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<東京怪談ウェブゲーム 神聖都学園>


音楽室の怪6:ヴァイオリンは甘いモノが好き?

------<オープニング>--------------------------------------

 夏。
 SHIZUKUにとっては大切な季節だ。
 都市伝説情報が沢山入ったり、怪談イベントが一杯あったりするから。
 一方、響カスミには悲しい季節。
 都市伝説情報が沢山入ったり、怪談イベントが一杯あったりするから。

 と、学校には付き物であるのが、七不思議。
 もう学校が学校なので七不思議とは言えないほど沢山あるし、大体がガセだったり、解決していたり。
 音楽魔神の音痴な歌だってそうだったし。

 しかし、7を保っている。これも不思議だ。多分、解決したらその後釜が湧き出てくるのだろう。と思いたい。
 その一つとしてあがったモノが……
 ヴァイオリンである。
 出来が今の名だたる名工に匹敵するぐらいの楽器であり、音色は人を魅了すると言う。
 しかし、かつての名工は甘い物好きだったらしく、このヴァイオリンは甘党の人でないと、うまく同調してくれないとか何とか。
 つくも神の一種か? 呪いか?
 もしかしたら、中に新たなナマモノが……?
|Д゚) うわ かわうそ?作ったおぼえなし
 

 SHIZUKUは言った。
「そのヴァイオリンを奏でられる人を捜そうよ。良いメロディだろうなぁ」
 カスミはぶんぶん首を振る。
「な、何を言っているんですか! アレは大切に保管しなくてはなりません」
「どうして〜?」
「えっと、それはなんでしょうか……アレを弾くと良くないことが……」
「ほほう」
|Д゚) ほほう
 呪いのような良くないこととか、不思議なこととか、SHIZUKUにとっては目を輝かせる事柄だ。
 今日も又音楽室で、謎の宴会が……というわけである。
 しかし、
「む、余はでないし、好きにしてくれ。夏の日差しはお肌の天敵!」
 と、音楽魔神の方は棺桶に閉じこもって眠っている。



〈あつまるのです〉
 神聖都学園の放課後に、響カスミは、とある、ミルクホールでお茶を飲んでいるとある女性と待ち合わせしていた。
「お待たせしました〜」
「いえ、お忙しいのに、来てくださってありがとうございますわ♪」
 と、待ち人は鹿沼デルフェス。
 本来なら、食事をとれないのだが、彼女はある事件により普通の人間と同じように飲食が出来る。紅茶である。仄かに、ダージリンの特有の香りがする。
「何やら困ったことになったと聞きましたが。どうされたのです?」
 と、デルフェスがカスミに尋ねた。
「じつは、曰く付きのヴァイオリンを奏でるお茶会を開こうと言うことがありまして……SHIZUKUちゃんが発案、アシストがあの小麦色です……」
「あらまぁ」
 SHIZUKUが良からぬ事をたくらむのはいつものことだ。不思議現象の真相を突き止めずには居られないのである。危ないことが怒っても懲りないので半ばあきらめている人はいるだろう。
 まず、こうなった課程は、SHIZUKUの押しに負けた、といっても差し支えない。
「それでは、わたくしも参加致しますわ♪」
「え? そ、そうなんですか?」
 人がいなかったら、決まらないと思っていたカスミだが思わず声が裏返る。
「私が守ります。それに、呪いと言っても、それほど気にする物ではないと思いますわ。何かあったらわたくしが、お守りします」
 にっこりほほえむデルフェス。
 どうにかして止めて欲しいカスミの思惑からはずれてしまう。しかし、デルフェスがいれば何やら安心感があった。


 制服姿の榊船亜真知。
「楽しそうですねー」
 と、調理実習室にてクッキーを作っている。ほかにはシュークリーム用の生地は発酵待ちだ。
|Д゚) うわ! 実際見てみたい!
 とか、小麦色が謎の言葉をどこかで叫んでいるが。さぞかし可愛いのだろう。ちなみに、彼はこの場には居ない。
「楽しそうなことをするのですね♪」
「うん、どんな音色になるかとか、色々気になるの!」
「ですねぇ。本当に同調しないと無理などなら、一種の賭でもあります」
 と、クッキーの香りが実習室を満たしてくる。
「あ、クッキー作っているの? 味見したいなぁ」
 と、窓から顔を出す通りすがりの亜真知のクラスメイト数名。男女混合グループのようだ。
「どうしましょう。これはお茶会用ですから……」
「うーんこれだけ居ると問題だよね」
「えー。なら、私たち(俺たち)もいくー」
 と、増えてしまった。

|Д゚) 美桜美桜大丈夫?
「え、だ、だいじょうぶです」
 と、深呼吸する神崎美桜。
 加登脇美雪とのカウンセリングに疲れているのか。まだ精神が不安定のようだ。
 過去のことを向き合うには勇気がいると言うことを、かわうそ?と加登脇から教わったが、これからどうするかなんて話からわからない。
|Д゚) おもろい、ヴァイオリン、ある
「そうなんですか?」
|Д゚) あい。それを弾くお茶会。参加する?
「いいですね♪ お呼ばれします」
 と、にっこりほほえみ、かわうそ?を抱き締めた。
|Д゚*) ←幸せそうなナマモノ


〈14音楽室〉
 さて、カスミ、SHIZUKU、デルフェス、亜真知、美桜のほか、数名のクラスメイトがこの薄暗い教室にティーセットも用意して、まったりお茶を飲んでいる。
 ステージの方には、テーブルがあり、楽器ケースが置かれている。
「これが、曰く付きの甘党ヴァイオリンですか?」
「見た目普通だよね?」
「聴いてみたいよねぇ」
 と、色々話が弾む。
 亜真知はこっそり、ヴァイオリンをスキャンするのだが、これといった呪いという類はない。普通に思いのこもった楽器だ。その噂はガセだったのでしょうか? と首をかしげる。
「うーん、何かあると思うんだけどなぁ」
 SHIZUKUが色々見てみるが、弾き方を知らないので、弾くことはない。
 引ける人に弾いてもらうそれが良い、というのが彼女の考えだ。
「先生 お願いします!」
「ええ?!」
 当然そうなる。そうでなきゃ始まらない。

 一方神崎美桜とかわうそ?とそのほかはというと、カスミとSHIZUKUのやりとりを身ながらお菓子とお茶を楽しんでいた。
「楽しそうですね。あ、おいしいですか?」
「うん、美味い」
「おいしい♪ すごいねぇ。今度教えてくれませんか?」
 美桜が作ったのは、九州の紅芋をいっぱい使ったスイートポテトと、シフォンケーキにモンブランである。なかなか好評である。
 彼女はあまり人と接することが得意ではないために、おどおどしているが、かわうそ?のおかげである程度、輪にとけ込んでいるように見える。かわうそ?と 愉快な仲間達曰く「自然のままで」というのが良いらしい。
 しかし、彼女はかわうそ?に対してのみ、心を開いていないらしく、かわうそ?をよく見ている。が、かわうそ?は無表情というかよくわからない表情で、「大丈夫」と訴えているようだ。
「えっと、その、今度……作り方を……教えますね」
「やったぁ! ありがとう!」
 勇気がいるのである。
 自分から……。

「今から先生が見本見せてくれるよー!」
 SHIZUKUの一声で、皆がカスミを注目する。
「カスミ様、がんばってください!」
 デルフェスが応援する。
「では、行きます」
 と、有名どころである曲を弾いた。
 さすが音楽教師をすることもあるし、甘党という話から、かなり上手に退けたと思われる。観客からは拍手喝采だ。
「上手く同調できたのですね♪」
 亜真知はぽつりという。
「せんせいすごいー」
 と、その他大勢は拍手する。
 照れてしまうカスミ。
 その隅の方では、デルフェスは少し残念そうにしていた。
|Д゚) ? どした? ゴーレム
「良い曲に感動はしたのですが魔法の魅了が効かないのは悲しいのでわ」
|Д゚) 恍惚したかったのね……
|Д゚)ノ なでなで
 ナマモノに慰められても……と苦笑するデルフェスさんであった。

 さて、亜真知は、お菓子作りの神様なので、
「お菓子の方に専念してね、亜真知ちゃん」
 と、SHIZUKUに言われる。
「はい、わかりました」
 そう、クラスメイトにも好評だ。まあ、神様だからアレなのだが。
|Д゚) 万能、時に……
|Д゚) いや、まあいいか
 亜真知自身、弾く気はなく、大きな事件にならないためのガードのような物としてにっこりこの雰囲気を楽しんでいる。前回、神崎美桜が肝試しで暴走している件もあるのだ。
「次誰か弾きたい人――」
 と、数人チャレンジしたが、技術がない、またはそれほど甘党ではないため、余りよい音は鳴らなかった。
 しかし、それは杞憂に終わる。人との交流に慣れ、精神的に楽しくなってきた美桜が、
「あの、私も弾いても良いでしょうか?」
 と、効くと皆は快諾する。
 どきどきしながら、弾くがとても良い旋律。さらに盛り上がりを見せた。同調し、彼女も楽しく弾けたのである。
 弾き終わると、皆はぼうっとしている。美桜はきょとんとしてどうなったのか記憶にない。
「ど、どうなったのでしょうか?」
|Д゚) あ、良い音色すぎて、皆ぼうっとなっている。
「え? ええ? どうしましょう」
「大丈夫ですわ。起こしましょう」
 精神耐性のあるデルフェスと亜真知は、皆を起こした。
「すごい……」
 と、我に返った参加者は拍手喝采で美桜をほめたのであった。
「え、っと」
 なんか悪いことをしたような気がするのだが、皆が喜んでくれる。それがとてもうれしかった。


〈恐怖の旋律〉
 皆が笑いながら色々話をしている。このヴァイオリンのこと。お菓子のこと。夏はどこに行こうかと。もう、真相を確かめる必要性が無くなり、ゆっくりすることになったのだ。確かに甘党の人でないと上手く弾けないと言う不思議な楽器と言うことさえわかればいいわけだし。不思議を究明するのは後々である。
「では、わたくしが、弾きたいですわ」
 と、デルフェスがたった。
「おおお」
「おねえさん。弾けるんだ」
「はい、興味がありますし。一通りは弾けるのです」
 にっこりほほえむ。
 皆が見守る中、デルフェスはヴァイオリンを手に取った。そして、構える。
「どんなんだろね」
 まつ。
 そして一番有名どころの楽譜をめくって……デルフェスは弾いた。

 轟音。悲鳴。騒音。
 耳という器官を持っている生き物なら絶対に逃げ出したくなるぐらいの音。
 なんと、亜真知がこっそり張っていた、結界までも破壊する。魔の旋律。恐怖の不協和音。
 逃げ出したい。しかし、固まって逃げられない。
 あの、狂気を歌うようなフルートの曲に匹敵する。一部の指を絶対に使わないと言う、曲。

 演奏が終わった。
 そこには、恐怖で凍り付いた人だけが残っている。
「? どうされました? え? まさか!」
 同調しなかったために、この参加者の中で最悪の旋律を弾いたのである。
 皆が我に返るのは、1〜3分は要しただろう。
 これは、いくら耐性がある存在でも、耐えられない、恐ろしい音だったのだ。



〈後のそのヴァイオリンは?〉
 デルフェスの件もあり、物の見事に気を失い、前後を忘れたカスミ先生。
「え? そ、そんなことやったのですか? わ、私どうしよう! しし、始末書書かなくちゃ!」
 と、色々仕事に追われる。
 かなりしょんぼり気味のデルフェスをよそに、美桜と亜真知はお菓子談義に鼻を差消せているところ見かける。
 もちろん、小麦色も一緒だ。
「この、クリームを作るには……これが」
「そうですね。それだと甘みにさっぱり感が……」

 資料室に丁寧に置かれているヴァイオリン。しっかり鍵もつけられ、「取扱注意」のシールも貼られて封印されている。
「確かに、あのヴァイオリンは甘党やそれにふさわしい人でないと無理みたいだね」
 と、SHIZUKUも一応の真相究明できたので満足のようだ。
 もしかすると、その名工の一品はどこかにあるかもしれない。探し出して甘党オーケストラなんか楽しそうだよね。と思ったSHIZUKUだった。


 夏は始まり、そして、SHIZUKUはまた楽しみを探し続ける。

END
■登場人物
【0413 神崎・美桜 17 女 高校生】
【1593 榊船・亜真知 999 女 超高位次元知的生命体・・・神さま!?】
【2181 鹿沼・デルフェス 463 アンティークショップ・レンの店員】


■ライター通信
こんにちは、滝照です
「音楽室の怪6」に参加して頂きましたありがとうございます。
誰が恐怖の旋律を弾くかというところもありましたが、今回はデルフェス様に決まりました。亜真知様は弾くという行動をとられていませんので、弾く描写はされておりません。美桜様は、今回、行動がデルフェスさんと似たような事が被ったために、良い結果にさせて頂きました。
 楽しい(?)お茶会を想像して書いたつもりで居ます。
 ふと、お菓子のことで、思ったことと言えば、調理実習で作ったお菓子などをもらった警官がない寂しい青春時代を過ごしたなぁと昔を思い出しました。はい。じっさい、そういうシチュエーションがあるのか私の中では謎になっています。

 では、またの機会にお会いしましょう。

滝照直樹拝
20060602