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<東京怪談・PCゲームノベル>


怪の牢


 気付けばそこは見知らぬ山村だった。
 人の手を離れて久しいと思しき田畑は、今や荒れ放題となっている。
 遠くに見える山並みの上には、妖しく光る半月が横たわっている。
 そぞろ歩けば、山間のものとは思えないような、生温い風が頬を撫ぜる。

 尾神七重と早津田玄とが顔を合わせたのは、この、夢の中とも現の中とも知れない、深い闇の中での事だった。
 初め、七重は、それが玄だと知ると、わずかな戸惑いを見せながらも丁寧な所作で腰を折った。
 玄は、周りを囲む深い闇にも気を惑わされる事もなく、不意に現れた七重の顔を見遣って眼を細め、小さな息を吐いた。
「おまえとは、思いもしねエ場所でよく会うなァ」
 作務衣の襟に片腕を突っかけて、からりころりと下駄を鳴らし、玄はぼりぼりとあごひげを撫で回す。
「……知らない内に眠ってしまったのかと思っていましたが……早津田さんとお逢い出来たという事は、……これは、夢ではないのでしょうか」
 きちんと整えられた七重の白シャツの襟を、じっとりと湿った風が舞わせて流れていく。
「まァ、どっちでもいいがな。まァた面倒な場所に来ちまったんかなア」
 からころと下駄を鳴らし、七重の傍らへと歩み寄る。

 足元に続くのは舗装の施されていない畦道にも似た道だ。伸び放題になった草花が、歩くごとに足を絡め取っていく。
 人の住む気配の感じられない廃墟を横目に、二人はしばらく暗がりの中を進んでいった。――と、視界が突然大きく開き、その向こうに佇む立派な屋敷が姿を見せた。
 門戸に掛けられた表札に彫られた苗字は、どうにも読み取れそうにない。

「――おや、お客人かね」

 不意に、何の前触れも無くかけられた声に振り向けば、そこにはいつ現れたものかも知れぬ、白髪の老婆が立っていた。
 ひん曲がった腰に、手入れなど考えも及んでいないであろうと思しき白髪。真白な装束が、漆黒ばかりの闇の中で、奇妙な程に際立っている。
「あんたら、この屋敷がどんな場所かを知ってて立ち入ろうというのかい?」
 訊ねられ、七重は玄の顔を見上げた。玄は片眉をつりあげて、「知らねェな」と一言だけ応えた。すると老婆はキシキシと嗤い、枯れ落ちそうな指で門戸の向こう――つまりは屋敷に向けて言葉を継げた。
「この中にはね、気の触れちまった妖が一人ばかり住んでんのさ。その昔、ここの当主につけられちまった楔のせいで、かわいそうに、正気を失っちまったのさ。キシシシ、だからねえ、この屋敷は呪われていやがんのさ。立ち入れば最後、呪いに喰われちまうか、気が触れちまうかしかないのさ」
 そう言って、老婆はキシキシと枯れ木が軋みをあげるような声で嗤い続ける。
「呪いですか……?」
 老婆の存在を訝しく思いながらも、七重はしばし首をかしげた。
 呪いは、早津田という家に生まれた者達の管轄だ。
 ちらりと玄を見遣る。玄は七重の視線などお構いなしに、老婆を過ぎ、闇で覆われた屋敷の方へと目を向ける。
「……あの、その呪いというものは、断ち切れないものなのですか?」
 黙したままの玄に代わり、七重が静かにそう問い掛けた。 
 すると、老婆はぬらぬらと光る眼差しを持ち上げ、七重の顔を覗きこむように首を傾けた。
「ああ、ああ、それもまた可能さね。ただしね、この屋敷は呪いのせいであちこちひん曲がって迷路になっちまってる。それをすり抜けて、妖のいる座敷牢まで辿り着ければ、あるいはそれも可能かもしれないねえ」

 風が吹き、庭の中で揺らぐ竹や梅といった木立ちをざわざわと唄わせる。
 その風が揺らしたのか、まとわりつくように広がっている闇が、ざわりと震えたような心地を覚え、七重は刹那目をしばたかせた。
 次に目を開けると、そこには、先ほどの老婆の姿はなくなっていた。
「早津田さん」
 辺りを確かめながら声をかけ、玄の姿を確かめようとした、矢先。
 玄は、あごひげをぼりぼりと掻きむしった後に、大仰なため息を一つ吐いてから門戸に背を向け、ずかずかと歩き去っていったのだ。
「面倒くせェ」
 そうぼやきながら歩き進んでいく玄の後を追い、七重は玄に問い掛ける。
「あのお婆さんは何者だったんでしょうか」
「あァン? 知るか、ンなもん。あのババアが何者だろうが、まずはてめえらが置かれた状況をどうにかすんのが先だろう」
「お婆さんは、このお屋敷の中には妖が封じ込められているのだと言ってました。楔で縛られ、正気を失ってしまったのだと」
 玄の歩幅に合わせて歩くのは、七重にとり、なかなかに厳しいものだった。
 息があがり、胸がちくりと痛む。
「それが事実にしろ、俺らには関係のねェ話だ。だろ? ボウズ。厄介事に、てめえから首突っ込んでやる必要はねェのさ」
 七重の様子の変化に気付いてか、玄はふと足をとめて頭を掻いた。
 しかし、七重は真っ直ぐに玄を見上げ、ふるふるとかぶりを振って続けるのだ。
「人が打った楔なら、人が外せるのでは? そうは思いませんか、早津田さん」
 
 夜目に慣れた視線に、七重の、淀みの無い真っ直ぐな眼差しが映りこむ。
 玄はしばし七重の視線を見遣っていたが、やがて小さなため息を吐き、やれやれといった風にかぶりを振った。

「ボウズ、おめえ、その妖を解放してやりてえとか、ンな事を考えてやがんのか」
「早津田さんには、呪いを解呪する力があると聞きました。だったら、屋敷内の楔も、」
「おいおいおい、ボウズ。おめえ、それを俺にやれってンのか?」
「……僕も、出来る限りの事は」
 ようやく七重が視線をそらす。
 玄はいよいよ髪を掻きまわして、短く深い息を一つ吐き出した。
 そして、
「行くぞ、ボウズ」
 そう告げて、からりころりと下駄を鳴らして歩き出す。
「おめえ一人に行かせて、うっかりなんかあったら、なんだしなァ」
 そうぼやきながら進む玄の歩幅は、今度は七重の歩調に合わせたものとなっていた。
「ただしだ、ボウズ。苦しめられた末に解き放たれた妖は、人を恨みこそすれ感謝なんてしねェだろうよ」
「感謝だとか、そういうものは要りません。僕はただ、妖を解放してやりたいだけなんです」

 
 屋敷は全体を白壁で覆われ、屋根に瓦を敷いた、見目にも典型的な日本家屋というに相応しい家屋だった。
 うっそりと広がる闇で覆われた中に、屋敷を取り囲む庭があるのが見える。
 人の手を離れて久しいはずであるのに、庭は、きちんと手入れがなされている。松も生垣も見目良く刈り込まれ、芝もきちんと刈られてあった。
 石灯籠には火の気配すらもなく、本来は雨戸でしまわれてあるのであろうはずの長廊下は、そのままむき出しになっている。
 戸口に手をかけると、それは施錠もされておらず、ひどく容易に開かれた。
 からからと静かな音を立てて開かれた戸口から顔を覗かせて、屋敷の中を確かめる。
「……こんばんは」
 一応の挨拶を述べる七重に肩を竦めながらも、玄は、七重の手により半端な開け方のなされた戸口を一息に引き開けた。
 当然ながら、人の気配というものはまるで感じられない。
 代わりに、ねっとりとした湿った空気のようなものが一面に広がっている。
「おら、行くぞ」
 ずかずかと戸口から中に踏み入って、玄は躊躇すら見せずに靴を脱いで室内へと上がった。
「あ、はい」
 玄に続き、七重もまた室内へと上がった。
 脱いだ靴を揃えて持ち、しんと静まりかえっている廊下の上を歩いていく。
 左手には壁が、右手には閉ざされた襖が幾枚も続く、細長い廊下だ。
「あのババア、この屋敷は迷路になっちまってるつってたな」
「妖が生み出した歪みによる影響でしょうか。――ぱっと見では、迷路になっているなんていう印象は受けませんが」
「そりゃあ、ぱっと見からこんがらがっちまってるような屋敷だったら、そりゃもう人間の立ち入るような場所じゃねえだろう」
「……そうですね」
 玄の言葉にうなずきを返し、七重は、ふと、襖の絵図に目を向ける。
 四季毎に咲く花が描かれた襖からは、その奥に続いているであろう部屋の中までは窺えそうにない。
「おい、ボウズ。うっかり触るなよ」
 玄の声に止められ、七重は襖に伸べかけていた手の動きを止めた。
「うっかりと呑まれちまいたくねエだろうがよ? 正しい道筋を通りてェんなら、多少は道案内できると思うぜ」
「妖のいる場所まで、ですか?」
 玄の双眸が銀を放っている。
「面倒くせえが、行きてえんだろ?」
 返された返事に、七重は大きくうなずいた。

 閉ざされたままだった襖は、玄が手をかざすと、ことごとくに開かれていった。
 襖の奥には畳の間が広がり、卓袱台や、あるいは座布団といったものが置かれたままになっている。時には卓袱台の上に置かれた湯呑から白い湯気が立ちのぼっている事もあった。
「歓迎してやがる」
 くつくつと喉を鳴らす玄を、七重は口を閉ざしたままで見上げていた。
「……風が吹いてますね」
 ぽつりと落とすように呟くと同時、廊下の、突き当たり部分であったはずの壁が、がたりと大きな音を立てて開いたのだった。
 突如開いたその場所から、呻り声を巻き上げた風が流れこんでくる。
 呻り声に聴こえたそれらは、風の声であり、闇の声であり、あるいは屋敷に関わって命を落としてきた人々の恨み言であるのかもしれない。
 七重は片手を持ち上げて口と鼻とを覆い隠し、むうとたちこめる生温かな空気に表情を歪めた。
「おら、いくぞ、ボウズ。――道はあの壁の向こうだ」
 七重を見遣り、ずかずかと歩みを進める玄は、わずかな迷いも惑いも浮かべていない。
 迷う事なく、真っ直ぐに開いた壁の向こうへくぐり入り、肩越しに振り向いて七重の足を促したのだった。
「この廊下だ。――この廊下の奥で、おまえが会いたがってる妖が待ってるぞ」

 襖が続く細長い廊下をやり過ごし、玄が待つ場所へと抜け出る。と、そこは再び庭に面した長廊下となっており、風が撫でる草木が鳴らす音が闇の中を巡っていた。
 夜目に馴染んだ視界が、闇で覆われた庭の中に揺れる菊の花をとらえる。
 風にまぎれ、菊の香りが広がっている。まるで、この菊の咲く庭ばかりが、屋敷を取り巻くうっそりとした闇から隔絶されているかのようだ。
「菊の花は邪気を払うのではありませんでしたか?」
 訊ねかけながら、七重は玄の顔を見遣る。
 玄は七重の視線を受けて首を竦めるばかりで、応えを返そうとはしなかった。

 長廊下は、向かう先が闇に呑まれているせいもあってか、どの程度の距離をもったものなのか、一向に知れない。
 玄はひたすらに無言のままだった。七重はその後ろをついて歩き、時折思い出したように足を止めては、漂う菊の香りに視線を寄せるのだった。
 そして、それから、おそらくはほんの数分――あるいは十数分ばかりが経っていたのかもしれないが、右手に続く障子の向こうで、パタパタパタと足音が聞こえ始めた。
 不思議な事に、足音が移動すると、それに合わせたように、ぼうやりとした明かりが部屋の中を移動していくのだ。
 障子ごしに、仄かな光が瞬いている。
「早津田さん」
 前を行く玄を呼びとめて、障子の向こうを指し示す。
 玄は面倒くさげに足を止め、七重が示した方に顔を向けて舌打ちをした。
 その、次の瞬間!
 玄の手が、障子を引き開けた。障子はすたんと小気味良い音を響かせて開く。
 広がったのは畳敷きの広い和室だった。
 その中に、真白な着物を纏った少女が立っている。
「……あなたが」
 言いかけて口をつぐむ。
 少女は初めに見たあの老婆と同様に、白装束を思わせるような服を纏い、おかっぱの白髪で、そして透けるような白い肌をしていた。
 口許と双眸が、ぬらぬらと紅い。
「あなたがこの屋敷に封じられた妖ですか?」
 訊ねた七重に、少女は、紅い口許をぬらりと引いて笑みを浮べた。
 紅い双眸が半月の形をかたどる。
 と、少女の手が、くいくいと上下に動き出す。そう、それは、まるで七重を呼び寄せようとでもしているかのような動きだ。
「僕、いえ、僕達は、あなたを解放してあげたくて、それでここに」
 言いながら、七重の片足が障子を越える。
 その時。
「阿呆か、おめえは!」
 怒気をこめた玄の声音が七重を引きとめ、七重は強い力で玄のもとへと引き寄せられた。
「不用意にそっちに踏み込むんじゃねえ」
 障子の向こうへと踏み入ろうとした七重を引き寄せ、次いで、少女の顔を睨めつける。
「……てめえか」
 玄が発した低い声音に、少女は口の両端を吊り上げて笑み、くるりと舞うような動きできびすを返した。
 少女は、井草の香りの漂う部屋の奥へ駆け込んでいく。
「あ、待って」
 少女を追って手を伸べた七重の腕は、しかし、障子の向こうに現れた土壁によって阻まれた。
 畳敷きの和室が広がっていたはずの場所には、今は土壁が広がってあるのだ。
「……これは」
「これが歪みってやつだな。まあ、面倒くせえ状態になっているようだ」
 言いながら、玄は周りに広がっている屋敷の様子を確かめる。
 闇に包まれた長廊下に障子、土壁。
 と、障子の上側を確かめた玄の目に、びっしりと飾られた札が在るのが映りこんだ。
「こいつか」
 独りごちる玄の横で、しばし思案顔でふけっていた七重が、ふと目をあげて玄を見遣る。
「菊の花は邪気を祓うのではなかったですか?」
「あン? まあ、そうとも言うな。――ところで、ボウス。ちいっとここを見てみな」
「……?」
 玄の指が示した場所を見上げて、七重もまた刹那目を見張る。
「こいつがヤツを繋ぎとめてるっていう楔だな。まあ、それなりの術者が施したみてえだが、俺からすれば粗だらけだ」
「術が不完全であったと? だから彼女は正気を失くしたのでしょうか」
「完全な因果があるとは思えねえが、無関係でもねえだろうな。――どちらにしても、結構なガタがきてやがる。これじゃあ歪みも生じるわな」
「……では、この辺りを歪ませたのは、彼女の心がなしたものではないと」
 訊ねた七重に、玄はゆるゆるとうなずいた。
 七重の表情に、どこか安堵の色が浮かぶ。
「……正直な見解を述べますと、僕には、彼女が心底人を苦しめたがっているようには思えないんです。……いえ、なんとなくそう思うだけなんですが」
「根拠はねえのか?」
「……あれだけ見事な菊を咲かせられるような妖に、そこまでの闇はないと、信じたいというか」
 ごもごもと口ごもる七重に、玄は大仰なため息を吐いてうなずいた。
「まあ、あいつもだ。歪んだ場所からものを見るよりは、真っ当な場所からものを見たほうが、ちったあマシになるってもんじゃねえのか」
 吐き捨てるような調子で応えた玄に、七重の双眸が輝きを覚える。
「それじゃあ」
 
 返した七重の言葉に玄の手が弾かれるように動く。その手が土壁に触れると、上部にあった札のいくつかがたちどころに腐って落ちた。そして次の時には、そこには土壁ではなく、再び畳の間があったのだ。
 手毬を抱えた少女が立っていて、驚いたような面持ちで二人を見据えている。
「こんばんは。……あなたがこの屋敷に閉じ込められていた方ですか?」
 訊ねた七重に、少女は手毬をぽうんと弾かせた。
「ずっと一人で、長い事、辛かったでしょう?」
 続けて問うた七重に、少女はやはり手毬をつく。
「そいつぁ、多分、なんにも教えちゃくれねえさ」
 横から口を挟んできた玄の言葉に、七重はじわりと眉を動かす。
「ボウズ、おめえはこいつを外に出してやりてえのか? それとも話ィしたかったのか?」
 玄の声が続けざまに問い掛ける。
 七重は玄の顔を見上げた後に、ゆっくりと少女の顔に目を向けた。
 ――満面の笑みをたたえた少女が眼前に立っている。
「……僕は、彼女が自身の意思でどこへでも行けるようになれればと思います」
「つまり解放してやりてえってこったな?」
 訊ねた玄に、七重は「はい」と小さく返し、うなずいた。
「よし」

 大きくうなずいた玄の手が残っている札の上へとかざされる。
 玄の手は、まるでそれ単体が意思をもった生き物であるかのように、札が施した数多の呪いを喰っていく。
 数多あった札が腐り落ちていくにつれ、少女の表情は見る間にいきいきと輝きを得ていった。
 辺りに充ちていた闇が、その色を薄めていく。

「早津田さん」
 
 七重が玄の名を口にした時には、名前も顔も知らない術者が施した呪いは跡形もなく消え失せていた。
 玄はけろりとした表情で振り向き、その目元にじわりと薄い笑みを浮べる。

 手毬がぽうんと大きく弾み、七重の足元まで転がってきた。
 七重がそれを手にしたのと同時に、それまでは何ともなかった屋敷が大きな軋み声をあげだした。
 少女の姿は、気付けばもうどこにも見えなくなっていた。
 
「ボウズ、とっととここから出るぞ。あれが出て行ったみてえだから、あっという間に崩れちまう」
 玄は七重の腕を強く引き、長廊下を飛び降りる。
 七重は手毬を持ったままで、無人となった和室の中を見つめていた。


 けたたましい蝉時雨に眉をしかめ、玄はうっそりと窓の向こうに目を向ける。
 気付けば、そこは我が家の縁側であり、汗をかいたコップの中に冷えた麦茶が揺れていた。
 碁盤と、手にしたままの碁石。
 玄は今まで確かに碁を打っていたのだ。暑さに舌打ちなどしてみせながら。

 自室の机の上には開かれたままの教科書があった。
 七重はつと目を上げてカーテンの向こうに目を向ける。
 庭師が暑そうに顔をしかめながら庭木に手入れを施している。
 手に持ったままのシャーペンを教科書の上に転がして、七重は小さな息を吐いた。

 知らず、眠ってしまっていたのだろうかと考えながら、しかし、玄と七重はそれぞれに異なる場所で事の真偽を知るのだった。

 玄の腕には新たな呪詛が痣となって刻まれている。
 七重の部屋の床には、紅色の手毬が転がっている。

 夏の光溢れる暑気の中で、油蝉が忙しなく鳴いていた。







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    登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  
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【2557 / 尾神・七重 / 男性 / 14歳 / 中学生】
【5430 / 早津田・玄 / 男性 / 43歳 / 呪医】



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          ライター通信          
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お世話様です。今回は当ノベルへのご参加、まことにありがとうございました。
個人的には意外な組み合わせでのご参加でしたので、確認しましたときには少しばかり驚いてみたりもしました。
決して親子のような関係にはならない二人のようですね。また、友人のようにもならない二人なのではないかなと、執筆しながらぼんやりと思っておりました。
でも、玄さんは七重さんをこころよく思っているし、なんだかんだでフォローしてやりたいと思っているような。
それで、七重さんは玄さんには畏怖や尊敬といった感情を抱いていて、一歩離れた場所で敬愛の眼差しを送っている、みたいな。
時々顔を合わせる親戚みたいな感じ、なのでしょうか?
 
と、また勝手な妄想を繰り広げてみたり。……申し訳ありません。

それでは、このノベルが少しでもお気に召していただけますようにと祈りつつ。
機会があれば、またお二人にお逢いしてみたく思います。