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<東京怪談ウェブゲーム アトラス編集部>


三下の明日はどっちだ!? 三下が勇者!? 第二話 王の許へ

 金属バットを持ちながら、三下たちは東京を歩いていた。
 ついて来るのは勿論、パティ・ガントレット、環和 基の体を奪った彼の姉の元、そしてもう一人。
「さて、これから、どうするんだっけ?」
 先頭を歩いていた元が振り返って尋ねる。
「確か、エクスガリバーさんの持ち主を探すんでしたね。……いや寧ろ、そのままネコババっていう手が……」
 その問いにパティが答えて、更に後ろを振り返って確認する。
 三下はその視線に気付いて、
「あ、はい。何故かそういう事になっちゃってます」
 取材に来たはずが、何故か人探しをする羽目になっていた。
 その事に短いため息を吐く三下。
 しかし再び視線に気がついて、顔を上げる。
 見ると、パティと元が妙な顔をしていた。
「……どうしたんです? お二人とも?」
 三下が尋ねながら、二人の視線を追う。
 するとそこには長身の男が一人。
「……人探しか……結構、大変そうだね」
「「「だ、誰!?」」」
 三人の声が重なる。
 そこに居た男は、先程までいた関西弁の男ではなかった。
「……え? だれ……?」
 男は三人の視線を更に追って、後ろを振り返る。
「うわぁ、ベタなボケだぁ! きょ、強敵が来ちゃったよ、三下さん!」
「て、敵ですか!? 敵のようには見えませんが……」
『ワシにも敵意は感じられんがな』
 三下の手に持たれた金属バット、エクスガリバーも付け足す。
 自称聖剣というからには、その辺の気配を探るのもお手の物という事だろうか。
 一応、三下はパティにも確認を取る。
「そうですね。装備している刀からはかなり面白い魔力が感じられますが、敵意は感じられませんね。……隠しているなら別ですが」
「……敵、見当たらないけど……」
「まだ探してるよ、この人! ほら、勇者三下さんがこの場をどうにか治めて!」
「え、ぼ、僕がですか!?」
 元に背中を押されて、三下は男の前に立たされる。
「あ、ああ、あの?」
「……なんですか?」
 三下に声をかけられ、男は振り返る。
 かなり長身の男は、三下を見下ろす感じになった。
「し、失礼ですが、ど、どど、どなたですか?」
「……ボク、ですか?」
「は、はい」
「…………」
「………?」
「……ボクは……五降臨・時雨(ごこうりん・しぐれ)。その人探し……手伝うよ……」
「は、はぁ……。それはありがたいですけど……何故?」
「……困ってるんでしょ? ……だったら……助けるよ」
 なんともゆったりした言動に多少リズムを崩されがちだが、どうやら敵ではない。それどころか味方の様だ。
『なんと、仲間が増えたの』
「でも強力な天然ボケキャラよ……。これはどう対処しようか悩むところねっ!」
「元さん、そこは多分悩むところではないかと」
 ともあれ、パーティはこの四人と一本で進む事になった。

●せんし ごこうりん しぐれ が なかまになった

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「で、エクスガリバーさん。その元の持ち主って言うのはどなたなんですか?」
『うむ、名を阿佐田 央助(あさだ おうすけ)と言う』
「その阿佐田さんは何処にいるんですか?」
『ワシの記憶が確かなら、この近くの住宅地に住んでおる』
「それじゃあ、すぐに見つかりそうですね」
『そうだと良いんじゃがな。若いのも見たろう。剣の墓場で墓守が襲い掛かってきたのを』
 この金属バット、自称聖剣のエクスガリバーが落ちていた剣の墓場には恐ろしい墓守が居た。
 ただ、三下についてきてくれた仲間のお陰で事なきを得たのだが。
「まさか、あの墓守みたいなヤツがまた襲い掛かってくるとか!?」
『多分な。我が宿敵は、自由になったワシを放っては置くまい』
「宿敵、ですか……?」
『ああ、お主には関係のない事じゃ。ワシを央助殿のところへ連れてってくれれば良い』
「そうですか」
 そう言って、一行は阿佐田という人間を探すのだった。

『央助殿の家の正確な位置までは覚えてないんじゃがな』
「じゃあ、ダメじゃないですか!?」
『グダグダ言うな! 若いんじゃからその脚を駆使して探しだせぃ!』

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●ぼうけん とうきょう

「さて、阿佐田さんを探すわけだけど」
 意味ありげな笑みを浮かべて元が振り返る。
「もしかして、何か心当たりでも!?」
「無いよ? 無いけど、秘密兵器は持ってきてあるわ!」
 そう言いながら元は頭に乗っていた三角帽子をひょいと持ち上げる。
「これが私の秘密兵器!」
 取り出したるは、分厚いドデカイ本。
「そ、それは?」
「電話帳よ! これで阿佐田さんを見つければ住所も丸わかりってね!」
「そ、そりゃあ確かに秘密兵器ですね……。で、でも何故三角帽子の中から……」
「三下さん! いけません!」
 三下の言葉をパティが遮る。
「そんな事を聞くなんて、なんて無粋な。乙女には秘密が一つ二つあるものです」
「そうよ、三下さん。恥を知れ!」
「え、ええ〜」
 女性二人のテンションに置いて行かれ気味の三下。
 傍らでは時雨が猫にじゃれ付かれていた。
「……電話帳に載ってるのは電話番号じゃ……?」
「だいじょーぶだいじょーぶ。電話番号がわかれば住所もわかるって」
 楽観しながら元は電話帳をペロペロとめくる。
「あーさーだー……あーさーだーっと」
 最初は鼻歌交じりに検索していた元だが、どうやら目がシバシバしてきたようだ。
「だ、大丈夫ですか?」
「う〜ん、こういう細かい仕事は私向きじゃないのよねぇ。というわけで、えい!」
 元の掛け声と共に、元はバッタリと倒れてしまった。
「あ、元さん、大丈夫ですか!?」
 三下が心配して駆け寄るが、その時にはもう、元は元でなくなっていた。
「う、う〜ん。あれ、三下さん、パティさん……と、誰?」
 起き上がったのは元ではなく基。
 どうやら、元は細かい仕事がイヤで、基と入れ替わったらしい。
 時雨はその様子に首をかしげた。
「……さっきまで女の人だったのに……今は男の人……?」
「女? 誰のことです? っていうか、貴方は?」
「ああ〜、面倒な事は置いておいて、今は阿佐田さんを探しましょう」
 パティの提案に反論するでもなく、二人は何となく頷いた。

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●さくせん かいぎ

「なるほど。という事はその金属バットが噂の剣で、今はそのバットを元の持ち主に返す、と」
「そうです。それで、その電話帳で阿佐田さんを探そうとしてたんですよ」
 三下が基に今までのいきさつを話した。
 基は然して疑問を持つでもなく、三下の説明をスルリと飲み下した。
「で、そこの人は新たな助っ人の五降臨さん、という事で良いんですね」
「はい。……良かった。基さんがまともな人で……」
 ともすれば涙でも零しそうなくらい感情こもった声で三下が呟いた。
「あらあら、それでは私達がまともでないような言い方ですね」
「そ、そういうわけではっ! っていうか聞こえてたんですか!」
 パティの笑顔の圧力にアウアウ言ってる三下を他所に、基は落ちていた電話帳を拾い上げる。
「……これで調べろ、と?」
 苦笑しながら基は三下に向き直った。
「三下さん、誰が持ってきたかわかりませんが、これじゃ探せませんよ」
「ど、どういうことですか?」
「これ、企業の電話番号しか書いてません。これで個人の住所を探し当てるのは無理ですね。それとも、阿佐田さんは自営業でもしてるんですか?」
「ど、どうなんでしょう……?」
 そう言って三下は金属バットに視線を寄越した。
『……そんな記憶は全く無いのぅ』
「だそうです」
「……じゃあ、場所を移しましょう。近くにネットカフェがあったはずですから、そこへ」
 基の先導で一行は場所を移す事になった。
「良かった……。本当に良かった。基さんがまともな人で」
「まだ言いますか」
「ひぃ!」

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●ねかふぇのてんいん が あらわれた

「あの……お客様……?」
 受付の店員がかなり引きつった笑いを浮かべていた。
「……何か?」
 やはりとめられたか、という表情で基もそちらを向く。
 突然店に入ってきたのは不思議な四人組。
 一人は普通の高校生のように見えるが、もう三人は明らかに異常である。
 まず、高校生の後ろについていたのは、眼鏡をかけた青年。
 スーツを着て、会社員のような恰好だが、異色なのはその持っている物だ。
「あの金属バットは何に使うんでしょう?」
「き、気にしないで下さい。別に暴れるわけではありません」
 次についていたのは女性。
 なんとも綺麗な銀の髪を二つに結い、それを揺らしていた。
 それはまだ普通だ。なんとも独特のデザインの洋服も、まだ無視できる。
「その……篭手は一体……?」
「気にしないで下さい。別に暴れるわけではありません!」
 最後に居たのが一番怪しい。
 背中には大太刀、腰にも刀。
 明らかに危険人物だ。
 それに加えて、彼の足元には数十匹の犬猫がたむろしている。
 その犬猫の可愛さに寄せられて、子供たちも数人ついてきてしまっている。
「一番後ろの方も、何もしない、と?」
「ええ、しません。気にしないで下さい」
 その時、店員の何かが切れた。
「気にしないわけにいかないでしょぉぉぉおお!? なんで金属バット!? なんで篭手!? なんで刀二振りも持ってんだよぉ!?」
「全然大丈夫ですからっ! 彼らはああ見えてもとても温厚な人間でして……」
「温厚とかそういう問題じゃないから! っていうかアンタもあんな人間引き連れてよく平気だな!?」
「平気なわけ無いでしょ!?」
「平気じゃないなら、アイツら置いて来いよぉ!! ついでにあの犬やら猫やらも置いて来いよぉ!」
「ついて来ちゃったんだから仕方ないでしょぉ!! ……あ、眩暈が……」
 あまり大声を出しすぎたらしい。
 基はその場にうずくまってしまった。
「……どうやら私たちの事でもめてるみたいですね」
「そ、そうですね。僕たちだけでも外で待ってましょう」
「……え? 入らないの? ……ここは涼しくて居心地が良いって、この子達も……」
 そう言って時雨は足元の犬猫を指す。
「この子達って……五降臨さん、犬とか猫と話せるんですか?」
「…………」
「………?」
「……うん、話せるよ……」
 間が空きすぎて、本気なのかボケなのかすらわからなかった。

●さんした たちは (もといをおいて) にげだした

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●ぼうけん とうきょう

「……わかりましたよ。阿佐田って人の住所」
 基が出てきたのはそれからしばらくしてからだった。
「え!? ホントですか!? すごいですね! どうやってやったんですか?」
「……軽く法に触れて」
 シンと静まり返る。
 時雨の足元で犬や猫がうるさく鳴いていたが、それすらも聞こえなくなったようだ。
「……は?」
「……冗談ですよ!」
 三下の聞き返す声に、基はとても清々しい笑顔で応えた。

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●ぼうけん どこぞの じゅうたくがい

 基が割り出した住所を元に、三下達はとある住宅街にやってきた。
『おうおう、懐かしい風景じゃのぅ!』
「……どうやら、阿佐田さんの住所、この辺りで間違いないみたいですよ」
 エクスガリバーの声を聞いて、三下が言う。
 それを聞いて基も安心したようだ。
「よかった。手を汚した上に、ハズレ情報だったらどうしようかと……」
「……まぁ、聞かなかったことにします」
「でも、住所がわかったとしても、どうやってその央助という人に会うんですか?」
 パティに尋ねられて、またも時が止まる。
 言われて見れば、この日は平日。
 阿佐田 央助という名前から、男である事が推測される。
 社会人であろうと学生であろうと、平日の昼間から家に居るとは考えにくい。
「……ど、どうしましょうか?」
『脚じゃ脚! 若いんだから脚をうごかせぃ!』
「無茶言わないで下さいよ!」
「……家の前で待ち伏せって言う手もあるけど、それじゃ時間がかかりすぎるか」
「そうですね。あの墓守みたいなヤツが襲い掛かってくると、厄介ですからね」
 前回、剣の墓場に現れた墓守。
 エクスガリバーの話によると、あのようなモンスターが色々と襲い掛かってくるらしい。
 基と時雨は墓守の事を知らないが、聞いた話によると、べらぼうに強いらしい。
「となると、その金属バットの言うとおり、足を使うしかないか……」
「……待って。ボクに考えがある……」
 そこで口を挟んだのは時雨。
「考え……? 何か有効な手段でも?」
「……うん。……この子達に手伝ってもらおうと思う……」
 そう言って時雨が指したのは足元の犬猫。
「……この子達って、やっぱりその犬や猫、ですか?」
「……そうだよ」
 正直言って、役に立つとは思えないが、もし本当に犬猫が時雨のいう事を聞いてくれるなら、かなり索敵範囲が広がる。
「待っていても仕方がありませんし、私は五降臨さんに賭けてみますが?」
「そうですね。僕も賛成です」
「まぁ、それが一番手っ取り早そうですしね。……じゃあ、お願いできますか?」
「……うん、わかった……」
 そう言って時雨はしゃがみ込んで犬猫に言い聞かせる。
「……阿佐田……央助って言う人を……探してきて……」
 そう言って時雨が何度か言い聞かせると、犬猫はサッと散らばり、姿を消してしまった。
「……後は、待ってればきっと見つけてきてくれる……」
「本当に大丈夫なんだろうか……」
 何となく、いまいち説得力に欠ける。
 日本語で犬猫に伝わるのだろうか……?
 いや、時雨がニャーニャーワンワン言っていてもそれはそれでネタにしかならない気もするが……。

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●ぼうけん いまだに じゅうたくがい

 それからしばらくして、一斉に犬や猫が戻ってきた。
「……おかえり、どうだった?」
 時雨がしゃがみ込んで尋ねる。
 そうすると一斉に鳴き声の合唱が始まる。
「……うん、うん……そう。じゃあもうすぐだね……わかった。ありがとう」
「ど、どうでした?」
「……どうやらもうすぐ帰ってくるらしいよ……。今日は午前授業だったんだって……」
「午前……授業?」
 午前中の授業だけで放課となる、と言うことだが、となると、阿佐田氏とは学生だったらしい。
「な、なんにせよ、これで人探しは終わりですね……。これでやっとボクも会社に帰れますよ」
「そんなにすぐに帰れるとは思えませんが……ね」
 パティの言葉に三下はビクリと肩を震わす。
「な、なんですか? まだ何かあるって言うんですか?」
「その阿佐田さんがすぐに来れば良いんですけどね。どうやら敵の方が早くこちらに着くみたいですよ」
「て、敵!?」
 パティが感じていた確かな敵意。
 上空から感じる視線。
「どうやら索敵と偵察が任務って所でしょうかね。ずっと監視されてたみたいですよ」
「ど、どうするんですか!? またあの墓守みたいなヤツが出てきたら!?」
「それは多分大丈夫でしょう。そうなればまた三下さんがそのエクスガリバーで一刀両断してくれれば」
「で、出来るかどうかわからないですよ!」
 実際、あれをどうやってやったのか、三下自身、覚えていない。
 またあれをやってくれ、と言われてすぐに出来そうにもない。
「……その金属バット、エクスガリバーなんてたいそうな名前がついてるんですか?」
 話に基が割り込んできた。
「え? あ、はい。自分でもそう名乗りましたし、バット自体にも名前が書いてあります」
「……確かに。エクスガリバーと阿佐田 央助……エクスカリバーとアーサー王? ……まさかな」
 そんな三流RPGみたいな事もあるまい。
「それに、そうなると宿敵ってのがモードレッド王かサクソン人って事で、どっちにしろかなり大勢って事になるしな……」
 そうなるとたった四人でどうしろと言うのか?
 多勢に無勢と言う言葉は確かに存在するのだ。
「基さん、先の心配よりも今の心配ですよ」
「あ、そうでした……と言っても、俺は戦闘に関して何も出来ませんが……ってうわ、どうしたんですか三下さん!」
 いきなり三下がダウン。
 敵が遠距離から何かしてきたのか、とも思ったが、どうやらそういうわけではないらしい。
「一体何が……っう……俺も眩暈が……」
「おや、これは嬉しい兆しですね」
「……また、男の人が女の人に……?」
 基も三下に続いてダウン。
 だが、次の瞬間、シャッキリと起き上がり、杖を持った三角帽子の少女へと変身した。
「みんなのアイドル元ちゃん! ただいま参上!!」
「これで戦力は三人、ですか……。一番頼りになりそうな三下さんが倒れてるのは気になりますが……」
「え? ああ、私の所為か。ゴメンねぇ、三下さん。ちょっと吸い取っちゃった!」
「す、吸い取ったって……なにをですか……」
「生気ってヤツ? お詫びに気付けくらいしてあげるわよ!」
 よっと掛け声をかけながら、元が杖を振ると紅いような光が三下に降りかかる。
 それを浴びた三下は
「うひゃっほぉぉぉおおうう!」
 奇声を上げて立ち上がる。
「あ、ちょっと強すぎたかも? と言うかベクトルを間違えたかもしれないなぁ」
「良いんじゃないでしょうか? これぐらい元気があった方が私達も楽できそうですし」
「……そろそろ来るよ……」
 時雨の言葉通り、異形の怪物はすぐそこまで来ていた。

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●モンスター が あらわれた

 現れた怪物には頭が無かった。
 それ以外の外見で言えば墓守と同じ巨人タイプだろうか。
 空を飛んでいる監視役とは別モノらしい。上空にはまだ影がある。
 それが二体。
「またデカイヤツが来たねぇ」
「墓守と同じようにこちらの攻撃が通らなかったらどうしましょう」
「……逃走……?」
「うひょおおおおう!!」
「まぁ、三下さんが居てくれれば大丈夫でしょう。テンションも大分高めのようですし」
「でも三下さんに任せっぱなしってのは癪だから、まずは私達だけで何とかやってみよ!」
「……あの、この子達はどうしたら……?」
「えるおおおおぉぉぉす!」
「足元の犬や猫ですか……。とりあえず三下さんと一緒に何処か隅に置いておいてください」
「っていうか、三下さんに怯えて五降臨さんの傍を離れないような気が……」
「……この子達は、言えば聞いてくれるよ。多分、大丈夫……」
「ブロロロローン!!」
 こうしてなんともカオスな集団は戦闘を始める。

「私があの二体をどうにかまとめますから、大技でドカンと一発、やってもらえますか?」
「りょーかい!」
 素早く役割を割り振り、自分の敵の下へ駆け出す二人。
 どうやら作戦は一網打尽作戦のようだ。
 パティが前線に駆け出し、その巨体に拳を入れる。
 身長差からしても、大したダメージは与えられそうに無いのだが、巨体はくの字に折れた。
「あら、案外にも効いてますね」
「こらぁ! 私の出番無しに倒しちゃったら、間違ってパティさんに当てちゃうぞ〜!!」
「それは勘弁してもらいたいですね」
 墓守とは違って、ダメージが通るようだ。
 だったらやりやすい。
「援護射撃も忘れないわよ!」
 そう言って元も火球を飛ばしてみるが、その熱に、巨人は確かに熱がっている。
 どうやら墓守が異常にタフだっただけらしい。
「押してるわよ、パティさん! さっさと一点にまとめちゃって!」
「そうします」
 パティは一つ震脚を踏むと、加速装置でもついたかのようなスピードで巨体の後ろに回りこむ。
 そしてパンチ。
 本人は軽いジャブぐらいのつもりで打ったのだろうが、その拳はかなり重かったようだ。
 巨人はよろけてその場にしりもちを着く。
「ふむ、ではここに集めましょうか」
 そう言って二人目に移る。
 依然、スピードは落とさないまま、巨人の横に回りこむ。
 そしてローキック。
 その蹴りもやたら痛かったようで、巨人は溜まらず足を押さえて飛び上がった。
 その隙を見逃さず、パティは飛び上がって巨人の腹部に拳を打ち込む。
 その巨人もまた、よろけながら一体目の上に覆いかぶさるように倒れた。
「準備、整いましたよ」
「こっちも準備万端だよ!」
 見ると元の右手には魔力が集められていた。
 そしてその右手を庇うように左手を重ね、半身になって後ろ溜めにしている。
「これはまた……見るからに必殺技ですね」
「パティさん、どいて! ソイツぶっ飛ばせない!」
「はいはい。すぐにどけますとも」
 パティが射線上から消えた瞬間、元の目がキラリと光る。
「喰らえ、必殺! かめはめ……じゃない! 恋符……でもない! 元ちゃん砲!!」
 何度か言い直された必殺技名と共に、元ちゃん砲が撃ち出される。
 その名前とは裏腹に、ちゃんとした威力を持ってその光は巨人二体を包み込んだ。
「……っふ! 影さえも残るまい!」
「景気良くふっ飛ばしましたからね」

●きょじん を 2たい たおした

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●エピローグ?

 それからすぐに阿佐田氏の家へ向かうと、丁度良く、阿佐田 央助が帰ってきたところだった。
「……あれが、阿佐田 央助?」
『おお、間違いないぞ! アレが、あの方が我がマスター! 阿佐田 央助殿!』
 エクスガリバーに確認しても、間違いないらしい。
 だが、そこに見えるのはどう見ても小学生。
「あの子が阿佐田 央助さんですか……これは少し、勧誘は無理そうですね。せっかくウチの組織に是非と思ったのですが……」
「え? パティさん、何か言った?」
「いえ、別に」
『何でも良いから、早くワシを央助殿の許へ!』
 やっと今回の事件も終わりを告げる。
 誰もがそう思っていたのだが、しかし。
「おかーさーん。公園でサッカーしてくるー!」
 央助のその言葉が、エクスガリバーを打ち砕いた。
『さ、サッカーじゃとぉ!?』
 どうやら、もの凄いショックだったようで、エクスガリバーの表面のでこぼこも一層深くなったように思える。
『お、央助殿が野球少年だったから……ワシはこの姿になったというのに……これからワシゃあどうすりゃ良いんじゃぁ……』
「さ、サッカーに棒状のものってなかったっけ?」
「僕の記憶の中にはちょっとありませんが……」
 三下が言うように、サッカーがゲーム中に使われる棒状のモノは無い。
 強いて言うなら……
「……審判のフラッグ……とか、どうかな……?」
「それじゃあ選手が使わないからだめなんじゃないかな?」
「となると、お手上げっぽいですね」
「棒状のものに拘る必要も無いと思うのですが?」
『アホ言うな! 棒状であったからこそ、ギリギリ聖剣を名乗れるんじゃ! 棒状でない聖剣なんて……』
 バットでも聖剣というにはかなり抵抗があるが。

 しばしの沈黙を置いて、エクスガリバーは何かを決心したように話し始めた。
『こうなったらもう、三下。貴様に頼るしかあるまい』
「え? 何をですか?」
『ワシを泉の貴婦人の許へ返してくれ』
「ぼ、僕がですか!?」
『そうじゃ。だが、安易な事ではない。泉の前には我が宿敵が待ち伏せしているはずじゃ』
「じゃ、じゃあ、ヤです」
『拒否権は認めん!』
「ひ、酷い!!」

 こうして、勇者三下の冒険はまだ、もう少し続く。

●つづく


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【4538 / パティ・ガントレット (ぱてぃ・がんとれっと) / 女性 / 28歳 / 戦士(魔人マフィアの頭目)】
【6604 / 環和・基 (かんなぎ・もとい) / 男性 / 17歳 / 魔法使い(神聖都学園三年生)】
【1564 / 五降臨・時雨 (ごこうりん・しぐれ) / 男性 / 25歳 / 戦士(殺し屋(?))】

【NPC / 三下・忠雄 (みのした・ただお) / 男性 / 23歳 / 勇者(平社員)】

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■         ライター通信          ■
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 パティ・ガントレット様、シナリオに参加してくださってありがとうございます! 『暴走しまくりですか、そうですか』ピコかめです。(何
 文脈が良い感じにぶっ壊れてきて、俺的には面白いのですが、お客様的にはどうなんでしょうね!(ぉ

 チラリチラリとシタゴコロが見え隠れって所でしょうか。
 マフィアなのに『最初から力尽くでぶんどる!』って行動に出ないところにかなり魅力が。(何
「欲しいなぁ。欲しいなぁ。え? ダメ? でも……欲しいなぁ」
 みたいな? あれ、キャラ違うかも……。(何
 では、次回もよろしくです!