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<東京怪談・PCゲームノベル>


 『逢魔封印〜参の章・前編〜』


 篠原美沙姫は、晴れ渡る空を見上げ、屋敷の中庭で、僅かな休憩時間を、穏やかに過ごしていた。最高級のアールグレイの良い香りが、鼻腔をくすぐる。
 今日も、屋敷中の誰よりも早く起き、誰よりも数多くの仕事をこなした。若くとも、メイド長という責任のある立場に置かれているのだから、それは当たり前のことだと彼女は思っている。責任のある立場にいるのなら、皆の模範とならねばならない。
 蝉の声が、不規則な波動となって耳に届く。今年は梅雨が明けるのが遅かったから、彼岸も近くなった今の時期になって、ようやく聞こえるようになった音楽だ。
 精霊たちが、ダンスを踊っているのが見える。美沙姫が微笑みかけると、ダンスはより、情熱的なものになった。自分の姿を認めて欲しいという願望は、人間も精霊も同じだ。
 その時、後ろでドアが開く音がした。そちらを振り返ると、メイドのひとりが、静かにこちらへと近寄ってくるところだった。
「どうされました?」
 美沙姫が微笑みかけると、メイドも会釈を返してきた。彼女とは歳が近いので、つい厳しく指導してしまうこともあるが、良き話し相手でもあった。
「ご休憩中、申し訳ありません。堂本様と仰られる方からお電話がありまして、メイド長に、お繋ぎして欲しいと……とても、大事な用件だと仰っていました」
「葉月様が? ……分かりました。すぐに向かいます。申し訳ないのだけれど、ティーセット、お願いしても宜しいかしら?」
「はい。大丈夫ですよ。片付けておきますので、メイド長は、早くお電話に」
「ありがとう」
 そう言って美沙姫は、急いで電話のある場所まで向かう。

「大変お待たせ致しました。篠原でございます」
『美沙姫ちゃん! 大変なことになっちゃったの!』
 葉月の声は、かなり切羽詰っていた。とりあえず、落ち着かせるのが先決だろう。
「どうされたのですか? 深呼吸をして、落ち着いて、お話ししてみてください」
『うん……あのね、津久乃ちゃんがいなくなっちゃったの。それで、あたしがひとりで、何とかしなきゃいけないって言われたの。どうしたらいいかわかんなくて……美沙姫ちゃん、手伝ってくれないかな?』
 やはりすぐには落ち着かないのか、葉月の話は、どうも要領を得ない。ただ、津久乃が行方不明になって、その捜索を手伝って欲しいのだろう、ということは分かったので、美沙姫は、穏やかに伝えた。
「承知致しました。わたくしで宜しければ、お手伝いさせていただきます。事務所の方に伺えば宜しいでしょうか?」
『……うん、お願い』
「では、これからすぐに伺います。失礼致します」
 そう言って受話器を置くと、美沙姫は、すぐに出かける支度をし始めた。


 葉月は、美沙姫が持ってきたスコーンを、黙々と食べる。こういうときに土産、というのもどうかと思ったのだが、どうやら、持ってきて正解だったようだ。
 そして、先ほどから話を聞いているのだが、どうも、津久乃に関することよりも、亨という人物に関しての話題が多い。美沙姫は彼を直接は知らないが、葉月や、津久乃の口に良く上っていたので、大体の人物像は掴める。どうやら、こちらを先に解決せねば、次に進めないようだ。
「葉月様は、亨様のことがお好きなのですね」
 単刀直入に切り出すと、葉月は、小さく頷いた。
「でも、好きっていうよりは、ちょっといいなぁ、って思ってた感じで……」
「けれども、亨様にご好意をよせておられるのは、間違いないのですよね? そして、お話を伺っておりますと、亨さまのイメージが変わられたから、ショックをお受けになっていらっしゃる……違いますか?」
 美沙姫の言葉を聞き、葉月は、テーブルに頬杖をついた。
「そう……なのかなぁ……? あたしね、いつもニコニコしてて、人がよくて、でも抜けてて、ほっとけなくて……」
「無礼を承知で申し上げます」
 美沙姫は、ソファーに座りなおし、葉月の目を真っ直ぐ見た。
「葉月様は、亨様がお好きだったのですか? それとも、頭の中に創り上げた、亨様のイメージがお好きだったのですか? そんなに簡単にお気持ちが変わるほどの、軽いものだったのですか? 『ちょっといいなぁ』という表現は、逃げだと存じます。何故、そういう時こそ、きちんと向き合おうとなさらないのですか? わたくしがお聞きした限りでは、お話し合いにすらなっておりません」
 それを聞き、葉月は視線を下に落とした。
 厳しく言い過ぎたかもしれない。しかし、彼女はきちんと受け止められる人間だと思ったからこそ、美沙姫はあえて考えを口にしたのだ。
「そう……かもしれない。ううん、美沙姫ちゃんの言うとおりだと思う。あたし、きちんと考えてなかった……」
 そこで、場にそぐわないほどの軽快なメロディーが流れる。葉月はバッグから携帯電話を取り出すと、美沙姫に「ちょっとごめんね」と断ってから、電話に出る。
「はい。堂本です……。そうですが……ご用件は? ……と、亨ちゃんが? ホントに? ……う、うん。ありがとう。待ってるね」
「良いお知らせだったようですね」
 美沙姫は、そう言ってにっこりと微笑む。すると、葉月は「うん」と答え、照れくさそうに笑った。彼女は、色々な意味で真っ直ぐなのだと思う。
「では、本題に入りましょう。以前にお会いした津久乃様のご様子から考えますと、面倒に巻き込まれたというよりも、巻き込まれに行った、という感じが強いのですが……どう思われますか?」
 美沙姫が問いかけると、葉月も頷く。
「あたしも、そう思ったんだけど……この文章さえなければ」
 そう言って葉月は、紙をテーブルの上に置いた。

 死を求めよ、されば与えられん
 呪縛から逃れるがごとく
 課せられた重みに耐えて鳥は飛ぶ
 希望という名の日々は冗長

「葉月様が、こういったものをお書きになる時は、良くない兆候なのでしょうか?」
「ううん。そうとも言えない。だけど……こういう暗いイメージの文章の時は、大抵出来事は良くないし、胸騒ぎが起こる。今回も、そうだったから」
「そうですか……」
 そう呟き、美沙姫はさっと文章に目を走らせる。
「これは、場所を示しています。新宿歌舞伎町です」
「……どうしてそうなんの?」
 葉月が、訝しげな表情で、尋ねてくる。
「これは、暗号です。この文章自体には意味がないんです。最初と最後の文字を拾って行くと……」
「死・ん・呪・く・課・ぶ・希・長……ホントだ。美沙姫ちゃんスゴイ!」
「いえいえ」
 その時、チャイムが鳴った。
「助っ人が来たみたい。謎も解けたし、急ごう!」
 葉月がそう言うと、美沙姫も頷いて立ち上がる。
 玄関を開けると、Tシャツにジーンズという姿の、少年が立っていた。彼は美沙姫の方を見ると、思わず、と言った感じで「コスプレ?」と呟く。
「コスプレじゃなくて、正真正銘、本モノのメイドさんだよ。……ああ、ごめん。森羅くんでいいんだよね? あたしが葉月。こちらは篠原美沙姫ちゃん」
「篠原美沙姫と申します。どうぞ、宜しくお願い致します」
「あ、えーっと、弓削森羅です。ヨロシクです」
 美沙姫が挨拶をすると、森羅はどこかたどたどしく答える。
「でもすっげー! 俺、ホンモノのメイドさんって初めて見た!」
 しかし、次の瞬間には、目を輝かせていた。
「盛り上がってるトコ申し訳ないんだけど、もう目的地に向かうところなの。来てくれたばかりなのに、お構いも出来ずにごめんね」
「新宿歌舞伎町?」
 そう森羅が言うと、葉月は目を瞬かせた。
「森羅くんも解けたの?」
「うん。俺、あーいうの得意だし」
「……ということは、亨様方も、もう向かわれたのでしょうか?」
 美沙姫の言葉を聞き、森羅は少し考えてから口を開く。
「分かんない。俺、話だけ聞いて、すぐこっちに来たから。……電話してみる?」
「それは……多分ダメ。あたしはあたしでやれって言われたし」
 葉月はそう言って、かぶりを振る。
「そっか……あのさ、津久乃ちゃんからもらったモノとかないかな?」
「え? ええと……急にそんなこと言われても……」
「わたくしが持っております」
 慌てる葉月を落ち着かせるかのように頷きながら、美沙姫がポケットから、小さな藁人形を取り出した。
「津久乃様から、お近づきの印に、と頂いたものです」
「ちょっと、触ってもいいかな?」
「どうぞ」
 美沙姫から承諾を得ると、森羅は藁人形にそっと触れた。
 少しの間、意識を集中するかのように目を閉じ、そして開けた。
「……何か、分かった?」
 葉月の問いに、森羅は不思議そうに首を傾げる。
「新宿歌舞伎町にいるのは、間違いないと思う。でも……それ以上は拒まれた」
「拒まれた……?」
「ごめん。分からない」
 そこで、二人のやり取りを見ていた美沙姫が、穏やかに言葉を発する。
「とにかく、現地に向かってみませんか? わたくしが、風の精霊の協力を得て、探して貰います。森羅様も、現地に着けば、何か感じられるかもしれません」
「うん……そうかもしれない」
 そう答えた森羅と、美沙姫を交互に見ると、葉月は、しっかりと頷いた。
「よし、行くよ!」


 新宿歌舞伎町。
 暗くなってきた空に、ネオンの輝きが映える。
 夕刻を過ぎても、人通りが途絶えることはない。むしろ、一夜の享楽を求める人々は、増えていく。
 美沙姫たち三人は、そこに、足を踏み入れた。
「亨ちゃんたちは、もう来てるのかな……?」
(何故かしら……?)
 美沙姫は閉じていた瞳を開くと、葉月の問いに答える。
「……風の精霊たちが、混乱しています。情報が正常に届いて来ません」
 それはまるで、年代物のラジオに、雑音が入るかのような感触だった。
「美沙姫さん。この『変な感じ』、どこから来てるんだろ? 場所が変わる……っつーか、特定しづらい」
 美沙姫はそれに頷くと、言葉を発する。
「では、わたくしの得られる情報と、森羅様の感覚を照らし合わせて参りましょう」
「OK!」
「え? あたしは? あたし」
「葉月さんは、俺たちについてくればOK!」
「さぁ、ご一緒に」
 自分の分からないところで、勝手に話が進むことに葉月が戸惑っていると、森羅は片目を瞑って手招きをし、美沙姫は彼女の手を取り、それぞれ走り出した。
 人込みを縫って駆けると、最初の角にたどり着く。
 森羅と美沙姫は、意識を集中させる。
「美沙姫さんOK? せーので行くよ?」
「ええ」
「せーの! ――右!」
「右です」
 二人は、顔を見合わせて微笑む。
「うっし!」
「葉月様、こちらです」
「う、うん……」

 次の角。
「左!」
「左です」

 そして、その次の角、途中の路地裏、三叉路……二人は、順調にこなしていく。
 しかし。
「左!」
「右です」
「右!」
「左です」
「左斜め前!」
「今来た道かもしれません……」
「上!」
「……ちょっと、なによ『上』って」
 流石に葉月もおかしいと思い、森羅に思わず突っ込んでしまう。
「だって、分かんねーんだもん!」
「ええ……確実に近づいているはずなのに、判りづらくなって来ました」
「何かさぁ、遊ばれてる感覚だよね」
「ああ」
 森羅がの言葉を聞き、美沙姫には合点がいった。
「成るほど……恐らく、遊ばれているのだと思います」
「どういうこと?」
 葉月が不思議そうに尋ねて来たので、美沙姫は苦笑する。
「わたくしたちが移動するから、面白がって逃げるのです。なので、多分、動かなければ……」
「そっか。向こうから……あ、来たね」
「ええ、いらっしゃいましたね」
 納得しているのは二人だけで、葉月は完全に蚊帳の外だが、それも、致し方ない。
 段々と周囲の闇が濃くなり、空気が、重みを増してくる。そして――
『もう終わり?』
 目の前には、いつの間にか日本人形のような姿の少女が、立っていた。美沙姫はその姿を認めてすぐに、風の精霊との交信に入る。
『わたしは唄子。かわいいでしょ?』
 唄子と名乗った少女は、そう言って首を傾げる。
「うーん……可愛いっちゃぁ、可愛いかなぁ……」
「ちょっと森羅くん。変なの相手に真面目に答えてどうすんのよ」
 森羅と葉月のやり取りには構わずに、唄子は続けた。
『これは小唄子。かわいいでしょ?』
 彼女が開いて見せた、左手の五本の指に、それぞれ、違った顔の指人形が嵌められている。
「あ、あれはカワイイかも」
「うん、確かに……」
 葉月がそう言い、森羅が頷きかけた瞬間。
 何かが、物凄いスピードで飛んできた。
 森羅は、それを裏拳で弾く。
 それは地面に叩きつけられ、べちゃり、と嫌な音を立てた。赤黒いそれは、ずるずると引きずられながら戻っていく。中指に嵌められた小唄子の口から、発せられたものだ。
『小唄子は、人間を喰らってわたしに養分をくれるの。すてきでしょ?』
「前言撤回! ぜんっぜん可愛くねーし、素敵でもねー!」
「あ、あたしも撤回……」
(……集まった)
 美沙姫は風の精霊の協力を願う。
 すると、森羅と葉月の周囲を、爽やかな風が包み込み始めた。
「『聖風壁』です。お二人を守ってくれます」
『あなたも風を遣うのね。わたしと同じね。――小唄子』
 唄子がそう呼びかけると、五体の小唄子が、宙に浮かび始めた。そして、唄子は懐から扇子を取り出すと、パッと広げる。その色は、血のように赤かった。
「森羅様、そちらはお任せしました!」
 そう言い放つと、美沙姫は意識を集中させる。
 風の精霊が、荒れ狂っているのを何とか抑えながら、浄化魔法『浄風』の威力を加減して、唄子に放つ。それは絡め取るようにして相手を捕らえたが、すぐにすり抜けられた。
 代わりに、唄子が扇をひらひらとさせると、刃となった風が、こちらへと飛んでくる。美沙姫は、それを最低限の動きでかわした。
 威力が弱すぎたかもしれない。現在の状況では、精霊が扱いにくすぎるが、それを言っても始まらない。再び、唄子への攻撃を試みる。
 今度は、もっと強く。
 しかし、またすり抜けられてしまう。お返しとばかりに、先ほどよりも沢山の風の刃が向かってくる。この程度の術など、避けるのは容易い。
 しかし。
(何故……?)
 何故、『浄風』が効果をなさないのだろうか。それが、気にかかる。
『あら。瑪瑙さんのお札ね。でも、精度が低いわ。それでも、あなたに扱えるかしら』
 唄子がそう言ったので、目線だけ後ろを向かせると、葉月が地面に座り込み、カードを広げ、何かを必死で読んでいるところだった。恐らく、説明書きだろう。
「何故、あなたがそのようなことをご存知なのですか?」
 問いながら、美沙姫は『浄風』をまた放つ。
 今度は、捕らえた。
『わたしは、瑪瑙さんに「封印」されたことがあるのよ。嫌な思い出ね』
 今度は、寝そべっている唄子の全身から、風の槍が飛ぶ。美沙姫はそれも避けると、再び問う。
「じゃあ、何故あなたは出てこられたのですか?」
 風の威力を、さらに増していくが、全く手ごたえがない。唄子は笑みを浮かべると、立ち上がり、くるりと回った。
 突風が、襲い掛かってくる。しかし、美沙姫は風の流れを読めるので、簡単にすり抜けられる。
 唄子がすり抜けられるのも、風の遣い手だからだろうか。しかし、明らかに自分の方が、力は上だ。同じ種類の術の遣い手であっても、能力が上であれば、当然勝る。
 なのに、手ごたえがないのは何故だろう。
 無駄とも思えるような攻防が続く。
 その時。
「美沙姫さーん! 風の精霊、静かに出来ないかな?」
 森羅の大声がこちらに届いた、美沙姫は、目は唄子に向けたままで、答える。
「でも、そのようなことをしたら、森羅様はともかく、葉月様が!」
「葉月さんは大丈夫! 俺の符が守ってるから! お願い! 一瞬だけでいいから!」
 美沙姫は、少し躊躇ったが、このままでは埒が明かない。森羅の提案に乗ってみることにする。
「承知しました!」
(精霊たち……鎮まって)
 意識が収束し、拡散する。
 森羅たちの守りがとけ、風がぴたりと止んだ。
「――あっ!」
 思わず、美沙姫は声を上げる。
 見えた。
 唄子と小唄子たちに張り巡らされた、無数の糸。
 今まで、乱れる風が隠していた、意図。
 その先は――ビルの上。
「ビンゴだ! ――美沙姫さん、決めちゃって!」
「はい!」
 美沙姫の『浄風』が、『本体』を絡め取り、地面へと引き摺り下ろす。その正体は、小さな蜘蛛だった。
「葉月さん! ほら! 早く! 『封印』!」
「――ええええっ!? ええと……」
「落ち着いて!」
 森羅は励まし、美沙姫は『本体』を押さえ込むことに集中する。
 やがて、葉月は意を決したように、頷いた。
「我が同朋が封印師、瑪瑙亨の名に於いて命ず! 我の言葉も鎖となりて、彼の者を捕らえる檻と化す! ――逢魔封印!」
 その途端、カードから眩い光が発せられ、触手のように蜘蛛を絡め取ったかと思うと、中へと引きずり込んだ。
 皆、一斉に安堵の溜め息を漏らす。
 すると、風の精霊が、情報を届けに来た。
(ありがとう)
 美沙姫は、精霊に礼を言うと、葉月と森羅に向かい、穏やかに告げた。
「お疲れ様でした。亨様方は、この角の先におられるようです」
「え? ホント!?」
「葉月さん、行こう!」
 急いでそちらに向かって走る二人に、美沙姫も笑顔で続く。


「亨ちゃーん!」
「しーたーん!」
 見慣れた姿を認め、葉月と森羅は声を上げる。
「亨ちゃん! 何かね、カードが光って、化け物がカードに吸い込まれたんだけど、これでいいの?」
 亨は、葉月から渡されたカードを見て、驚いたような声を上げる。
「……見事な『封印』が施されている。君は、本当に初めてなのか?」
「当たり前じゃん! あたし、こんなのやったコトないもん」
 美沙姫は、亨の姿を初めて見たが、悪い人間のようには思えなかった。ただ、何故だか、哀しそうだと感じた。
「しーたんも結ちゃんもお疲れ! そんで、あの亨さんと話してるのが葉月さんで、このメイドさんは、美沙姫さん」
 自分の名前が出たので、美沙姫はそちらへと向くと、丁寧にお辞儀をした。
「ご紹介に与りました、わたくし、篠原美沙姫と申します。どうぞ、宜しくお願い致します」
「あ、俺は、櫻紫桜です。森羅がお世話になりました。宜しくお願いします」
「私は、四方神結です。宜しくお願いします」
「ところで……津久乃様は見つかりましたでしょうか?」
 美沙姫がそう言うと、皆が顔を見合わせた。
「そう……そうだ。津久乃ちゃんは?」
 葉月が辺りを見回しながら言うと、亨は首を振る。
「こちらにもいなかった。だが……」
『ふふっ』
 唐突に。
『ふふふふっ……』
 笑い声が、聞こえた。
「この声……」
「津久乃様のお声です」
 葉月の言葉を、美沙姫が引き継ぐ。
「津久乃ちゃん! どこにいるの!? 無事なの!?」
 葉月が首を巡らせながら大声を出した時。
『あははははははははっ!』
 笑い声は弾け、辺りは闇に閉ざされた。


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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■PC
【3941/四方神・結(しもがみ・ゆい)/女性/17歳/学生兼退魔師】
【4607/篠原・美沙姫(ささはら・みさき)/女性/22歳/メイド長/『使い人』 】
【5453/櫻・紫桜(さくら・しおう)/男性/15歳/高校生】
【6608/弓削・森羅(ゆげ・しんら)/男性/16歳/高校生】

※発注順

■NPC
【瑪瑙亨(めのう・とおる)/男性/28歳/封印師】
【堂本・葉月(どうもと・はづき)/女性/25歳/フリーライター】
【御稜・津久乃(おんりょう・つくの)/女性/17歳/高校生】

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■         ライター通信          ■
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■篠原・美沙姫さま

こんにちは。またのご発注ありがとうございます! 鴇家楽士です。
お楽しみ頂けたでしょうか?

今回、美沙姫さんには、葉月の良き相談相手となっていただきました。ありがとうございます。

そして今回は、かなり個別視点が多くなっています。なので、ご一緒に参加いただいた方々のノベルを併せてお読みいただけると、話の全体像が見えてくるのではないかと思います。

それでは、読んでくださってありがとうございました!
もし宜しければ、後編もご参加いただけると嬉しいです。