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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


夢の中の王子様 第一話

 静かな草間興信所内。
 零のお茶を啜る音と、武彦の腰掛けている椅子の背もたれがギィギィと軋む音、そして時計が時を刻む音。
 それらを聞きながら黒・冥月(ヘイ・ミンユェ)は手に持っている本のページをめくる。
 興信所の手伝いをしにここへ来たのだが、興信所の所長である武彦がタバコをくわえながら暇を持て余しているところを見ると、手伝う事は全く無さそうなので、仕方なく読書をしていたのだ。
 本に視線を落としていると、冥月の美しく、長い黒髪が垂れてきて邪魔になったので、それを払った。
 穏やかだ。平和だ。そしてヒマだ。
 だが冥月が百ページを越えた辺りのページをめくった時、ふと不穏な気配を感じ取る。
 影を操る事のできる冥月は、ある程度影を感知する事ができる。
 多少迷走しながら興信所に向かってくる影が二つ、そしてそれを追いかける影が多数。
 普通に考えるなら逃げている影二つが興信所に助けを求めにきているのだろう。
 そして、この手の事件で草間興信所が関わるとなると、大体怪奇事だ。
 怪奇な出来事にはつくづく縁があるらしい。
「……ふふ」
 気付かない内に小さく笑い声を漏らしていた。
 それに気付いた武彦が視線を冥月に向ける。
「どうした? 思い出し笑いはエロいヤツがする事だって言うぞ」
「思い出し笑いじゃない。……そうだな、草間。好い事と嫌な事、どちらから聞きたい?」
 漠然とした質問を投げかけられ、武彦は怪訝な顔をしたが、少し思案した後に
「じゃあ嫌な方から」
 と返した。
「嫌な方は、もしかしたら妖怪に襲われるかもしれない、って事だ」
「……また何かその手の事件かよ……。じゃあ好い事ってなんだ?」
「それに関連して依頼がもらえるかもって事だ」
「結局オカルトかよ。そういう話は別のところにっていつも……」
「そういう事は依頼主に言ってくれ」
 それはそうか、と武彦は頭を掻く。
 その後、武彦はくわえていたタバコを灰皿に押し付け、視線を上げた。
「で? 詳細は?」
「文句を言っておいて聞くのか」
「聞くだけ聞いてやるさ」
「……詳しい事はわからないが、小さめの影が二つ、何者かに追われているらしい。追っている方の影に異形が見える」
「小さめの影って事は子供か?」
「おそらくな。感じからして少年と少女一人ずつだ」
 武彦は顎に手をあて、ふむと唸る。
「なるほど、何者かに追われる少女、ね」
 意味深に呟き、小さく含み笑いをする。
「どうするんだ?」
「俺はどうもしないさ。営業はガラじゃなくてね。客の方に出向くなんてのはしないんだよ」
「出不精が。いずれのたれ死んでも知らないからな」
 軽い冗談を交わしている間にも事態は変わっていく。
「……追われている方の体力が尽きかけているな。このままでは拙いぞ」
「兄さん」
 零からも威圧感タップリの声をかけられる。
 正直、今、財政的にピンチなのだ。どんな依頼でも受けたい。
「ああ、わかったよ。助ければいいんだろ」
「私は先に行く。依頼でなくてもここに連れて来たほうが良いだろう」
「そうだな。じゃあ俺たちはこの辺りで待ってる。知り合いにも連絡して助けてもらおう。もうすぐ帰ってくる頃だろうしな」
「誰かあてが?」
「まぁ、戦闘には役に立ちそうに無いが、迷子をここまで送り届けるぐらいは出来るだろ」
 そう言って武彦が携帯電話を取り出すのを横目に、冥月は影を操り、移動を開始しようとする。
「あ、ちょっとタンマ」
 現場に向かおうとしたところで、冥月は武彦に呼び止められた。
「なんだ? まだ何か?」
「いや、時々心配になるんだよ」
 やけに静かな口調で話し始める武彦。
 冥月の方も真剣に耳を傾けてしまう。
「お前ってさ、結構男勝りなところあるだろ」
「何か問題でも?」
「いや、追われている側に女の子が含まれているって言うから、手を出さないかな、とグアっ!」
 語尾がおかしいのは冥月に影を変形させた巨大ビンタを喰らったからだ。

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 時刻は夜へと向かっている。
 太陽は顔の半分以上を遠景の影に隠し、その光を紅くしながらズブズブと潜っていく。
 そんな暗くなりつつある街を、少年は少女の手を引いて走っていた。
「はぁ、はぁ! っくそ! なんなんだよ、アイツら!」
 人ごみを掻き分け掻き分け、それでも少女と繋いだ手は堅く。
 少年の名は三嶋 小太郎。
 中学生でありながら特異な能力を持った少年である。
 彼はその力に押しつぶされず、誰かの役に立てるために使おうとしている。
 日々、その精神を忘れずに居た彼の前に起きた事件、それがこの少女とそれを追う数人の大人だ。
「ねぇ、キミ! なんだってアイツらに追いかけられてるのさ!?」
「……知らないわ」
 必死に息を切らしながら走っている小太郎とは対照的に、少女の表情は涼しげだ。
 小太郎が聞いた少女の名はユリ。
 ついさっき初めて会ったばかりの彼女は苗字を名乗ってくれなかったが、小太郎はそんな事どうでも良い。
 とりあえず、目の前に困ってる人が居たら助けずには居られない損な性分なのである。
「とにかく、早くアイツらを撒かないと……」
 小太郎の表情にはかなり疲れが見えている。
 今、あの追いかけてくる大人達に追いつかれると、やられるのは間違いない。
「ど、何処へ行くんだっけ!?」
「……草間興信所。もうすぐ着くわ」
「知り合いでも居るの!?」
「……そう言うわけじゃないわ。でも、そこの探偵さんはオカルトの話に詳しいらしいから」
 小太郎はユリの手を引いて、後ろから追いかけてくる大人及び、大人たちの操る妖怪から逃げ、草間興信所を目指していた。

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(ここか……)
 影の中に潜みながら冥月は逃げていた二人の子供を確認する。
 どうやら逃げるのに疲れたようで、少し域を落ち着けているようだ。
 話しかけるタイミングとしては良い所だが、気にかかる事が一つ。
 先程、逃げていたのは間違いなく子供二人だったのだが、今、その場に居るのは三人。
 もう一人、黒い服を着た少女が居たのだ。
(少し様子を見るべきか……)
 あの黒い服の少女からは並々ならない力を感じる。
 下手に姿を現さない方が良いだろう。
「そこの二人!」
 そうして冥月が様子を窺っている時、買い物袋を両手からぶら下げた女性が、路地の奥から現れた。
(アレは……シュラインか?)
 買い物袋を提げた女性は草間興信所の事務員でもあるシュライン・エマ。
 度々興信所に手伝いに行く冥月とシュラインは顔見知りだ。
「あ、あら? 三人だったかしら?」
「お、追っ手か!?」
 シュラインの妙に怪しい姿を見て、少年が少女二人を庇うように立つ。
「ち、違うの。私は貴方達を追ってるわけではないわ」
 シュラインは買い物袋を持った手を横に振って否定する。その度買い物袋がガサガサとやかましい音を立てた。
「私は草間興信所の者よ。貴方達を興信所に連れてくるように言われているの」
 連れてくるように言われている、ということは武彦が指示したのだろう。
 なるほど、武彦の言っていた知り合いとはシュラインのことか。
「信じてもらえないかもしれないけど、本当よ」
「ああ、そうなのか」
 少年はシュラインのことをアッサリ信じたように警戒を解く。
 後ろに居る黒い服を着た少女がクスリと笑ったような気がした。
(あの少女……何者なんだ?)
 影を探ってみても人間とは思えない。
 異形に近い感じだが、完全にそうとも言い切れない気もする。
 正体が掴めない内は様子見に徹したい所だが、
(そうとも言い切れない、か)
 近付いて来る人影がいくつも感知された。多分、少年と少女を追いかけてきた奴らだろう。
「し、信じてくれるの?」
「嘘じゃないんだろ?」
「そうだけど……ま、まぁ良いわ」
 多少面を喰らった顔をしていたシュラインはすぐに調子を取り戻し、きりっと表情を整える。
 ただ、両手の買い物袋が格好付かないが。
「さぁ、貴方達、こっちよ!」
 シュラインが背を向けて走り出そうとするが、行く手を阻まれる。
「ちょっと待つんだ」
 冥月は影の中から出て、シュラインの前に立ち、その行く手を塞ぐ。
 シュラインは一瞬身構えたが、すぐに見知った顔だと理解し胸を撫で下ろした様だ。
「冥月さんじゃない。驚かさないでよ」
「勝手に驚いたのはそっちだ。ともかく少し落ち着け」
 冥月はシュラインから買い物袋を受け取り、それを影の中に沈める。
「この袋は預かっておく。持ったままでは行動しづらいだろう。後で興信所で合流した時に渡そう」
「ありがとう。助かるわ」
「追っ手が迫ってきている。急いで興信所に向かえ。私がここで足止めをする」
「わかったわ」
 腕が解放されたシュラインは両腕を軽く振り、凝った筋肉を多少ほぐす。
「改めて、行くわよ。ついて来なさい」
 シュラインは子供達に声をかける。
 少年と、彼に手を引かれた少女は女性に続くが、正体不明の少女は動かなかった。
 それにシュラインは首をかしげて足を止めた。
「どうしたの?」
「私もここで彼らを足止めします。彼女一人でお相手するには少々数が多そうですから」
 いつの間にか冥月の隣に居た正体不明の少女が言葉を発する。
 だが冥月は威圧感を込めて返す。
「見くびるな。私一人で十分だ。子供の力は借りない」
「あら、これでも長く生きているんですよ。子供ではありません。お手伝いさせていただけませんか?」
 そう言って少女が冥月に視線を移した瞬間、冥月の頭の中に何かが入ってくる感覚を覚える。
 例えて言うなら脳に電波受信機を取り付けられかけた、という感じだろうか。
 あのまま少女の瞳を見ていたら、どこかにあるリモコンで良いように動かされそうだった。
「ふんっ、勝手にしろ」
 冥月は少女の視線から逃げるように顔を背けた。
「ええと、じゃあ私はこれで行くわよ。そっちの黒い娘は……ええと」
「魅月姫、黒榊・魅月姫(くろさかき・みづき)です。興信所でまた会いましょう。シュライン・エマさん」
 魅月姫がそういった瞬間、向こうの路地の入り口に多数の人影が見えた。
 全員が同じような黒いスーツを着ている。
 それに異様な殺気まで放っている。
「追っ手だな。シュライン、早く行け」
「ええ、わかった。魅月姫ちゃんも気をつけてね!」
 シュラインは少年と少女を連れて興信所に向かった。
「さて、どうしたものかな」
 冥月が呟いて前方を見る。
 視線の先には先程、子供二人を追っていた時よりも多い。
 ざっと十二、三人という所か。
「どうします? 黒・冥月さん?」
「……どうして私の名を知っている?」
 名乗った覚えは無い。初対面であるはずだ。
「私、大体の魔法は使えますから。個人情報保護法なんて易々と突破できます」
 傍から見たら無表情な魅月姫にプライバシーなんて無いなんて言われると、何とも気味が悪い。
「で、どうします? 何をお手伝いしましょうか?」
「黙って見ていろ。すぐに片付く」
 そう言って冥月が一歩踏み出した瞬間、前方の黒い一団から妖魔が飛び出してきた。

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 先頭に立つ妖怪に、横にあるビルの壁から影が刺さる。
 棘状に加工された影は、それが実体を持つかのように妖怪の頭を見事に貫いていた。
 大して間をおかず、その妖怪の後ろに居る妖怪に影が刺さる。
 またその後ろにも、その後ろにも。
 そうして五秒とかからずに、目の前の妖魔は全て影によって串刺しにされた。
「日は大分陰っている。ここでは私の独壇場だ」
 影を操る術を使う事ができる冥月にとって、全体が日陰になっているこの路地はとても戦いやすい場所だ。
 操るための影には全く困らない。
 冥月は念のために、もう二、三本ずつ妖怪に影の棘を刺した。
「これで貴様らに攻撃の術はあるまい。おとなしく捕まってもらおうか」
 そう言って黒服たちの足元にある影を操り、身動きを封じようとしたのだが、何故か術が発動しない。
「……っな!?」
 突然の事に驚いた冥月。
 術が何かに妨害されているらしい。
 いや、妨害と言うよりは発動が受け流されている。
「あの札……」
 その時、魅月姫の呟きが聞こえた。
 そして彼女の視線の先を追いかけると、黒服の一人が地面に札を貼り付けている。
「あの札、何かありますね」
「あの札の所為で私の術が発動しないのか」
「おそらく。ですが、効果範囲はそう広くないでしょう。あの札から半径五十メートル程度でしょうか」
「そこまでわかるのか?」
「ええ、あの妖怪たちがその程度の距離で消えていますから」
 よく見ると黒服たちの放った妖魔が半数ほど消えている。
 それはあの札から確かに五十メートル程度の範囲に居た妖魔だ。
「なるほどな。アンチスペルフィールドか何かか。結界の一種だな」
「あの内側に入れば術や能力は使えそうにありませんし、あの中に術を発動させるのも無理そうですね」
「それは向こうも同じだろう。奴らが結界の外に出るのを待っても良いが……」
「そう悠長に構えても居られませんね」
「だな。シュラインの方にも怪しい影が近づいている。どう考えてもこいつ等は時間稼ぎ要員だ」
 冥月の能力である程度の範囲の影は把握できるのだが、先程興信所に向かったシュラインたちの近くに怪しい影と異形の影が確認できる。
 どうやら敵はかなり大きな勢力らしい。
 今、冥月と魅月姫の目の前に居る敵の数も相当なものだが、シュラインの方へ向かっている人数も少なくは無い。
「あの札を早々にどうにかしよう。お前はここで待っていろ」
「あら、私もお役に立てますよ。こう見えても体術にはそれなりに自信があるんです」
「……どうなっても知らないからな」
 元アサシンの冥月はあの程度の連中に遅れをとるとは思っていないが、この少女はどうなのだろう。
 体術に自信があるとは言え、見た目は子供だ。
「危なくなっても助けないからな」
「ええ、お構いなく」
 黒服が懐から拳銃を取り出したのを見ても、微塵も怯まず、二人は黒服たちに駆けて行った。

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 先頭の黒服が銃を構える前に、冥月が銃の頭を押さえ、発射口を下に向ける。
 それと共に黒服の顎に掌底。更に腹部に蹴りを入れ、銃をもぎ取る。
 やっと発射準備が整った黒服は横一列に並び、銃をこちらに向けてくる。
 サプレッサーも着いていて、準備が良い事だ。
 構わず、冥月は姿勢を低くして手近な黒服に音も無く詰め寄る。
 そして銃を持っていた右腕を掴み、力任せに捻る。
 苦痛の声を出す黒服に構わず、冥月はその黒服を盾にしてこちらに向けられている銃から身を隠した。
 向こうもそれなりに仲間意識があるのか、黒服に向けて銃を撃ってこず、冥月は黒服を盾にしたまま札に近付いた。
 だが、その前に、いつの間にか魅月姫が札の真上に立っており、それをペリっと剥がしていた。
 どうやらあの少女、本当に見かけによらず、腕が立つらしい。
 多少面を喰らった冥月だが、札が効力を無くしたのを確認し、瞬時に黒服たちの影を操る。
 そうして冥月は黒服の頭だけ残して、全身を影でぐるぐる巻きにしてやった。
「これで良し、と」
 しめて黒服十三名。全て拘束し終わった。
「さて、情報を引き出せそうな人間を興信所に連れて行くぞ」
「ええ、わかってます」
 何故、少女を追っていたのか、気にならないわけではない。
 それにあの少女が興信所に依頼してくるのなら彼女についての情報は多い方が良い。
 そのために、黒服を一人、興信所に連れて行こうとしたのだが
『つれていかれちゃあ、困るんだなぁ』
 何処からともなく声が聞こえ、一瞬黒服たちが全員痙攣したかと思うと、そのまま動かなくなってしまった。
「死んでる……? いや、気を失っているのか?」
「このままでは役に立ちませんね。何か術がかかって昏睡状態に陥っているようです」
「っち! なんなんだ、いったい!」
 口から情報を聞けないとなると、何か持ち物で身元を割り出せれば良いのだが、そんなモノを持ち歩くようなヘマをする輩も居ないらしい。
 この黒服たちからの情報は皆無と言って良いだろう。
「今はこの人たちよりもシュラインさんたちの方へ向かいましょう。そちらにも黒服さんたちが居るでしょうから」
「そうだな。……さっきの声も気になるが、今はその方が良いか」
 そう言って冥月は影に沈み、魅月姫は影の門を作り出して移動した。

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 魅月姫と冥月がシュラインたちと合流し、路地に一同が会した。
 その頃にはシュラインたちに襲い掛かっていた黒服たちは全て戦闘不能に陥っているようだった。
「よぅ、遅かったな」
 気を失っている黒服たちの真ん中に武彦が居た。
「草間! 来ていたのか?」
「ああ、ついさっきな。魅月姫も居たのか。また零のお茶でも飲みに来たのか」
「ええ、そのつもりでしたが、なんだか騒動に巻き込まれてしまって」
「どうせ、興味を惹かれて自分から首を突っ込んだんだろうが」
 そんな軽い挨拶を交わした後、武彦は黒服たちを蹴り飛ばす。
「お前らもこいつらに襲われたのか?」
「ああ、襲われた、と言って良いのかどうかはわからんがな。ほとんど苦労もせずに返り討ちにしてやった」
「こちらの方々も昏睡状態らしいですね」
「ああ。そんなに強く殴った覚えはないんだがな」
 黒服たちは全員意識不明の重体の様だった。
 一応救急車は呼んであるが、事情を説明するつもりはないので、早々にこの場を離れるつもりだ。
「この方々も、って事は貴方達が相手した黒服たちも?」
「ああ、妙な声が聞こえた後にこんな状態になった。持ち物からも何も情報は得られそうになかった」
「持っていた拳銃を調べれば何かわかりそうでしたが、あれだけ派手に暴れてしまうと人目もありましたから」
「一応、一挺持ってきたが、ここから奴らの正体を暴くとなると、少し時間がかかるかもな」
 シュラインの質問に冥月と魅月姫が答える。
 ただ気になるのはあの結界の札だろうか。
 ある程度術を無効にするらしいあの札がどうしても気になる。
 が、それも後で話そう。今は早く場所を移す方が落ち着けて良いだろう。
「なるほどな。情報源は無しって事か」
 武彦はため息を吐いて頭を掻いた後に、少女に向き直った。
「で、アンタが依頼人か?」
「……お願いが、あるの」
 少女はいつもの落ち着いた様子を少し崩して、心配そうな視線を少し泳がせた。
 その後、一呼吸置いて、口を開く。
「……あの黒服たちから、私を逃がして」
 切実な少女の言葉が路地に反響した。


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【4682 / 黒榊・魅月姫 (くろさかき・みづき) / 女性 / 999歳 / 吸血鬼(真祖)/深淵の魔女】
【2778 / 黒・冥月 (ヘイ・ミンユェ) / 女性 / 20歳 / 元暗殺者・現アルバイト探偵&用心棒】
【0086 / シュライン・エマ (しゅらいん・えま) / 女性 / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員】

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■         ライター通信          ■
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 黒 冥月様、シナリオにご参加いただきまことにありがとうございます! 『草間さんの所には美人が集まって羨ましい限りですねっ!』ピコかめです。(何
 第一話ということで、なにやらよくわからない様な回でしたが、楽しんでいただければ喜ばしいです。
 出来れば、次回も参加してくださると、俺的にはとてもありがたい。(ぉ

 ほとんど戦闘モードでしたね。
 影の能力も使いましたし、接近戦で体術も披露しましたし。
 前衛も後衛も出来るオールラウンダーは戦闘で役立って書きやすいですね。
 暗器なんかも使えばよかったかなぁ。
 でわ、次回も気が向いたら是非!