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<東京怪談・PCゲームノベル>


【 おいでませ、ハザマ海岸 】〜夏〜


 ハザマ海岸。
 そこは県境に近い、海洋遊戯スポットの集まった一帯である。
 河川の河口付近には干潟、数キロ先には砂浜と岩場、そして岬のほうには水族館を中心とした遊園地もある。一粒で二度どころか四度ぐらい美味しい(楽しい)海岸である。この一帯は、守り神・来流海(くるみ)が守護しているのだが、治安や美化を維持するための資金を捻出するため、守り神自ら海の家を経営していたりする。
 開店前早朝の「海の家・来流海ノ茶屋」通称くるちゃ(寒)。
 それぞれ訪れることになった経緯は異なるが、皆この店を手伝うためにやってきたのである。
 まず最初にやってきたのは、高級ブランドの黒スーツに身を包み颯爽と海の家を訪れたシオン・レ・ハイ。ニコニコ微笑みながら腕にお友達の垂れ耳兎を抱き、何故かハワイアン・レイを首に掛けている。長袖のスーツを指し、深波(みわ)が一喝した。
「‥‥暑苦しい、寄るな」
 深波はハザマ海岸先代守り神で、着崩した和服姿の二十代と思しき女性である。
「せっかく一張羅を着てきたんですよー‥‥ダメですか?」
 もし、シオンの頭にケモ耳が付いていたら、お友達宜しくキューンと垂れているだろうか。心の中に浮かんだ疑問(深波さんも、着物を着ていらっしゃるのに‥‥)を抑えながら、シオンはもう一度「ダメですか」と問う。
「‥‥仕方ない。だが客から苦情があったら、それなりの服装をしてもらうぞ?」
 深波は軽く頭を振り、溜め息を付いた。
 厨房の方では、海翔(かいと)と揃いの黒い半纏に股引き姿になったアンネリーゼ・ネーフェが料理の仕込みを始めている。海翔は、深波の眷属の海坊主である。
 アンネリーゼは海翔を伴って朝市へ行き、梨・桃・さくらんぼ・ブドウ・パイナップル・レモン、グラニュー糖や白ワインを買い込んできた。アンネリーゼがフルーツを小さくカットしていく様子を見ながら、海翔が声を掛ける。
「なぁ、アンネリーゼ。それって、なに作るつもりなんだ?」
「これは『マチェドニア』と云う、イタリアのデザートです。レモン・シロップで戴くと、さっぱりして美味しいんですよ」
「俺、横文字あんまり分かんないんだけど‥‥フルーツ・ポンチとか云うのに似てる?」
「ええ、イタリア版フルーツ・ポンチと評される場合が多いですね。味見なさいますか?」
 小皿にシロップと幾つかのフルーツを取り、アンネリーゼはにっこり笑いながら海翔に手渡した。
「‥‥へぇー、美味いなコレ。いつもはデザート用に杏仁豆腐を作ってんだけど、今日はこの『マチェドリア』を出してみっか。あとで作り方教えてくれよ」
「はい、宜しいですよ。家庭料理みたいなものなので、しっかり決まったレシピはないのですけれど。あと、海翔さん『マチェドニア』ですよ」
「あー、ワリぃ。ココの人間、みんな横文字苦手でさ。変なコト云ったら、こっそり教えてくれ」
 口元に手をあてながら、アンネリーゼはくすくす笑った。彼女の提案で幾つかメニューを追加することになり、厨房はまるで戦場のような忙しさになっていた。
 熊手で店の前を掃除をしているのは、黒羽 陽月(くろば・ひづき)と来流海の二人。年齢が近いせいか、和気藹々としているようだ。ただ、来流海の場合はあくまで外見年齢であり、実年齢ではない。
 黒羽の格好も、アンネリーゼや海翔と揃いの黒半纏である。ちなみに、来流海は短い丈の振袖姿という様相だ。着物の裾からは、レース地が見えている。
 黒羽がマジックの話しをしていると、来流海は「見せてくださぁい!」と両手の指を組んで瞳をキラキラさせた。
「見たい? じゃ、こんな感じでどう?」
 右手を一振りすると、その手にはいつのまにか小さな花が握られている。それを受け取ると、来流海は興奮しながら両腕をバタバタさせた。
「凄い、凄いですぅ! ほかにも見せてくださぁい!」
「うん、でもその前に掃除済ませちゃわないとね、来流海ちゃん」
「はいっ 了解ですっ!」
 来流海はビシィっと黒羽に敬礼する。その来流海の様子に黒羽は一瞬吹き出しそうになるが、そっと頭を撫でて「続きはあとでね」と笑った。黒羽の思うがまま自分がコントロールされていることに、来流海はまだ気付いていないようだ。

 工藤 光太郎(くどう・こうたろう)は、とある伝(つて)を辿り、このハザマ海岸へやってきた。その伝の元は今、浜辺の奥にある海の家でアルバイトをしている筈だ。自分はアルバイトにあまり興味がなかったので、こうして砂浜で人間観察をしていたりする。
 パラソルで遮ってはいるが、さすがに陽射しが強くなってきた。それに、そろそろ人間観察にも飽きてきたところだ。
―― 少し、ちょっかい出しに行ってみるか‥‥。
 密かに笑顔を洩らすと工藤は立ち上がり、海の家 ―― 来流海ノ茶屋を目指して歩き始めた。

 太陽の高さは、既に真上に近い。
 巷では冷夏ではないかと囁かれているが、やはり夏は暑いのである。
「いらっしゃいませー!来流海ノ茶屋はこちらでぇーす! 今なら、すぐにお席へご案内できますぅー」
 呼び込みと、串刺しフルーツ販売の担当は来流海である。料理のセンスは1mmも無いのだが、接客に関しては天賦の才能とも云うべき力を発揮している守り神であった。
「いらっしゃいませ、来流海ノ茶屋へようこそ! シオンさん、2名様ご案内お願いしますー」
 接客中の黒羽 陽月が来客のカップルに気付き、シオン・レ・ハイに声を掛けた。シオンはいそいそと満面の笑みで奥から小走りでやってくる。
「いらっしゃいませ、来流海ノ茶屋へようこそおいでくださいました。ご予約は頂いておりましたでしょうか? ‥‥はい?飛び込みでいらっしゃいますか? ええ、当店は席が空いている限り、飛び込みのお客様も歓迎しておりますよ」
 シオンは恭(うやうや)しく頭を垂れて、客を歓迎した。その格好は、例の黒スーツにハワイアン・レイだ。黒羽の喋っている内容とさほど変わらないはずなのだが、海の家に合わない、まるで高級レストランのような接客になっている。しかも、なんだか微妙な対応だ。
 引き攣った表情をしたカップルを引き連れ、奥のテーブルへ案内したシオンは女性の背後にささっと回り、タイミング良く椅子を引いた。それぞれにメニューを開いて渡し、
「本日のお勧めは『ぅわぁ〜の晩餐』『ぅわぁ〜と鬱金色の糸』『ハザマ海岸の秘宝』 そしてデザートは、本日より解禁の『マチェドニア』となっております」
「‥‥えっ うわーの‥‥?」
「『ぅわぁ〜』でございます、ミスター。『ぅわぁ〜』とは、沖縄の方言で『豚』という意味なのですよ」
 料理の内容は深波に云われた通りのものなのだが、シオンの意訳が微妙でやはり変な接客だ。メニューに書かれている料理の内容を確認した男性は、
「‥‥ぅわぁ〜と鬱金色の糸と、マチェドニアを2つずつ」
「デザートは食後でよろしかったでしょうか?」
「‥‥一緒でいいよ」
 シオンの微妙さに早く席を離れてほしかったのか、男性は引き攣った顔でそう答えた。
 奥の厨房で、海翔(かいと)とアンネリーゼ・ネーフェは黙々と調理をこなしていた。茹でた麺を冷水で洗い、ガラス容器に形を整えて乗せる。その皿を、海翔はアンネリーゼに渡した。麺の上にチャーシュー、錦糸卵、細切りにしたキュウリやトマトなどの具材を彩り良く盛り付けた。最期に、醤油と酢をベースにしたかけ汁を掛ける。
「陽月さん、お願い致します」
 頃合を見計らったように厨房へ顔を出した黒羽に、アンネリーゼは盆に載せた料理を手渡した。
「えーと、シオンさんが接客していたテーブルのお客さんですよね」
 アンネリーゼがにっこり頷くのを確認すると、黒羽は店内へ戻っていった。
「お待たせ致しました、冷やし中華とデザートでーす。練りがらしは、テーブルのものをご自由にドウゾ」
 そう云い、黒羽はカップルの前に皿を差し出した。二人の表情がほっとしているように見えるのは、黒羽の気のせいだったのだろうか‥‥。
 一人の少年が茶屋を訪れ、来流海に伴われ席に着く。
「こんにちはー、メニュー表はこちらになりますぅ。注文がお決まりになったら声を掛けてくださいね」
 礼をして席を離れようとする来流海に、少年 ―― 工藤 光太郎(くどう・こうたろう)はオーダーする。
「黒羽を一つ」
「えっ? なにを一つですか?」
 料理はできないが、来流海はこの夏の百戦錬磨により接客に自信があった。そんな名前のメニューはない筈だ。
「あのぉー、そういうメニューは、ウチにはないんですけどぉ」
「‥‥食べ物じゃない‥‥云えと云われたんだ、黒羽に」
「あっ 陽月さんのことですね。ワタシお名前で呼んでるので、気付きませんでしたぁ。ひょっとして、お友達の光太郎さんですか〜?」
「そうだ」と頷くと、来流海は厨房へパタパタと小走りに引っ込んでいく。程なくして、手に飲み物を二つ持った黒羽が現れた。
「やぁ、工藤ー。人間観察、飽きちゃったの?」
 そう云い正面のイスに座り掛けたが、来店客に気付き「コレ飲んでちょっと待ってて」とアイス烏龍茶をテーブルに置いた。
 工藤は烏龍茶を啜りながら、黒羽の接客の様子をじっと見る。
 若い(といっても、自分たちより少し年上‥‥恐らく二十歳前後だろう)女性二人連れだ。黒羽はすぐに席を離れず、なにやら女性たちと話し込んでいるらしい。黒羽がスッと腕を振ると、女性たちから歓声が上がった。例のマジックで、花か何か出したに違いない。自分が座っている席に近い女性に伸ばした黒羽の腕の先には、やはり小さな花が握られていた。女性たちはそれに満足したのか、黒羽はやっと席を離れ厨房へオーダーを伝えに行った。
 テーブルに戻ってきた黒羽に、
「‥‥またマジックで女を釣ってたのか?」
「全く、これだから工藤は。オープンエロの方が、むっつり君よかマシだよねー」
 ストローを噛みながら、黒羽は半眼で答えた。
「女の子は、みんな可愛いんだよ。もっと笑顔にしてあげたい、とか思わない?」
――『女の子は、みんな可愛いんだよ』と云うオマエのが可愛いと思っ‥‥何を考えてるんだ俺は。
 表情にこそ出さないが、工藤はその思考を誤魔化すように烏龍茶をチビチビ飲んでみる。その様子になんだか黒羽はピンときて、悪戯っぽく微笑んだ。
「ね。今、なにか考えたでしょ? 俺のことも可愛い、とか思った?」
「―― お前、何でそんな開けっ広げなんだよ‥‥」
「それって愛の告白〜?工藤君てば。ココはやっぱり『やーん嬉しい〜v』とか云った方が、女の子ウケいいかなぁ」
 自分の顎先に人差し指を添え考えるように工藤を見たかと思えば、突然顔を寄せて。
「あ、それか『ちょっと工藤、浮気!?』とか云うべき?」
 と、まるで猫のようにコロコロと表情を変える黒羽。
「大体ね、工藤はダンマリ過ぎ。みんながみんな、工藤みたいにカンが良い訳じゃないんだからさー、一言って大事だよ。それを聞くと、女の子は安心するの。‥‥あ、これは女の子に限らないか。ま、黙っていても通じ合うってのも、それはそれで素敵だと思うけどね」
 黒羽のその言葉に、頬杖を付いていた手が一瞬顔から離れた。
 確かに。普通の同年代より年長者と話す機会は多いし、探偵という仕事柄、洞察力・観察力の類は自分でも長けていると思っている。黒羽もカンは良い方であるし、喋らなくても気持ちは伝わる ―― 伝わっていると思っているので、不自由はないのだ。
「‥‥確かに、俺はあまり喋らないな」
 悪い癖かもしれない。
 頬杖を付き直し、工藤は視線を逸らした。

 休憩時間、黒羽はサーフトランクス姿になりパラソルの下で寛いでいる。
 その隣りには工藤が座っており、黒羽に反応を示す老若男女(特に男)へ、まるで犯人を射抜くか如き視線を浴びせていた。お陰で(?)、黒羽に声を掛ける者は皆無だ。
「‥‥‥‥邪魔しないでよ、工藤」
―― 今日は不発。
 せっかく遊ぼうと思っていたのに。溜め息を吐きながら、黒羽は寝返りを打った。

 太陽が海の向こうに沈んだのは、どのくらい前か。
「ほれほれ、花火大会は8時半からじゃぞ? さっさと宿へ戻って着替えてくるのじゃ。寺ではハザマ漁業組合主催の肝試し大会をやっておる、時間のある者は寄ってくるが好い。命令じゃ!」
 そう深波に急かされ各々着替えを済ませると、思い思いの催場へ出掛けて行った。

「ハザマ寺、ハザマ寺‥‥ああ、こっちだな」
 立て看板を確認すると、工藤と黒羽は歩みを進める。
 ハザマ漁業組合主催の肝試し会場は、旧ハザマ寺本堂がスタートおよびゴール地点である。手前には既に新しい本堂が建っており、この旧本堂は夏以降に取り壊しが決まっているらしい。旧本堂の裏はすぐ墓地が並んでいる。ここが取り壊されると、この周辺も墓地になるのだという。核家族化・分家化が進み、墓地も土地不足なのだ。
 肝試しは、この墓地を含む寺の敷地内を周ることになるのだが、一周するにはかなり距離があるのだ。立派に本堂を建て直し、墓地を広げなければならないくらい檀家を抱えているのであるから、ある程度の想像は付く。
「あ、人魂。やっぱりワイヤーで吊ってるのかな?」
 左右を見、一瞬反射した糸を逃さずそれを辿って墓の裏にまわり込む。座っていた男(釣竿で人魂を吊っていた本人)は黒羽と目が合うと、後退って逃げ出した。
「危ないなぁー。火、消しとくよー?」
 投げ出された釣竿の先ではまだ炎が燃えている。黒羽は「失礼しまーす」とか云いながら手を合わせ、近くの墓の花びんを手に取り、燃えている人魂 ―― タオルに水をかけて消火した。その様子を見ながら、工藤はボソリと呟く。
「‥‥バチ当たり」

 暫らく進んでいくと、背後からドン!と大きな音が響いた。打ち上げ花火が始まったのだろう。
 振り向けば、本堂の屋根の上あたりに花火の一部が見えた。ここからでは林と本堂が視界を遮り、海側を見渡すことができないようだ。
 それまでは、人の気配や物音で、脅かし役の人間がどこに隠れているか推測することができたが、背後の打ち上げ音によってそれが適わなくなる。
 それに。
 さっき出会った死装束を着た女には、ある筈の足が付いていなかった。
 それからというものの、最初こそ傍若無人気味に楽しげに脅かし役を逆に脅かしていた黒羽だったが、今は工藤の腕を握り締めながら一歩後ろを歩いている。
「さっきまでの威勢はどうしたんだ?」
「怖い物好きだケド、怖いんだよ〜っ。怖い物見たさってヤツ?」
「やっぱりバチが当たったんだな。さっきの墓に水を持って謝りに行こう。これ以上、ヘンなものが見えても困るしな」
 そう云い、工藤は黒羽の柔らかい髪をクシャリと撫でた。その動作に黒羽は少し驚いたような表情をして、すぐに笑顔になる。
「なんかソレ、父さんみたい」
「なんだソレ、父親に似てるなんて云われても、全然嬉しくないぞ」
 同じ歳なのに心外だというような苦々しい表情を工藤がしていると、ガクンと歩みが止まる。黒羽がその場に止まったからだ。
「父さんに似てるなんて、こんな史上最っ高に栄誉なことを、そこらの溝に捨てるようなマネ‥‥もう工藤となんか一緒に遊んでやんないっ」
 眉間に皺を寄せそう叫ぶと、工藤の腕を突き放して黒羽は走っていってしまった。
「おい、コラ!」
―― ‥‥なんだ? 遊んでもらってたのか?
 少しだけ罪の意識。
 暗く、足場の悪い場所 ―― あの"怪盗"にはそんなことなどまったくお構いなしなのかもしれないが、それにしても脅かし役の人間を突き飛ばしていくのは如何なものか。先の暗闇から、悲鳴と物音が聞こえてくる。徐々に遠くへ移動していくところを見ると、やはり彼によるものなのだろう。
 これ以上黒羽による犠牲者を出すことも躊躇われるし、心の片隅に浮かんだ小さな罪悪感も手伝って、工藤は黒羽を追いかけた。
 50m程で追い付き、工藤は黒羽の腕を掴んだ。
「おい、黒羽。今度アイス奢ってやるから機嫌直せ」
「‥‥駅前のケーキとパフェもつけろ。でっかい苺の乗ったヤツ」
 腕を引っ張り、工藤が自分の方に黒羽を向かせるが、黒羽はまだふて腐れた様な表情をしていた。
――「馬鹿な子程可愛い」とは云ったものだな。これがあの怪盗だというのだから、世の中は狂っている。
「了解」
 そう云い、工藤は再び黒羽の髪を撫でた。
 スターマイン ―― 連続発射打ちなのだろう、激しく花火が咲いていた。色取り取りの光りが黒羽の顔を照らしている。
 笑った顔、怒った顔、ふて腐れた顔、怪盗の顔 ――。
 それはまるで、黒羽の心の奥底を表しているようだった。
 そして、花火を背に受け、表情が陰になった工藤自身も同じように見えているのだった。

 二人が来流海ノ茶屋へ戻る途中、国道沿いでシュラインたちと会い合流した。浜辺へ戻ってくると、アンネリーゼ、来流海、海翔が海岸のゴミ拾いをしているようだった。
「私たちもお手伝いしましょ」
 工藤・黒羽両少年と草間を振り返り、シュラインはパンッと手を叩く。
「こちらの海岸の利用者は、本当にマナーが良いのですね。目立ったゴミは見当たりません」
「そうなの、それは前回店を手伝いに来たとき感じたわ」
 アンネリーゼとシュラインは、顔を見合わせ微笑んだ。
「綺麗だと、ゴミは捨て辛いもんね」
「‥‥そもそも、ゴミ置き場でないところにゴミを捨てていく人間の神経が分からないのだが」
「まぁ、そうなんだけど。あ、工藤、後ろにゴミある。拾って」
「おまえの方が近いだろうが」
 ブツブツ云いながら、工藤は振り返って紙屑を拾い上げる。
「そういえば‥‥シオンさんはどうされたのですか?」
「ああ、バイトがしたいって云うからテキ屋紹介しといた。もうすぐ帰ってくるんじゃねーかな?」
 アンネリーゼの問いに、海翔は熊手で砂を掻きながら答える。
「みなさぁーん! 西瓜切ったのでぇ、よかったら召し上がりませんかぁー!」
 来流海ノ茶屋の方から来流海の声が聞こえ、皆振り返る。周りの人間の顔を見回しながら、お互い頷いて茶屋へと歩みを進める。
 そのとき、国道の方から走ってくる長身と小さくて跳ねる影が現れた。
「あぁーっ 私にも‥私にもっ 西瓜、くださーい!」

 参道から全速力で走ってきたのか汗まみれで髪を振り乱しやってくるそのシオンの形相は、肝試し組曰く「どの出し物より恐ろしかった‥‥」だったそうだ。


      【 了 】


_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ 登 場 人 物 _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ ※PC番号順

【 0086 】 シュライン・エマ | 女性 | 26歳 | 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
【 3356 】 シオン・レ・ハイ | 男性 | 42歳 | 紳士きどりの内職人+高校生?+α
【 5615 】 アンネリーゼ・ネーフェ | 女性 | 19歳 | リヴァイア
【 6178 】 黒羽・陽月(くろば・ひづき)| 男性 | 17歳 | 高校生(怪盗Feathery/柴紺の影
【 6198 】 工藤・光太郎(くどう・こうたろう)| 男性 | 17歳 | 高校生・探偵
【 NPC 】  来流海、深波、海翔、草間武彦

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ ひ と こ と _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

こんにちは、担当WR・四月一日。(ワタヌキ)です。この度はご参加誠にありがとうございました。
ハザマ海岸シリーズ第2弾となりました。ハザマNPCズも弄っていただけて嬉しい限りです。今回のノベルは個別であったり集合であったり、かなりザッピングしております。
なお、人数多め・海岸での過ごし方が皆さん異なっているため、一部プレイングが省略気味になったことをお詫び申し上げます。

後日、来流海が海の家を手伝っていただいた皆様へ労いのもてなしを考えているようですので、機会がございましたら、ぜひ覗いてやってください。

らめるIL異界「おいでませ、ハザマ海岸inモノクロリウム」にて、ハザマ海岸連動の異界ピンナップが募集中です。
今年の夏の思い出に記念ピンナップはいかがでしょうか? ご都合が宜しければ、ご検討・ご参加をお待ちしておりますー!

四月一日。