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<東京怪談ウェブゲーム アンティークショップ・レン>


DOLL

 暗い…ここはどこだろう…。
 ああ、そうだ。僕は死んだんだっけ…でも、本当はまだ生きたい。
 生きてもう一度、光と地面を確かめたいんだ……。

「ドールがいなくなっちまったんだよ」
 アンティークショップ・レンの中で、碧摩蓮はうんざりしたようにキセルの煙を吐き出しながらそう言った。
 それは少し前に持ち込まれた球体関節人形で、少年を模した精巧な作りの人形だったらしい。それを箱ごと店の中に置いていたはずなのに、気が付いたときには姿が見えなくなっていたという事だった。
「いい仕事の人形だったけど、にんぎょうは『ひとがた』だから、何かの魂でも入っちまったのかも知れないね」
 そう言いながらも蓮は、カン!という音を立てキセルの灰をキセル盆に落とした。どうやら、結界を抜けて出て行ったことに腹を立てているらしい。
「…もし良かったら、その人形を探してきてくれないかい?」

 その頃、東京の街を一人の少年が歩いていた。
「ここ、どこかなぁ」
 辺りをきょろきょろしながら、少年は人波を避けるように一生懸命前に進む。太陽の光、地面を蹴る足の感触。望んでいた物が手に入ったのに、何かが足りない。
「そうだ、名前…」
 少年はてくてくと歩き、そして辺りにいた人にこう聞いた。
「あの、僕の名前を探してくれませんか?」

「えっ、私ですか?」
 蓮の言葉に顔を上げそう言ったのは、丁度店に来てアンティークの食器を眺めていたデュナス・ベルファーだった。
 デュナスはアンティーク好きなのだが、購入するほどの経済的余裕はないためいつも『見てるだけ』で、そんな自分が店主の蓮に声をかけられかなり怯んでいる。
 その怯んだ様子を見て蓮は少しくすっと笑いながら、同じように店内にいた劉 月璃(らう・ゆえりー)や、陸玖 翠(りく・みどり)達の顔を見る
「あんた探偵なんだろう?捜し物は得意なんじゃないのかい?」
「そうですけど…」
 確かにいつも何も買わずに見てるだけの自分にわざわざ茶を入れてくれたり、ゆっくり鑑賞したりできるように気を使ってくれる蓮からの依頼を断るような理由もない。そもそもここにいるのだって、受けている依頼もなく時間がありあまっているからだ。
「デュナス君、俺も一緒に探しますよ」
「そうですね。たまたま私達が一緒にいたというのも何かの縁でしょう。蓮の依頼お引き受けしますよ」
 顔見知りである月璃や翠がそう言うのを聞いて、デュナスは少しホッとした。普段犬や猫を探したりすることはあるのだが『人形を探す』という事に関しては、一人で取りかかるのは不安だ。月璃や翠なら人に紛れた人形を探せるだろうが、あいにくデュナスが持っていると言えば、せいぜい光が操れるぐらいなのだ。後は足で探すしかない。
「そうしてくれるとありがたいよ。実はもう引き取り手が決まっているんだけど…」
 そう蓮が呟いた時だった。
 ドアを開け人が入って来る。それは思案深げな顔をした細身で長身の男で、真っ直ぐとカウンターにいる蓮に向かって歩いてきた。
「蓮。頼んでいた物は届いたかい?」
 それを聞き、蓮はふぅと深い溜息をついた。いつも勝ち気な蓮にしては珍しい。そして困ったように空になったドールの箱を指さす。
「すまないね、あんたからの頼み物の人形がちょっと家出しちまってね、丁度ここにいた三人に頼もうとしてた所さ。ああ、この人が頼んでた九条 宗介(くじょう・そうすけ)だよ」
 蓮がそう紹介すると、宗介は三人に向かってそっと名刺を差し出した。そこには『小説家』と職業が書かれている。それを見ながらデュナスや月璃達も同じように自己紹介をした。
「ふむ、それにしても人形が家出とは。よほど僕の家に来たくなかったのか、それとも何か入り込んだのか…」
 宗介はそう呟くと、カウンターに肘をつきながらぶつぶつと自分の思考の海に入っていった。『思考停止こそが、この世で唯一許されざる罪』という考えを持つ宗介は、何故ドールが消えてしまったかの理由を探すのに夢中になっている。蓮はそんな宗介に慣れているようだが、端から見ると少し怖い。
「ドールの特徴とかはあるんですか?」
 月璃はまずそれを聞くことにした。ドールも人間と同じで個々に違う特徴がある。特に球体関節のドールは一体一体手で作られている物が多い。瞳の色や髪の色、髪型はもちろんだが、探すドールにしかない何かがあれば、手がかりは掴みやすい。
「写真とかあれば良いんですけど…あと材質とか」
 デュナスがそう言うと、蓮はキセルに葉を詰め火をつける。
「栗色の髪で茶色の目さ。背丈は130cmぐらいかね…襟の付いた白いシャツを着て、革靴を履いている」
「結構な大きさなのですね」
 何度か翠は球体関節人形を見たことがあるが、100cmを越える物は珍しい。それは材質が石粉粘土や磁器で作られているため、それだけの大きさの磁器が焼ける窯を持っている者が少ないという理由もある。
「だから珍しい…全身が磁器で、眼もガラスで出来た結構な大きさのドールであるのに、銘がない…しかし遠くには行ってないだろう」
 考えながらも宗介は話をちゃんと聞いていたらしい。ドール自身に何かが宿っていたとしても、特別な移動能力が無いのなら、まだそう遠くへは行っていないはずだ。
「しらみつぶしに探すのは、効率が悪い」
 宗介がきっぱりそう言うと、それを聞いていた月璃がに蓮に問う。
「ドールが身に付けていた物は残っていないのでしょうか?ドールが入っていた箱でもいいですが」
「箱はないけど、ズボンと揃いになってる紺のベレー帽ならあるよ」
「それを貸してください…誰か他にも見たい方はいますか?」
 その言葉に翠が前に出る。デュナスは人形の特徴や服装を一生懸命手帳に書き写していた。
「私にも見せてください。何か気が残っていれば、それで探れるでしょうから」
 そのベレー帽は丁寧な縫製で作られたシルクの物だった。月璃は店から姿を消す前後のドールの様子などを聞きながら、そっと持っていたカードに触れた。
『…どうして外に出て行こうと思ったのですか?』
 すると月璃の脳裏にドールの様子が浮かんだ。
 それは自分の目が覚め、手や足を動かし何かに気付いたように外に飛び出す感じだ。そして帽子が落ちたことも気にせず、楽しげな様子だ。それは翠にも同じように伝わってくる。
「さて、この気をたどって探してきてください…」
 そう呟き、翠は自分の式神達を辺りに放ちドールを追うことにした。どれほど遠くに行っているかは分からないが、足だけで探すよりはいいだろう。
「何か分かりました?」
「ちょっと待ってください、デュナス君…」
 月璃はそう言いカードを一枚引いた。直感で何かを探す時は、カードを何枚も展開するよりもワンカードリーディングの方が答えが出やすい。そしてその手に握られていたのは『剣の6』のカードだった。
 宗介がそれをのぞき込みながらまた考え込む。
「『剣の6』…この組み合わせになるとは面白い」
「ええ、行動を示すカードで剣にしてはいい意味です…何かのきっかけを掴んだことを意味してますね」
 何らかの者が、ドールという体を手に入れたことを示しているのだろうか…だがここにいても物事は進展しそうにない。デュナスは手帳を閉じ、蓮の方を見た。
「とりあえずここにいても仕方ありませんので、探してみます。お金は持っていないでしょうから、そんなに遠くまでは移動してなさそうですし、とりあえずコンビニに行って聞き込みしてきます」
 どうやら皆外に探しに行くらしい。蓮はキセルを吸いながら頷く。
「出来れば無傷で連れてきておくれ。中身をどうするかは引き取り手の宗介に任せるよ」
「努力はしますが、希望通りになるとは限りませんよ」
 翠の言葉を聞き、宗介は天を仰いで遠くを見ながら呟く。
「僕の希望か…何はともあれ見つけてからか考えるとしよう」

「誰も僕の声を聞いてくれないや」
 少年はそう言いながら日差しの中を歩いていた。たくさんの人がいるのに、誰も自分の方を向いてくれない。地面の固さや、太陽の眩しさが嬉しいのに、自分の声が届かないのはちょっと寂しい。
「太陽、木、靴…みんな名前があるのに、どうして僕だけ名前をなくしちゃったんだろ」
 そう思った時だった。
 コンビニエンスストアから、四人の集団が出てくるのが見える。
「デュナス君はあんパンが本当に好きなんですね」
 クスクスと月璃に笑われながら、デュナスは少し困ったようにコンビニの袋を下げていた。中には牛乳とあんパンが二個入っている。
「い、いや…あんパンがなかったんで、聞き込みついでに買おうと思って。おかしいですか?」
「いや、あんパンと牛乳の取り合わせは悪くない。糖分とたんぱく質が取れる…粒あんなら繊維質もあるから、ビタミン不足に気をつければ…」
 どうしてデュナスと宗介はあんパンと牛乳について語っているのだろうか。翠はそう思いながら、式神達の動向を探っていた。近くにドールの気配を感じる。だが、人に紛れているのかその気配が薄い。
「近くにいるようなんですが…あっ!」
 灯台もと暗し。
 蓮が言っていた特徴そのままの少年が、デュナスの持っていた袋を興味深そうにつついている。それを見たデュナスは、慌てて袋を少年の手が届かない所に上げた。
「ちょ!食べ物をつついたら罰が当たりますよ!」
「ねえねえ、それあんパン?」
「見つけた!」
 翠が少年を捕まえようとした時だった。その手をするっと抜け、少年が笑いながら走っていく。
「捕まらないよー。だって僕、まだ捜し物があるんだもん!」
 そう言いながら走り去る少年を四人は慌てて追いかけた。遠くには行っていないだろうとは思っていたものの、こんな近所でいきなり見つかると拍子抜けする。
「肉体労働は二人に任せようか」
 そう言って宗介は走るスピードを落とした。走ろうと思えば追いかけられるのだが、一緒にいる月璃が走ることに慣れていないらしい。それにこの様子なら、デュナスと翠で捕まえられそうだ。わざわざ全員で追いかけるのは効率が悪い。
「すいません…俺、体力ないんです」
 同じようにスピードを落とし立ち止まって肩で息をする月璃に、宗介はふっと笑いかける。
「彼は遠くに行けたはずなのに、まだこの辺りにいたということは、何か理由があるんだろう。だったら全員で追いかける必要はない…さて、ちゃんと捕まえてきてくれるかな」

「早い…!」
 それは人形とは思えないほどの早さだった。いや、人形だからこそそのスピードで走れるのだろうか…デュナスと翠は少年を追いかける。
「仕方ありませんね…デュナス殿、今見たことは他言無用ですよ」
 そう言うと翠は少年に併走していた式神の七夜を使い、空間移動の能力で自分の手元まで引き寄せた。近くまで来れば捕まえるのは楽だ。
「あれ?」
「捕まえたー!」
 ひょいとデュナスが後ろから少年抱え上げると、それは何だか妙に軽かった。磁器で出来ているのだからある程度の重さがありそうなのに、その体は羽のようでもある。
「さて、どうして出て行ったか聞かせてもらいますよ」

「だからー、名前を探すまで帰れないんだって」
 公園のベンチに座ってデュナスの持っていたあんパンと牛乳を食べながら、少年は四人に囲まれて皆の顔を見上げていた。少年の隣に座っている月璃は、それを微笑みながら見ている。
「名前を探すために店から出て行ったんですか?」
「うん。歩いたりお日様を見たりもしたかったけど、今は名前を探したいかな」
 その会話を聞きながら宗介は考えていた。月璃が引いた『きっかけを掴んだ』ということと『行動』を意味するカード…それはどうやらこの少年の霊が、ドールという体を得たことを示していたのだろう。
 しかしその理由が『名前を探す』とは。
「あんパン美味しいですか?」
 デュナスが同じようにあんパンを食べながらそう言うと、少年は満面の笑みで頷く。
「うん」
「だったら少し牛乳分けてください…喉詰まりますから」
「デュナス殿、何か飲み物を買ってきましょうか?」
 翠がそう言うと、デュナスは渡された牛乳を飲みながら首を振った。
「いえ、あんパンには牛乳じゃないとダメなんです」
 何だか変なこだわりだ。
 だが、その事で少年は打ち解けたようだった。ベンチの上で足をぶらぶらさせながら皆の顔を見る。それは何だか期待に満ちた眼差しだ。
 それを見て宗介が少年の頭を撫でる。
「名前は大事だな。言い伝えなどでは真名を知られるとその魂の全てが束縛されるとも言うし、名前があることで自分を認識するという鍵にもなる。鍵がなければその扉を開けることすら叶わない…」
「な、何だか深いですね」
 どうも宗介は自分の思考にはまりこむと、周りが見えなくなるタイプのようだ。デュナスはそれに驚きながらも少年の方を見る。
「何かやり残したことがあれば、俺で良ければお手伝いしますよ」
「そうですね。このまま連れて帰ってもまた抜け出してしまうでしょうし、それが一番の解決法かもしれません」
 月璃と翠がそう言うと、少年は空を見上げた。今日は真夏日で、空は青い。じっとしているだけでも汗が出てきそうな湿度と気温だ。
「高い所に行きたいな」
 その言葉に四人は顔を見合わせた。東京都内で高い所と行ってもいろいろある。
「高い所…確かに天に近い場所ではあるかな」
 東京タワー、都庁、六本木ヒルズ…宗介は思い出せる限りの高い建物を考えた。だが、そのどれも少年の言う「高い場所」に当てはまらないような、そんな気がする。
「高い所とはどこでしょう?東京タワーとかですか?」
 そう聞く月璃に少年は首を振る。
「うーん、山かな」
「簡単に無茶なことを言いますね…」
 思わず時計を見ながら翠は眉をしかめた。もう既に午後を過ぎているし、今から普通に登山をするのは無茶がある。だが、それに気付いたように宗介が顔を上げた。
「…高尾山なら京王電鉄高尾線、もしくはJR中央線で行けてケーブルカーが展望台まで利用出来る。そこでいいなら今から行けるな…無論キミが嫌でなければの話だが」
「そこでいいよ。おじさんありがとう」
 無邪気にそう言われ思わず表情が固まった宗介を見て、翠やデュナスが思わず笑った。確かに少年からは落ち着いて見えるのだろうが、こう見えても宗介はまだ二十代だ。
「…僕はもしかして、この中で一番年上に見えているのかな?」
「九条さんは落ち着いて見えるんですよ。ケーブルカーがあるなら、体力のない俺にも登れそうです。日が暮れる前に行きましょう」

 電車を乗り継ぎケーブルカーでやってきた高尾山の展望台は、一部がビアガーデンになっていた。そのせいか、日が傾き始めてもまだかなりの観光客がいる。
「こっちに入るには別料金がいるようですね…」
 案内を見ながら翠は呟くが、今日は別に楽しみに来たわけではない。少年は人混みから離れて空を見上げている。その空は公園で見た時よりも天に近いからなのか、青が濃いように見える。
「何か思い出しましたか?」
 少年の隣を歩きながら月璃がそう言うと、不意に自分達の前を鳥が飛んでいった。結構野鳥が多いらしい。その鳥を指さして、少年はこう呟いた。
「僕、鳥になりたかったんだよね…」
「鳥ですか…私も子供の頃、鳥になって空を飛んでみたいと思っていたことがありましたよ。友達と羽を作って丘から飛び降りて、よく怒られたものです」
 デュナスの言葉に少年が笑う。
「うん、自由に飛べたらいいなぁって」
 それを四人は黙って聞いていた。鳥になりたかった…それは一度は誰でも思うことだろう。自分の力で空を飛びたい。それは人類が古くから持っている夢だ。
「あれはシジュウカラだな。スズメ目の白い頬が目立つ小鳥だ」
 宗介の説明を少年は黙って聞いたあと、皆に向かってゆっくりとこう言った。
「名前、思い出したよ」
「………」
「僕の名前ね『そら』って言うんだ。ここに来たらみんな思い出した」
 そして少年は自分の身の上を話し始めた。
 自分の死んだ歳が八歳だったこと。よく両親に連れられてこうやって山に来ていたこと。そして、鳥が好きだったこと…。
「…でもね、家族で山に行く途中でお父さんの車が事故に遭ったんだ。僕…死んじゃうのかなって思ってたら、気が付いたらあそこにいた。だから…」
 月璃がそっとそらを抱き上げた。デュナスに聞いていたが、磁器で出来た体のはずなのにこんなに軽いのは、きっと八歳という魂の重さだからなのだろう。
 軽いはずなのに、心にずしっと来る重さ。それが少年の無念さを表しているように思えてならない。
「辛かったんですね…」
「ううん。ちゃんと山にも来られたし、名前も思い出せたから大丈夫だよ…でも、ずっとここにいちゃ行けないよね」
 そらが月璃の頬に触れる。その手はまだ温かく、とてもドールには思えない。翠は符の感触をポケットの上から確かめて、そらの顔を見た。
「一人で帰れますか?無理そうならちゃんと送りますよ」
「大丈夫。一つだけお願いいいかな?」
「私達で良ければ伝えておきますよ」
 月璃の腕からひょいとそらは飛び降り、皆に向かって笑う。
「あのね、きっとお父さんもお母さんも泣いてると思うから、手紙を書いてあげたいの」
 それを聞き、デュナスは自分の持っている手帳の一ページを丁寧に取って渡した。そらはスタンプが置いてある台に紙を置き、何かを一生懸命書いている。
「ありがとう。あんパン美味しかった」
 デュナスはその手紙を大事に手帳に挟み、胸ポケットにしまう。宗介はそらの目線に屈み、一つだけ質問をした。
「生まれ変わるとしたら、鳥になりたいかい?」
 それを言うのと同時にシジュウカラが飛んだ。それを目で追い、遠くに飛ぶのを見送り、そらは首を振る。
「ううん、やっぱり人間で、お父さんとお母さんの所がいい」
「そうだね…それが一番だ」
 宗介はそう言いながらそらを抱き上げた。名前を思い出したそらは、自分の行くべき所へ行くのだろう。その鍵があればどの扉も開けられる…。
「じゃあね、ありがとう…」
 その言葉を最後に、宗介の手元にドールが残された。

「ちゃんと戻ってきたんだね。良かったよ」
 戻ってきた四人から事の顛末を聞きながら、蓮はドールの髪をブラシで丁寧に梳いていた。外を走ったり歩いたりしていたのに、ドールには少しの汚れもない。
「あたしもちょっと調べたんだけど、この人形はある人形作家が事故で亡くした自分の息子を模して作った物だったらしいよ。もしかしたら、何処かでそれが繋がったのかも知れないね…お疲れ様」
 事故で亡くなった子供と、亡くした息子を模して作った人形。
 子供から両親への想いと、両親から子供への想い。それはどこの世界でも同じなのかも知れない。
「さて、私は手紙を届けに行ってきます」
 デュナスの言葉に月璃や翠が頷く。
「俺も行きます」
「そうですね、最後の願いを叶えに行きましょう」
 そらが一番伝えたかった言葉を贈るために。 夕暮れの空には細い月が昇り始めていた。

fin

◆登場人物(この物語に登場した人物の一覧)◆
【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
6392/デュナス・ベルファー/男性/24歳/探偵
6118/陸玖・翠/女性/23歳/(表)ゲームセンター店員(裏)陰陽師
4748/劉・月璃/男性/351歳/占い師
6585/九条・宗介/男性/27歳/三流作家

◆ライター通信◆
ご参加ありがとうございます、水月小織です。
今回は「少年組」と「探索組」に別れた一本のシナリオになっているのですが、実はルートが違うと話が別物になります。別組のシナリオを見る楽しみも残してます。
こちらの方は事故で亡くなった少年が…という感じの話になりました。たまにはどこにも触れない単純なシナリオもいいかなと。
本当はもっと逃げ回る予定だったのですが、皆さんの推理などが鋭すぎて素直に捕まりました。
リテイクなどはご遠慮なくお願いします。
では、また機会がありましたらよろしくお願いいたします。

宗介さんへ
初のご参加ありがとうございます。
実は元ネタの方を知らないのでイメージ検索をして自分の中で「こんな感じ?」というキャラにしたのですが、大丈夫だったでしょうか。色々知識があるということで、カードの意味から路線まで広く活躍して頂きました。
また機会がありましたらご参加下さいませ。