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<東京怪談・PCゲームノベル>


『千紫万紅 ― 藤の花の恋 ―』


 それはある花の………
 物語。
 

 ある僧が善光寺に詣でる途中、藤の名所の多胡の浦(たごのうら)を通りかかり、藤の花を眺めていると里の女が声をかけてきました。女は藤を詠んだ古歌を紹介し、自分は藤の花の精だと告げてその場を去っていきました。
 僧が眠っていると、藤の花の精が現れて、藤の花の美しさをたたえて舞を舞い、朝霞の中に消えていきました。


 思い出してもらいたかったのです、お前様に。
 私の事を。
 それが観音様と交わした条件だったから。
 時は戦国。応仁の乱から始まったその乱世にお前様は敵方の武将の目を盗み逃がされて、僧となった。
 それを私は風の噂に聴き、お前様の無事を確認し、ほっと安堵した。
 そうして私はお前様の目の前に現れた。
 私はでもそれだけで、私のお前様と共に居たいという願いは叶えられなかったけど、それでも私はお前様にまた出逢えたから。
 この胸を恋に焦がし、お前様の目の前で舞を舞う。
 口には出来ぬこの想い。だけどお前様に少しでも私のこの想い、伝えたくって………。



 私はお前様に逢いたかったの。


 
 ――――――――――――――――――
【open→】

【T】

「ねえねえ、知ってる?」
「何が?」
「妖怪」
「へ?」
「またあやかし荘の近くで出たらしいよ」
「マジで?」
「うん。えらくマジで」
「うわぁー。よくあそこら辺ってそういう噂聞くよねー」
「あやかし荘自体が何かえらく年期が入っていてそういう雰囲気ばんばん出してるしね」
 近くの座席から聞こえてくるその女子高生たちの軽やかな笑い声に彼、セレスティ・カーニンガムの目の前に居る彼女は顔を赤くして俯いてしまった。
 お気の毒に。
 こういう自分の居る場所で、しかしそれを知らぬ周りの人間が自分やその周辺の噂話をしているのはえらく気恥ずかしいもの。
 あやかし荘。そこは彼も知っている場所。多くの人ならざるモノと人とが共存し、そして男女平等のこの世にあって女尊男卑がまかり通る場所。
 その根源たる嬉璃の顔を思い出してセレスティは苦笑を浮かべた。
 カップの中の紅茶を飲み干し、セレスティは目の前の少女、因幡恵美に優しく微笑みかける。
「出ましょうか?」
「はい」
 二人連れ立ってそのホテルの一階にある喫茶店を出る。
 今日はそのホテルで源氏物語絵巻展があり、それを見たがった恵美のためにセレスティが招待状を用意してくれたのだ。
 しかし何やら今朝車であやかし荘に恵美を迎えに行った時には嬉璃の様子がおかしかった。どうやら恵美を連れ立ってのこの源氏物語絵巻の観賞は彼女にとってみればデートとなるらしく、ならば男嫌いの嬉璃にあのように親の敵のように睨めつけられるのも道理なのかもしれない。
 二人でホテルのロビーに戻り、そこのエレベーターの前に立っているホテルマンに階を言う。
 扉が開き、セレスティと恵美はケージに入った。
 ケージが上に上がる瞬間の浮遊感に恵美は少し苦手そうな表情を浮かべる。
 大丈夫ですか? そうセレスティが目で訊ねると、彼女はこくりと頷いた。
「でもあたし、こうして男の人と二人で歩いたりどこかへ行ったりするのって初めてなので緊張します」
 頬を赤らめながら言った恵美にセレスティは優雅に微笑む。それは男女問わず誰もが見惚れそうなほどに美しい笑みだった。
「はなはだ不思議ですね。恵美嬢のようなかわいらしい方にそういう経験が無いのは。だけど告白は、されるのでしょう?」
 耳まで真っ赤にしながら恵美はこくりと頷いた。
「でも、なかなか前に踏み出せなくって。それに、踏み出せたら踏み出せたらで色々と大変そうですし。その、嬉璃さんとか、嬉璃さんとか、嬉璃さんとか」
 セレスティは今朝の嬉璃を思い出し、苦笑した。
「確かに」
 再びケージが目的の階に到着した事で生じる浮遊感に恵美は嫌そうな表情を浮かべて、それから自分を見るセレスティに小さく苦笑した。
 エレベーターガールがケージの扉の開閉ボタンを押し、扉が開く。
 彼女の上品なお辞儀を背に二人はその階に出た。
 源氏物語絵巻展の受付の男性にセレスティは上着の内ポケットに入れておいた招待状を取り出して、見せた。
 招待状とはいえ、それはリンスター財閥総帥への招待状ではなく、このイベント主催社が取引先の人間に配っているごく一般の招待状である。
 恵美を連れて、という事であるから大仰な感じにならぬようにとのセレスティの配慮ではあったが、しかし―――
 展示展の中からたまたま来ていた主催社の社長が慌てて出てきた。
 そして彼は部下の不敬を謝り、自分がセレスティを案内すると言い出したが、しかしセレスティは涼やかにしっかりと面食らってしまった恵美の肩に腕を回して彼女をその社長に紹介すると、今日はこの彼女と個人として訪れただけだから、とその申し出をやんわりと断った。
 社長としては天下のリンスター財閥の総帥セレスティ・カーニンガムとの繋がりを作れるかもしれないその好機を逃したくは無かったのだが、しかしここでその利益ばかりを追求する事でセレスティの機嫌を損ねてしまっては元も子もないのでそこはおとなしく引き下がった。
 ただ、この展示会最終日に開かれるパーティへの出席を懇願し、セレスティは苦笑混じりに頷いた。
「すみません。恵美嬢。驚かれたでしょう?」
「…えっと、はい。少し。でも本当にテレビドラマの中の一場面を見ているような気がして凄いな、って、そういう感想の方が強いです」
 恵美はくすりと笑う。
「さすがは天下のリンスター財閥総帥ですね」
 セレスティは肩を竦めた。
「今日はその肩書きは置いてきたのですがね」
 ため息混じりに言ったのは、だから彼は変装をしているのに(服装はカジュアルなセンスの良い青年のイメージでまとめ、眼鏡もかけている。また髪は後ろでひとつにまとめていた)、それを見破られてしまったからだろう。
「それはセレスティさんのオーラは隠せない、という事なのでしょう。それにセレスティさんは綺麗だから目立ちますしね」
 綺麗、と口にして恵美はまた顔を赤くした。
 それから彼女はごまかすようにスカートの裾と髪の毛の先を軽やかに翻してワルツを踊るようにターンすると、展示されている絵の方へと走っていった。
 セレスティはわずかに驚いていたような顔に苦笑にも似た表情を浮かべて、ゆっくりと恵美の方へと歩いていった。
 展示されている絵の前で彼女はまるで子どものように目を輝かせながら立っていた。
 ここには多くの人たちが居て、その人たちはそれなりの身分と財産を持つ裕福そうであり、中には画廊を経営している人間も何人かは居た。
 ただそうした人たちはここに展示されている絵よりも、ここに集まってきている人たちにしか興味は無いようで、間違いなく恵美がこの中で誰よりもそれらの絵を好きそうに眺めていた。
「絵とは本当はこれを望んでいるのでしょうね」
 小さくセレスティは呟いた。
 裕福層にとっては絵とはただの所持金レベルを量るためのパロメーターでしかなく、そういう風に考えている人間に限って絵を誰の目にも触れない暗く狭い場所に隠す。果たしてそれに意味があるのだろうか? セレスティはよくそう考えた。
 絵とは誰かの目に触れて初めて意味がある物であり、そしてそれこそが画家がその絵を描いた理由なのだから。
 恵美は一枚の絵の前から動こうとはしなかった。
「夕顔ですか?」
 それは夕顔の絵であった。
 美しく咲く夕顔に源氏は心惹かれ、それを手折るように従者に命じるが、しかし従者が持ってきたのはその夕顔が咲く屋敷に住む夕顔が持たせた扇子。その扇子に書かれた―――
 心あてにそれかとぞ見る白露の光添えたる夕顔の花
 ―――歌。
 そしてそこから源氏と夕顔の恋の物語は始まり、源氏は夕顔に夢中になる。
 しかし実に怖ろしきは女の嫉妬。
 六条の御息所の生霊が夕顔を殺してしまうのだ。
「あたし、初めて源氏物語を読んだ時、あ、子ども向けに描かれた少女漫画の源氏物語なんですけどね。えっと、その時はそういう事もあって、六条の御息所ってただ怖い人だな、ってそう思うだけで、でも大きくなって原作を翻訳した物を読んだら、きっと感性が変わった事もあるんでしょうが、六条の御息所って哀しくって、でも素敵な人だなって思ったんです。だってそんなにも誰かを愛せるだなんて。寂しくって悔しくって、それでその想いが独立しちゃうぐらいに」


 ――――そう。それは何と深く、強い、愛。想い………


「本当に悪いのはあっちこっちに手を出している源氏なのに、でもその源氏を恨めないのが女心なんでしょうね」
「そうですね」
 優しく頷き、そしてそこでセレスティは一つの言葉を口にする。
「恵美嬢。だからこの時代の女性たちは愛しいをいとしい、だけではなく、かなしい、とも読んだのですよ」
「愛しい、を、かなしい、と」
「ええ」
 恵美は子どものように目を開け広げた。
「それは………すごく綺麗で、そして切ない響きですね」
「はい」
 それから二人は源氏物語の世界を堪能し、
 ホテルを出た。
 時刻は夕刻で、だけどまだ少しディナーには早い。
「あ。でも家に帰らないと嬉璃さんが」
 微苦笑を浮かべる恵美にセレスティも苦笑を浮かべる。
「シンデレラよりも6時間も早いですね」
「はい。あ、でも幼い時は硝子の靴がどうして消えてしまわないのか不思議でした」
「ああ。それはグリム童話ではないシンデレラのお話ですからね」
「え?」
「グリムの方は魔女が出てこずに、鳩が服や靴を用意するのです。だから魔法で出された靴ではないから、靴が消えなかった、と。一般に広く伝わっている方も硝子の靴は魔法使いが魔法で出したのではなく、魔法使いの所持品、という風に辻褄合わせがなっているようですがね」
「なるほど。疑問が一つ消えました」
「それは良かった」
 二人はセレスティの車で色々と話し、だから帰りはあっという間だった。
「あの、セレスティさん。もしも良かったら、寄って行きませんか? お茶を出させてください」
 にこりと微笑む恵美の申し出を断る用件は無かった。
 セレスティはあやかし荘へとお邪魔する。
 すると玄関には見知らぬ二人の人物が居て、その人物たちと三下忠雄が会話をしていた。
「あ、恵美さん。ちょうど良かった。お帰りなさい。えっと、こちらの人が部屋を借りたいっていらしてて」
「え? あ、本当ですか」
 恵美は慌ててお辞儀をして、自己紹介した。女子高生が管理人である事にはしかし一方の彼はあまり驚かなかった。
 少々淡白な男である。
 ならばこの彼なら、あやかし荘が抱えるいくつかの難点も克服できるだろうか?
 ふむ。セレスティは人好きのする笑みを浮かべて彼を見やるがしかし、どうやらあやかし荘に住みたいのはもう一人のようだった。
「あ、では、詳しいお話はこちらで」と、言って、恵美はセレスティに頭を下げて、三下に耳打ちした。
「あの、セレスティさん。どうぞ僕の部屋にあがっていってください」
 セレスティは頷いた。
 玄関からあやかし荘の中に移動するが、しかし玄関に居る淡白な男は中に入ってはこなかった。
「いや。ここからは契約の話だけだし、俺は居なくとも大丈夫だろう。だから俺は帰る」
 と、素っ気無く言い、本当に帰っていった。
 少しその場に残された一同の間には微妙な空気が漂った。
 もうひとりの話では彼の名前は野々宮修二。
 無口な男で人の視線などはあまり気にしない性格、という事だった。
 しかし、とセレスティは彼が消えていった方を見る。
 去り際に彼が口にした、邪魔はされたくないのでね、とは果たしてどのような意味だったのだろうか?
 

【U】


「ストーカー?」
 そう草間武彦が訊ねると、依頼者は頷いた。
 随分と憔悴しきっているのは依頼者の顔色からも明らかだった。
 どうやら相当あからさまで、そして性質の悪いストーカーなようだ。
 サングラスのブリッジを人差し指の先で押し上げると、彼は業務用の笑みではなく、本気になった時に素で浮かべる頼りがいのある笑みを浮かべた。
 そしてそれをお盆を胸に抱きながら見ていた零は知っている。彼がそういう笑みを浮かべた時の依頼達成率はパーフェクトだ、という事を。
「その依頼、お受けいたしましょう」



【V】


 セレスティは運転手に車を止めさせた。
 それから彼は車のウインドウを下げさせ、夜の公園に入っていく人物たちを見据える。
「スノー。白さん」
 夜の夜気が支配する世界にセレスティの声が広がった。
「あ、セレスティさんでしぃ〜」
 ぶーんと羽音が聴こえてきそうな勢いで飛んできたスノードロップを片手で受け止めたのはお約束。セレスティの手の平でぶつけた顔を赤くしてスノードロップは小首を傾げる。
 にこり、と笑ったセレスティにスノードロップもにへら、と笑って、またセレスティに飛んでいくが、今度はふぅー、と吐いた息で飛ばした。
 セレスティはくすくすと笑い、ようやく指定席である彼の左肩に座ってご機嫌そうのスノードロップに飴玉を一つやる。
 車から降り、彼は白に訊ねた。
「それで、こんなお時間にこんな場所で、何を?」
 彼の仕事は樹木の医者である。
 なら昼間の方が色々と仕事もし易いのではないのか? そんな事を思うと、彼は少し意味ありげな表情をした。
「今日は樹木の診療、という訳でも無いので」
「診療、ではなくってでしね、心霊、ってやつなんでし♪」
 診療ではなく、心霊?
 樹木の。
 セレスティはふむ、と頷いた。
「それはまた、面白そうですね。私もご一緒してよろしいですか?」
「ええ。心強いです」
 白は微笑んだ。
 公園の奥に入っていくと、そこには一本の朽ち果てた木があった。
「これは?」
 そう呟いたセレスティの感覚が敏感に夜気に含まれる夜の気配が変質していくのを感じ取る。
 そして彼の目の前に美しく舞を舞うひとりの女性が現れた。
 それはとても美しいが、しかしひどく哀しい顔をした女性であった。そしてその彼女は幽霊というよりも、
「残留思念」
「ええ。さすがですね。お見立ての通りに彼女は残留思念です。かつてここで美しく咲いていた藤の花の」
 とても冷たい空気が肺を満たす度に、しかしその温度だけがさらにそこから身体へと染み入っていくのを感じた。


 ああ、そう。
 この暗い湖の水底に居るような胸の苦しさと、肌の冷たさはそのままこの藤の精の残留思念が感じている――――
 哀しみと、
 孤独。



 何が哀しくって、
 どうして、あなたは孤独なのですか?


 精神世界。
 裸のセレスティの前に、
 裸の藤の精が現れ、
 そうしてその手が、彼の手を、握る。
 握った。
 それは、過去の記憶。
 強き想いとなって、
 形を成して、
 この世界に強く、縛られる程に。


 それは花の精が人を愛した記憶。
 遠い昔。
 日本の風景が精神世界に投影される。
 日本の、ここではないどこか。
 最初それは、やはり藤の花だった。
 しかしその家が新しく蔵を作る事となったので、その藤の木は切られる事となった。
 だが藤の木は助けられ、そうしてその精は人の姿を模して、その家の当主の妻となった。
 その家には息子が居て、だけどその男は、その女を好きになった。それは当然の道理。
 まだわずか十三の子でも、男が女に惚れるのは自然の摂理で、
 そうして女もその男を好いていた。
 元々は藤の木を切らぬその代わりの、結婚、であったのだから。
 だけどその家は応仁の乱以降、荒れて、女の亭主も殺され、男は密かに逃がされた。
 風の噂に聴いた。男は禅寺に入れられた、と。
 それを聴いてまずそこでの生をその精は終らせた。
 そして再会。
 観音様が願いを叶えてくださったのだ。
 藤の木としての生を終える時に。
 そして藤の花の精は人間の娘として輪廻転生を果たし、
 そうしてある日、出逢った。
 それはわかっていた。
 娘は前世での記憶を持っていたから。
 藤の花の精や、自然の精に協力してもらって、人の娘に生まれ変わった彼女はそうして男と再会した。
 だけどそれには条件があったのだ。
 その条件とは男が藤の花が生まれ変わった娘に気づく事。
 でも男は気付けなくって、それでも観音様の最後の情によって、持っていた記憶の消去を交換条件として、藤の花の娘は男の夢に出た。
 それが最後であった。彼女が男と出逢えた。


 二人が、出逢った………最後の記憶――――



 それからもずっと、寂しくって、寂しくって、
 哀しくって、哀しくって、
 お前様が恋しくって、私はここに居る。
 生まれ変わった娘から消された記憶。
 それの残留する想いは、だけどこうして形を成して、藤の木を、咲く藤の花を移り変わって、お前様を今も探している。


 移ってきた想いを視たセレスティは一つの疑問を持つ。
 そして彼の数ある能力の一つ。
 優れた占い師としての、運命は決して一つではなく、しかしその運命のある一面は視る事の出来る彼は、それは読み解く。
 想いをこの地に縛る、因果。
 縁。
 彼女を縛る三つの、赤い糸。
 セレスティの形の良い指がその一本に触れる。
 見えたのは野々宮修二。
 ―――――邪魔はされたくはないのでね。



 それは彼の方こそも運命を読み解いた、発言だった?



 そしてセレスティが今まさにその赤い糸に触れた時、野々宮修二は草間武彦を物陰からじっと見、鋭い舌打ちをした。
 それには明確な暗い感情が滲み出ていた。
「邪魔はさせない。また彼女を奪うのなら、それなら奪われないように殺すだけだ」
 そう呟いた後、彼は、俺が一番最初に好きになったのに、俺が一番最初に好きになったのに、俺が一番最初に好きになったのに、と呟き続けた。暗い、夜闇の中で。



【W】


 そしてセレスティは車を走らせている。
 向かっているのは野々宮修二の家である。リンスター財閥総帥の力ならばそれは簡単であった。
「ですがその野々宮修二という青年は一体何者でしょうか? 残留思念とはいえ曲がりなりにも花の精を縛り付けるほどの想いとは」
 セレスティに訊ねる白の顔には緊張した表情が浮かんでいた。
 事は緊迫していた。
 あの後何故か藤の花の精の残留思念は苦しみ出したのだ。
 そして会いたい、逢いたい、合いたい、あいたい、お前様に逢いたい、
 ――――と、彼女は嘆き続けた。
 ただ逢いたい、そういう感情だけが形となった彼女。
 その彼女が苦しみ出したのは、彼女を縛る赤い糸が彼女を苦しめているから。
 でも――――
「逢いたいのですか?」
 セレスティはそう訊ねた。
 夜のしん、と澄んだ夜気の中で。
 すると彼女は逢いたい、とただ一言言った。
 だからセレスティは彼女を縛る赤い糸を自分の右手の人差し指をただ、つぃ、と動かしただけで断ち切り、
 そして切れた糸をその指先に絡め取った。
 それを見据えていた目を彼はあやかし荘の方へと向けた。
 さすがの彼もその運命を具現化したヴィジョンである糸を辿る事は不可能だ。しかしその一本に触れた時に視た野々宮修二の事は知っていた。
 だから―――
 それで向かっている。
 だが事は予想外の方へと行く。
 セレスティの携帯が着信した。
 かけてきたのは草間武彦。
『大丈夫か?』
「ええ。少し取り込んではいますがね」
 携帯電話の向こうで彼が黙った。何かを考えているようだ。そしてそこから感じられる気配は確かに向こうも取り込んでいるようだった。しかも切羽詰っている。
 セレスティは肩を竦める。
「まずはそちらの状況を。それを話してくれなければ事を判断する事はできません」
『あ、ああ。実は依頼者を殺されてしまった』
「何ですって?」
『依頼者はストーカーに狙われていて、俺は外を警備し、零が中で依頼者と一緒に居たのだが、しかしちょっと零が目を放した隙に依頼者が殺されたんだ』
「それで犯人。そのストーカーは? それがまず犯人である可能性が高いですが」
『ああ。実は依頼者にも誰がストーカーなのかわからない状況でな、それで、実は自白している怪しい男は捕まえているんだ』
「ならその男を警察に引き渡せば?」
『いや。確かに怪しい男で、自白もしているし、それにこの部屋の間取りや綿密な殺人計画を書いた手帳も持っているんだがしかし、部屋に残されたダイイングメッセージ、これがこの男に繋がらないんだ』
「ふむ。なるほど。つまりその状況では冤罪が発生しかねない。キミはそう言うのですね?」
『ああ。だからおまえの頭脳を借りたくってな』
 確かに私のこの灰色の脳細胞ならばどのような悪意や虚偽、虚言も見抜いて、その状況の真実を言い当てもできるのですが――――
「セレスティさん…」
 白とスノードロップがセレスティを見る。
 しかしセレスティは頷いた。
 左手に携帯を持ち替え、右手で指を鳴らしながら瞼を閉じる。
「では草間氏。私は残念ながらそこへは行けませんので、携帯電話からそちらの情報を頂きます。被害者の名前。それから疑惑をかけられているその男の名前。状況を」言って、携帯電話から聴こえてくる草間の声に耳と意識を向けていたセレスティだが、しかし、鳴らしていた指を止め、瞼を開いた。
 そして重いため息を吐いた彼は運転手に告げる。
「状況が変わりました。すみませんが、あやかし荘に戻ってください」


【X】


 ただ、私はお前様に逢いたかった。
 逢いたくって、逢いたくって、逢いたくって、しょうがなかった。
 お前様、私は逢いたい。お前様に逢いたい。逢いたい。
 逢いたい、逢いたい、逢いたい、逢いたい―――
 残留思念の彼女の想いはずっとセレスティの心に流れ込んでくる。当然だ。その身に運命の糸を背負う事で彼は彼女を自分に憑依させたのだから。
 そして彼はあやかし荘、そこに到着した時にどうしようもなく身体が熱くなるのを感じた。凄まじい眩暈を彼は感じた。
 それは何故か?
 それはセレスティに取り憑いている藤の花の精の残留思念が活性化したからだ。少しでも意志を緩めれば、彼の肉体は奪われる。
 身体の裡から生ずる熱にうなされるようにセレスティは身体を揺らし、その肩を白に支えられた。
 そしてあやかし荘の廊下を走って恵美が玄関にやってくる。ただならぬセレスティの様子に彼女は目を見開いた。
「セレスティさん」
 恵美の悲鳴に近い声があやかし荘に響き渡り、
 そして彼女は現れた。
「まったく、ようやっと気付いたかと思えばまた偉く厄介な事になっているようぢゃな、セレスティ」
「相変わらず、手厳しい。嬉璃嬢」
 こんな時でも涼やかでクール、優雅な表情を崩さぬセレスティに嬉璃は双眸を細め、ふんと鼻を鳴らすと、大人ヴァージョンとなり、艶やかな足取りで白に肩を貸されようやく立っているセレスティの前へと移動したかと思えば、小首を傾げ、さらりと額の上で揺れた前髪を右手の人差し指で艶やかに掻きあげながら、そうしてもう片方の手をセレスティに添えた次の瞬間に、彼の唇に彼女は自分の唇を重ね合わせた。
 舌で開けたセレスティの口の中にふぅ、っと息を入れる。
 それでセレスティに憑依している藤の花の精の残留思念の想いの強さが、それからくるプレッシャーが収まった。
 そう。それが座敷童たる嬉璃の力。
「すみません。嬉璃嬢」
 嬉璃の唇が離れると共にセレスティの唇が動いた。
「ふん。光栄に想うが良い」
 にやり、と笑い、嬉璃はそう言い、そしてある一方へと顎をしゃくる。
「あの娘の部屋には結界を張り、三下をはじめとする者どもに監視をさせておる。あとはおんし次第ぢゃ。セレスティ・カーニンガム。その想いを、今世で成就させてやるのか、それとも前世の因縁故に絡みつくこの縁、執着の情によって断ち切ってしまうかはな」
 座敷童。妖怪よりも精霊、神にと類される彼女は艶やかな大人の女性の姿のまま、空間に溶け込むように消えていく。
「ほんに怖ろしきは人間ぢゃ。人の執着は時を越え、他人を潰す。おんしもそう想うぢゃろ、セレスティ」
 嬉璃は消えた。後はおまえが、やれ、と。
 セレスティは苦笑をし、杖をつく腕に力を込めると共に自分の足で立つ。
「ありがとう」
「いえ」
 白は顔を左右に振った。
「でもでもセレスティさん、この今の状況はどうなってるんでしか?」
「そうですね。草間氏たちも来たようですから」
 そして草間武彦、草間零、野々宮修二がやって来た。



 一同はあやかし荘大広間に集まっていた。
「草間氏。頼んでいた物は大丈夫ですね?」
「ああ」
 草間は携帯電話を取り出すと、それをセレスティに渡した。
 そしてセレスティはその携帯に保存されていた写メの映像を三下に借りたノートパソコンにUPし、その一枚一枚を提示しながら、そこに隠されている真実を口にし出した。
「まずは殺された草間氏の依頼者。兵藤圭吾。21歳。彼の死因は背中を包丁で一突きにされた事によるショック死」
 パソコンのウィンドウには死体が映し出されている。まず、自分で包丁を持って刺す、という事は無理だ。そう。自分では無理だ。
「だから草間氏は彼は殺されたと判断し、彼、野々宮修二を疑った」
 草間は頷いた。
 依頼者はストーカーに悩まされていた。その正体が野々宮修二であった事はしかし問題にはならない。彼は兵藤圭吾を殺すための手段と計画を書き込んだ手帳を持っていた。殺すための情報集めと機会を窺っていた、という事なだけだ。真実は。
 しかし――――
「兵藤圭吾はダイイングメッセージを残していた。そのメッセージが示していたのは彼ではなかった」
 一同の目が野々宮修二へと向かう。
 彼はぎりぃ、と歯軋りし、訴えた。
「俺だ。俺がやったんだ。あいつは前から気に入らなかったから。それで」
 しかしそれをセレスティは目だけで黙らせた。
 彼は怯むように俯き、拳を握った。
「この一点張りでな」
 草間のぼやきにセレスティは肩を竦める。
「キミは寡黙な男だと聴いています。そして人の目は一切気にしないと。しかし今のキミはその評価から外れますね」
 セレスティの指がキーボードを叩く。
 まるでピアニストかのようなセレスティの指は、キーボードをも美しい楽器と変え、数秒、そのキーを叩く音色だけが部屋に響いた。
 ウィンドウには新たな写真がUPされていた。
「ダイイングメッセージ。このメッセージから草間氏。あなたが導き出したのは?」
「磯谷祐平という男だ」
 セレスティも頷く。
「その結論に行き当たる切欠、情報は先に依頼者から与えられていたのですね?」
「ああ」
 草間は零を見、零も頷いた。
 そこでセレスティは意地悪く微笑む。
「その磯谷祐平という彼はつまりは兵藤圭吾には嫌われ、野々宮修二には大切にされていた、という事です。一方には殺人の犯人にされるような偽装をされ、そしてもう一方には守られていた。野々宮修二。キミが殺人計画を記した手帳を持っていたのは兵藤圭吾の計画を阻止するためであったのでしょう?」
 弾かれるように顔を上げた野々宮のその顔からは表情も色も消えていた。
 それが真実だ。彼は兵藤の部屋のパソコンの中に在った殺人計画書を手帳に写し取ったのだ。
「ち、違う。俺が本当に」
 しかしセレスティは聴かない。
「結論を言いましょう。兵藤圭吾を殺した犯人。それは、彼自身です」
 セレスティは言い切った。
 そして次の写真がUPされる。
 部屋のリビングの扉の蝶番の方の部分に傷が見られた。
「つまり彼は自分から後ろ向きに扉で挟んで固定した包丁へと飛び込んだのです。あとで調べればわかると想いますが、この傷と彼の背中の傷との位置は一致するはずです」
 草間の顔には苦い表情が浮かんでいた。
 依頼者である兵藤圭吾は彼を利用しようとしたのだから。人の人生を滅茶苦茶にする計画の。
「おまえが居て良かったよ、セレスティ」
 安楽椅子探偵かのように現場にも行かずにその事件を解決したセレスティに賞賛と感謝を草間が口にするが、しかしセレスティは顔を左右に振った。
「これはただ、それだけで片付ける事ではありません。これは前世の因縁という縁が起こした事であり、そしてそうであるなら、事はまだ終わってはいない。そう、まだ始まったばかりですよ」
 セレスティは野々宮を見た。
「藤の花の精。これはそれに関わる因縁ですね?」
 疑問では無い。確認だ。
 野々宮は顔を逸らした。
「なるほど。キミはどうやら覚えているようですね。前世を。そして見えている」
 セレスティの人差し指に絡みつく赤い糸と、野々宮修二の小指に絡みつく赤い糸とがぴーんと張り詰めた。
 セレスティの右手の人差し指が野々宮修二の目の前に突きつけられ、そしてそれが動く先には、姿を見えなくさせているスノードロップ。
 にへらーとそれが笑った瞬間に、おそらくは思わず野々宮修二は顔を歪めた。
「前世を覚えているような人間には少なからず見られる現象です。この世ならざるモノを見てしまうというのはね。そしてならば、そのキミが彼女をここへ連れてきたのも意味がある。ここでなら、守ってもらえると想いましたか? 過去の因縁から。彼女にそれを伝える事無く。そしてそんなキミと繋がりのある兵藤圭吾も磯谷祐平も関係があるのでしょう。この藤の花の精を巡る関係に」
 口にした瞬間、セレスティの右手の人差し指に絡む他の赤い糸二本ともぴーんと張り詰めた。
 それは、縁、が、完全にセレスティと繋がった証拠。
 運命の真と理だ。
 そして彼は野々宮修二の後ろに見た。死んだはずの兵藤圭吾の姿を。
「死しても尚、まだこの世に在り続けますか、キミは」
 ―――『ほんに怖ろしきは人間ぢゃ。人の執着は時を越え、他人を潰す。おんしもそう想うぢゃろ、セレスティ』
 先ほどの嬉璃の言葉が耳に蘇った。
「野々宮修二、キミには兵藤圭吾の姿が見えていた。そして死んだ彼に持ちかけられたのですね? 取引を。自分が犯人だと名乗り出れば、おそらくは磯谷祐平には手出しはしないと」
 野々宮は俯き、兵藤はげらげらと笑った。それで充分だった。
「断言しましょう。この計画はどちらでもよかった。邪魔な二人のうち、どちらか一方を消せれば。いえ、どちらかといえば前世を覚えている野々宮氏の方が邪魔だったか、キミには? だから野々宮氏に取引を持ちかけた。そして彼が警察に捕まっている間に、彼女をどうにかするつもりでしたか?」
 何故、このあやかし荘を先ほど訪れた瞬間に、藤の花の残留思念が騒いだか?
 ――――それはここに、今世の、彼女自身が居るから。
 魂の欠片とも言うべき想いは、肉体を求め、そして恋しい恋しいお前様に、逢いたいと、望むから。
 実に怖ろしきは、本当は、恋心かも知れぬ。
 人を想う想いこそが、人を人ならざるモノへと変化させるのだ。
「俺は…前世では、侍だった。そして兵藤と磯谷、前世では父親と息子であった彼らに仕えていた。俺は、誓ったのだ。前世で、磯谷………幸継様をお守りすると」
 ――――誰に?
 それは自分だけが知っておけばいい。
 そう。一番最初に、藤の花に宿る精と出逢い、恋をしあったのは、前世の彼であった。
 しかし彼は侍。忠義を尽くす。
 その想いゆえに身を引き、
 短い恋は終わり、
 彼女は幸継を愛した。以後、長く続く恋をした。
 そしてその彼女に、あの日、乱心した父親が、密かに同盟を結んでいた敵方であったはずの武将と幸継を殺そうとし、
 だから彼は父親…前世の兵藤を斬り殺して、幸継を連れて、逃げた。
 それはかつて愛しながらも守ってやれなかった藤の花の精への、それでも誓い、見せたいと想った、情。
「俺は守りたかったのだ、幸継…磯谷を」
 野々宮修二は血を吐くようにそう言った。
 そして事は、動く。
 恵美の悲鳴が上がった。
 この部屋が、大きく激しく揺れた。巨大な地震に襲われたかのように。
 そして襖が弾け、誰かが廊下を走っていく音。
 誰も居ないのに。
 いや、見えないだけだ。
 兵藤が走っていった。
 今世でこそ、藤の花の精、その生まれ変わりと結ばれるために。
 ――――宮下幸乃と、結ばれるために。
 三下の悲鳴が上がる。
 そしてセレスティが杖をつき、結界が破られたその部屋から庭に出れば、彼女を腕に抱く兵藤が居た。
 その魂は妖怪化し、鬼となった彼は、邪な嬉に塗れた笑みを、その顔に浮かべていた。
 それは執着の、成れの果て。
 故にセレスティには微塵の情けも容赦も無い。
 その手には水の剣が握られている。
 それの切っ先を鬼へと向ける。
「逃げられはしませんよ」
 それは慢心でも、虚偽でもない。
 歴然たる事実。
 セレスティ・カーニンガムを前にして、もはやそれがその業を深める事は、否。
「終わりです」
 鬼は咆哮を上げた。
 それは宮下幸乃を片腕で抱き、そしてもう一方の鍵爪状に湾曲して爪が伸びている右腕を振り上げてセレスティに襲い掛かってくるが、
 しかしセレスティの剣を持っていた右腕が優雅に弧を描くように動いた瞬間、鬼のその腕は消し飛んだ。
 そして水の剣は、水の鞭となり、しなやかに軌道を変えたそれは、鬼のもう片方の腕も落とし、宮下幸乃は草間によってキャッチされ、草間は鬼から距離を取る。
 鬼の両腕はすぐさま再生された。しかしそれはグロテスクな腕だ。
 怨念と苦痛、怒り、哀しみが、その鬼を進化させる。
 もっと強く、もっと残酷に、もっと昏い、闇の権化に………
 しかしそれを冷酷にも感じる冷たい瞳で見据えるセレスティは言った。
「それほどまでにキミは闇を求めるが、しかしその想い以前に抱いていた想いを、キミはまだ持っていますか?」
 それは憐れんでいるようにも聴こえた。
 だが、寛容は、無い――――。
 転瞬、鬼が上げた咆哮は、
 果たして暴走する感情の音声化か、それとも………
 ―――――慟哭であったのだろうか?



 ただ、
 ああ、お前様の想いはわかるよ。
 逢いたい。
 逢いたいよね。
 逢いたい。
 私も逢いたかった。
 幸継様に。
 あの方に。
 だけど私はそれは今世の私に任せよう。
 だから私はお前様を連れて行こう。
 遠い遠い地。
 光も無い、冥府の奈落の底へと。
 お前様を連れて行こう――――



 セレスティに憑依していた藤の花の精霊は、美しい舞を舞いながら鬼へと近づいていく。そして鬼と身体を重ね、艶やかな指先で鬼を捕まえながら、ふと野々宮修二を見て、嫣然と微笑んだ。


 そうしてそこにはただ気の早い蛍が飛び交い、そしてどこからか飛ばされてきたのか、淡い燐光と共にまるで舞を舞うかのように藤の花の花びらが夜に舞っていた。
 野々宮修二の声を押し殺して泣く声と共に。



【epilogue】


 草間興信所。
 そこに宮下幸乃は居た。
 お茶を出しに来た零は、彼女がつけている香水の香りを「良い香りですね」と褒め、
 どこか感慨深そうに宮下幸乃は、「昔から藤の花を見ると、なぜか懐かしくって、そしてとても寂しくって、そして思っていたんです。ああ、早くこの花を、あの人と一緒に見たいな、って。顔も名前も知らない…だけどずっと待ち焦がれて、探しているあの人の事を胸に思って。それでその人に見つけてもらえるように藤の花の香水を」
 それは事件が起こった翌日であった。
 草間武彦と野々宮修二は警察の事情聴取のためにここには居ない。
 そしてまた、野々宮修二もそれを望まなかった。
 今、彼女の目の前にはセレスティが座っている。
 そして彼は、とても優しく穏やかな表情で、彼女にこう訊ねる。
「その人に逢いたいですか?」
「はい。逢いたいです」
 彼女は頷き、そしてセレスティも頷いて、零に視線を向け、
 その視線に頷いた零は、興信所の扉を開けて、
 入ってきた彼、磯谷祐平は、どうして自分がここに呼び出されたのか、それを理解できない表情でいたが、宮下幸乃を見つけると、頬を涙で濡らし、
 そしてそれは宮下幸乃も一緒で、
 ついに逢いたくって、逢いたくって、逢いたかった人と出逢えた二人はしばらの間、涙を流し続けた。


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【 1883 / セレスティ・カーニンガム / 男 / 725歳 / 財閥総帥・占い師・水霊使い】

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■         ライター通信          ■
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 こんにちは、セレスティ・カーニンガムさま。
 いつもありがとうございます。
 このたび担当させていただいたライターの草摩一護です。
 今回もご依頼、本当にありがとうございました。^^


 セレスティさんを書けて、本当に幸せでした。^^
 いかがでしたか?
 プレイングとは少しだけ設定が違う感じで、生まれ変わった娘は前面には出てこずに、その前世での残留思念と、そして野々宮修二がキーとなる訳ですが、
 最初にプレイングを読んだ時はすごく切ないお話で、健気な女の子を書こうかしら? とも思ったのですが、色々と伏線を張って、こう、PLさまを悩ませて、ドキドキさせるのも良いかな? と悩みまして、
 切なくって、じれったいお話と、
 今回のお話、どちらにしよう? と悩んだのですが、やはり久々にセレスティさんらしさが前面に出る今回のお話が良いな、と、お任せのお言葉に甘えてしまい、こうして本作が書きあがった訳です。^^
 切ない、という感は、でも残留思念や、庭での彼女と野々宮のシーン、そういうので表現できましたでしょうか?
 前世の因縁、縁、それが絡み付いて、今世での運命を翻弄するこのお話に少しでもドキドキとしてもらえていたら嬉しい限りです。
 人間関係としましては、野々宮修二と兵藤圭吾、宮下幸乃は同じ大学で、という感じで繋がっていて、
 野々宮修二と兵藤圭吾、そして磯谷祐平は同じバイトで知り合った、という感じです。
 野々宮は兵藤をずっと監視していて、そして監視しつつ磯谷と宮下をくっつけようとしていたけど、それを今度は兵藤に邪魔されて、と。その果ての事件だったのです。
 ちなみに前世の記憶を持っているのは野々宮だけで、兵藤は無意識の魂の執着ゆえに宮下に惹かれ、死んだ時に初めて全てを思い出した、と。ダイイングメッセージで磯谷を貶めようとしたのも、無意識なのです。


 それでは今回はこの辺で失礼させていただきますね。
 ご依頼、本当にありがとうございました。
 失礼します。