コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


ロールプレイングゲーム!

★★ゲームモニター募集中!★★
試作中のゲームのモニターになって頂ける人を探しています。
本店まで来られる方なら年齢性別問いません。主婦・学生大歓迎!
ゲームで遊んだことのない方でも大丈夫です!
能力者だろうが普通の人だろうが構いません!
攻撃が当たっても痛くありませんし、ケガをすることもありません!
ゲームオーバーになっても、本当に死ぬことはありません!
絶対安心安全の立体ロールプレイングゲームです!
興味のある方は 『駄菓子屋・幻楼堂』 までご来店を!


 そんなチラシに導かれてやって来た草摩・色(そうま・しき)は、目の前に建つ駄菓子屋を見上げて、ほわーっと溜息を吐いた。
「こんな古そうな菓子屋なんて初めて見た」
「本当。こんな駄菓子屋さん、まだ残ってたのね」
 言ったのは面白そうに色とりどりのお菓子を見る、シュライン・エマである。あら懐かしいーこれ好きだったのよねとお菓子を手に取ってどこか嬉しそうに笑うシュラインの後ろで、朔本・しゆり(さくもと・―)が疲れたように溜息を吐いた。
「いきなり来てどこに連れて行くかと思えば、ゲーム……? 俺にも仕事があるのに……」
「えー、だって一人で来るのもつまらないじゃん」
「はぁ……まあ、気晴らしとでも思うか……」
 朔本の文句に瀬々川・瑠璃(せせかわ・るり)があっけらかんと答える。そこに、イスターシヴァ・アルティスがウキウキと店の奥へ声をかけた。
「すみませーん。どなたかいらっしゃいませんかー?」
「はいはーい! 今行きまーす!」
 イスターシヴァの呼びかけに答えたのは若い女性の声だった。奥からトタトタと駆けて来る。
「お待たせしましたー。いらっしゃいませー」
「僕たち、草間興信所にあるチラシを見て来たんだけど」
「あ、はいはい。モニターの方ですね。こちらへどうぞー」
 ポニーテールの黒髪を軽やかに揺らして案内する女性に従って5人が店の裏へと回ると、そこには見渡す限り何もない平原が広がっていた。店のすぐ後ろまでは砂利道なのに、途中からすっぱり切られたように草原に変わっている。そんな急激な風景の変化にしばし呆然とする5人に、着物の男性が声をかけた。
「いらっしゃいませ。今日は宜しくお願い致しますね」
「あ、あなたが、もしかして武彦さんの言っていた……」
「楼と申します。以後お見知りおきを」
 そう挨拶をしてシュラインににっこりと笑い、他の4人にも丁寧にお辞儀をした楼(ろう)は、楽しそうにゲームの説明を始める。そして5人が一通りのゲームの内容を把握すると、草原に入るように促した。
「今からここにゲームを形作るための結界を張ります。結界が張られるとゲームが終わるまでは出られませんからね。それでは、やってみたいプレイヤーを想像しながら、草原に入って下さい」
 言われて、草摩が「いっちばーん!」と草原に駆け込むと、イスターシヴァがワクワクと目を輝かせながら続く。胡散臭そうに楼を見て躊躇する朔元を瀬々川が引っ張るのを見て、シュラインがくすくすと笑いながら草原に入った。
 草原が淡く光り始める。その光がどんどん強くなり、目の前が白に染まった。思わず目を閉じた5人が再び目を開けたとき、そこにはまるで映画のセットのような中世ヨーロッパ風の街が広がっていた。
「すっげぇー!」
 街を見た草摩が感嘆に声を上げると、5人の身体が淡く光り、草摩の背中に黒色の翼が生えてきた。続いてシュラインに狐の、朔本に狼の、それぞれ耳と尻尾が生える。そして光が弾けたときにはシュラインと草摩の肩に弓矢が、朔本の腰に短剣が、瀬々川の手にロッドが現われ、イスターシヴァの目の前に斧が落ちてきた。
「わぁ! カッコいい!」
 ぱぁっと輝くような笑顔を見せ、イスターシヴァが斧を手に取る。それをぶんぶんと振り回すと、草摩が驚いたように身体を引いた。
「聖職者の服着てんのに戦士かよ! 普通僧侶とかだろ!?」
「いいじゃない。僧侶は他にいるし」
「それより、盗賊が三人ってバランス悪過ぎないか?」
「まさか魔法使いが一人もいないなんて……」
 草摩のツッコミにイスターシヴァが楽しそうに答えると、朔本が皆を見回して呟いた。シュラインもそれに困ったように答える。
「まあ、何とかなるんじゃない? 頑張って、しゆり」
 呑気に微笑む瀬々川に肩を叩かれ、朔本が本日何度目かの溜息を吐いた。すると、どこからともなく楼の声が響く。
「結界内ではゲーム設定上での能力しか使えませんからねー」
 言われて、イスターシヴァが自らの背中に意識を集中した。しばし目を閉じ、確認するように背中を振り返って、「…あ、ホントに使えなくなってる」と呟く。
「それじゃあ、頑張りましょうか」
 シュラインの声と共に、街に騒然とした音が現われた。

 薄水色で半透明のスライムがぶるるんっと身体を振るわせる。わーわーと叫び声を上げながら逃げ惑う人々に構わず、スライムは果物屋へ突っ込んだ。飲み込まれた林檎や蜜柑がスライムの身体の中でしゅわしゅわと溶けて行く。
「あらー、これはこれは……」
 草摩が呆気に取られたように街を見回した。其処此処でスライムが建物を襲い、食物を食い漁っている姿が見える。
「よーっし、暴れるぞー!」
 気合を入れて斧を構えたイスターシヴァがスライムの群れに飛び込んでいく。長柄をしっかりと握り、スライムを横薙ぎに斬り付ける。遠心力のかかった斧はイスターシヴァを中心にぐるりと円を描き、周囲にいたスライムを真っ二つにした。
「作戦とかは任せるから」
「お前なぁ……まあいいか、とりあえずあんまり離れるなよ」
「了解ー」
 言って、朔本が瀬々川を庇いながら伸びて来たスライムの触手を斬り落とす。慌てる人々にシュラインが落ち着いて避難するように呼びかけながら、スライムに対してスロウをかけた。動きの鈍くなったスライムに草摩が矢を撃つ。
 瀬々川がプレイヤー全員に向けてプロテクトとアタックの補助魔法を唱えた。シュラインもスライムにプロテクトブレイクを唱えると、自らも矢を引き絞る。しかし、放たれた矢はスライムの身体に飲み込まれ、しゅわしゅわと泡沫を出しながら消えていった。
「矢はあまり効かないみたいね」
「そうみたいだなぁ。まあ……」
 シュラインの呟きに草摩が頷いて、倉庫の食料に手を出そうとしていたスライムに向けて矢を放つ。矢はスライムと倉庫の間に撃ち込まれ、驚いたスライムが後退さった。
「牽制には使えるよ」
 草摩が矢でスライムの足止めをし、動きの止まったスライムをイスターシヴァが薙ぎ払った。食料や後衛で補助をしている三人に近づいてくるスライムを、朔本が短剣で斬りつけて散らす。
「わっ」
 イスターシヴァに弾き飛ばされたスライムが倒れこんで来て、瀬々川が慌てて飛び退った。その拍子にロッドの先が建物の玄関にかけられていたランプに引っかかり、ガシャンッと音を立ててランプが地面に落ちる。割れたランプから炎が広がり、炙られたスライムが奇妙な鳴き声を上げた。
「あら? ……そうか、そういうことね!」
「ん? なになに?」
 矢を次々と放ちつつ、スライムの様子を見ていたシュラインは、炎から逃げるように退くスライムに、気が付いたように声を上げる。そしてスライムに体当たりされて壊れた木の箱の板を手に取り、その先に炎を移した。突然のシュラインの行動を不思議そうに見ていた草摩も、その炎に納得したように指を鳴らす。
「あ、なるほど。スライムって炎に弱そうだもんな」
「皆さんも協力して! 松明を作って、スライムを一ヶ所に誘い込むの!」
 シュラインに言われて、町民が恐る恐る集まって来た。それを横目に見ながら、草摩も考える。
「魔法使いがいれば楽だったんだけどなぁ……あ、こんなのはどうかな?」
 言いながら、草摩が矢に炎を点し、それをスライムに向けて放った。火の点いた矢がスライムの身体の中に飛び込み、スライムを中から溶かしていく。
「おお! すごーい!」
「喜んでる場合かよ!」
 その様子を、スライムの間近で戦っていたイスターシヴァが見て嬉しそうに手を叩いた。その隙に近づいてくるスライムを朔本が斬り付ける。
 シュラインが町民に松明を持たせて、倉庫へ入り込もうとするスライムを追い立てて街の中央に集めていった。逃げようとするスライムも、周りを囲んだ松明に怯えて動けない。そこにシュラインと草摩が二人で幾度も乱れ撃ちをかけつつ、イスターシヴァと朔本が矢から逃れたスライムを斬り付ける。
 そんな4人を見ながら、瀬々川がのんびりとヒーリングをかけた。スライムが一ヶ所に集まっていて自分の元へも来ないので、逃げることもやることもない。時折、時間切れになったアタックとプロテクトを唱え直すくらいである。
「回復役は暇だなぁ……」
 言いながら、大きな欠伸をした。そしてロッドの先をじーっとみると、悪戯を思いついた子供のようににんまりと笑う。
「……瑠璃? お前、危ないからこっち来るなよ」
 トタトタと近づいて来た瀬々川に朔本が眉をしかめるが、瀬々川はにこにこと笑ってロッドを振り被った。何をするのかと目を丸くした朔本のすぐ横で、瀬々川が思いっきりロッドでスライムを叩き始める。
 ぶにんっと言う鈍い音と共に、スライムの頭が凹んだ。
「あはははは! 面白ーい!」
「わぁ、楽しそうだねー。よぉっし、僕も!」
 ぶにぶにとスライムを叩き続ける瀬々川に、イスターシヴァが触発されたように斧を振り回す。ぐるんぐるんと斧を回してスライムを真っ二つにしていくイスターシヴァに、大したダメージは与えられていないものの、スライムをぼこぼこと叩く瀬々川。それをシュラインは呆然と眺めていた。
「……いいのかしら?」
「楽しそうだからいいんじゃない? 俺も暴れよーっと」
 呟いたシュラインに、草摩がうわはははー! と笑いながら乱れ撃ちをする。朔本も、ハッと気が付いたように瀬々川の後を追った。
「……これは……私も暴れとこうかしら……?」
 取り残されたシュラインは暫し呆気に取られていたが、再び矢を放ち始めると、少しずつ数が少なくなり、縮んでいくスライムに楽しくなっていく。
 スライムが全部小さな破片になるまで、時間はそれほどかからなかった。


「あー! 楽しかった! 弓って撃ってると結構スッキリするなぁ。やっぱ運動するって気持ちいいな!」
 モニターが終わったことを草間興信所に報告した帰り道。草摩はぐるぐると肩を回して筋肉を解しながら歩いていた。普段は使わない筋肉が疲労していて、今日は念入りにマッサージしてから寝ようと考える。
「それにしてもあのゲーム、すごかったなー。妖狐とか言ってたっけ? あんなこともできるんだなぁ。またやんねぇかな?」
 上機嫌で鼻歌を歌いながら、草摩はポケットからチョコレートを取り出した。小銭に足が生えたキャラクターが笑顔を見せている小さな袋を開けると、小銭を模したチョコレートが出てくる。駄菓子屋のカウンターに置かれていたそれを草摩は初めて見たようで、興味深そうに眺めていたところを、おそらく店員だろうポニーテールの女性からプレゼントされたものだ。
 特別な味がするわけでもない、普通のチョコレートである。けれど、草摩は子供のように楽しそうな笑みでそれを口に放り込み、舌の上で転がした。
 今日は何もかもが面白い出来事ばかりで、いい夢が見られそうだ。草摩は気持ち良さそうに背中を伸ばした。










□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
    登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  
□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【0086/シュライン・エマ/女性/26歳/翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員】
【1833/瀬々川・瑠璃/男性/22歳/劇作家】
【1906/朔本・しゆり/男性/21歳/花屋】
【2675/草摩・色/男性/15歳/中学生】
【5154/イスターシヴァ・アルティス/男性/20歳/教会のお手伝いさん】

□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
           ライター通信          
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□

どうも、中畑みともです。
今回は『ロールプレイングゲーム!』に参加頂き、有難う御座いました。
またのご来店をお待ちしております^^