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<東京怪談・PCゲームノベル>


診断〜出会い〜

 某日。
 神崎美緒は、ある決意をした。
 加登脇美雪にあって話を聞いてもらうこと。
 かなり前にかわうそ?達から能力制御を助けてくれる人物がいると紹介を受けていた。それが加登脇美雪。しかし、彼女は決心が付かず、今まで行きそびれていた。
 過去の嫌な思いがよみがえるのである。
 自分の過去、愛情のない幼い時期を過ごしていた。
 動物や人形のように扱われていた。幸い心許せる従兄がいたからこそ、今があるが、過去に親戚を能力暴走により失っている。もしかすると、また再び起こるのではないかと恐れている自分がいるのだ。

 しかし、時間がたつごとに、自分は変わらなければならない。彼女はそう思った。今までのつらい思いが彼女の心をすり減らしている。
 過去に、暴走したときかわうそ?が巻き込まれたわけだが、かわうそ?自信何にも思っていないようだ。
「いや、周り、いろいろある」
 と、彼は言う。
「あの、前にいただいた病院のことなんですけど」
「で? かわうそ? なにすればいい?」
 かわうそ?は彼女のそばにいた。
「あの、できればその場所に一緒について来てほしいのですけど……」
「加登脇のところ。わかった」
 と、かわうそ?はそれ以上言わずに頷いただけだった。

「あの肝試しの時、暴走しましたけど。皆はどう思っていたのか……怖いんです」
 電車に揺られて、美緒はかわうそ?に言った。
「私をどう思うのだろうと、忌み子とか、気持ち悪い子とか思っているのだろうかと、怖いんです。悲しくてつらいんです」
 と、震えながらかわうそ?に話す。
 かわうそ?はじっとぬいぐるみのようにしている。何も答えない。
 電車の中ではバックかぬいぐるみのようなモノに化けているのだろうか? ソレは違う。彼自身が、しっかり彼女の話を聞いているのだ。
 あの総合病院ではあるがかなり僻地にある。東京都の区内ではなく、別の市か町にあるのだ。わずかにコンクリートジャングルが開けてそこかしこに畑や森、池が見えてくる。
 人の出入りがまばらになってくる。
「人の心が読める。そんな力があると、どうしても……人に接することが難しくなるんです。まだ、それをうまく扱えないとき……。暴走して……人を……」
 思い出して涙が出そうになる。
 かわうそ?は猫のように彼女をすり寄った。
「かわうそ? 気にしていない。周りも気にしていない。よっしー、茜。きにしてない。」
 と、彼は言う。
「ほんとうですか?」
「かわうそ? そのつらさは体験できないけど、よっしーや加登脇わかる」
 かわうそ?が言った。
 電車が駅に着いた。
「着いた」
「え? あ、待ってください、かわうそ?さん」
 てくてく歩いていくかわうそ?についていく美緒だった。


 井ヶ田総合病院。別名「癒しの館」
 特殊な能力制御関係を裏のようなところで行っている病院だ。そこに加登脇美雪がいる。
 彼女は数人の子供達と遊んでいるようだ。
「はい、これがこうなるのよ? うん、えらい、えらい」
 と、子供達が、彼女の周りで笑っている。
「? あ! ナマモノだ!」
「わ〜!」
 子供がかわうそ?をみるやいなや。わーっと集まってきた。
「いよー きゃああ!」
 かわうそ?は挨拶するとたんに子供におもちゃにされた。
 のばされたり、丸められたり、もふもふされたり。
 美緒は感覚でこの子達の能力などわかった。
 自分に似ている力や、全く違う能力、それを使い切れていないが、明るい気持ちでいる。
 不思議と心が温かくなる。
 加登脇美雪が、美緒に向かってにこりとほほえんだ。
「こんにちは。かわうそ?や織田君から聞いているわ。神崎美緒さんね。私が加登脇美雪、よろしく」
「え? は、はい。神崎美緒です……あの、その」
 何となく、彼女の声を聞いていると、張りつめていた心がゆるんでくる。
「よろしくお願いします!」
 暖かい感じ。その気持ちよさがあった。

 彼女は20歳後半ぐらいだろうか?
 少しラフな感じの服装だが着こなしている眼鏡の女性。本当に、敏腕制御者なのか疑うほどだ。
 美緒は、受付をしていて、簡単な問診票も書いて、待合室で待っている。普通の病院の風景。しかし、暖かい雰囲気がある。あの、無機質な白い空間ではない。今でも笑いがあふれそうなそんな暖かさがココにあった。
「ふう、つかれた。おまたー」
 かわうそ?が子供の相手を終えたところだったようだ。待合室の椅子の背もたれで垂れている。
「おかえりなさい」
「神崎さん、神崎美緒さんどうぞ〜」
 と、ちょうど彼女が呼ばれた。

「堅くならないで座って」
 と、にこやかに笑う加登脇。
 見た目を真剣なまなざしだが、優しさに満ちている。
 しかし、美緒にはまだそれが恐ろしかった。
「……あの、私……前に暴走してしまいました。そのときに……」
 と、ぽつぽつかわうそ?に話したことを同じように話し始めた。
 傷を見せることが怖い。
 しかし、彼女の目の前や今力強く握っているかわうそ?の手をみると勇気が出てくる。
 聞いている医者から、
 ――大丈夫だから。
 と、優しく声をかけられている感じがした。
「皆にこの力を持って、変な目で見られることでつらい思いや、悲しい思い、暴走して人を殺めるなんてことは……したくないです」
 と、美緒は加登脇のまえで話をした。かわうそ?の目の前で話したように過去のことを。不思議と口にできた。
「……過去を話してくれて……ありがとう」
 と、加登脇が言う。
「辛かったでしょうね」
 その言葉で美緒は固まってしまう。
 かわうそ?の体を強く握りしめる。
 じたばたもがくかわうそ?
「えらい。いままでがんばったわね。もう大丈夫だから、ね?」
 と、優しく語りかけてきた。
「……」
 少し、体の強張りがとけてくる。
 加登脇が 美緒がどれだけ過ちを犯してきたかを追求することはなかった。過去の辛いことを蒸し返すわけではないのだから。悲しみを受け止めて、親身になってあげること。人からの愛情を知ってもらうことが一番の薬なのだ。
「一人で背負うことは今日からなし。約束、できる? 辛くなったらこっちにきてね」
「え?」
「かわうそ?も、ココを紹介してくれた人たちも、あなたの事を大事に思っているわ」
「……」
「そー。みおみお、ともだちー。ともだちー、こころかよわすー。加登脇、先生だけどともだちー」
 かわうそ?は明るい声で言った。
「ほら、かわうそ?も言っているでしょ?」
 にこりと笑う加登脇。
 その笑顔だけで、美緒の心は少し揺れ動いた。

 カウンセリングだけで今回の診察は終わった。薬はない。
 感情の起伏のせいで、能力を押さえ切れそうにない感じもあったが、安堵感が大きかった。
「どうだった?」
「えっと、その……不思議な人でしたね」
「不思議。加登脇、不思議」
 かわうそ?は踊る。
 すっかり夕暮れ。
 さて、私はこれからどうしましょう?
 辛い思いをしっかり聞いてくれる人が増える。それはちょっと怖い。けど、前に進まないと後で後悔するかもしれない。この先踏みとどまっていれば変われないんだ。私もがんばらなきゃいけない。
 と、美緒は勇気の一歩を踏み出した。
 
 しっかりと、前に。
 ゆっくりと。
 すすもう。
 

END


■登場人物
【0413 神崎・美緒 17 女 高校生】

【NPC かわうそ? ? ? かわうそ?】
【NPC 加登脇・美雪 ? 女 精神科医/能力制御者】

■かわうそ?通信
|Д゚) ! シリアス!?
|Д゚)ノ うっひょーい!
|Д゚) いや、シリアスっていいよねー
と、かわうそ?が喜んでいますがこんにちは、滝照です。
かわうそ? と加登脇美雪をご指名ありがとうございます。
|Д゚) 加登脇、やさしいから。大丈夫
加登脇美雪との会話などをお気に召して頂けるといいのですが、いかがでしたでしょうか?

では、またお会いできれば幸いです。

滝照直樹
20060509