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<東京怪談・PCゲームノベル>


→ …ねこ?

 ――…バー、暁闇。
 これから開店準備に入ろうか――くらいの時間帯になっているそこで、何故か誰かさんの面影がある小学校一年生くらいの猫耳付けた小さな女の子が裏口勝手口なドアをばたりと開けている。…彼女にしてみれば『管理人』が不在でない限りそこは鍵が掛かっていない事は先刻承知。そんな訳で、困り果てた末にひとまずここに来てしまった…のだが。
 …その時点で若干の後悔が。
 でもまぁ、ドアを開けてしまった以上――そして鍵がかかっておらず開いてしまった以上まず『管理人』、即ち目的の人物はそこにいるのは確かな訳で。しかも十中八、九、ここのドアの開閉についてはどんな状況にあろうと速攻判別しているだろう人でもある訳で。
 そのままやっぱり止めたと逃げる事は諦めて、仕方無く中へと声を掛けてみた。
 恐る恐る。
「あの…」
 と、その声を聞くか聞かないかのタイミングでやっぱり顔を出して来た人が一人。
 無言のまま彼女を見下ろしている。
 …それはやっぱりここに住み付いている当の『管理人』――当店バーテンダーの真咲御言。
 数度目を瞬かせて彼女を見てから、まぁこんなところで立ち話もなんですからどうぞ、とあっさり中へと招く。

 …私の姿に疑問は無いのか。
 否、わかっていて疑問はひとまず後回しと言う事もあるか。
 …まさか気付いていないと言う事はあるまいな。
 いつも通りの言葉遣いだし。
 …けれどこの人は老若男女誰相手でも等しく言葉遣いは莫迦丁寧だった気もする。例外はと言えばごく僅かなもので。例えば昔の部下。例えば香坂さん。例えば空五倍子くん。…他、取り敢えず私には心当たりは無い。
 …。
 取り敢えず、私が私と気付いていない、なんて事は…無いと信じたい。
 場違いな迷子扱いされるのは、ちょっと寂しい…。





 で。
 御言に招かれるまま後に付いていくと、申し訳程度に簡易ソファにパイプの事務椅子テーブル、ロッカーにアイスボックス冷凍庫らしきものが置かれた殺風景な閑散とした部屋がドアを潜ってすぐあった。誰かの住んでいる部屋と言うより裏方の休憩室もしくは控え室、更衣室と言った趣。その奥に多分こことあまり変わらないんじゃないかと思える部屋がもう一つ(香坂さんがバイトに来る時はそちらが女性用更衣室になるのかもしれない)、それから厨房、多分倉庫。取り敢えずここから見えて判断が付くのはそのくらい。それ以上の設備は知らない。
 …後は表の店舗部分になるのだろうか。
 と。
 その部屋のソファのところにもう一人誰か居た。アイスボックスをがさがさ探っている。
 蓋の影に隠れていたその顔をひょいと覗かせると、その人物にもまた見覚えが。…御言の義兄、真咲誠名。
 誠名はそこに現れた小さな女の子――自分が借りている身体より更にずっと幼いだろう姿をまじまじと見てから、小さく肩を竦めている。
「…おーやおや。また随分と悩ましい格好しちゃってるじゃないの」
「…っ、何ですかっその言い方っ!」
「つまりは可愛いってンだから気にすんなって。…何か冷たいもん食ったり飲んだりするか?」
「…」
「つーかねーさん的にはやっぱり御言の珈琲がいいか」
 と。
 その誠名の言葉を聞いてから、改めて御言が口を開く。
「…やっぱり汐耶さんですよね」
 誠名さんもそう言ってますし。
「…はい」
 しょぼん。
 …て言うか改めてまじまじ見られると恥ずかしいんですけど。思いながら俯くと、それに合わせて頭に付いた猫耳もへたり。
「…」
「…」
 御言も誠名もそんな汐耶の姿を思わず凝視したまま、無言。…作り物なら何故そんな都合よく反応するのかその猫耳。
 何だか何とも言い難い沈黙が落ちる。

 ともあれ。
 汐耶さんと呼ばれたように、この女の子は紛う事無き綾和泉汐耶である。現在二十三歳になる都立図書館司書、筋が通らないと思えば何だか荒事上等げなやくざな方々にも人外にもテロリストにも敢然と立ち向かえる肝の座った中性的なクールビューティ。
 …の筈だが、何故かただいま幼児化中。
 中身では無く見た目がである。
 ついでに言うならそんなちんまりとした姿に、何故か黒猫の耳と――同様の尻尾が付いている。
 …それも何故か帽子を被っているのに、猫耳がその上に突き出ている。尻尾も服の上に突き出ている。
 何なんだ。これは誰かの陰謀か。
 …誰かさんが猫好きと知っての事か。
 今の汐耶の髮、子供特有の柔らかそうな髮質になっている。とは言えその黒髪はやっぱりショート、青い瞳の色も元の大人の時と変わらない。いつもの銀縁眼鏡も一応掛けている。…それは少しサイズが合わない違和感はあるが、大人も子供も頭の大きさ自体はあまり変わらないので…どうにか可能。
 服装を言うならば基本的に普段通り、と言うか普段着ているのだろう服をちまちま修正して何とか見られる形に着込んでいる模様。そして、駄目押しとばかりにちっこいリュックを背負っている。
「…あのぅ」
 困った声も心持ち舌っ足らず。
 何処から話したものやら当人ですら困惑気味であるらしい。
「…」
「…」
 御言に誠名、思わず無反応。
 …少しして。
 まず御言が口を開いていた。
「…ああ、すみません。…取り敢えずお好きなところに掛けて下さい。珈琲お持ちしますから。…いつもの通りで良いですか?」
 汐耶さん。
「あ、はい。…いつもの通りでお願いします」
「本当に構いませんか?」
「…何で何度も訊くんですか」
「いえ、良いと仰るならばそうしますけれど」
「?」
「まぁ、詳しい話はそれからと言う事で」
 少々お待ち下さい。そう残し、御言はその部屋を出て行く――そのまま、厨房へ。
 残された汐耶は言われた通り御言の言葉に甘え取り敢えずちょこんとパイプ椅子に座る。…座ってしまうとつま先程度しか足が付かない。その時点でがーんと俄かにショック。アイスボックスを漁っていた誠名がそんな固まっている汐耶を見、大丈夫かー? と声を掛けていた。それと共にテーブル上に取り出されていたのは何故かお誂え向きなナッツ系のちょっとしたケーキ菓子。…珈琲のおともにいい品である。
「御言が珈琲淹れてくれんならこれが良いだろ。…そーじゃなかったらあんみつとかの気分だったんだが」
「…甘党だったんですか誠名さん」
「んー? 甘いモンも辛いモンも美味けりゃ好きだが。不味けりゃどっちも好きじゃない」
「いやそれはそうでしょうけども」
「…そりゃそうと。そこを気にするくらいなら今さっき御言が念押しした理由、気付かねぇ?」
 内緒のお話。そんな感じでずいと汐耶の前に乗り出し、小声になる誠名。
 汐耶、そんな誠名の態度に何事かときょとんとする。
 猫耳がぴんと立っている。
 細い尻尾も立っている。
 暫し、間。

「…悪い」
「?」

 いきなり脈絡無く誠名に謝られ、汐耶は何事かと小首を傾げる。
 と。
 …いきなり手が伸びて来て。
 ぎゅー。

 …。

 慌。

「ちょ、ちょっとあの誠名さんっあああっあのっ!!!」
 …誠名、いきなり猫娘状態の汐耶を抱き締めている。
 セクハラ…と言うべきなのか何なのか何だか良くわからない。それは誠名当人は男だが、彼の現在使用しているこの身体は本来とある十六歳少女のもの故にあんまりそうとも限らない。…いやどうだろう。言い訳かもしれない。
 まぁ一応、事前に謝っていると言う事は…少なからず自覚があるのだろうか。

 と。
 ひゅ、と鋭く風を切る音がした。
 ほぼ同刻、汐耶の身体がそのまま前に伏せるような形に誠名に押さえ込まれた。どうも、初めに抱き付かれた時とは違い、何かから咄嗟に庇われるような形でもある。
 直後、とす、と軽いながらも何だか不吉な音が聞こえる。その源を何とか汐耶は確認しようと身体を起こしつつ振り返る。…小振りの果物ナイフが壁に確り刺さっている。その飛んできただろう軌跡を目で辿ると、投擲位置は部屋の入口。そこにはプレートの上にコーヒーカップが三つ。グラニュー糖入りのポットとミルク入りのポット。それらをウェイターかギャルソンかと言った風情で御言が持って立っている。
 となると、位置関係からしてナイフを投げたのはまず間違い無く御言。
 …但し、その佇まいは何だか全然、今ナイフを投げたと言う風では無いのだが。

「ししししし真咲さんっ!」
「大丈夫ですか汐耶さん。…誠名さん、幾ら可愛いからってそういう悪戯はあまり感心出来ませんよ?」
「…だからって手前刃物投げるか?」
「加減はしてますよ。…そもそも誠名さんがこの程度の物に気付かないで当たる訳ないでしょう」
「綾和泉のねーさんもいるんだぞ」
「大丈夫です。汐耶さんには絶対当たらない位置に投げてますので」
「…」
 そういう問題じゃないだろう。





 まぁ、何はともあれ汐耶から誠名をさりげなく引き離し、ついでにさりげなく二人の間を遮るような位置を確保、御言はパイプ椅子に腰を落ち着ける。…そしてテーブルに珈琲及びポットを並べてはいるが、何だか微妙に御言→誠名に向け警戒…と言うよりむしろ殺気に近いものが垣間見えるのは気のせいか。…気のせいだろう。多分。…気のせいとしておこう。
 ともかく、今の真咲兄弟の微妙に不穏な行動はさて置き、どうしてちっちゃな猫娘化しているのか何故ここに来たのか細かい話を汐耶から聞く前に…ひとまずコーヒーブレイク。
 …の、筈だったのだが。
 そこに至り、ちょっとした問題があったのは汐耶の方。
 それは――誠名と御言両方が密かに思っていた微妙な懸念がやっぱり的中していた、と言う事で。

 汐耶が自分の割り当ての珈琲を飲んでいる――飲もうとカップに口を付けている。
 が。
 そこでちびりと一口以下だけ口に含んでは見たが、その時点で汐耶は停止。
 カップを持つ手がぷるぷるぷると何だか震えている。
 震えているそのまま、カップを置いた。

 …ちなみにその珈琲、汐耶がいつもの通りと言うように――スタンダードなブラックである。
 メインで使っている豆や焙煎、挽き具合からして、苦味と酸味に仄かな甘味がバランス良く抽出されるものになる。
 が。
 これは、多分。

「無理すんなって」
 ぽつりと誠名。
「…」
 汐耶、憮然。

 …とってもにがい。
 のめない。

 これはきっと自分が今子供だからだ。
 自分が今ちっちゃいからだ。
 味覚まで変わるんだ。
 …悔しい。
 思わず、目が潤んでいる。

 そこに。
 少し遅れて。
 御言が何も言わずに、さりげなく砂糖のポットを取り上げていた。
 そして、自分の割り当てに当然のようにさくりと砂糖を入れている。それから、同じようにミルクも垂らした。
 汐耶は潤んでいた目を思わず丸くする。
 …御言もいつもブラックである。少なくとも、汐耶の知る限り。
 なのに御言は砂糖とミルクを入れくるくるとスプーンで溶くと、何でも無いように口を付けていた。
 それから、汐耶を見る。
「…いつものブラックではお口に合わないのなら。砂糖やミルクを入れるのはお嫌でしょうか」
「…」
「他にはキャラメルでも生クリームでも、ナツメグやシナモンでも…何でもいいんですけどね、少しずつ入れて今の汐耶さんにちょうど良い味に調整するのは、どうでしょう」
 今ここには取り敢えず砂糖とミルクしか持って来ていませんが――御用意しますよ。
「でも…でもでもでもっ」
 いつも美味しく飲んでるブラックの中に、砂糖やミルクを入れてしまうのはとっても勿体無い。
 そうしなければ飲めないだろう自分が何だか悔しくて情けない。
 …そうは思ったのだが。
 でも、その珈琲を淹れた当人が、目の前でそうやって飲んでいる。それは多分、汐耶の様子を見て気遣っての行動だろうと思う。そんな気遣わせてしまう自分が情けないとも思うが、同時にこの御言が他ならない珈琲の味を壊すような事をする訳も無くて。
 …少し、途惑った。
 と、汐耶がそう思った事がわかったのか、御言がゆっくり頭を振る。そして、汐耶の目を覗き込むようにし、悪戯っぽくにっこり微笑んで見せた。
「御心配無く。その程度で味わいが壊れるような珈琲は淹れてません」
 勿論、どうしてもブラックをと仰るなら苦味が抑えられるよう淹れ直しても構いませんが――取り敢えず良い折りですからいつものブラックだけでは無く、色々試して味わってみてはくれませんか?

 …汐耶、思わず停止。





 それから。
 結局、厨房から持ち込まれた各種スパイスやらトッピングが、先程誠名がアイスボックスから出したケーキ菓子と共にテーブルに当然のように並べられ――珈琲狂本領発揮状態(…)の御言からあれやこれやとアレンジを勧められつつも、何だか汐耶は止まりっぱなしである。
 …まぁ、止まっているのは何が原因かはさて置き。
 取り敢えず悔しくて泣きそうだったのも止まったのだけは確かである。
 それで…多少は無理を押してだが、何とか落ち着いた?ところで汐耶は改めて本題に入る。
 自分は何故こんな姿になっているのかの説明。
 …とは言え、正直なところ――自分でも何が何だかわからないと言うのが正しい。
 そう、何故かは不明だが、本日、目が覚めたらちっちゃくなっていた上に黒猫の耳と尻尾が生えていたのだと言う。取り敢えず鏡を見てみたところ恐らく六〜七歳、小学校一年程度の頃の自分の姿だとは確認した。その上で、熟考の結果、ひとまず服を身体に合わせ修正し着用。それから仕事先に風邪を装い休暇届を出した。黒猫な耳を隠す為に帽子も被ってはみたが…何故かそれでも耳はその上へと突き抜ける。どうやら良く見れば尻尾も同様らしい。…また困惑。
 けれどまぁここで途方に暮れていても仕方無いとばかりに、元に戻った時用の普通サイズの簡単な着替え、それと財布と携帯をちっこいリュックに詰め込み、それをよいしょと背負って解決法を探す為に外に出――取り敢えずここへ駆け込んでしまった…と言う事で。
 多分、まずここに来てしまったのはさすがに冷静さを失ってたんじゃないかと思うんですけれど、等々顔を真っ赤にしつつも色々言い訳染みた事も言ってはみるが、つまりは彼女が本気で困った時に一番頼りにしたかったのが御言なんだろうと言うのは誠名から見れば明らかな訳で。…何も無くまず頼ろうとするなら草間興信所やら誠名の画廊――今誠名がここに居るのはあくまで偶然である――にでも行く方が余程妥当だろう。何と言ってもそちら関係の事案上等な看板を掲げている。…まぁ、草間興信所の場合は不本意ながらだろうが。
 ずず、と珈琲を啜りつつ、話を一通り聞いた誠名はぽつり。
「…何にも心当たりは無い、か」
「はい。…猫も子供も…もしくは時間を渡るとか化け猫とか…とにかく今の私の状態に関係ありそうな怪奇事件に最近関わった記憶は無いんです…」
「書籍の方で心当たりは?」
 汐耶さんの場合、曰く付きの本や魔道書の類の側に居る事にもなりますから。
「…特に最近読んだものでは…」
 やっぱり、無いと。
「…じゃあなぁ。…通りすがりの妖精さんの悪戯とか?」
「…可能性として否定はしませんが確率は著しく低いですよ」
「うーん。心当たりが無いとなると…放っときゃ戻らないかなぁ?」
 今ンとこ小さくなってる&猫娘オプション以上の弊害無さそうだし。
 …折角可愛いんだからそれまで堪能させてもらうとか。
 と、本気だか冗談だかいまいち判別付け難い言いっぷりで、ぽろりと誠名。
 そんな科白に汐耶はぶすっとむくれると、涙がじわり。
「………………本気で考えてくれてますかっ」
「………………誠名さん」
「…へいへい。悪かった」
 と。
 汐耶に声を荒げられ御言に諌められ一応謝りはしたけれど――時既に遅し。
 ぐす。
 誠名、俄かに慌てる。
「…いや本当に悪かったって。でも心当たり無いってんなら、暫く様子見てみるしかねえっての」
「…っ。ひぐっ。ぐす」
「ごめんって。な?」
「…まぁ、確かに今の時点では――結局は誠名さんの仰る通り暫く様子を見てみる以外にやりようは無いんですが。…でも、もし今の姿のまま元に戻れなくなってしまったとしても、汐耶さんがお嫌でなければ、俺が面倒見ますけど?」
「――…え。…ってちょっとあのっ!?」
「…まぁ、なるべく幼女趣味だの猫耳趣味だの言われたくはありませんが。相手が汐耶さんであるなら俺はどう誤解されても良いですし。ですからその辺は御安心を」
「…っ。ちっちゃく見えるからってからかわないで下さいっ」
「本気ですが」
「――」
「ま、戻れるように尽力しましょう、と言うのが第一である事は確かですけれどね。あくまで保険のような話です」
 取り敢えず今日一日、様子見てみましょう。
 言いながらも御言は平然と珈琲を干している。
 そんな御言の発言のせいか、また、気が付いたら驚いて汐耶の涙が止まっていた。





 で。
 結局。
 …そのままそこで暫く粘って――勿論店の開店の用意もしていたが、やがて現れた店主の紫藤が何だか訳ありげな己の部下とその義兄、それから誰かの面影がある幼児――汐耶の事情について聞くなり、お店の方は紫藤の方だけで出、部下で店舗の管理人にもなる御言は休んで汐耶にお付き合いする事があっさり決まる。誠名も一応乗り掛かった船とばかりにお付き合い。それで色々汐耶猫娘化の原因を考えたり調べたりもするが――決め手は出ず。
 その日、最後には一応、御言が汐耶を汐耶の自宅になるマンションの部屋まで送った。さすがに御言のところに泊まるのは――真っ赤になって汐耶が必死で抵抗した為。…そもそも御言の住み付いているところは人が住むような用意が全くしてない生活感皆無な部屋でもあるので(実は当人用の寝具すらない)御言も元々あまり強く言う訳でもなく。…心細いようなら、と思っただけらしい。
 で、次の日も取り敢えず朝一でマンションの部屋まで様子を見に来ると言う話に収まった。何かあったらいつでも電話下さいと言い含め。

 と。
 そこまで気を遣ってはもらったのだが。
 次の日――汐耶の身体は何でも無かったように元に戻っていた。
 電話を入れてから様子を見に来た御言の方も、自分の目で確認してから、ほっ、とひと安心。

 …まぁ、ちょっとは名残惜しいと思っていたのかも知れないが。
 まぁ、彼らの心の裡にしろ猫娘化の原因にしろ、真実は全て闇の中である。


【了】



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    登場人物(この物語に登場した人物の一覧)
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 ■整理番号/PC名
 性別/年齢/職業

■PC
 ■1449/綾和泉・汐耶(あやいずみ・せきや)
 女/23歳/都立図書館司書

■指定NPC(=某猫好きの兄弟)
 ■真咲・御言
 ■真咲・誠名

■名前のみNPC
 ■香坂・瑪瑙
 ■空五倍子・唯継
 ■紫藤・暁

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       ライター通信…改めNPCより
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 御指名が複数だったので座談会形式で。

誠名:「そんな訳でイロモノ前提ちっくな指定でしたがこんな感じになりました。…って半分お任せな『ExtraTrack』の方で良いような内容のような気が無きにしもあらずって事らしいんですが…何だか金銭面でお気遣い頂けたのかなぁとライターは思っている模様です」
御言:「むしろ『ExtraTrack』の窓がぱったり開かないって言う話もありますけどね」
誠名:「いやそりゃ今はライターが密かに別方向に力入れて熟成させてっから持ちネタ的許容量考えると…もが(いきなり御言に口塞がれた)」
御言:「それは言わない約束で。…ところであまり良い反応じゃ無くてすみませんでした。特に俺の方(笑)」
誠名:「(それ以上は黙る事を無言のまま約束し口塞いだ手を離させた)…まぁねぇ。猫好きって言っても…御言って猫が絡むと何だか立場が人間じゃねぇんだよな。人間つぅより猫の中のボスもしくは親状態。だから何だか猫っ可愛がり…と言うのはない」
御言:「…言われてみればそうかもしれませんね。猫の方で遊んで欲しいと思っているようなら幾らでもお付き合いしますがそうでないとなるべく放っときますし。殆ど目も合わせませんね。…他人に見られたらむしろ猫嫌いかと思われそうかも(笑)」
誠名:「あ、今気付いた。…だから今回平常心だったんだろ」
御言:「?」
誠名:「綾和泉のねーさんが猫娘状態だったからお前も素直になれてたとか」
御言:「…それが理由だと汐耶さんに凄く失礼になる気がするんですが」
誠名:「んじゃ、ちっこかったからとか」
御言:「…以下同文」
誠名:「つぅか。…こんなノリで経過ふっ飛ばしてプロポーズはねぇだろう(呆)」
御言:「? …あれでプロポーズに聞こえますか? 素直になれと嗾けたのは誠名さんたちだったと思うんですが。…その通りに素直になってみただけなんですが?」
誠名:「………………やっぱりお前性質悪い」
御言:「…そうでしょうか?(苦笑)」

 …と言う訳で無理矢理幕。