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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


小さな探しもの

●探しもの
 その日の夕暮れ、一人の少女が草間更新所にやってきた。
「お母さんから貰った大切なブローチを無くしちゃったの……だからさがして欲しいの」
 その洋子(ようこ)と名乗った8歳くらいの少女は涙ながらにそう話した。
「詳しい事を聞かせてもらえる?」
 洋子を宥めながら草間・零(くさま・れい)が詳しい話を聞こうとする。
「あのね、お母さんがね。私に最後にくれた宝ものなの、頑張って探したんだけどどうしても見つからなかったの……だから探して欲しいの」
「どこになくしちゃったの?」
 零が洋子に聞くと洋子は近くにある安らぎの森という公園の名前をあげた
 その公園は街の癒しとして人気のある森林公園であった。
「あの公園ですか、探すのに少し手間がかかりそうですね…。ところでその無くした宝物とは?」
「ブローチ……羽の形をした…」
「判ったわ、明日は丁度休日だし、私達が探して上げる。だから洋子ちゃんは今日はお帰りなさい?」
 零はそう言って洋子に行った。
 洋子はその零の言葉に頷いた。
「お姉ちゃんありがとう」
 洋子はそう零にお礼を言うと興信所を出ていった。
 その姿を見送った零だったが、気が付くと洋子の姿は見えなくなっていた。
「あれ?すぐ角をまがったのかしら……?」
 唐突に消えた洋子に対し不思議そうに小首を傾げた零であった。
 そして部屋の奥から草間・武彦(くさま・たけひこ)から声が掛かる。
「おーい零。なんか依頼人でもきたのか?」
「あ、兄さんちょっと安らぎの森の地図を取ってくれないですか?」
「安らぎの森?まぁ、良いけど……ほら」
 武彦はそう言って地図を零に向かって投げる。
「で、依頼がはいったのか?」
 どこか嬉しそうに武彦は零に声をかけた。
「ええ、小学生位の子供から……」
 零のその言葉に武彦は今まで読んでいた新聞を手に取り顔を隠した。
「この依頼はお前達に全て任す、俺は動かないからな」
「はぁ……」
 零にそう宣言した武彦を見て零は小さく溜息をついた。
「はぁ……、仕方ない、他の人に協力を頼むしかないかしら……?」
 だが零はすぐに気持ちを切り替えて公園の地図を広げた。
「余り広くない自然公園か……、池に落っこちてなければそれほど難しくは無い、かな?」
 そして明日探してくれる人を探しはじめるのだった。

●草間興信所にて
 陽子が帰った、その直後の事である。
 零から連絡を受けた中で草間更新所にやってきたのは短めに切りそろえた髪が特徴的な少女、月美里・千里(やまなし・ちさと)と千里は正反対に長い黒髪と落ち付いた雰囲気を持つ榊船・亜真知(さかきぶね・あまち)であった。
 そして、来る途中で千里と出会い一緒に来る事になった一組の男女がいた。
 快活そうな雰囲気を持ち綺麗な金髪を持つ女性、沢辺・麗奈(さわべ・れいな)とその麗奈に付き従う様にしている、穏やかで礼儀正しい黒髪の青年クリストファー・エイシアである。
「零ちゃん、何か子供がらみで問題が起きたんだって?」
 事務所にやってきて千里は開口一番そう言った。
「千里さんお久しぶりです。電話で話した通りです。詳しい話はこちらで」
 そう言って零は皆の事を奥へと誘導する。
「あたし達は千里さんに人出が欲しいって言われただけなんよ。だからちゃんと詳しい話をして欲しいわ、な?クリス?」
「え?ええ、、は、はいそうなんです、麗奈さんの言う通りです」
 急に振られてあわてて答えるクリス、外見の冷静そうな雰囲気からは余り想像し難い姿だった。
 それを聞いて零は先ほどの洋子との会話を四人に話す。
「つまりその洋子(ようこ)様の失くし物をわたくし達は探せば良いのですね?」
 亜真知が零にそう確認する。
「ええ、そうなんです、そこに転がっている兄は全く動きたくないそうですので、皆さんに頼みたいんです」
「大丈夫だよ、零ちゃん。困ってる子供がいたら私が手伝わない訳ないじゃない。皆でその洋子ちゃんの失くし物見つけてあげようよ」
 千里が皆に訴えかける様に話かける。
 しばらく考え込んだ様子だったが皆がそれに了承の意を伝える。
「そうやな、困った子がいたら助けてやらんとな」
 麗奈がそうクリスに話掛ける中、亜真知が一人小さく呟いた。
「しかし、零様の言っていた洋子様の姿が見えなくなったというのはひょっとして……」
「ん?どうしたの?亜真知さん」
 急に千里に顔を覗きこまれ、少し驚いた様に思わず亜真知は千里を見返した。
「あ……いいえ、なんでも無いですよ」
「そうか?なんか思う所があった様に思えたんだけど……?」
「たいした事じゃないですよ。ちょっと自分なりに思う所があっただけで」
 思わずそう言って亜真知は視線を宙に泳がす。
 そして亜真知は麗奈と視線が合う。
 同じ様にどこか考えていた様な麗奈は亜真知に小さく頷いた。
『麗奈さんもわたくしとどうやら同じ事を考えていらっしゃるようですね……』
 亜真知は心の中でそう呟くと、自らの考えと同じであろう麗奈に向かって頷き返すのだった。
 麗奈と亜真知のそんな様子を見て、千里とクリスは思わず不思議そうにきょとんと二人を見つめるのだった。

●インターネット
 その帰り道、亜真知は顎に手を当てて考え込見つつ歩いていた歩を止める。
「やっぱり気になりますね……後でもう一度調べてみますか……」
 亜真知は気持ちを整えると再び歩き出した。
 自宅に着いた亜真知は自分のパソコンに電源を入れる。
 パソコンをネットに接続させると、検索を始める。
 検索をするのは『安らぎの森の公園であった事件』についてであった。
 いくつか検索するキーワードを変えて調べる内に一つの情報がその検索に引っかかった。
「あれ?これは……?」
 引っかかった情報をクリックして、亜真知はその内容を読む。
 そこには約一月ほど前に公園で少女が行方不明になったという情報があった。
「ひょっとしてこれは……?」
 亜真知は更にその記事を読み進めていく。
 そしてその少女が公園から見つかった時には既に事切れていたという事実が判る。
 亜真知はその事についてもっと深く調べようとしたが、それ以上の情報は見つける事ができ無かった。
「やはりわたくしの考えた通りなのかしら……?だとしたら……」
 天井の明かりを見つめながら亜真知は小さく溜息をついた。

●公園にて
 その翌日、安らぎの森公園に四人と洋子は集まっていた。
 普段和服でいる事が多い亜真知であったが、森林公園という事もあり今日は珍しく洋服の動き安いキュロット姿であった。
 千里は動き安い様にとパンツルックであったが、麗奈はいつものミニスカート姿であった。
「君が洋子ちゃん?」
 子供好きな千里は今にも頭を撫で始めそうな感じで千里が洋子に微笑みかける。
 そんな千里に洋子は微笑んで答える。
「うん、今日は私の大切なブローチをお兄ちゃんとお姉ちゃん達が探してくれるの?」
「ああ、あたし達が洋子ちゃんの大切なブローチは探して上げるから安心してな?」
 麗奈がそう洋子に話掛けた。
「ありがとうお兄ちゃんお姉ちゃん達」
 洋子はお礼を皆に言ってお辞儀をした。
「それで、この公園のどこでなくしたのかな?」
「麗奈さんそれが判らないから僕達が探すんじゃ……」
「あ、そうだったな」
 思わずクリスに突っ込まれ、照れ笑いを浮かべる麗奈。
「でも麗奈様のいう事も一理ありますね。この広い公園の中、何処にあるか闇雲に探してもダメでしょうし……」
 亜真知がそう言って考え込んだ。
「うーん、何か良いアイデアないかなぁ?」
 千里も良いアイデアがないか考え込む。
 そこで亜真知が皆に目で合図をする。
「ちょっといいかしら?話があるんだけど……」
 小さな声で亜真知が千里と麗奈とクリスに話掛ける。
「昨日少しネットで調べて見たんだけど、丁度約一月前にこの公園で一人の女の子が行方不明になってるのよ」
「え?それは……どういう?」
 クリスは思わず聞き返す。
「まだなんとも言えないわ。少し思う所はあるけれど、まだ確信がある訳じゃないから……」
 亜真知は洋子に視線を向けながらそう話す。
「あたしもそれについては同じやな。でもきっと、今回の一件が無事に終われば全て判る気がするんや、だから今はここまでで良いと思う」
「そうね、そうかもしれないわね」
 亜真知が麗奈の言葉にそう納得した様に答えて頷いた。
「それよりもとにかく今は洋子ちゃんのブローチを探してあげないといけないよね」
 よく会話が飲み込めていないまま千里がそう話をまとめたのだった。

●探し物はどこですか?
「それでどうやって探すの?麗奈さん?」
「それを聞かんといてな、今考えてる所なんやから」
 クリスのその問いに麗奈が頭を抱える。
 そして皆が言葉を失う。
 数瞬のあと千里が声を上げる。
「洋子ちゃんが通った道を順にたどって見る、というのはダメかな?」
「千里様全部通った道を、というのは無理だと思いますよ」
 亜真知が千里に答える。
「そうだ、あたしは召還魔法をつこうて見ようと思うんやけど、どうかな?」
「召還魔法?」
「小さい精霊とかを召還して探してもらおうと思ったんや」
「なるほど……それもひとつの手ですね」
 亜真知と千里がそれに頷くがそこで横から声が掛かる。
「麗奈さん……余り目立たない方が良いんじゃ?」
 恐る恐るといった様子でクリスが麗奈に話掛ける。
「わかっとるがな。そんなに目立たせるつもりは無いよ。そんなにあたしの事が信じられへんの?」
「そ、そんな事ないよ。ただちょっと言っておこうと思っただけだから」
 慌てて謝る様にクリスが麗奈に答える、まるでどこか怒られた子犬の様な仕草だった。
「でも千里様の案は悪くないかもしれませんね、洋子様の印象深い場所を探せばあるいわ……」
「それじゃあ、それを洋子ちゃんに聞いてみようか?」
 千里がそう言って洋子の方へと歩を勧める。
「ねぇ、洋子ちゃん、ブローチを失くした時にどこ行ったか覚えてないかな?」
「うーんとね……」
 千里に聞かれて洋子は考え始めた。
「ちょっとでも良いから思い出して貰えると助かるんだけどな」
 千里のその言葉に洋子は考え込む、そしてしばらくしてボツボツと話はじめる。
「えーとね、まずあそこに行ったよ」
 そう言って洋子が指さしたのは、森の中に作られた広場の真ん中にたつモニュメントであった」
「ああ、あれ目立つもんなぁ。行きたいって気持ちよう判るわ」
「それではまずはあそこに行って見ましょうか?」
 亜真知がそう言うと皆がそれに頷いた。

●広場
 森の中の小道を抜けて、一行は広場にやって来る。
「森ばっかりやと思ったけど、こんな広場もあったんやなぁ?ここなら手作りのお弁当とか持ってきて一緒に食べると気持ち良いやろうなぁ?なぁクリス?」
「は、はい!?そうですね、麗奈さん」
 慌てて答えるクリスは麗奈の『手作り』という言葉にドキドキする自分を抑えられなかった。
 そんな合間にも洋子は、キョロキョロと周囲を伺いはじめていた。
 しかしモニュメントの周囲は見事に平野で、綺麗に柴が刈り揃えてられており、物が落ちていたらすぐに判りそうなものであった。
「あ、クリスさん、あそこに公園の管理部屋があるみたいですよ。あそこで聞いて見るってのはどうでしょうか?」
 クリスがそう提案する。
「そうやなぁ、それもいいかもな。もしここで落ちていたんならあそこに預けられてる可能性もあるし」
「あ、それでしたら、ここで洋子様にブローチがどの様な形だったのかちゃんと聞いて起きたいのですが」
 亜真知がそう言って持ってきていたリュックからスケッチブックとペンを取り出す。
「亜真知さん用意いなぁ」
 感心した様に麗奈が亜真知の事を見た。
「洋子様、ブローチの詳しい形を聞かせていただけますか?」
 亜真知がそう言って洋子から件のブローチの詳しい形を聞いてそれを絵に起こしていく。
 手慣れた様子で、スケッチブックにブローチを描いていく亜真知に洋子が驚いた様に声を上げる。
「亜真知お姉ちゃんって絵が上手いんだね」
 そう褒められた亜真知は少し照れた様に笑みを浮かべる。
「こんな感じでよろしいですか?」
 スケッチブックに描いたブローチを亜真知は洋子に見せる。
「うん、これそっくりー」
 嬉しそうに洋子はスケッチブックを手に持ち見つめる。
「それじゃそれを持って向こうにいるおじさんに話を聞いて来ようか?」
 千里がそう言って洋子に声をかける。
「うん、千里お姉ちゃん」
 千里は洋子の手をとって管理部屋の方へと歩きはじめる。
 そんな二人の事を亜真知と麗奈とクリスは追いかけるが、亜真知と麗奈は洋子を黙って調べていた。
 麗奈は洋子から魔力を、亜真知は霊的な物を感じられないか視ていたのであった。
そして洋子からは若干の魔力と、その体は霊的な物で作られている事が麗奈と亜真知には判ったのだった。
 ある程度予想していた事ではあったが、それが判り二人とも小さく溜息を付いたのだった。
「「あの……」」
 そこで二人ともが溜息に気が付き同時に声を掛け合う、見事に声がはもった。
 そしておそらく言いたい事が同じだろう事が判り少し辛そうな表情を浮かべた。
 そこへ洋子から声が掛かる
「お姉ちゃん達ー早く早くー」
 洋子の呼ぶ声を聞いた三人は慌てて管理部屋へと向かうのだった。

●ブローチの在り処
 管理部屋では初老の公園の管理人の男性が少し困った様な表情を浮かべていた。
「うーん、すまんねぇ。少なくともここにはそういう落とし物は届いていないよ」
 困った様な申し訳ない様な声で答える男性を見た一同は揃って肩を落とした。
 仕方無く一同は部屋を出ると次にどこに行くかを相談しはじめた。
「やっぱりどこか森の中とかなんでしょうか?」
 クリスのその言葉を麗奈が否定する。
「そうとも限らんで、ここの広場にも茂みとかは結構あるし、そこの中のどこかにあるかもしれない」
 そう言って麗奈は広場を見つめた。
 確かに麗奈の言う通り、広場には植え込み等の茂みがいくつもあった。
「まずはそれを全部調べて見る必要があるんじゃないか?とあたしは思うんやけど、どうかな?」
 麗奈は皆に同意を求める。
「取り合えずそれは確かかもしれないね、探してみようよ」
 千里のその言葉に一同は頷くと、それぞれ散らばるのだった。

 そして数時間後一同は疲れきった表情を浮かべて、集まるのだった。
「その表情だと収穫は無かったようですね」
 亜真知が溜息混じりで皆の顔を見回す。
「そうだね。他の場所にあるのかもしれないですね。洋子ちゃんに他に行った場所がないか聞いてみましょうか?」
 クリスがそう言ってしゃがみこんで洋子の目を見つめながらに再び聞いた。
「ねぇ、洋子ちゃん他に行った場所は無いかな?」
 クリスのその言葉で、洋子は考え込む。
「えーとねー、あそこの池ー」
 公園の地図に描いてある池を指さしてそう言った。
「なるほど、でも池の中に落ちていたら少しやっかいね」
 千里が少し考え込む。
「とにかく行ってみないと話にならないですわね」
 亜真知のその言葉で一行はゆっくりと歩きはじめたのだった。

 池についた時には既にゆっくりと日が傾き始めていた。
「でも余り深いとはいえなくても池の中を探すのは大変ですね……」
「大丈夫。それだったらあたしに良いアイデアがあるわ」
 亜真知の心配を麗奈が吹き飛ばす。
「あたしが水の精霊で中を探してもらえば良いと思うねん」
「なるほど、それが良いですね」
 クリスがそれに賛成する。
「それじゃそれでいいかな?」
 麗奈が皆に確認を取ると、皆が頷いて賛成の意を伝える。
「水の精霊よ、我が意に従え……」
 呪文を唱えると麗奈が水の精霊に命令をする。
 しばらくそうやって探索していたが、急に麗奈の表情が明るくなる。
「あったわ、きっとこれよ」
「あったの?」
 麗奈に洋子が聞く。
「ええあったけど、問題は水の中までどうやってブローチを取りに行くかよね」
 麗奈の言葉に今度は千里が答える。
「それは任せて、実はちーちゃんは魔法使いなんだよ」
 不安そうな洋子に向かって励ます様にそう言うと、気が付くと千里はその力を使ってダイバースーツに身を包んでいた。
「それじゃちょっと取ってくるね」
 そう言うが早いか千里は水の中に飛び込んで行った。
 千里が池に入ってから数分後。
「千里お姉ちゃん大丈夫かな?」
 洋子が不安そうに亜真知の事を見上げた。
「大丈夫ですよ。ほら」
 亜真知が指さした先には水面から顔を出し手を振る千里の姿があった。
 岸に向かって泳いでくると千里はゆっくりと水から上がってくる。
 水から上がると気がつくとダイバースーツが影も形も無くなり、いつもの姿の千里の姿がそこにはあった。
「洋子ちゃんこれで良いのかな?」
 千里は手に持った羽の形をしたブローチを洋子に見せる。
 洋子はそのブローチを見て嬉しそうに眼を輝かせる。
「うん、それ!?そのブローチだよ。私のお母さんに貰った大切なブローチ」
「そう、よかった。今度は失くすんじゃないわよ?」
「うん」
 満面の笑みで洋子は千里に頷き洋子はブローチを受け取ったのだった。
 その様子を亜真知と麗奈は複雑な気持ちで見つめていた。
「亜真知お姉ちゃん、千里お姉ちゃん、麗奈お姉ちゃん、クリスお兄ちゃん今日は本当にありがとう、私の大切な探し物見つけてくれて」
 胸に大事そうにブローチを抱きしめて洋子は皆にお礼を言った。
「今度はしっかりと無くさない様にして下さいね?帰り道はちゃんと判りますね?」
 ブローチに手を当てて亜真知は洋子に言い聞かせ、そっと天を指さす。
「うん、大丈夫、ありがとう亜真知お姉ちゃん」
 洋子は笑顔にそれに答え、そしてその姿は徐々に足から光の粒子へと姿を変えていった。
「ちょ……、洋子ちゃん?」
 事情が飲み込めていない千里はその様子に慌てて洋子に近づこうとするが、麗奈に肩を捕まれて、それを止められる。。
 麗奈と亜真知は少し寂しそうな、しかしどこか嬉しい様なそんな表情を浮かべていた。
「もう失くしちゃダメだよ?」
 麗奈のその言葉に大きく頷くと皆に見守られながら、洋子の姿は有闇に包まれ始めた公園の空に消えて行ったのだった。
 そしてどこからとも泣く皆の耳にこう聞こえた様な気がした。

『ありがとう』……と。

●エピローグ
「ちょ、洋子ちゃんはどうしたの?」
 千里に洋子がもう既にこの世の人では無い事、彼女の想いがブローチを探しに来た事を亜真知が千里に説明する。
「じゃ、じゃあ洋子ちゃんは幽霊?」
 千里の問いに麗奈が頷く。
 その返事を見た瞬間に千里はその場に崩れ落ちる。
「ちょ、千里さん?」
 慌てて麗奈が千里の様子を見ると、完全に気絶をしていた。
「あらら、完全に気絶してるわ」
「千里さんってこういう話ってダメだったんですね……」
「そうやったんやな、意外やったわ。でも取り合えずこれで一件落着って所やな?興信所に戻ってこの事を報告せなな」
「そうですね」
 麗奈の言葉に亜真知が同意する。
「でも千里さんはどうするんですか?このままにしておく訳にもいかないですし」
「クリスがおぶってけば良いやん」
 あっけらかんと、さも当然であるかの様に麗奈はそう言った。
「やっぱりそうですか」
「当然や」
 小さくクリスが溜息がついたのもお構い無しに麗奈は話を進める。
 そんな二人を見て亜真知は思わず微笑みを浮かべる。
 そんな中、一人千里はすっかり気を失ったままであった。
「とりあえず、早く戻って零ちゃんに報告しような?」
「ええ、そうですわね」
 そんな会話がなされた後、一行は夕闇におおわれ、すっかり暗くなった公園を後にするのだった。

 なお千里が眼を覚ましたのはたっぷり夜もふけた興信所のソファーの上であった。


Fin

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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≪PC≫
■ 榊船・亜真知
整理番号:1593 性別:女 年齢:999
職業:超高位次元知的生命体・・・神さま!?

■ 月見里・千里
整理番号:0165 性別:女 年齢:16
職業:女子高校生

■ 沢辺・麗奈
整理番号:4977 性別:女 年齢:19
職業:大学生・召喚士

■ クリストファー・エイシア
整理番号:6443 性別:男 年齢:18
職業:大学生・白魔術師

≪NPC≫
■ 洋子
職業:幽霊

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■         ライター通信          ■
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 どうもこんにちは、ライターの藤杜錬です。
 この度は草間興信所依頼『小さな探しもの』にご参加頂きありがとうございます。
 皆さんのおかげで洋子ちゃんの探し物は無事見つける事ができました、ありがとうございます。
 皆さんが楽しんでいただければ、良かったと思います。

●榊船亜真知様
 はじめまして、ご参加ありがとうございます。
 全体的に裏を取る様な感じの行動になりましたが如何だったでしょうか?
 楽しんでいただければ幸いです。

●月見里千里様
 お久しぶりです。
 ラストの所でおいしい所を持って行く事になりました。
 千里さんの小さい子を大切にしたいという気持ちが上手く表せていれば良いのですが。
 楽しんでいただければ幸いです。

●沢辺麗奈様
 ご参加ありがとうございます。
 今回は全体的な橋渡し的な役回りになりました。
 クリスさんとの関係を上手く表現で来ていれば良いのですが。
 楽しんでいただければ幸いです。

●クリストファー・エイシア様
 初めてのご参加ありがとうございます。
 怪談初依頼だったので、上手く描写出来ていれば良いのですが。
 麗奈さんとの関係など上手く描写できていれば幸いです。
 楽しんでいただければ幸いです。

2006.06.30.
Written by Ren Fujimori