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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


NOT DEAD LUNA

 蒼月亭は夜の営業が始まっている時間のはずだった。
 だが、店の中には灯りがついているのに、看板は「Closed」のままになっている。そっとそのドアを開けると、中には何人かの客達と、困ったように目を赤くしている従業員の立花香里亜の姿が目に入った。いつもなら小さくかかっているはずのレコードの音も今日は聞こえない。
「ごめんなさい、今日は夜の営業お休みなんです…」
 そう言うと香里亜はぐすっと鼻をすすった。どんなことがあっても大抵笑っている香里亜が、泣いているのは珍しい。
 訳を聞くと、香里亜は困ったように電話機に目を向けた。
「ナイトホークさんが誘拐されちゃったんです。警察には連絡できないので、今連絡待ちなんですけど…」
 ナイトホークとは蒼月亭のマスターの名前だ。昼も夜もこの店にいて、コーヒーを入れたりカクテルを作ったりしている。
 閉店している店内に客がいたのは、どうやらこのせいらしい。入り口のドアを閉め、店内に入ると電話のベルが鳴った。それを香里亜がおずおずと取る。
「はい、お電話ありがとうございます。蒼月亭です…」

 烏有 灯(うゆう・あかり)は、自分の甥である大地(だいち)と、その友人である環和 基(かんなぎ・もとい)を蒼月亭に連れてきた所でその話を聞いた。
 灯の原稿料も入ったので、二人に何かご馳走しようと思いここに連れてきたのだが、マスターのナイトホークが誘拐されたという事で思わず驚く。
「ナイトホークさんが誘拐?」
 店の中にはその前からいたのか、常連客が何人もカウンターに座り身を乗り出していた。香里亜が電話をしている間に、夜の従業員である統堂 元(とうどう・はじめ)が、たくさんのグラスに水を入れ、座っている皆の前に出す。だがその表情は硬く、殺気が辺りに漏れている。
「申し訳ありません、灯さん、大地さん、えーっと…」
「環和 基です、初めまして」
「俺はここの従業員の、統堂 元です。よろしかったら空いてる席に座ってください」
 そうハジメに勧められ、灯達は開いているテーブル席に座った。カウンターでは、デュナス・ベルファーや紅葉屋 篤火(もみじや・あつか)が心配そうに電話をしている香里亜を見ている。
「……はい、分かりました。はい…」
 香里亜が溜息をつきながら受話器を置くと、近くにいた黒 冥月(へい・みんゆぇ)が身を乗り出す。
「何だった?」
「もう一回電話するって…その時に、詳しいことを話すそうです」
 そう言いすん…と鼻をすする香里亜に、菊坂 静(きっさか・しずか)は微笑みながら、そっとポケットティッシュを差し出す。
「ナイトホークさんは絶対皆さんが助けてくれます。だから香里亜さんも頑張って下さい」
「そうですね…でも、何か心配で…」
 そう言っているとドアベルの音がした。入り口の方向に一斉に向けられた顔を見て、シュライン・エマと草間 武彦(くさま・たけひこ)は驚きがちに一度立ち止まった。蒼月亭に人が集っていることは珍しくないが、この緊張感はいつもと違う。それに入った時に最初に聞こえる『いらっしゃいませ、蒼月亭へようこそ』の文句がない。
「どうしたの、皆?」
 シュラインがそう問うと、香里亜がカウンターが出て抱きつきながら泣き出した。何が何だか分からないが、とりあえず香里亜の頭を撫でながら落ち着かせる。
「香里亜ちゃん、落ち着いて。何かあったの?」
「うーっ、ナイトホークさんが誘拐されちゃったんですー」

 それからややしばらくして蒼月亭にやってきた陸玖 翠(りく・みどり)は、その話を聞き適当に空いている席に座った。たまにはカクテルでも飲もうと思ってやってきたら、何だか大変なことになっているらしい。
「香里亜、大丈夫?」
 黒榊 魅月姫(くろさかき・みづき)は、香里亜から連絡をもらい、同じように蒼月亭にやってきていた。誘拐されたと聞いた時は耳を疑ったが、店内の様子だとどうやらそれは本当のことらしい。一体何があったのか…思わず溜息を漏らす。
 カウンターの中にはハジメ以外に、何故かデュナスが入っていた。香里亜は電話対応などで大変だろうし、出来れば少しでも役に立ちたい。
「紅茶でも入れましょうか?」
「お願いします…ごめんなさい、私がやらなきゃ行けないのに」
 シュラインや魅月姫、冥月達に慰められて少しは落ち着いたようだが、まだ香里亜は震える指を押さえるように組みながら電話機の前に座っている。その時だった。
「…私が最後みたいですね」
「ジェームズさん」
 そう言ってドアを開けて入ってきたのは、ジェームズ・ブラックマンだった。香里亜から電話で連絡をもらっていたのだが、仕事があってどうしてもここに来るのが遅くなってしまった。カウンター奥のいつもの席に座ると、静とデュナスが皆の方を見る。
「香里亜さん、僕たちが説明していいですか?」
 それを聞き冥月が目の前にあったグラスの水を飲み干した。
「そうだな、説明を頼む。私も来てからその話を聞いたし、経緯を知りたい。それにさっき入ってきた皆には何が起こったのか分からないだろう」

 …それはランチタイムも過ぎた昼下がりの出来事だった。
 店にはいつものようにナイトホークと香里亜がいて、コーヒーを飲みに来ていた篤火やデュナス、そして静が話をしながら午後の一時を楽しんでいた。ハジメは料理を習いがてら、自分の昼食を作っていた。そんな時だった。
「いらっしゃいませ、蒼月亭へようこそ」
 店に来たのは普通の男だった。半袖に短パン…どこもおかしい所はない。そして、カウンター内のナイトホークに向かってこう言った。
「すいません、ちょっとこの辺の地図が分からなくなったんで教えて欲しいんですけど」
「はい、地図どこですか?」
「車の方に…」
 ナイトホークは吸っていた煙草を灰皿に置き、そのまま出て行った。
 カラン…とドアベルが鳴り、しばらく静寂が続く。だが、しばらくすると何か争うような声が聞こえ、香里亜は思わず外に飛び出す。
 香里亜が見たのはナイフを突きつけられたナイトホークが、車に押し込められようとする所だった。何か叫ぼうと思ったが、驚きと恐怖で声が出ない。ナイトホークは切り傷を作って抵抗しながらも、ポケットから何かを出して香里亜に放り投げる。
「香里亜!これ!!」
 それはいつも持っているシガレットケースだった。そうしているうちに、ナイトホークが車に引きずり込まれる。
「誰か!誰か来て下さい!」
 やっと我に返った香里亜が叫び、店内の皆が飛び出した時には車は猛スピードで去っていく所だった…。

「大人を誘拐って事は、営利目的の可能性は低いか…」
 基はそう呟きながら、出されたコーヒーを飲んでいた。何だろう、従業員のハジメが入れたというコーヒーは妙に不味い。すると隣に座っていた大地が、持っていたノートを横から出す。
「ノートをどうしろと」
「取りあえず、今の話を聞いて見たまま描いてくれ」
「描けって、何の役に立つんだよ。つか、俺らじゃ邪魔に…」
 常識的に考えれば、高校生である自分達は何の役にも立たないだろう。だが、大地の妙な迫力に負け、取りあえずその状況を見えるままに書き出していく。基は『当たり前のこと』として認識しているが、過去の状況や霊などを『視る』事が出来る。大地はそれを知っているのだ。
「マスターは、シガレットケースを渡していったのね…」
 シュラインがそう聞くと、香里亜はこくんと頷いてそれをカウンターの上に置いた。いつも持っているそれは、持ち主がいないせいか銀色も少しくすんで見える。
 だが、それだけ大事にしている物がここにあるのはありがたかった。これがあれば、ナイトホークの居場所を探れる者がいるだろう。
「電話では何か言ってましたか?」
 ジェームズはその辺りが気になっていた。『鳥』に関係あることであれば、事態は深刻だろう。香里亜は顔を上げて困ったように考え込む。
「いえ、今のところ『警察に連絡してないか』とか『次の連絡を待て』とかそんな事ばかりで…」
 その刹那、電話のベルが鳴った。それにジェームズが口の前に人差し指を当て、全員が頷いた。
「はい、お電話ありがとうございます。蒼月亭です…」
 香里亜は受話器を上げると同時に、全員にその会話が聞こえるようにボタンを押した。相手の声がスピーカーを通して聞こえてくる。その声は何か通しているのか、妙に歪んで聞こえた。
「警察には連絡していないだろうな」
「はい、連絡してません。あの…目的は何なんですか?」
 その会話を聞きながら翠は式神の七夜を蒼月亭内に隠し、逆探知をした。それと同じように、魅月姫もナイトホークの気を追う。
 居場所さえ分かれば、このまますぐに救出することも可能だ。だが、それでは相手の目的が分からない。それをもどかしく思いながらも、とにかく居場所を探る。
『出来るだけ会話をのばしてください』
『犯人の要求を聞いてくれ』
『マスターの声を聞かせて』
 デュナスと冥月とシュラインが、持っていたメモ帳にそれぞれ指示を書く。それに頷きながら香里亜は相手と話をした。
「ナイトホークさんは無事なんですか?出来たら声を聞かせてください」
「無事だが、今はちょっと話せない」
 眠らされているのか、それとも何かやって黙らされているのか…ナイトホークが無事じゃない状況というのはある意味珍しいが、素直に声を聞かせてはくれないようだ。
「あの、要求は何ですか?お金ですか…?」
「そうだな、用意できるだけの金を用意しろ」
 それを聞き、ジェームズが首をかしげる。
 おかしい。条件が変だ。用意できるだけの金と言っても、レジにはさほど金を入れていないし、身代金目的なら銀行が開いている時間に何かを言うはずだ。
 もしかしたら、何か他に目的があるのかも知れない。
『ナイトホークに親しい間柄の者が持って行くと言ってくれ』
 冥月が出したメモを見て、香里亜はおろおろと慌てた。親しい間柄…と言っても、兄妹などでは怪しまれるだろうし、友人では親しいには遠いような気がする。
「えと…婚約者の人ですがいいですか?」
 それを聞き、冥月を含め何人かがコーヒーや紅茶を吹きかけた。声を出さずに暴れるのを見ながら、香里亜は別の意味でおろおろする。
「誰でもいい。今夜九時に東京湾にある倉庫に来い。携帯電話はあるか?」
「あります」
「番号を教えろ。詳しい場所はそこに伝える」
 それを告げると電話は一方的に切れた。と、同時に一気に咳き込む声などが辺りに響く。
「言い過ぎだ…」
 冥月はそう言いながら香里亜の頭をこつんと叩いた。でも、それで店の空気は少し和んだようだ。武彦は妙に不味いコーヒーを飲みながら溜息をつく。
「そうだぞ、冥月は男…」
 パン!といういい音と共に、武彦の顔面に裏拳が飛んだ。それに顔を押さえつつ、武彦は冥月にそっと囁く。
「痛…冥月、もう見つけてるな」
「まだ言うな。影に引込めば今すぐ助けられるが、犯人の全容が掴めない恐れがある。私の周りに手出した事を徹底的に後悔させてやる」
 そんなやりとりを見ながらノートに絵を描いていた基は、大地や灯と一緒に香里亜の元に絵を出しに行く。
「こんな感じに見えたけど…」
 そこに書かれていたのは、香里亜が見たそのままの男の顔だった。次のページには車のナンバーも書かれている。
「そうです、この人です。他の人は見えなかったんですけど…絵、上手ですね」
「基は絵が上手いんだ。これなら俺みたいに能力がない奴でも顔が分かるだろ?」
 魅月姫はスッと椅子から立ち上がり、皆の方を見た。電話をしている間にナイトホークがいる場所も分かったし、後は救出に行くだけだ。話は早いほうがいい。
「さて、あまりぐずぐずしている暇はないわ。救出組と待機組に別れましょう。犯人の目的が分からないのでは、香里亜を一人にするのは心配だわ」
「そうですね。俺が救出班について行っても足手まとい間違いなし…なので店に残ります」
 灯はそう言ってまた椅子に座った。自分が行って戦闘になったとしても、相手を眠らせたりすることぐらいしか出来ないだろうし、人外であった場合はどうしようもない。
 翠は溜息をつきつつも、出口の方に歩いていく。
「私は救出組に回りましょう。冥月殿はこちらですね」
「ああ。婚約者でも助けに行くとしようか」
 ふっと冥月と翠が笑う。そこに大地と基、そしてハジメが手を挙げた。
「俺も行きます」
「灯が役に立たないから、俺も行こう。基も一緒でいいよな」
「ああ」
 その様子に灯は少し心配になるが、それを押し隠し大地の背中を蹴り飛ばす。
「若いんだからきりきり働いて来いよ。あ、基君はくれぐれも気をつけて。大地の背中に隠れていてね」
「オッサン、痛てぇよ…」
「まだ若いんだからオッサン呼ばわりはしない」
 カードをめくりながら、篤火も救出組に入るべく立ち上がった。めくったタロットには『月』の正位置が出ている。あまり縁起のいいカードではないが、攫った犯人の未来なのだからこれでいい。
「夜サン助け隊の結成ですね」
 救出に向かう人数が思いの外多かったので、ジェームズはここで待っていることにした。これだけの人数がいれば助けることは容易いだろう。だが、先ほどの妙な電話が気に掛かる。
「私は香里亜君と待ってますよ。他に待ってる方は?」
 それにカウンターの中にいたデュナスや、静、シュライン、武彦が手を挙げる。
「皆にマスターを助けてきてもらいましょう。ハジメ君ってば上手にコーヒー入れられるのに、わざとこんな入れ方して…帰ってきたら、美味しいコーヒーを飲ませてもらいましょう」
 シュラインに気付かれていたことに、ハジメは驚きながらも無言のまま頭を下げた。
 その通りだ。上手くコーヒーを入れられるようになったのに、わざと不味く入れたのはナイトホークが帰ってきたら美味しいコーヒーを口直しに入れてもらうためだ。皆が望んでいるのはそれだろう。
「皆さん、無事に帰ってきてくださいね…」
 そう言って見送る香里亜に、冥月はそっと頭を撫でこう言った。
「任せておけ。荒事は得意だ。夜食を用意して待っていろ」

「さて、全員で固まっても仕方ないから何人かに別れよう。私は着替えて交渉に行くが、場所を掴んでいる奴はいるか?」
 冥月は店の外に出て、まずそれを確認した。助けるだけなら本当に容易いのだが、相手の出方などを見るためには場所などを知っていた方がいい。受け渡し場所は『東京湾にある倉庫』と言っていたが、ナイトホークがそこにいるとは限らないだろう。
「私は分かったわ」
「私もです」
 魅月姫と翠がそっと手を挙げる。翠は七夜を送っていたが、どうやら術に対しての対策がなされていたようで近づけなかった所を、無理矢理ナイトホークの気から居場所を割り出していた。多少疲労感はあるが、それは表に出さない。
「あ…」
 それを見て大地もふっと顔を上げた。何だろう…妙に五感が研ぎ澄まされている気がする。ナイトホークの居場所は分からないが、気というか匂いを感じ取れるぐらい、研ぎ澄まされている。
「居場所までは分からないけど、俺も大体の場所ぐらいは把握できそうだ。マスターの、匂い…?を辿れる気がする。いや、あの人に染み付いた蒼月亭の匂いというか、魂の匂いというか…何を言っているんだ、俺は」
 そう苦笑する大地を見て、基がポンと肩を叩く。大地の直感は確かだし、信用できる。今言ったことも真実なのだろう。
「残念ながら私は場所は分かりませんが、思い切り暴れたい気分です…」
 篤火が苛立ちを押さえるようにこう言った。ハジメもそれを聞き黙って頷く。
「…私が組む相手と役割を決めてしまってもいいか?」
 そう言った冥月に、皆が頷いた。ここで誰かが声を上げはじめ、混乱している暇はない。
「まず私と魅月姫が組もう。私達の能力は相性がいい…魅月姫、いいか?」
 影を操る冥月と、闇を触媒とする能力を使う魅月姫とは術の相性がいい。それに一度香里亜の所にやってきた花泥棒の正体を探るために、一緒にいたので大体の行動は分かっている。魅月姫は冥月に向かって優雅に微笑んでお辞儀をした。
「私は構わないわ。よろしくね、冥月」
 魅月姫から承諾を得たので、今度は救出に当たる方を指定する。
「居場所を知っているという翠と、暴れたそうな篤火にナイトホークの救出に回ってもらっていいか?」
 ある程度の目的などを聞き出すためには、敵をあっという間にのしてしまっては意味がない。その辺りを理解しつつも翠は少し考える。
「私も紅葉屋殿の能力を知りませんが、紅葉屋殿がよいのなら私は構いませんよ」
 篤火に関して皆が知っていることは、道ばたで辻占い屋をやっている事ぐらいだ。だが、『暴れたい』と言うことは、それなりに心得があるのだろう。篤火は翠に向かってお辞儀をする。
「足手まといにはなりません。翠サン、夜サン救出頑張りましょう」
 後は未成年三人組だ。この三人の能力もよく分からないのだが、同じぐらいの年齢でまとめた方が動きやすいだろう。基と大地は友達のようだし、ハジメは大地と面識がある。
 それにある程度の心得があるなら、無駄のない動きを見て、ハジメが何か武術をやっていたことが分かるだろう
「未成年三人は敵を足止めしてやってくれ。無理はするなよ」
 それを聞き、ハジメが二人に頭を下げた。
「よろしくお願いします」
 花火大会の時にも思ったが、ハジメはどうも真面目な質らしい。大地はふっと笑ってハジメの肩を叩く。
「暴れてやろうぜ。基は喧嘩駄目そうだったら、俺の後ろに隠れてろ」
「…自分の身ぐらい何とか出来る」
 全員の役割がある程度決まった。後はこの人数を移動させるだけだ。今からタクシーなどに便乗していくのも何だか妙だ。
「どうやって移動しますか?」
 ハジメがそう聞くと、冥月がふっと笑う。
「全員目を瞑っていてくれ。いいか、途中で目を開けるなよ」
 皆がその言葉に目を瞑る。翠や魅月姫などは自分の力で瞬間移動も可能なのだが、全員を動かすには冥月の影から影への移動の方がいいだろう。上手い具合に今は夜だ。
 一瞬何かを通り抜けたような感じがした後、目を開けるとそこは東京湾の倉庫裏だった。そのまま走り出していきそうな大地やハジメ達を、篤火が止める。
「むやみに突っ込めばいいというものでもなさそうです…それにもまだ向こうから冥月さんの携帯に連絡がありません」
「そうね。私と冥月は電話が来たら受け渡し場所に向かうけど、皆はすぐ救出に行かないで、ちょっと近くで様子を見ていてくれないかしら。目的がマスターなのか、それとも香里亜なのかが気になるわ」

「あー、月綺麗だ」
 その頃ナイトホークは、窓から見える月を見ながらそんな事を思っていた。ここに来てから相当時間が経ったらしい。窓から入る月の光が妙に眩しい。
「煙草吸いてぇなぁ…と言っても、この状態じゃ無理か」
 何度も着たことがある、懐かしくて嫌な拘束衣。シガレットケースを放り投げたのは正解だった。死んでるうちに着替えされられたあげく、シガレットケースをなくすのは癪だ。なくした所で買えばいいと言われるだろうが、それで済む問題ではない。
「一体何が目的なんだ?」
 ここに来てから何度か死んだ。数えるのが面倒なのでそれは数えてないが、目の端に血溜まりが見える。多分自分の物だろう。目的などを考えたりもしたのだが、そうした所で何かが分かるわけでもない。
「月が眩しいな…」
 目を閉じてもその眩しさが焼き付くように残る。
 何度死のうとしても殺されたとしても、自分は月のように何度でも蘇るのだろう。太陽ではない。夜を飛ぶ鳥の名を付けられた自分は、闇夜を飛ぶ存在だ。
 そういえば、昔何度か死のうとした時にも、同じように月が浮かんでいた。今もそれは全く変わらない。
「『NOT DEAD LUNA』か……」
 友人に言われたその言葉を思い出しながら、ナイトホークは月を眺めていた。

 魅月姫が立てた作戦はこうだ。
 冥月が「ナイトホークに会わせて」と言い、その場所に案内されるまでは全員は近くで待機して、ある程度の目的を聞き出したと共に合図をするので、それと同時に救出組が真っ直ぐナイトホークの元に向かい、攪乱組はその周りにいる敵を倒すということだった。その間は、全員を冥月の影の中か、自分で隠れられる者は自分の能力で隠れる…どうも倉庫の中にいる人数と、外にいる人数を考えるとそれが良さそうだ。
「………」
 電話で指定されたのは、かなり奥の方にある廃倉庫だった。冥月は清楚な服を着て、おどおどと辺りを見ながらその場所へと向かっていく。皆が見ていると思うと、その演技が気恥ずかしい。
 すると倉庫の周りに何人かの男達がやってきた。その顔を見て基と大地が呟く。
「さらった奴がいるな…」
「ああ、それは俺達のノルマみたいだ」
 その姿に怯えながら、冥月は自分が持っていたアタッシュケースを地面に置いた。
「あの…っ、彼は大丈夫なんですか?会わせてください…」
 その演技を見て篤火は心の中で「プロですね」と思う。その様子を見て男達は、冥月に声をかけた。
「一人で来たんだろうな」
「もちろんです…彼は無事ですか?」
「アタッシュケースを置いてこっちに来い。会わせてやるよ」
 地面にそれを置いたまま、冥月がおずおずと倉庫の方に向かっていく。影の中に隠れている大地やハジメに、魅月姫の声が届いた。
「冥月が入って扉が閉まったら、貴方達はアタッシュケースと周りの奴らをお願い」
「分かりました」
 外にいる人数は五人…五対三…いや、基は戦闘に参加しないから二だが、相手が人外でなければ何とかなる数だ。ただ、人外の場合は相手を殺してしまうかも知れない…ハジメの心に葛藤が生まれる。元々自分が継承した武術は実戦武術で、相手を殺害する事に特化している。だが、迷っている暇はない。
 冥月の姿が倉庫の中に消える…それを合図に三人は飛び出した。

 それは突然闇から現れたように見えただろう。アタッシュケースに近づこうとした五人にハジメと大地が殴りかかる。
「行くぞ!ハジメ」
 大地は特に格闘技を学んだ訳ではないが、何故か喧嘩は得意だった。相手の空気を読むのが上手いと言われたことがあり、相手が次に繰り出してくる攻撃を読んで対処する。その隙に基がアタッシュケースを取り、走って移動した。
「何だぁお前等!」
 男達はそれぞれナイフなどを持ち自分達に向かってくる。どう見ても高校生ぐらいにしか見えない自分達に向かって刃物とは、穏やかな相手ではないらしい。それを見て、ハジメは小走りに走り、相手の臑を蹴った。
「せいやっ!」
 ハジメ自身が経験したことではないが、刃物を持った相手に対してどう対応したらいいかなどの数多の戦闘経験が、自分の中に内包されている。それは統堂の遺伝子に刻まれたものだ。
 本当に恐ろしいのは、刃物を後ろに隠し持ったまま攻撃されることだ。熟練した相手なら、最後の武器をそう簡単に見せつけようとはしない。それを冷静に分析してハジメは相手の喉元やみぞおちをめがけて肘を繰り出す。
「殺されないうちに退け!俺は手加減がきかない!」
 それを横目で見ながら大地はナイフを手刀で叩き落とした。そして続けざまに膝蹴りで相手の腹を狙う。その時だった。
「二人とも危ない!一人人間じゃない!」
 キィン…と何かが共鳴するような音が聞こえたような気がした。基が絵に描いていた、ナイトホークを誘拐した男が天を見上げて咆吼をあげる。するとその姿がみるみるうちに人狼の姿に変わっていく。
「くっ…何だ?」
 その変身を見た途端、大地の体に一気に血が流れ込む。視界が赤い…月が眩しい…思考が血の色に染まっていく…。
「大地…?」
 隣でまだ倒れてない相手を相手しながら、ハジメは信じられないものを見た。
 大地の姿が相手の力に共鳴するように、金瞳で黒毛の獣の姿に変わっていく。そして、その力は相手よりも大地の方が圧倒的に強力だ。
 月に向かって一声吠えると、大地は相手に真っ直ぐ走っていった。そして、月を背に爪を振り下ろそうとしている人狼の喉元に牙を向く。
「………!」
 決着は一瞬で付いた。あまりにもあっけなく大地の牙が相手の喉元を切り裂く。
 ハジメは大地の牙が相手に刺さったのを見て、一度後ろに退いた。他の者だったら分からなかっただろうが、大地の力は暴走している。このまま近くにいたら、生きている者に向かってくるだろう。
 対獣の戦いも心得ているが、相手は大地だ。殺さずに上手く無力化できるか…それ以前に基の方に向かっていったら。ハジメが葛藤しているその時だった。
「大地、こっち向いて!」
 聞いたことのない声に振り返ると、基のいた場所に一人の少女が立っていた。その少女がぴっと指を指すと、大地の気がその少女に吸い込まれていくのが分かる。そうしているうちに、大地が元の姿に戻っていく…。
「あれ?俺、何やってた?」
 その少女は大地とハジメの前にやってきて、大地のおでこをピンと弾いた。
「初の覚醒おめでとうって言いたいトコだけど、過ぎたおイタはダメよ?」
「えっと、どちら様ですか?」
 ハジメがそう聞くと、少女はにこっと微笑む。
「私は基ちゃんの姉の元(はじめ)。あなたと同じ名前ね」
 それを見て大地は頭を掻きながら、基があることをきっかけにして元に変身することを教えた。初めて覚醒したと言われても、何が何だか分からないが、どうやら何かやらかしたらしい。
「基ちゃん倒れると思うから、看病お願い♪じゃあねー」
 そう言って小さく手を振ると、元の姿が基に戻る。だが、看病と言った通り基は青い顔でぐったりしている。
「あーあ、基ぶっ倒れたか。ハジメ、俺は基担ぐからアタッシュケース持って」
「あ、ああ…」
 目の前であった展開の早さについて行けず、ハジメは戸惑ったように頷き後ろを振り返る。そこに倒れている男達や、獣の姿を見ると今あったことは確実に現実なのだ。
「ここから離れて待とう」
 ハジメは大地に後ろを振り返らせないようにしながら、その場を離れることにした。
 人を殺した事なんて、知らない方がいい。

 冥月は男達の後ろを歩き、暗い倉庫の中に入っていった。閉め切られた倉庫の中に微かに血の匂いを感じる。
「ナイトホークの所に四人…他に十人…」
 闇の中でもその人数は正確に分かる。それは魅月姫や翠も同じだった。ナイトホークはどうやら上の方で寝ているらしい。
 ピタ…と男の足が止まり、冥月もそれに合わせて止まる。
「貴方達の目的は何なんですか?どうしてこんな事を?」
 すると奥の方から靴音を鳴らしながら一人の女が現れた。女は妖艶に微笑みながら、冥月を見る。
「私達は『人の血肉』を取らなきゃ生きられない者なの。でも人を喰らうのもなかなか大変なのよ…それで困っていたら、ある人が教えてくれたのよ。『食べても減らない神の食物のような者がいる』って…でも、ダメね。貴女の婚約者ってば、いくらいたぶっても悲鳴一つあげない…だから、貴女の声を聞かせて頂戴!」
 その瞬間、闇の中に女の腕が伸びた。だが、冥月はふっと笑うと翠と篤火の二人をナイトホークの元に移動させる。
「翠、篤火、ナイトホークを頼む!」
 冥月に襲いかかろうとした腕は、闇から現れた魅月姫に弾かれた。そして優雅に笑いながら、周りの者達を一瞥する。
「血肉を喰らう存在とはいえ、その浅ましさに吐き気がするわ。くだらない」
 自分も吸血鬼であるが、そのくだらない理由に魅月姫は溜息をつく。誇り高き者であるはずなのに、餓鬼のように浅ましく食べ物を求めるその姿に、生かしておく価値はない。
 ざわっと闇が鳴る。
 人数は相手の方が多いはずなのに、魅月姫と冥月には余裕があった。相手が人外であろうと何だろうと、こんな者達に負ける気はしない。
「さて、遊びを始めましょう…」
 立っていた二人に周りにいた者達が襲いかかる。その瞬間、魅月姫は闇から杖を出し相手をなぎ払う。そしてバランスを崩した相手に素早い動きで突きを繰り出した。それはダンスのように優雅で、魅月姫の表情は少しも変わらない。起きあがってくる相手に放つ手刀すら演舞のように見える。
「遊びにもならないかも知れないな」
 冥月はその場に立って目を瞑ったまま、自分の影から刃を飛ばした。全体が闇に包まれているせいで、相手はどこから刃が飛んでくるのか予想も出来ないまま、切り刻まれていく。闇の中で響くのは、相手のうめき声と、魅月姫や冥月の密やかな笑い声だけだった。
「何なの…お前達…」
 その二人に女は恐怖していた。自分は人間を喰らい、恐怖させる存在だ。それなのに目の前にいる二人はそれを超える冷徹さで自分達を排除していく。
「貴女にマスターの存在を教えたのは誰なのかしら。それを聞かせていただけない?」
 魅月姫が闇を移動し、後ろから女の喉元に爪の先を当てる。冥月はゆっくり歩いて近付いていく。
「やめて…私は『殺しても死なない奴がいる』って聞いただけ…」
「誰からだ?」
「知らないわ…私はその男から『そいつを誘拐して捕まえれば、後はどうしても構わない』って言われただけ…お願い、殺さないで!」
 圧倒的な力の差に女が震えながら言う。
 だが帰ってきたのはあまりにも残酷な宣告だった。
「お断りよ。悲鳴が聞きたいなら、自分の声を聞いたらどう?こんな風に…」

 ナイトホークのいる場所に飛ばされた篤火と翠が見たのは、血溜まりの中に仰向けに倒れているナイトホークと、その周りに群がる者達が慌てて振り返る姿だった。窓から入る月明かりが眩しく、その姿を煌々と照らし出す。
「………!」
 人外であれば遠慮する必要はない。いや、たとえ人であったとしても生かしておく必要はないだろう。篤火はそこに向かって走り込む。
「紅葉屋殿!」
 いつも感情を表に出さず、飄々とした風の篤火が真っ直ぐ突っ込んでいった。行く前に『思い切り暴れたい』と言っていたが、それが本当だということが分かる。翠はその隙にナイトホークの側に駆け寄った。
「ナイトホーク、生きてますか?」
「何…とか…」
 そう言ってニヤッと笑っているが、額にはたくさんの汗が浮かんでいた。いくら不老不死とはいえ、傷があっという間に再生するわけではないのだ。その傷に符を当て、翠は呪を唱える。
 黙っていても直るだろうが、あちこち怪我をさせたまま蒼月亭に戻すわけにはいかない。それに趣味の悪い拘束衣を着たままでは逃げられない。
「翠サン!夜サンを連れて外に行ってください…ここは私一人で大丈夫です」
「頼みますよ、紅葉屋殿」
 服を探すのも面倒なので、ナイトホークを抱え上げて翠は空間移動の術を使った。人には見せたくないのだが、篤火もナイトホークもこの事を他言はしないだろう。
 倉庫の外に出て、翠はナイトホークの顔を見た。拘束衣はあちこち破れているし、顔にも血の跡が付いている。ナイトホークは困ったように呟く。
「助けに来てくれたのか…」
「当たり前です。それにしても大変な姿ですね…痛い所とか苦しい所はありませんか?」
「あー…強いて言うなら、煙草吸いてぇ」
 こんな時まで煙草とは。翠は呆れたように溜息をつき、くすっと笑う。
「…ちくわでも吸っていなさい」

 翠がナイトホークを連れて逃げたのを確認すると、篤火はニヤッと笑った。
 これでいい。誰もいなければ能力を思い切り使えるし、ナイトホーク達を傷つけることもない。
「こんな場所…」
 そう言って指を鳴らすと、突然辺りにあった物に火がついた。それに怯んでいる相手に、篤火は正面から裏拳で殴りかかった。その手が当たった場所にも炎が上がる。
「骨も残らず火葬にしてあげます…私は優しくありませんから」
 自分がひいた『月』のカードは「秘密」を現す。おそらくナイトホークがさらわれた背景にも何か秘密があるのだろう。だが、そんな事は篤火にとってどうでも良かった。
 自分の友を傷つけるのであれば、容赦はしない。
 火が恐ろしい勢いで相手を襲う…それに照らされたまま、篤火は黙って破壊の限りを続けた。

 廃倉庫から火が出て、その中から冥月と魅月姫、篤火が出てきた頃、待っていた皆の真ん中でナイトホークがあちこち破れた拘束衣のまま、何故か体育座りをしていた。
「夜サン、無事でしたか?」
「無事だけど、服がこれしかねぇのよ。脱いだら捕まる」
 いつものように笑うナイトホークを見て、ハジメはようやく笑顔になった。血の痕はついているが、ナイトホークのことだから大丈夫だろう。大地や基も、ハジメの様子を見て同じように笑顔になる。
「無事救出の電話をかけないとな」
 冥月が電話をしようとすると、それを見てナイトホークが足をバタバタさせた。魅月姫はそれを見てその横に目線を合わせるようにしゃがむ。
「マスターはどうしたのかしら」
「誰かー、誰か煙草!シガレットケース香里亜に渡したから、煙草がない」
 どうやら思ったよりも元気らしい。魅月姫は溜息をついて立ち上がる。
「だからちくわでも吸ったらどうですか?ちくわなら出せますよ、ほら」
 そう言って翠はちくわを一本出した。それを見てナイトホークは激しく暴れ、その勢いで横に倒れる。
「何でちくわ出せて、煙草出せないんだ。あーハジメ起こせ、この服じゃ芋虫だ」
「ナイトホークさん、店に帰ったら煙草ありますから」
 ハジメは笑いながらナイトホークを担ぎ上げた。消防車の音が聞こえているから、この火を誰かが見つけたのだろう。厄介ごとになる前に立ち去った方がいい。
「ああ、大丈夫だ。ナイトホークが煙草煙草言ってうるさい…そっちも大丈夫だったか?」
 電話で話している冥月の表情から、向こう側も無事だったことが分かる。それを見て、大地が皆にこう言った。
「さて、腹減ったから帰るか。ナイトホークにご馳走してもらわないとな」
「俺は血が増えそうな物が食べたい…」
 基が呟き、それを見て魅月姫が笑う。
「私は血のように紅い『ワイン』でも奢ってもらおうかしら」
「夜サン、私は美味しいコーヒーが飲みたいです。ハジメサンが、夜サン助けるまで美味しいコーヒーお預けって、泥のようなコーヒーをー」
「篤火さん、それナイトホークさんにオフレコに…」
 皆の声を聞きながら、ナイトホークが溜息をつく。
「はいはい、まず店戻ってシャワー浴びさせてください。あと、ちくわでいいから吸いたい。腹減った」
 それを聞き、一緒にいた全員が笑う。
 空に浮かんだ月が地面に皆の影を映し、それがいつしか移動していった。

fin

◆登場人物(この物語に登場した人物の一覧)◆
【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
『救出側』
6604/環和・基/男性/17歳/高校生、時々魔法使い
2778/黒・冥月/女性/20歳/元暗殺者・現アルバイト探偵&用心棒
5598/烏有・大地/男性/17歳/高校生
4682/黒榊・魅月姫/女性/999歳/吸血鬼(真祖)/深淵の魔女
6577/紅葉屋・篤火/男性/22歳/占い師
6118/陸玖・翠/女性/23歳/(表)ゲームセンター店員(裏)陰陽師
6191/統堂・元/男性/17歳/逃亡者/武人

『交渉側』
0086/シュライン・エマ/女性/26歳/翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
5128/ジェームズ・ブラックマン/男性/666歳/交渉人 & ??
5597/烏有・灯/男性/28歳/童話作家
6392/デュナス・ベルファー/男性/24歳/探偵
5566/菊坂・静/男性/15歳/高校生、「気狂い屋」

◆ライター通信◆
ご参加ありがとうございます、水月小織です。
今回「救出側」と「交渉側」に別れたノベルになりました。
全員に見せ場を作りたくて色々と書いたのですが、やっぱり長くなってしまいました。タイトルの『NOT DEAD LUNA』ですが、ナイトホークが『死なない月』であるとか、カードの『秘密』とか、色々なものにかかったものになっています。
どちらもプレイングなどが凝っていたりして、見ていて楽しかったです。ありがとうございました。
リテイクはご遠慮なくお願いします。
また機会がありましたら、ご来店下さいませ。

救出側の皆様へ
ナイトホーク救出ご参加ありがとうございました。
戦闘の見せ場や、救出、心情など色々詰め込んでしまいました。ナイトホークは「不老不死」以外は大した能力のない、困った人ですがお付き合いしてくださいませ。
これから「誰がナイトホークのことを教えたのか」という話も出てくる予定ですが、その時にまたオープニングが気に入りましたらご参加下さいませ。
精一杯の感謝を皆様に。