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美桜と小麦色の大冒険
ある日、神崎美桜の家の電話が鳴った。
「はい、もしもし、あ、いつもお世話になっております」
『はい、神崎様のご注文の品が届きましたのでご連絡させて頂きました。』
と、帽子屋から前から頼まれたモノが届いたようなので取りに来て欲しいという。
「はい、分かりました」
買い物というのは楽しい。
彼女はそれほど出かけることはないのだが、今日は気分的にも出かけたいのであった。
伝票の控えを持って、目的の店に向かうのだが、途中
|Д゚) いよー 美桜美桜〜
「あ、かわうそ? さん♪ こんにちは」
|Д゚) こんちくわ
小麦色に会った。
その小麦色は何をしていると、ただ、日陰で寝ころんでいる。
「今日も暑いですね」
|Д゚) うい。あつい。しねる。
|Д゚)ノ 暑いから、水分、ミネラル補給、しっかり
「はい、そうしますね」
会って数回程度だが、結構この二人仲が良いのだ。他のライバルも独占権に必死である。
「そうだ、今からお店に向かって頼んでおいた物を取りに行くのですが、かわうそ?さんも一緒に来ますか? 帰りにごちそうします」
|Д゚) おお
|Д゚) ありがたき幸せ
と、かわうそ?は美桜の脚にすり寄ってゴロゴロ喉を鳴らす。
美桜は微笑みながら、彼を抱っこして先を進んだ。そこから数百メートル先の角で、黒い車が止まったのをこの二人は知らない。
そして、事件は起こる。
彼女は角を曲がろうとしたときに、
「あんた神崎美桜さんやね?」
と、車から男が話しかけてきた。
見た目はなんて事のない通りすがりの人なのだが、西の訛りがひどい。
「え? はい……」
返事した刹那に……数人の男達に捕まってしまった。
「!?」
「抵抗しなかったら、むりなことせんから、あんしんしとき」
その言葉に戦慄が走る。
かわうそ?を見た。
かわうそ?も驚いている様子が分かる。しかし、動いていない。
――かわうそ?さんぬいぐるみの状態でいてくれませんか?
|Д゚) 了解
と、又と単に動かなくなった。
そして、美桜は布を口に当てられて気を失った。
「なんだこれ?」
「ぬいぐるみじゃないのか?」
「まあ、いいか。なんもない。その辺に放っておけ」
「あの娘どげんすると?」
「まあ、霊力抽出すれば終わりだろう」
|Д゚) じぃ
|Д゚) むう
|Д゚) 美桜美桜だいぴーんち
と、危機的状況でも、なにも焦ってないところが小麦色クオリティ、と思いたい。
「かわうそ? さん?」
美桜が目覚める。彼女は縛られている事に気が付いた。しかし、近くにかわうそ?がいるので安心する。
|Д゚) 美桜美桜起きた?
|Д゚)ノ 大変、誘拐された
「ごめんなさい」
|Д゚) きにするにゃ
|Д゚) おもろいかおー
かわうそ?は自分のほっぺを伸ばし始める。おもちかガムのように良くのびた。
「ぷふ」
美桜は思わず笑ってしまう。
「? 気が付いたのか?」
誘拐犯は気が付いたようだ。
かわうそ?はすぐにぬいぐるみの真似に戻り、美桜は男を睨み付ける。
「ああ、まあ、死にはしないからそんな顔をするな」
笑いながら誘拐犯は言った。
部屋は、どこかの廃工場の地下? 蒸し暑さはひどい。
「抵抗すればどうなるかわからんから気をつけぇな?」
と、言い残し、誘拐犯は去って、ドアを閉めた。
|Д゚) むう
「かわうそ?さん、逃げて」
|Д゚) いやぷー
|Д゚) 美桜美桜も逃げる。
「でも、私は……」
|Д゚) あきらめちゃだめっぷ
かわうそ?は だだっ子のようにじたばたし始めた。
事実諦めてしまうと終わりだ。
彼女の力は生命に関するもの。ならばその出所は己の命だと考えられる。盗られた場合は、自分の死を意味するのだ。
「諦めては行けないですね。でも、私に何が出来ますか?」
|Д゚) まあ、その状態だと逃げられない。
|Д゚) でも、かわうそ?自由
「あ」
と、美桜は気づいた。
かわうそ?が完全に自由と言うことは、自分にも逃げる見込みがあるのだと。
|Д゚) しゃきーん
と、彼は爪を立たせた。
そして、美桜を束縛しているロープを綺麗に斬ったのだ。
|Д゚) しずかーに、しずかーに
「はい」
と、今は誰もいない。そして通風口から逃げれば……助かるかもしれない。
しかし、大きさが問題だった。
通風口は美桜一人通れるかとおれないかきわどい小ささだったのだ。かわうそ?は縮んだり、のびたり分裂したり出来るので、大きさも長さも関係ない。
「かわうそ?さん……私は無理です」
|Д゚) だから諦めてはだめっぷ
「……」
諦めては行けない。
友達が待っているのだ。そしてかわうそ?も何とか考えている様子。ただ、その顔からは真剣さを感じ取れないのは其れ特有の雰囲気からだが。
|Д゚) 美桜、くるなり
かわうそ?が通風口の中に入って言う。
「はい」
美桜は決意して、通風口に潜り込んだ。
|Д゚) 美桜、がんば
そして、傷つきながらも何とか通風口から出ることが出来たのが……
|Д゚) うお!
「きゃあ!?」
「逃げるとは! それにそのぬいぐるみ!」
別の誘拐犯に見つかってしまった。
|Д゚) きゃー!
「かわうそ? さん!」
襲いかかってくる誘拐犯に美桜が思わずタックルした。
「!?」
不意を打たれたため、よろめく誘拐犯、しかし、美緒の体格からしてそれだけが精一杯。その隙を作れば、あとは、
|Д゚) うりゃー 膝かっくん
とか、かわうそ?が本当に後ろから膝かっくんする。
それだけで、誘拐犯は倒れ込んだ。
そして、何とか走って、廃工場から逃げ出す二人だった。
人混みの中に紛れれば追ってこれはしない。東京の無関心さが幸いしたのか、通りすがる人々は彼女の傷を気に止めることはなかった。小麦色は“いないも同然”なので気にしない方がよい。
|Д゚) な、なぬー!?
|Д゚) つれねぇー!
――誰に向かって叫んでいるのですか?
|Д゚) 秘密♪
近くの民家まで一気に走った。
「はぁはぁ」
美桜は久々に走ったので、息切れしている。
無事に逃げ切れたことも驚いているが、その功労者はそばにいるイタチのような存在だった。
|Д゚) 美桜、逃げられてヨカタ
かわうそ?は、美桜の頬に自分の体をすり寄せてきた。いつの間にか60cmから15cm程度の小ささになっていた。
「かわうそ?さんのおかけです」
美桜はかわうそ?の頭を撫でる。
|Д゚) にゃー 感謝するべし するべし
「はい♪」
かわうそ?自体、あまり何も考えていない。 感性で生きていると言っていいのだろうか?
そして、しばらくした日に、又会うことを約束した。
かわうそ?を通じてか美桜からか分からないが情報が手にはいり、誘拐犯は無事捕まった。秘匿扱いの事件になったために新聞には出ない。
帽子屋にて。
美桜は頼んでいた麦わら帽子を被り、ご機嫌だった。
|Д゚) かわいい 美桜美桜。
「あ、かわうそ?さん ありがとうございます」
美桜はうれしそうに笑う。
そして、おそろいのデザインの麦わら帽子をかわうそ?にかぶせた。
「お礼に、同じ麦わら帽子はいかがでしょうか?」
|Д゚) ないす♪
|Д゚) おそろい、おそろい♪
と、かわうそ?は喜ぶ
「はい、それと、今度は一緒に遊びましょう♪」
彼女に言葉に、かわうそ?はゴロゴロと喉を鳴らして答えた。
END
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