりすると、涙が温泉になるということも“みゅう”は話した。
「ありがとう、さーは ありがとう かわうそ?」
 と、今まで怖がっていた事が嘘のよう。
「ううん、友達だから、ほうっておけない。あたしに出来ることがあれば、それがうれしい」
 と、狭波は笑う。
「あのお店怖い……店の人も怖い」
 本音を語る。
 いや全くどうしてか、といえば蓮の雰囲気なんだろうか?
「う〜ん、職業柄仕方ないかと……おもう」
|Д゚) どーする?
「あのひと、悪くないから。多分、大丈夫だよ。怖くない」
「うん」
 と、3人は店に戻っていった。

《それからそれから》
 これから数日後のことである。
 相変わらず蓮に怯えている“みゅう”だが、狭波が来るととたんに笑う。
 頼めば希望の成分が出る温泉を術として出してくれるために、プチ温泉ライフを楽しめる。
「ああ、泣きやんでくれただけでもありがたいわぁ。怖がっていても変に泣かないようになったし」
 蓮はご機嫌のようだ。
 なにせ、湯あたりしない程度で温泉を楽しんでいるからだ。
「狭波も……いっしょに はいろ」
 “みゅう”がにっこり笑った。
|Д゚) 大きな湯船有ると便利かもかも
「そうだね。いっしょにはいろうか?」
 狭波は“みゅう”と笑い、お風呂の支度をはじめたのであった。
「かわうそ? はいってきちゃだめよ?」
|Д゚) がびーん


END

■登場人物
【1462 柏木・狭波 14 女 中学生・巫女】

■ライター通信
 滝照直樹です。こんばんは。
 「温泉壺 本番?」に参加して頂きありがとうございます。
 しんみりな感じでまとめてみましたが、如何でしたでしょうか。
|Д゚) ひょっとすると
|Д゚) かわうそ? シリアス参戦?!
 と、小麦色は驚いています。

 かわうそ?が気になるというなら是非、彼と遊んで見ては如何でしょうか?
|Д゚*)

 では、又の機会に
 滝照直樹
 20060428