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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


大神家の一族【第2章・金沢編】
●オープニング【0】
 LAST TIME 『大神家の一族』――。
 毒殺された金沢の資産家、大神大二郎にまつわる事件を調査していた草間武彦の仲間たち。
 草間が調査していたモデル上がりの新人タレント、石坂双葉と大二郎の関係をあれこれと考えたりもしていた所、ある事実が判明する。17、8年前に『明美』というお手伝いが大神家に住み込みで働いていたというのだ。
 『明美』とはすでに亡くなった双葉の母親の名前と同じ。双葉の母親は金沢出身である。同一人物? それとも単なる偶然?
 そして事件は急展開を見せる。
 大神家にて、大二郎の孫の尚が嘔吐して床に倒れているのを、大二郎の長女・彰子が発見したのだ。そのそばには封の空いたキャラメルの箱が転がっていた。
 救急車が呼ばれ、警察もやってきて、大神家周辺は騒然となる。幸いなことにすぐに嘔吐したからなのか、病院へ搬送された尚は生命に別状なく、すぐに意識も取り戻したという。
 だが、恐るべき事実が尚の口から語られた。
 尚はキャラメルの箱を、大二郎の次男・三郎の部屋から持ってきたそうなのだ。警察は三郎の部屋を念入りに調べた。すると、もう1つ封の空いたキャラメルの箱が見付かった。分析の結果、その箱に入っていたキャラメルからはシアン化カリウムが検出されたのである!
「知らない! 僕は知らない!!」
 必死に否定する三郎を、警察は任意同行で引っ張ってゆく。まさか大二郎を殺害したのは三郎なのか……?
 そんな三郎と入れ替わるように、警察に身柄拘束されている草間武彦は釈放されることとなる。
 事態は大きく動こうとしていた……。

●釈放【1】
 3日朝――金沢中央警察署の前に立つ者たちの姿があった。守崎北斗、真名神慶悟、天薙撫子、草間零、そして……シュライン・エマの5人。
 警察署の中からゆっくりと、だがしっかりとした足取りで草間武彦が、警視庁の葉月政人警部に付き添われ外へと出てきた。勾留の証とばかり、無精ひげが伸びていた。
「零ちゃん」
 シュラインが傍らに立つ零の背中をぽむと叩いた。零はこくっと頷くと、小走りに草間の方へ向かった。
「草間さんっ」
 草間の首を目がけて抱きつく零。草間が驚きの表情を見せた。
「よかったです……無事釈放されて」
「…………」
 安堵の言葉を口にした零の頭を、草間は無言で撫でてあげた。そのうちに、他の4人も草間の近くまでやってきた。
「零」
 草間は零の腕をすっと外すと、シュラインの方へきちんと向き直った。
「シュライン……ずいぶんと心配かけたな。すまん」
 ぺこんとシュラインへ頭を下げる草間。シュラインは目をぱちくりさせたが、すぐにふっと笑みを浮かべて草間のそばへ行き、背中をぽむっと叩いた。
「お帰りなさい、武彦さん」
「ああ、ただいまだ」
「あのさぁ……草」
 北斗が何か言おうとした時、草間は他の皆の顔をぐるり見回した。
「皆、心配かけてすまなかったな」
「う……」
 素直に謝る草間の態度に、何か言ってやろうと考えていた北斗も言葉を飲み込んでしまう。だが、それでもこれだけは口にした。
「……ちゃんと戻ってきてやってくれな? 今回みたく」
 ふう、と溜息を吐いて北斗は軽く草間の肩を叩いた。
「分かってる。戻る場所は1つだけだからな」
 真顔で答える草間。
「だよなー。だってよ? あんた居ないと鍋出来ねえじゃん」
 北斗がニカッと笑って言う。本心か照れ隠しか分からないが、その発言で場の空気が和らいだ。
「全くだ。またそのうちに鍋をつつきたいものだが……」
 慶悟がそこまで言って、続く言葉を飲み込んだ。何と言おうとしていたか、おおよそ想像はつく。きっと『まずは目の前の事件を片付けなければ』ということだろう。
「安心して、お鍋を楽しみたいですよね」
 同意とばかりに頷く撫子。発言も、何を言わんやである。
「草間さん」
 それまで黙っていた政人が草間へ話しかけた。
「何を秘密にしてるかは知りませんが、殺人事件に関連する以上、草間さんの調査内容も捜査の対象になる可能性が高いです」
「…………」
 草間は黙って政人の言葉へ耳を傾けた。
「県警がその秘密を独自に突き止めたら、草間さんの望まない形でそれが公表されることだってあります。隠すことが逆効果なことだって成り得るんです。もし、僕に打ち明けてくれるのであれば、出来るだけ草間さんの望む形で情報を扱えるように取り計らいますが……」
 政人はそこまで話すと草間の反応を待った。草間はぼりぼりと頭を掻いてから、天を仰いだ。
「望まない形になるのは、俺も不本意だからな……。ま、それなりに時間は稼げたか」
 草間は再び皆の顔を見回した。
「話すのは、一風呂浴びてからでいいか?」
「そのくらいの時間は待ちますとも」
 政人はそう言ってふっと笑った。

●経緯【2】
 一同が宿泊していたビジネスホテルの一室に、全員が集まっていた。一風呂浴びて不精ひげも剃った草間は、とてもさっぱりとした様子であった。
「最初は――1本の電話だったんだ。去年の夏前にかかってきた電話だ。たまたま、俺しか居なかった時にな」
 草間が事情を話し始めた。
「電話の主は大神大二郎。石坂双葉の調査を依頼してきた張本人だ。金沢からかけてると聞いて、俺はとっとと切り上げようと思った。普通、悪戯だと思うだろ? 俺は金沢で宣伝した覚えはないんだからな。だが……知り合いから聞いたという言葉と、もう1つの言葉を聞いて、俺は話をじっくりと聞いてみようと思った。……我が娘のことを調べてほしい、真剣な声でそう言ったんだ。
「最初から『娘』なんて言ったのか?」
 北斗が草間へ尋ねた。
「最初はな。すぐに、『娘かもしれない』と言い直していたが。それで調べてほしい相手として名前を出してきたのが、石坂双葉だ。何でも、息子だかの読んでた雑誌をたまたま見ていて知ったらしい」
「どうして娘かもだなんて思ったんですか?」
 今度は零が草間へ尋ねる。
「面影があったんだそうだ」
「明美さん……のですか?」
 撫子がぽつりつぶやいた。
「ああ、そうだ。自分の愛した女性の顔を忘れるはずはない、なんて言ってたな。それにそう考えたのにはもう1つ理由がある。うなじにあるほくろだ。大神氏にも同じ場所にほくろがあるんだ」
「あっ、だからほくろまで……!」
 はっとするシュライン。事務所で見付けたファイルには、ちゃんとそこまで記されていたではないか。
「まあそういう訳で、俺は密かに大神氏と連絡を取って石坂双葉のことを調査していたんだ。……零、去年アトラスの仕事を手伝ったことあったな?」
「あ、はい、覚えています。場所もここ、金沢でしたよね」
「あの時にはもう、調査に入ってたんだ」
「えっ!」
 目を丸くして驚く零。零ならずとも心当たりのある者ならば、今の草間の発言で色々と納得出来たことだろう。何故かあの時期、草間の行動が不可解であったことに――。
「高名な資産家と手伝いの間に子があったとしたら……大騒ぎだな」
 思案顔で慶悟がつぶやくと、草間が大きく頷いた。
「そうだな。だから、石坂双葉の母親……旧姓・福井明美は大神家を追い出されたんだ。その頃は健在だった妻によってな。長男と長女も妻の味方をしたそうだ。ただ1人、次男だけが明美をかばっていたんだそうだ。当時10歳前後か……ずいぶん仲がよかったらしいな」
「けれど、追い出された時にはもうすでにお腹の中に双葉さんが……?」
 撫子が尋ねると、草間は首を横に振った。
「それが微妙なんだ。計算上は合うんだが……早産だったと石坂双葉やその父親は言ってるらしいんだな。あいにく、その辺りの裏付けが取れてないから俺には分からんよ。それこそ、DNA鑑定でもしてみにゃあな」
「……まぁいい。真実は追う者がある限り必ず露呈する、はずだ。そのために動いている訳だからな」
「全くその通りだな」
 草間が慶悟の肩をぽむと叩いた。
「肝心なことを聞いていいですか」
 政人が草間へ問いかけた。
「ああ。何だ?」
「それを今まで隠していたのは、探偵としての依頼人に対する守秘義務からだけですか?」
「……お前、分かってて聞いてないか」
 苦笑する草間。政人は答えず笑みだけ見せる。
「思ってる通り、石坂双葉への影響を考えたんだ。芸能界で売り出し中……だろ? 俺が下手を打つと、1人の少女の未来を奪うことになるからな。新人にスキャンダルはご法度だ。ま、そうなれば他にも広く影響出るだろ。つまり、そういうことだ」
 そう言って、草間はすっと皆から目を背けた。
「……嫌なんだよ、そういうのは」
 声にならぬ草間の声。それが聞こえたのはきっとシュラインのみであろう。

●現状【3】
 さて、草間が一通り経緯を話した時点で、今度は一同が現状を説明する番だ。
「尚が殺されかけただって……?」
 各人から話を聞いて、草間が難しい顔をして思案を始める。
「そうなんだよ。俺はさ、三郎の部屋にあったってキャラメルの箱は、他の兄弟が仕組んだんじゃないかって思ってんだけどさぁ」
「んー……尚くんが大二郎氏にキャラメルを渡したことを知ってた人物が、発表されてる毒物を使って三郎氏に目を逸らしたような印象があるの、私は。よく三郎氏を怒ってたっていうけど、それは期待してたからこそなんじゃないかって思うし……無視じゃなくて」
「そもそも、何故尚君が三郎の部屋に無断で入って勝手にキャラメルを取ったのかもまだはっきりしていないんですよね。……もしかしたら、誰かが部屋に毒入りキャラメルを置いて、尚君に吹き込んだのでは」
 北斗、シュライン、政人が各々推理を口にする。草間は無言のままだ。
「なぁ、草間はどう思う?」
 北斗が草間に推理の披露を促した。ややあって草間が口を開く。
「……可能性を除外していって最後に残った奴が、どんなに怪しくなくとも犯人だろ」
 ごく当たり前のセオリーだ。
「逮捕されてぼけたのか、草間?」
 北斗、酷い言い様だ。
「ぼけてないぞ。俺は当然のことを言ったまでだ」
「……尚に直接聞いた方が早そうだな」
 やれやれといった口調でつぶやく北斗。すると草間が尋ねてきた。
「尚に会う気なのか?」
「県警に話を通して、お膳立ては出来ますからね」
 政人が口を挟んできた。なるほど、これはしっかりした正攻法なルートである。
「そうか。なら1つ言ってやる。尚は『いい子』らしいからな……大神氏との会食でも、散々言われたよ」
 草間はにこりともせず、皆に聞こえるように言った。
「武彦さんはこれからどうするつもり? すぐに捜査?」
 シュラインが草間にこれからの予定を尋ねる。
「……夕方まで寝させてくれ。心配するな、どこにも行きやしないさ」
 皆の怪訝な視線に気付き、どこにも行かないと慌てて草間は付け足していた。
「なら、私もホテルに残りますね」
 そう言った零は、きっと草間を見張るつもりなのだろう。ともあれ、零が残るというのなら安心して他の皆は捜査に出かけることが出来る訳で。
 かくしてホテルに草間と零を残し、残る5人は各々捜査へ出かけていった――。

●いい子【4】
 政人とシュラインと北斗の3人は、尚が入院している病院へ向かった。尚から詳しく話を聞くためである。
「おにいちゃんたちだれー?」
 病室に入るなり、尚が3人へ向かってそんな言葉を発した。毒物を口にしたにしてはかなり元気そうだが、どうやら食べてすぐに全て嘔吐していたのが効を奏していたらしい。胃も洗浄され、適切な処置も受けているゆえ、2日ほど経過を見た上で退院出来るようである。
「お兄ちゃんはね」
 政人はそう言って、1枚の写真を尚に見せた。対超常現象一課が使用する、特殊強化服が映っている写真だった。
「わぁ、かっこいいーっ!」
 このくらいの男の子には、こういった写真を見せるのがよいらしい。尚はすぐに目を奪われていた。
「警察の人なんだよ。尚君に、ちょっと聞きたいことがあってやってきたんだ」
 そして自己紹介する政人。北斗とシュラインも各々自己紹介をした。それから面会時間が限られていることもあって、すぐに尚へ質問を始めた。
「尚くん、金沢城公園で遊んでるんですってね。楽しい?」
「うん。楽しいよ!」
 シュラインの質問に尚が元気よく答える。
「そうか、そうかー。1人で遊んでるのか?」
「ううん。1人だけのこともあるけど、あそんでることいっしょにあそぶこともあるよ!」
 北斗の質問に尚はそう答えた。さらに北斗は尋ねる。
「パパとか、おじさんおばさんとは遊ばないのか?」
「パパとかおばさん、おしごといそがしいからなかなかあそんでくれないの。さぶろーおじさんとか、ひでふみおにいちゃんはまんがたくさんもってるんだよー。ぼくまんがよむのー」
(なるほど、三郎と秀文と仲がいいみたいだな)
 尚の言葉から、北斗はそう読み取った。
「ところで……三郎おじさんの部屋にキャラメルがあること、誰かから聞いたのかな?」
「ううん。ぼくきいてないよ」
 政人の質問に答える尚。
「それじゃ、尚がどこかから持ってきたのかな?」
「ううん。ぼくしらないよ」
 今度は北斗の質問に尚はそう答えた。
「三郎おじさんの部屋に……あったのね?」
「うん。あったよ」
 シュラインが確認するように尋ねると、尚はこくこくと頷いた。さらにシュラインは尋ねる。
「キャラメル、この前お爺ちゃんにもあげたわよね?」
「うん。あげたよー。おじいちゃんやさしいからぼくすきだったんだー。でももうおじいちゃんいないってパパいってた……」
 うつむく尚。しかし、それでもシュラインはもう1つ質問をした。
「……誰かがキャラメルをお爺ちゃんにあげなさい、って言ったのかしら?」
「キャラメルあげたのぼくだよー?」
「そろそろよろしいですか?」
 外に居た看護婦が病室の扉から顔を出し、時間いっぱいであることをほのめかした。
「最後に2つ! 家の誰かが、最近よく電話してなかったか? 明美、双葉、春太の名前に聞き覚えはないか?」
 慌てて北斗が尚に質問した。
「ぼくしらないー、わかんないよー」
 これにてタイムアップ。3人は尚の病室を出て、病院を後にした。
「妙だわ」
 外に出て、開口一番シュラインがつぶやいた。
「妙って何が?」
「質問のやり取りで、引っかかることが何か?」
 北斗と政人が相次いでシュラインへ尋ねる。
「実はね、質問している間、尚くんの心音に注意してたの。ほら、嘘吐いていたなら心音が早くなるでしょうから。でもね」
 言葉を一旦切ったシュラインは、とても難しい表情になった。
「変わってないの。最初から最後まで、一貫して。それがどうにも妙で……」
 ――どういうことですか、それは?

●邪気【5】
 撫子は神社を回っていた。大神家は地元の資産家である。ならば、どこかの神社の氏子として付き合いがあるのではないかと考えたのだ。
 その撫子の考えは見事に当たっていた。すぐに見付け出すことが出来たのである。そこであれこれと話をしているうちに、面白い話を聞くことが出来た。
「ご商売が……ですか?」
「うむ。長男の正一さんも長女の彰子さんも、昨今の不況からか経営は厳しいらしい。大二郎さんはそう言っておられたよ」
 撫子が聞き返すのに頷く神主。経営が厳しい……これは立派に大二郎殺害の動機になるのではなかろうか?
「他に何か、大神家が関わった事件などはありますでしょうか?」
「いや、ないはずだ。そもそも大神家の財は、大二郎さんが作ったものだ。代々の資産家という訳じゃない」
「……ところで明美さん、いえ福井明美さんという名前はご存知ではありませんか?」
「おお、明美ちゃんか。お手伝いをしていた。あの娘も不憫な娘でなあ……両親を交通事故で1度に亡くして、高校卒業すると同時に大神家の住み込みでお手伝いになったんだ。突然辞めたそうだが、今はどこで何をしているのやら……」
 遠い目になり懐かしむ神主。このままだと何だかとても長い昔話モードに入ってしまいそうだったので、撫子は丁重に礼を言って辞すことにした。
 その後もいくつか神社を回ってみて、同じように質問をしてみる撫子。大神家については当然だが、他にも金沢に何か妙な噂など広がっていないか尋ねていた。シュラインが言っていたが、妙な事件が多発しているようだからだ。
 どうやら噂などはないようだが……多くの神社ではこんな答えが返ってきていた。
「3週ほど前からか、御神木に少し元気がないように感じる」
「何やらしっくりとこない」
「風の流れが変わったかもしれん」
(これは何でしょう……金沢入りした際に感じた妙な気の影響でしょうか)
 悩む撫子。それは判然としない悪意のようなもの……と撫子には思われた。
 そんな撫子に連絡が入る。従兄が調査部に調べさせていた内容の一部である。それによると東京で妙な動きをしている探偵社の社長の兄が、金沢に居るのだという。
 探偵社の名前は『小田原探偵社』、そして社長の兄が金沢で営んでいるのは――『小田原興信所』といった。

●電話の相手は……【6】
 慶悟はその、『小田原興信所』を張り込んでいた。不可視の式神を送り込み、新たな行動をひたすら待っていたのだ。探偵らしき白髪混じりの中年男に出てゆく様子がないから、慶悟はただ待つしかなかった。もしどこかに出ていったのなら、式神に家捜しの1つでもさせていた所であるのだが。
 刻々と時間が流れてゆく中、やがて慶悟が睨んだ通り動きが起きた。男がどこかに電話をかけたのである。式神を通じ、その番号を慶悟はしっかりチェックした。
「もしもし……俺ですよ。調査料の件ですがね、まず今夜払ってもらいましょうか。金沢城公園に忍び込んできてくださいよ……あそこなら、誰にも見られませんからねえ。新丸広場で待ってますから、じゃ……真夜中12時にでも、よろしく」
 男は用件を告げると、早々に電話を切った。
(今夜受け取る気か!)
 時間も場所もはっきりしている。張り込めば、尻尾を押さえることが可能である。慶悟はそう思った。
「相手の声がはっきり聞こえればよかったんだが……」
 ただ1点、それを残念がる慶悟。どうも男は、相手があれこれ言う前に自分の用件を一方的に伝えている節があった。それじゃあ声は聞こえないはずだ。
(件の番号にかけてみるしかないか)
 そして慶悟は、用心のため公衆電話からチェックした番号にかけてみた。3回コールした後に相手が出る。
「はい、大神ですが」
(!!)
 慶悟が大慌てで電話を切った。普段こんなに慌てることのない慶悟であるけれども、この時ばかりの驚きはかなりのものであったようだ。
「……今の声は……」
 女性の声――確か、彰子の声ではなかったか?
 なら昨日、男が『あんたたち』と言っていたのは、彰子と……?

【大神家の一族【第2章・金沢編】 了】


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【 整理番号 / PC名(読み) 
                   / 性別 / 年齢 / 職業 】
【 0086 / シュライン・エマ(しゅらいん・えま)
     / 女 / 26 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員 】
【 0328 / 天薙・撫子(あまなぎ・なでしこ)
         / 女 / 18 / 大学生(巫女):天位覚醒者 】
【 0389 / 真名神・慶悟(まながみ・けいご)
                   / 男 / 20 / 陰陽師 】
【 0568 / 守崎・北斗(もりさき・ほくと)
                / 男 / 17 / 高校生(忍) 】
【 1855 / 葉月・政人(はづき・まさと)
   / 男 / 25 / 警視庁超常現象対策本部 対超常現象一課 】


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■         ライター通信          ■
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・『東京怪談ウェブゲーム』へのご参加ありがとうございます。本依頼の担当ライター、高原恵です。
・高原は原則としてPCを名で表記するようにしています。
・各タイトルの後ろには英数字がついていますが、数字は時間軸の流れを、英字が同時間帯別場面を意味します。ですので、1から始まっていなかったり、途中の数字が飛んでいる場合もあります。
・なお、本依頼の文章は(オープニングを除き)全6場面で構成されています。今回は皆さん同一の文章となっております。
・今回の参加者一覧は整理番号順で固定しています。
・大変お待たせさせてしまい申し訳ありませんでした。ここに第3話の金沢編をお届けいたします。草間が調査に入った経緯やら、驚きの事実やらが判明して大きく動いたのではないかなと思います。
・今回の結果によってようやく高原も話せるのですが、本当に去年から種は撒いていたのですよ……このお話の。草間が妙な動きをしているお話、いくつかあるはずですので、よかったら読み返してみてください。
・なお、次回で一応最終話の予定なのですが、現在の状況からしてひょっとすると『終章』を付け加えることになるやもしれません。どうか頭の片隅にでも入れておいてください。
・シュライン・エマさん、112度目のご参加ありがとうございます。雫へ尋ねた件については東京編参照ですね。誰が貼ったのかは特定出来ていません。ええと、尚に対する質問と答えは本文の通りです。よーく読み込んでみてください、何か見えてくるかもしれません。それにしても、心音が……妙ですねえ?
・感想等ありましたら、お気軽にテラコン等よりお送りください。きちんと目を通させていただき、今後の参考といたしますので。
・それでは、また別の依頼でお会いできることを願って。