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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


双六!【 紫の書編 】



◇★


「双六をしましょう!」
 その日、突如草間興信所を訪れた少女はそう言った。
 前回と、それから前々回とまったく同じ登場に、草間 武彦は盛大な溜息をついた。
「何度も言うが、嫌だ。イ・ヤ・だ!!」
「実は最近みょうちきりんなものを購入したんです」
 少女・・紅咲 閏はそう言うと、文庫本サイズほどにたたまれた紙を手渡した。
 ・・双六の紙だ・・・。
 右隅には“ドキドキ☆人生の縮図のようだよ!大双六大会!【紫の書】”と書かれている。
 これも前回と、そして前々回と同じだ。そして、武彦もまったく同じツッコミを入れる。
「紫になっただけじゃねぇか!」
「紫の書って言うのは・・コレが入っていた箱が紫だったからだと思うんですけど・・」
 閏はそう言うと、すっと紫の箱を取り出した。
 そこにも“ドキドキ☆人生の縮図の・・・(以下略)”と書かれている。
 前回と、そして前々回ととまったく同じ説明をされて、武彦は更に脱力した。
 前に二度、双六と言うものをやった事がある。
 今回とまったく同じように閏が持ってきたのだが・・・青の書、そして赤の書も思い出したくもないほどにおぞましい体験をしたのだ。
 特に武彦の中では青の書の悪夢が未だに根付いているらしく、双六を見詰める視線が尋常ではない。
「絶っ対やらないからな」
「まぁまぁ、そう言わずに、これに手を乗っけてください」
「嫌だ!ちなみに、今回は実力行使もきかないからな!!」
 前回の事が頭を過ぎったらしく、武彦は既に臨戦態勢に入っている。
「ンもー、困ったちゃんですねぇ。そんなに双六、嫌いですか?」
「紅咲が持ってくる双六限定で、な」
「そんなに熱烈に愛されると、困ってしまいま・・・」
「人の話を聞け!!まず、紅咲は人の話をきちんと聞くと言う事を覚えろ!」
「もー!じゃぁいーですよっ!草間さんには頼みませんから〜!誰かに入ってもらいますー!」
「・・・ちなみに紅咲、今回はどんな内容なんだ?」
「やりもしないのに内容は聞きたがるんですか?・・・まぁ、いーでしょう。教えてあげます」
 閏はそう言うと、双六を開いた。
 パサリと興信所の机に広がった紙の上には、マスが6つしかない。
「今回はすこーし普通の双六とは違うんです。マスはたったの6つ。つまり、サイコロを振るチャンスは1回だけ」
「どう言う事だ?」
「紫の書は、世界のあらゆる怪を閉じ込めた書なんです。不思議で幻想的で、ちょっぴり怖い怪を6つ」
 閏の細い指がすーっと双六のマスをなぞる。
「このマス1つ1つに閉じ込められた“怪世界”の中で、出口を探すんです。出口にたどり着かなければそのまま双六に飲み込まれ“怪世界”の一員になります。無事出口を見つけられたならばこの世界に戻ってこられます」
「随分と危険じゃねぇか」
「えぇ。しかも、怪はこちらに危害を加える事は出来ますが、こちらから怪に手を出す事はできません」
「やられっぱなし・・・か?」
「いいえ。頭を使うんです」
 悪戯っぽい瞳でそう言うと、閏は自分の頭を指差した。
「逃げるか隠れるかをすれば怪をやり過ごす事が出来ます。頭を使えば・・・もしかしたら怪の攻撃を阻止する事が出来るかもしれません。怪の弱点を知り、怪を避けながら出口を目指す。途中で怪に捕まれば・・・」
 その先を、閏はあえて暈した。
「で?その・・・6つの怪っつーのは?」
「さぁ。入ってからのお楽しみです。・・・だって、運命は全てサイコロの目次第なんですもの」


★◇


 運命の導きは自分でも知らないところで、ふっと別れ道を提示する。
 右に行けばCDショップ、左に行けば草間興信所・・・ふらり、桐生 暁は興信所へと足を向けた。
 別に何か用事があったわけではないのだが、人が集まるところに楽しい事あり。
 暁はそんな気持ちを抱いて、当初行く予定だったCDショップに背を向けた。
 ・・・思えばそれは、双六が暁を呼んだのかも知れない・・・

 草間興信所と書かれた扉を開ければ、ムっとした空気に思わず眉を顰める。
 冷房が壊れているのか、部屋の中央では小型の扇風機が健気に熱された空気をかき回している。
 全開の窓から入ってくるささやかな風を楽しむかのように、窓辺で長い髪を揺らしていた少女がこちらを振り向く。
「閏ちゃん・・・?」
「暁さん!」
 満面の笑みで元気に走ってくる少女。
 ・・・可愛いといえば可愛い。
 確かに、閏は可愛らしい容姿をしていた。ピンク色の髪も、無邪気な笑顔も、ふわりと心を軽くしてくれる何かがあった。
 ――――― あったのだが、閏はこれでいて随分な悪戯っ子だ。
 悪戯っ子なんて可愛らしい言葉が似合うかどうかは定かではないが、閏は何かにつけて問題を起す・・・少しキツイ言い方をすれば問題児だった。
 怪しげなクスリを自ら調合して、それを善良な一般市民に無理矢理飲ませて実験してみたり、何も知らないで興信所を訪れた人間に持って来た怪し気な双六をぶちあてて小さくしてその中に放り込んでみたり、彼女のやることなすこと、つねに周囲の人々に被害をもたらしている。
 しかし、それが悪意でやったことならばまだ理解が出来る。
 ・・・それなのに、彼女は何1つの悪意も持たずにそれらをやってのけているのだ。
 無邪気な悪意、純粋な悪戯精神。
 恐ろしい以外に言葉が見つからない。
「暁さん!待ってたんです!」
 閏はそう言うと、暁の腕をガシリと掴んだ。
 待たれる理由もなければ、暁がここに来たのは偶然の出来事である。
 それとも、閏は双六と会話をする能力があり、双六から暁がここに来ることを聞いたとでも言うのだろうか?
 ・・・いや、そんなはずはない・・・。
 暁の腕をグイグイと引っ張る閏。
 細い体に似合わない力に、思わず苦笑する。
「さぁ、今回も楽しく元気に双六しましょー??」
 そう言って、閏が取り出したのは小さく折りたたまれた双六だった。
 それが入っていたであろう濃い紫の箱は、妙な威圧感を放って机の上に鎮座している。その隣に置かれた灰皿から立ち上る紫煙が、四角い箱の周りに絡み付いて、尚更怪しいヴィジュアルを醸し出す。
「今回はどんな内容なの?」
「サイコロを振ってからのお楽しみデース☆」
 そんな元気に言われても、内容のわからない双六なんて怖くて出来やしない。
 しかし閏は、暁が“双六をしない”と言う選択を許してはくれないだろう。
 瞳の奥底、無邪気に光る“何か”・・・
 暁は腹を括ると閏から渡されたサイコロを振った。
 コロコロとテーブルの上を回転するサイコロ。目がクルクルと回り、ピタリと止まった。
 目は6だ。
「6の怪へ行ってらっしゃいませ、暁さん」
「怪・・・?」
「紫の書は、世界のあらゆる怪を閉じ込めたものなんです。6の怪世界への扉を今、暁さんは開きました」
 怪世界なんて聞いていない・・・!
 そう叫びたいのは山々だったが、開いてしまった扉は閉じなければならない。しかし、暁はその閉じ方を知らなかった。
「怪世界の中では、怪が全てです。貴方は怪をかわすことは出来ても、傷つけることも殺すことも出来ません。怪を殺すこと、ソレ即ち怪世界の心の蔵を破壊すること。怪世界の消滅をもたらすもの、ソレ即ち怪世界とともに命を落とす定め」
 ギィっと、耳の直ぐ近くで重たい扉が開く音が聞こえた気がした。
 ガリガリと石を削るような音が響き ――――――
「怪世界から脱出せし者、ソレ即ち出口に気付きし者。怪世界の出口は目には視えざる場所にあり。しかしそれは直ぐ近くにあり。それは遠くて近い場所にあり、しかし己の近くに常にありしもの」
 まるで呪文のようだと思いながら、暁はそっと目を閉じた。
 ドロドロと体に絡みつく空気。
 嫉みに妬み、恨みに狂い、息もつかせぬほどの殺意、憎悪・・・
 狂気の中に落ちていく、その感覚は不思議だった。
 怖いとは思わない。絶望感もない。
 堕ちていく、それは微かな快楽を纏っていた。全ての諦めとともに、全ての感情とともに・・・堕ちていく、どこまでもどこまでも、狂気の海の中を・・・


◆☆


「おい!!おいこらっ!起きろっ!!」
「んっ・・・」
 直ぐ耳元で声が聞こえ、暁は眉を顰めながら目を開けた。
「はれ?冬弥ちゃん?」
「間抜けな声出してんな!!」
 目の前に立った梶原 冬弥がそう言って、寝転ぶ暁の太ももあたりを軽く蹴る。
「あ、暴力反対!」
「ンなこと言ってる場合か!」
「そう言えば、どうして冬弥ちゃんこんなところにいるの??」
「知らねぇよ!・・・と、言いたいところだが、なんつーか・・・」
「閏ちゃん?」
「そうか。やっぱここは双六の中か」
 困ったように顔を顰める冬弥。
 どうやら冬弥は双六の事を知っているらしい。
 ・・・そう言えば、ここは一体何処なのだろうか?
 怪世界と、閏は言っていたけれども・・・??
 起き上がり周囲を見渡せば、そこは橋の上だった。
 木で組まれた橋はギシギシと音を立てており、朱に塗られた手すりは色褪せている。
 耳を澄ませば水音が響き、どうやら橋の下には川か何かがあるらしい。
 前も後ろも橋の行く先は薄い靄に包まれており、どちらがどこに繋がっているのかは分からない。
 どうやら橋は緩いカーブを描いているらしく、前方も後方も少しだけ下がって見える。
 ・・・暁と冬弥は、橋の丁度真ん中付近にいるようだった。
「どうしよっか。とりあえず、どっちかに行かないとダメだよね」
「あぁ。・・・つっても、どっちも同じに見えるんだが・・・」
 朱塗りの手すりが続く向こう、どちらも靄に包まれて先は見えない。
「うーん・・・んじゃ、前に進もっか?」
「お前が向いてる方ってことか?」
「そう。どっちも同じにしか見えないんだから、ここはスパっとどっちかに決めた方が良いかなーって」
「ま、そうだな」
 冬弥が軽く頷き、それを受けて暁がゆっくりと立ち上がる。
 ギシリと軋む木の音が、水の音しか聞こえないこの空間に鋭く響く。
 なんだかちょっとしたお化け屋敷気分だった。
 周囲は全て真っ白な靄で囲まれており、朱の手すりの向こう、流れているはずの水は見えない。
 音の大きさからして、橋はそれほど高い位置には架けられていないようだった。
 ・・・それなのに、下は真っ白な闇に包まれている。
 視覚と聴覚の差異。
 無意識のうちに暁は視覚の言うことを信じた。
 きっと、暁でなくても聴覚よりは視覚を信じるだろう。目で見えるもの、それは一種の絶対的なモノだった。
 この橋は、どれだけ高い位置に架けられているのか分からない橋。
 落ちたならば、危険。
 そう思った途端、水の流れは遠ざかった。
 遠く遠く・・・橋の位置が、ゆっくりと上がっていく・・・


 橋は中々に長いものだった。
 徐々に徐々に下がってゆく緩やかな斜面。
 背後を振り向けば、すでに先ほど居た場所は乳白色の闇に包まれてしまっている。
「・・・そろそろ終わりか?」
 冬弥がそう言葉にした途端、橋はあっけなく終わりをむかえた。
 橋の手すりよりも鮮やかな朱に塗られた鳥居が大きな口をあけている。
 その先に続くのは、細長く続く道。
 獣道とそう大差のないそれに、暁と冬弥は先に進むか否かで躊躇した。
 しかし、今まで歩いてきた道程の長さを思うと、そしてその倍はあるであろう対岸までの遠さを思うと、2人は先に進まざるを得なくなった。
 目に痛いほどに鮮やかな朱の鳥居が、白色に染まる世界で異質な存在感を発している。
 そっと、鳥居に触れる。
 木独特の手触りが心地良く・・・刹那、暁はふとある考えを頭に描いた。
 もし、この朱色がペンキではなく人の血だったならば ―――――
 手を鳥居から放す。
「うわっ!!!!」
「なんだ?!」
 数歩先を歩いていた冬弥が立ち止まり、叫び声を上げた暁のもとへと走り寄る。
「や・・・なんでもない・・・」
 早鐘になる心臓を押さえながら、暁は軽く首を振った。
 真っ白な手には何も描かれていなかった。
 右手は左手と同じ色をしており、何も変わったところはなかった。
 それなのに、先ほど暁が手を放した時・・・確かに、手はべっとりと血に濡れていた。
 生暖かい感触も、ツンと鼻をつくあの臭いも、確かに血のものだった・・・。
 未だに残っている感触に顔を顰め、冬弥の後を追う。
 閏が言っていた言葉がチラリと頭を過ぎる。

“怪世界から脱出せし者、ソレ即ち出口に気付きし者”


☆◆


 細くくねる獣道を真っ直ぐに進む。
 背の高い草が暁の膝の辺りで揺れており、時折吹く風にザワザワと音を立てる。
 上空を見上げれば、四角く切り取られた真っ青な空がチラリと見える。
 ・・・先ほどまでは乳白色の靄が支配していた世界だと言うのに、随分と天候の移り変わりが激しい。
 それとも、あの靄は青く抜ける空から地上を覆うために漂っていたものなのだろうか?
 まさか・・・
 暁はその考えに頭を振った。
 如何して靄が地上を覆う必要などあるのだろうか?まるで、陽の光を閉ざしてしまうかのように・・・
「暁、どうやら目的の場所に着いたみたいだぞ?」
 冬弥の声に顔を上げる。
 薄暗かった場所に差す、一筋の光。
 林の終わりは案外あっけないものだった。
 空が急に広くなり、木々の代わりに家々が姿を現す。
 村・・・なのだろうか?少しばかり時代が違う気がしなくも無いが、そこは古き良き日本の家屋が立ち並ぶ、静かで穏やかな村だった。
 木で出来た家は周囲の林と調和しており、平屋の造りは横に広い。
 地面には子供が遊びのために用いたであろう、細い枝が投げ出されており、その近くには等間隔に円が並んでいる。
 1個1個2個、1個1個2個、円は暁が幼い頃にやった事のある遊びを描いていた。
 何故か強烈に心をくすぐられ、思わずその円の中に片足を入れた。
 右、右、両足、左、左、両足。
 リズムに乗ってテンポ良く“ケンケンパ”と足を動かしていく。
 円は村の中心部にまで続いており、暁は夢中になって円が続く向こうへと歩いた。
 ケンケンパ、ケンケン・・・
 最後の丸2つを元気に踏み、ふっと・・・その前に描かれている言葉に視線を移す。

   “うしろ、うしろ”

 ――――― 後ろ・・・??
 振り返ろうとした刹那、視界の端にもう1つの文字が映る。

   “みんないなくなって、こんどはあなたが、にげるばん”

 拙い文字は子供が書いたようで、文字の傍らには小さな木の棒が投げ捨てられている。

   “おにさんこちら、てのなるほうへ”
   “おにさんこちら、てのなるほうへ”
   “おにさんこちら、てのなるほうへ”

 ズラリ・・・・・・・・・
 見渡す限りずっとずっと、書きなぐったような文字が続いていた。
 “うしろ、うしろ”“みんないなくなって、こんどはあなたが、にげるばん”そこまでは同一人物が書いたような筆跡だった。それなのに、後に続いている“おにさんこちら、てのなるほうへ”は全てが違う人々によって書かれたようだった。
 子供のような字、大人のような字、ワープロでうったかのように整った文字、クセの強い文字、細い文字、太い文字、力強い文字、繊細な文字・・・全てまるで違う顔をしていた。
 狂ったかのように鬼を呼んでいる、そんな気がした。
 “おにさんこちら、てのなるほうへ”“おにさんこちら、てのなるほうへ”
 子供から大人から、連呼する・・・その声が聞こえて来る気がした。
 誰もが手を叩いて面白そうに呼んでいる。
『おにさんこちら、てのなるほうへ』
『おにさんこちら、てのなるほうへ』
 姿は見えない。けれど、確かに周囲に人の気配を感じる。
 それは遠巻きに見ているようで、決して近づいては来ない・・・そんな気配だった。
 不安になる心、そして・・・ゆっくりと振り向く先 ――――― 冬弥の姿はなかった。
『みんないなくなって、こんどはあなたが、にげるばん』
 少女の声は笑いを含んでおり、心底面白い・・・そう言っているかのようだった。
『おにさんこちら、てのなるほうへ』
 男性から女性から、老人から子供から、全ての人が手を叩いて呼んでいる。
 獲物が狩られるその瞬間が見たいとでも言っているかのように ―――――
 暁の心はどんどん周囲の声に追い詰められて行く・・・。
 そもそも、あの狂ったように続く文字を見た瞬間に、声が聞こえて来た気がした・・・そして、実際に声は暁の体に痛いくらいに浴びせられている。
 冬弥がいない・・・でも、逃げないと・・・鬼が来る・・・逃げないと・・・!!
 鬼が何なのか、暁にも分からなかった。
 しかし、直ぐそこに迫っているであろう危険だけはよく分かった。
 “おにさんこちら”とかかれた文字の上を走り出す。
 最近買ったばかりのスニーカーが、文字を掻き消していく。
 周囲の風景が徐々に色を変えて行く。
 知らない場所から見知った場所へ・・・幼い頃に逃げた、あの場所・・・
 早く逃げないと、早く走らないと・・・!!
 殺されてしまう!行かないと、走らないと・・・!!!
 手に武器を持って、追いかけてくる人々の顔。
 怯えとも、恐怖ともつかぬ顔をしていた人々。人ではない能力を宿した暁に対し、恐れのために行動した人々。
 しかし、確かに・・・追い詰められたあの時、人々の顔は狂気に歪んでいた。
 暁の脳内で、鬼が変換される。
 鬼と言う、未知の単語が自分の見知った単語へと変換され、それにともない映像が脳内で流れる。
 追われる自分、追ってくる人々。
 掴まれば殺されてしまう、早く走らないと、どこかに逃げないと。
 何時の間にか、足元の文字は消えていた。
 それでも、道だけは真っ直ぐ続いていた。
 森の中を疾走する。むき出しになった腕に鋭い葉先が小さな切り傷を作る。
 何度足元に張った木の根に転びそうになったのだろうか?何度、ぬかるむ地面に足を取られそうになったのだろうか?
 足を止めれば殺されてしまう。だからこそ、走るしか出来ない。
 どこまで走れば良いのだろうか?この道はまっすぐに続いていて、先が見えなくて・・・
 何時の間にか、あの声は聞こえなくなっていた。
 荒い呼吸の音と、高鳴る心臓の音だけが周囲に広がる。
 運動神経S級の暁だが、流石に長時間全力疾走することには慣れていなかった。
 だんだんと速度が遅くなり、やがて足は止まった。
 近くの木に手をつき、肩で呼吸をする。
 久しぶりにかいた汗が頬を滑り、茶色い土へと吸い込まれて行く。
 もう、誰の気配も感じられなかった。どうやら撒いたようだ・・・それにしても、ここはどこなのだろうか?
 足元から視線をゆるりと上げれば、そこには目に痛いほどにキツイ色をした朱の鳥居が立ちはだかっていた。その向こうには乳白色の靄の中に木の橋が溶けているのが見える。
 最初の場所に戻ってきたのだろうか・・・?
 そう言えば、橋の反対側には何があったのだろうか?
 今更向こう側に渡ろうとは思えないけれども・・・
 落ち着いてきた呼吸に安堵すると、暁は背後を振り返った。
 あの村の中に冬弥を置き去りにして来てしまった。戻らないと・・・けれど・・・
 チラリと過ぎる、地面に書かれたあの言葉達。狂ったように続く、鬼を呼ぶ声。
 それでも、ここであの村から離れてはいけない。
 冬弥をあの場所に置いてきてしまってはいけない。・・・出口に向かう時は一緒でないと・・・。
 目の前に続く獣道に視線を向け、再び背後の橋へと視線を向ける。
 ――――― ふっと、それは突然に、乳白色の靄の中に1つの黒々とした人影が浮かび上がった。
 風もないのに揺れている、その影はそれでも確かに人の姿をしていた。
「・・・冬弥ちゃん・・・?」
 ポツリと呟いた声が、不安げにその場に漂う。
 しかし、人影は身動き一つせずにその場で揺らめいている。
 ・・・聞こえなかったのだろうか?
「冬弥ちゃん!」
 今度は先ほどよりも幾分大きな声で名前を呼んだ。
 人影が、まるで頷きでもするように首を前後に大きく振り、右手を高々とつき上げる。
 ゆらりゆらり、まるで暁を呼んでいるかのように振られる手。
 ドっと、安堵感が全身を支配する。どうやってこの場に来たのかは分からないが、冬弥は無事だったのだ。
 もしかしたら、冬弥もあの気配に驚いてここまで戻って来たのかも知れない。
「いつの間に戻ってきたの?俺を置いてっちゃうなんて、冬弥ちゃん薄情すぎないー!?」
 普段と同じ調子で軽口をたたく。
 前方に見える人影は、身動き一つせずにおいでおいでをしている。
 ・・・おかしいと、普段の暁ならば思うはずだった。
 村の中、確かに橋を背後に走っていたはずなのに、暁は現在橋の上にいる。
 真っ直ぐに走っていたはずなのに・・・と、普段ならば警戒しただろう。
 冬弥が暁を置いて逃げることもおかしい。まして、目の前にいるだけでこちらに来ないのもおかしい。
 ・・・トントンと、視界の悪い中を進む。
 人影は相変わらず同じ大きさで、その場を動くつもりはないのだろうか。右手を高々と突き上げておいでおいでをしているだけだった。
 だんだん鳥居が遠ざかる。緩やかなカーブを描いている橋の上で、暁はふっと足を止めた。
 大分歩いたはずなのに、人影は一向に近づかない。
 視界の悪い中、数メートル先は何も見えないと言うのに ―――――
 どうして前方の影は、あんなにクリアに見えているのだろうか・・・?
 “前には誰も居ない”
 もしも前方に誰かいるならば、一向に縮まらない距離から考えて、相手は暁から遠ざかっていないといけない。しかし、人影は動いていない。
 “冬弥じゃない・・・”
 それならば、一体なにが目の前にいるのだろうか?
 いや、前にいるのだろうか?もしかしたら・・・後ろにいるのではないのだろうか・・・?
 暁はそう思ってしまった。
 勿論、その考えはおかしい。暁の影が映ってない以上、背後の何者かが目の前に影となって映っていることは考え難い。
 まして、縮まらない距離から考えるに背後にいる“何者か”は暁とともに動いていなければならない。
 それでも・・・“思ってしまった”のだ。
 背後を振り向く。反射に近い速さで、暁は向きを変えた。
「 ―――――― っ!!!!!!」
 叫びださないのが不思議だった。
 喉まででかかった悲鳴は、息を呑む小さな音に掻き消された。
 背後には、暁が捜し求めていた人物が居た。
 目の前に見える人影と同じ恰好で、おいでおいでをしながら・・・ゆっくりと、地面を滑るように暁の方に向かってくる・・・冬弥の姿があった。
 その瞳は何も映しておらず、それでもその顔からは薄い狂気の色が窺い知れた。
 おいでおいでをするかのように、ゆらりゆらりと揺れる手。
 ずっとずっと・・・この姿で、暁の背後からついてきていたのだろうか・・・??
 ゾクリと、冷たいものが背中を滑る。
 冬弥のドロリとした瞳の中、見える・・・あの時の光景。
 人が追ってくる。捕まれば、殺されてしまう。
 見える・・・恨み、妬み、嫉みに呪い、狂気・・・
 喉にこびりついていた悲鳴が、唇からほどばしる。
 暁は冬弥に背を向けると走り出した。
 乳白色の靄の中、決して縮まらない距離なのだと知っていた。目の前に見える人影は、相変わらず同じ距離を保っている。それでも、走り出す以外には何も出来なかった。


◇★


 走って走って・・・目の前を遮る靄が途切れた先には、色の濃い朱塗りの鳥居があった。
 先ほどと微塵も変わらない鳥居は、確かにあの村へと続いているものだった。
 終わらない世界、決して出られない場所。
 追われる。けれど、追いつかれることはない。
 村の中へと飛び込む。
 丸が1個1個2個、それを靴底で掻き消すように走る。
 再び見える、子供が書いたような文字。
 “うしろ、うしろ”
 “みんないなくなって、こんどはあなたが、にげるばん”
 そして続く文字。
 “おにさんこちら、てのなるほうへ”
 “おにさんこちら、てのなるほうへ”
 確かに掻き消したはずの文字が、そこには延々と続いていた。
 終わらない世界、決して出られない場所。
 追われる。けれど、追いつかれることはない。
 それでも、逃げないと・・・
 出口はないけれど、逃げないと・・・。生きるために、逃げないといけない。
 何処に逃げれば良いのか、どうやって逃げたら良いのか、そんなことは分からない。
 とにかく、逃げないと・・・!!!
 ・・・暁の精神はギリギリだった。
 追い詰められる心は、何かに追われていた。
 続く獣道、その先には朱塗りの鳥居、乳白色の靄の中に溶け込む橋、おいでおいでをしながら揺れている人影、再び朱塗りの鳥居、獣道、人気のない村、続く獣道、その先には朱塗りの鳥居・・・
 行けども行けども、出口は見えない。心ばかりが追い詰められていく。
 暁は獣道の中で、ついに何かに躓いて転んでしまった。
 カツンと爪先が何かに当たり、あっと思った時には目の前の景色がふわりと宙に浮き、地面へとダイブしていた。
 ダメージジーンズを穿いていたために膝を守るものはなにもなく、見れば膝口からは鮮血がゆるゆると流れ出していた。
 ジワリとジーンズに濃い色をつくり、足を滑り落ちる。
 鋭い痛みはすぐに鈍いものへと変わり、ズキズキと心臓の鼓動にしたがって熱く痛む。
 暁はもう、どうしたら良いのかわからなかった。
 暗い場所で1人、何かから逃げている。
 決して終わることのない追いかけっこは、きっと・・・暁の心が折れてしまうまで続けられるのだろう。
 金色の髪が吹いた風に揺れる。大人になりかけていない年齢で、それでも何か・・・子供ではないという証が欲しくて、染めた髪は明るい色だった。
 暁の持つ、その血が何であるかを証明しているかのような、鮮血の色をした瞳は決して偽りの色ではない。
 押し込めたはずの感情が爆発する。
 子供ではないと思っていた。けれど、確かに子供だった。
 あの日から変わっていない。なにも、なに1つ・・・変わっていないんだ・・・
 胸に下げたロケットペンダントに無意識のうちに手が伸びる。
 ギュっと、服の上から感じる硬さは心が落ち着くものだった。
 中に入っているはずの写真を思い出す。そして、優しかった笑顔を思い出し・・・最期の顔を思い出す。
 悲しさ、寂しさ、鈍い痛みが胸を締め付ける。
 ズキリ、ズキリと、鼓動の音とともに・・・・・・・
 心なしか肌寒い。
 吹く風に乗ってくる匂いは冬のもののような気がする。
 立ち上がり、振り返る。
 ・・・横たわる男性の姿。その顔は、冬弥のものだった。
「ど・・・して・・・?」
 駆け寄り傍にしゃがみ込む。
 どうして冬弥が倒れているのだろうか?確かに、冬弥は暁を追ってきていたはずなのに・・・
「とーやちゃん?」
 掠れた声が、ざわめく木々の声と混じる。
 ぐったりと瞑られた瞳、薄く開かれた唇に血の気はない。
 そっと右手をむき出しになった腕に伸ばす。
 ・・・冷たい・・・それは、生きていない人間の体温だった。
 もう2度と動かないであろう冬弥の体を揺らす。そうすることによって、もしかしたら・・・目を開けてくれるのではないかという一筋の希望を胸に抱きながら。
 どうして・・・?何故・・・?
 暁の頭の中で繰り返される言葉は、疑問ばかりだった。
 どうして冬弥がここにいるのだろうか?さっきまで暁を追っていたのは誰なのだろうか?
 どうして・・・冬弥は冷たくなってしまったのだろうか・・・?
 ふっと、目の端に冬弥の細い首筋が映った。
 真っ白なそこにつけられた、丸い2つの赤い模様。
 そこからあふれ出している血は固まっていたが、ソレがなにを意味するものなのか、暁は痛いほどに分かっていた。
 冬弥は血を吸われた。そして、その結果こうして倒れこんでいる。
 他にはどこにも外傷らしきものはない。つまりは“その行為”が直接の原因であると言う事だろう。
 それでは、冬弥の血を吸ったのは誰なのだろうか?
 声だけしか聞こえない人々?それとも鬼?・・・いや・・・違う。
「俺だ・・・」
 そう“思ってしまった”途端に、口の中に広がるあの独特の味。
 むせ返るほどの濃い血の味に、暁は思わず口元を押さえた。
 そして・・・口元から放すと、右手は真っ赤に濡れていた。
 ちょうどあの朱色の鳥居に触れた時のように、べっとりとした赤い色がついていた。
 俺が殺したんだ・・・
 俺のせいで、死んでしまったんだ・・・
 俺のせいで ――――――
 悲しみ、憎しみ、後悔、恨み、妬み、痛み、嫉み
 湧き上がる・・・狂気・・・
 世界が反転する。全ての負の感情が暁の周囲に集まってくる。
 ドロリと音を立てて、暁の周囲が溶け出していく。
 冷たくなった冬弥と暁だけが世界の中心にいて、周りには感情だけが漂っている。
 何も考える事が出来なかった。何の感情も浮かんでこなかった。
 そのせいなのか、暁は口元に微かな笑みを浮かべていた。
 全てのモノがなくなって、空っぽになった心の中・・・目も眩むような狂気と、それがもたらす甘美な快だけがそこにはあった。
 カツンと音を立てて足元にロケットペンダントが落ちる。
 どうして鎖が切れてしまったのかは分からない。切れた部分はまるで鋭利な刃物で切ったかのように、綺麗にスッパリと2つに割れていた。
 手に取り、ロケットを開く。
 そこには・・・冬弥の顔があった。
 暁の記憶の中、全てが曖昧に変わっていく。
 幼い日の記憶も、現在の記憶も、全て・・・蕩けてゆく。
 1つ1つ、繋がりをもっていたはずの単語がばらけて行く。
 過去と現在の区別が曖昧になり、自分の名前さえも朧気に薄れていく。
 ただただ、呑まれていく・・・狂気の渦の中、全てを手放しさえすれば、きっとあるのは至上の快のみ。
 悲しみ、憎しみ、後悔、恨み、妬み、痛み、嫉み、狂い
 ロケットの中の写真がグニャリと歪む。すでに、目の前に横たわっていたはずの冬弥の姿はない。
 ・・・いったい、このロケットの中には誰の写真が入っていたのだろうか?
 そもそも、ロケットなんて持っていたっけ・・・?
 サラサラと、手に持っていたはずのペンダントが消え去る。
 優しい思い出も、悲しい思い出も、全て無に還る。
 ――――― 後に残るのは、絶対的な負の感情・・・
 そっと目を閉じる。そうしてしまえば、闇の中に溶けて行く。その感触が楽しい。
 いくつもの場面がなんの規則性も持たずに過ぎ去って、消え失せて行く。
 学校、友達、家族、青い空、制服、風、月・・・・・・
 バラバラに解けた記憶の中、最後に見えたのは何かの扉だった。
 その先がどこに続いているのかは分からない。けれど、それは確かに見知った扉だった。
 あの先に、何があったのだろうか?
 ・・・思い出せない。けれど・・・確かあの先は楽しい場所。いつだって誰かいる、暖かな場所だったはずだ・・・。
 ・・・開かないと・・・扉を、開かないと・・・。
 きっと、コレが怪からの出口だから ―――――――


★◇


 “怪世界から脱出せし者、ソレ即ち出口に気付きし者”
 “怪世界の出口は目に視えざる場所にあり、しかしそれは直ぐ近くにあり”
 “それは遠くて近い場所にあり、しかし己の近くに常にありしもの”


 暁が“視た”扉は、夢幻館の両開きの扉だった。
 ゆっくりと押し開ければ、そこは光が溢れる場所で・・・
 パチリ、目を覚ませばすぐ近くに閏の顔があった。
「お目覚めですか?」
「閏ちゃん・・・?」
「怪世界からの脱出、おめでとうございます」
 にっこりと無邪気な笑顔で手を叩く閏。
 暁はゆっくりと体を起すと、見慣れた興信所の中に視線をめぐらせた。
「・・・ね、閏ちゃん。冬弥ちゃんは?」
「?」
「双六の中に・・・」
「・・・いるはずないですよ。だって、冬弥は今お仕事中です。お仕事の邪魔をするようなマネはしません」
「でも・・・」
「きっと、ソレが暁さんの怪だったんですよ」
「俺の、怪・・・?」
「怪は・・・種類にもよりますけど、その人の一番痛い部分をついてきます。怪が望むコトは、訪れた者との同化です。つまり、自分の一部にしたがるんです。怪世界の住人は多くて困ると言う事はありませんからね」
「そうなんだ・・・?」
「怪の中でなにがあったのかは分かりませんし、私は聞きません。ただ・・・」
 閏の視線がゆっくりと何もない場所へと向けられる。
 どこか遠くを見詰める瞳に宿る色は、普段の無邪気さとは違うものだった。
「双六の中に集められた怪は、負の感情を多く纏っています。嫉みに妬み、恨みに狂い、殺意、憎悪・・・特に、この双六の持つ怪は強い負の感情を抱いているんです」
 閏の指先が紫色の箱に触れる。
「作った人の心が、反映しているんでしょうね」
「・・・閏ちゃんの、知ってる人・・・なんだよね?」
「前に言いましたよね?対の存在だって。・・・正式に言うなれば、絶対的な対ではないのだけれども、近しい存在と言われれば私だけだから」
 ふっと真顔になり、その直ぐ後で笑顔を取り戻す。
 無邪気ですこし悪戯っぽい瞳を輝かせ・・・
「私1人の力じゃ、あの人には・・・あの人達には敵わないから。だから・・・」
 暁は咄嗟に、閏の肩を抱いた。
 俯く閏の顔は見ずに、震える肩がなにを意味するのかは考えずに・・・。
 無邪気で純粋で、悪戯っぽくて元気で・・・そんな閏には似合わない、とても弱い部分だったから・・・。
「だから、私は・・・皆さんの力を、借りるしか・・・なかったんです・・・」
 途切れ途切れに聞こえて来る掠れた声に、暁は未だに謎の多い少女の背を撫ぜた。
 双六は6つで1つ。呪われたモノ。
 書き換えられるのは、書いた人物に近しい者のみ。
 閏はその人物とは対・・・厳密に言うなれば対ではない・・・の存在。
 どうやらその人物は1人ではないらしい。
 そして・・・力は閏よりも上であり、書き換えるには他者の力が必要。
 ・・・それ以上の事は分からなかった。
 きっと、閏もそれ以上の事は話せないのだろう。
 テーブルの上に放り投げられた双六の紫色が目に映る。
 ただの四角い箱にも拘わらず、どうしてだか暁はその箱の上に黒い人影を見た気がした。
 あの怪世界の中で見た、乳白色の靄の中で浮かぶ人影のように・・・。
 ゆっくりと、右手を上に上げておいでおいでをしている姿を、見た・・・気がした・・・。



               ≪ E N D ≫



 ◇★◇★◇★  登場人物  ★◇★◇★◇

 【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】


  4782 / 桐生 暁 / 男性 / 17歳 / 学生アルバイト・トランスメンバー・劇団員


 ◆☆◆☆◆☆  ライター通信  ☆◆☆◆☆◆

 この度は『双六!【 紫の書編 】』にご参加いただきましてまことに有難う御座いました。
 そして、お久しぶりのご参加まことに有難う御座います(ペコリ
 6の怪世界と言う事で、暁君に合うような怪をとあれこれ考えました。
 追う怪はどんな怪にしようかと、ここが1番悩みました。
 暁君の場合、例え追ってくる怪が冬弥であったとしても冷静に戦ってしまいそうだなぁと。
 追ってくる怪が目に見えるものならば、暁君は強そうです。
 けれどそれが心の中で追ってくる怪の場合・・・明確に逃げる場所、戦う術が見えないものならばどうだろう?
 そう思い、じわりじわりと心を侵食していく怪にしてみました。
 怪への入り口は無邪気な遊び。一線を越えれば鬼ごっこに変化し、いつしか追ってくるものが見えなくなる。
 心を追い詰めるナニカは見えないまま・・・
 徐々に冷たくなる恐怖が描けていればと思います。
 執筆中、妙に背後が気になったことは秘密です(苦笑


  それでは、またどこかでお逢いいたしました時はよろしくお願いいたします。