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<東京怪談・PCゲームノベル>


【SMN】Mission NO-1「Talk of the devil」

依頼者:New Order
依頼内容:目標の抹殺
タイプ:オープン

依頼詳細:
 近々、我々はある作戦を展開する予定である。
 作戦の詳細は明かせないが、我らの目的にむけての大きな一歩となることは間違いない。

 その作戦を遂行するにあたって、最も邪魔になるのは「Leaders」の連中だ。
 今回は、その中でも特に厄介な「キースミス」と呼ばれる男の抹殺を依頼したい。
 ターゲットには特筆すべき戦闘能力はないが、それだけに十分な数の護衛がついていると考えられる。
 対処方法は任せるが、目標はあくまで「キースミス」の抹殺だということは忘れないでほしい。

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 ネットワークを介して、メールは様々な場所へと送られていく。
 特に今回のようにおよそ無差別にメールがばらまかれている場合、メールの受け手が「送り主が想像だにしなかった相手」であったとしても、さほどの不思議はない。





「命令内容を確認しました。これより状況を開始します」
 メールを確認してこくりと頷いたのは、中学生くらいと思しき一人の美少女。
 しかしその正体は、衛星軌道上の自動工場にて量産される退魔支援ロボ「人型退魔兵器・R−98J(ひとがたたいまへいき・あーるきゅーはちじぇい)」のうちの一機であった。
 彼女はさっそく自動工場に連絡を取り、一個小隊ほどの「自分」を援軍として送ってくれるように要請した。





(……なんだ、これは)
 ネットワーク上の某所では、予期せず流れ着いたそのメールを、あるデータが捕まえていた。
 自我と意識、そして実体化する能力を備えたデータ「デジネイト・レプリガン」。
 その中の一つである「VoーLcano:FIre」は――人間形態時はフィアー・ボルカニクスと名乗っている――その名の通り、世界各地の火山のデータを母体としている。
 その彼がデータ状態で休眠しているところに、たまたま問題のメールが流れ着いたのである。
(まあ、「慣らし」にはちょうどいいかもな)
 彼はそんなことを考えながら、さっそくネットワークを通じて標的のいそうな場所へと向かった。

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 IO2由来の組織の拠点は、大抵の場合、郊外のやや寂れたところにある。
「万一敵襲を受けた場合にも、周囲への影響を最小限にできる」というのが、その主な理由なのだが、それは同時に、襲撃側にとってもメリットとなり得る。

 そこからだいぶ離れた、あまり人気のない通りの一角を、R−98Jたちは襲撃ポイントとして選んだ。
 敵が二重三重に防弾・抗魔加工の施されたバンを移動手段として利用している以上、遠距離からの砲撃のみで仕留めることは難しいが、足止めするくらいなら容易いことだろう。

「標的接近!」
 その合図で、榴弾砲を担いだ二機が通過予定ポイント周辺に狙いをつけ――タイミングを見計らって引き金を引いた。

 爆音とともに車が止まり、中から護衛と見られる三人の男が飛び出してくる。
 そこを狙って、今度は別の数機がアサルトライフルによる攻撃を仕掛けた――が。

 一瞬にして、敵のうち二人が視界から消える。
 そして残った一人はというと、何と銃弾の雨の中を真っ直ぐにこちらへ向かって突き進んできた。
 銃撃によって衣服が破れ、露わになったのは――肌ではなく、やや青みがかった白い鱗。

 並の銃撃ではこの男を傷つけるのは難しく、かといって、重火器を使うにはすでに距離が近すぎる。
 とはいえ、目標はこの男の撃破ではなく、あくまで「キースミス」の抹殺である。
 そう判断したR−98Jは、当初の予定通りに計画を遂行することにした。
 すなわち、この男を無視する形で、突入部隊を突っ込ませるのである。

 幸い、男の頑強さは並ではないが、敏捷性はさほどでもなかったらしい。
 格闘戦に特化した装備を持つ四機と、通常装備の四機が、ローラーダッシュで次々に男の横をすり抜けていく。
 男は一瞬驚いたような様子を見せたが、やがて自分の目の前にいる残りの五機を見つめ、微かに口元を歪めた。
「おイタがすぎるぜ、嬢ちゃんたち」

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「ん? もう誰かおっぱじめてやがるのか?」
 フィアーが近くの配電盤を通って実体化した時には、すでに戦闘が始まっていた。

 標的の乗った車の周りで戦っているのは――片方は、護衛のNINJAと思しき二人組。
 そしてもう片方は、八人ほどの全く同じ顔をした中学生くらいの少女たち――R−98Jだった。
 R−98Jの連携のとれた見事な攻撃を、NINJAたちは圧倒的な瞬発力と戦闘技術でどうにかしのぎきっている。

 と、不意にR−98Jたちが一斉に一旦後退した。
 そこへ、ロケットランチャーによる遠距離射撃がくる。
 NINJAの二人はとっさに爆風の及ぶ範囲から離脱したが、さすがに車までは逃げ切れない。

 ――終わったか。

 フィアーはそう思ったが、次の瞬間、信じられないことが起こった。

 なんと、ロケット弾が突然空中で減速し、完全に制止したかと思うと、元来た方向へ向かって戻っていったのである。
 どうやら、車の中にはまだ一人以上の護衛が残っているらしい。
 そして、その中には一人以上の念動力使いが含まれているようだ。

 このままなら、戦況は五分。
 敵には援軍が来る可能性が高いことを考えると、長引けば長引くだけこちらが不利になる。

 そう思った矢先、本当にその「援軍」が姿を現した。

 ボロボロの服を纏った、青白い鱗を持つ大柄な男。
 おそらく、ジーンキャリアであろう。
 彼はゆっくりと車の方に向かって歩いてくると、引きずっていた何かを無造作に前に放り投げた。

 それは、半ば凍りついた少女の――いや、少女の姿を模した機械の残骸。
 それは則ち、彼が一人で彼女たちを撃破した、ということに他ならない。

 つまり。
 この男は、ここで戦っている、他の誰よりも強い。
 となれば、フィアーが戦うべきは、この男をおいて他にない。

「貴様は俺が相手をしよう」
 フィアーが前に進み出ると、男は楽しそうに笑った。
「いいだろう。あいつらよりは手応えがありそうだ」

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 R−98Jは焦っていた。

 突然現れた赤い髪の男があの厄介な大男を引き受けてくれたとはいえ、不利な状況に変わりはない。
 戦況だけを見るならまだまだこちらが押し気味であるが、時間切れは負けに等しい以上、「押し気味の状態で戦況が膠着している」状況を、決して有利とは呼べない。

 敵のNINJA二人の連携は、こちらに負けず劣らず見事で、突破するのは容易ではない。
 かといって、小型火器による攻撃では、バンの中の標的にダメージを与えることは難しい。
 その上、遠距離からの重火器による攻撃は、中の能力者によってことごとく防がれてしまう。

 後方に足止めのため残してきた五機はすでに大破、支援は期待できそうもない。
 自動工場にさらなる援軍を要請するという手もないわけではないが、それをやるとますます事態が大事になり、収拾がつかなくなる可能性も高いため、それは最後の手段とすべきだろう。

 何か。
 何か、この事態を打開する手段はないか。

 彼女は懸命にそう考え――そして、ある一つの結論に達した。





 重火器による援護射撃に備え、R−98Jたちが一斉に後退する。
 やがて、ロケットランチャーが発射され、NINJAたちが一旦車から離れた――その時だった。

 格闘戦用装備のR−98J四機が、一斉に車に向かって殺到する。
 万一ロケット弾が炸裂すれば、確実に巻き込まれる。
 けれども、R−98Jにとって、それは大きな問題ではない。
 彼女はあくまで量産型であり、また、個々の機体はあくまで彼女の一部でしかないのだから。
 多少の犠牲を払おうとも、目的が達成されさえすれば、彼女にとってそれは「成功」なのである。

 慌てて戻ろうとするNINJAたちを、残りの四機が牽制する。
 その背後で、数発のロケット弾が立て続けに着弾した。
 いかに防弾加工が施されていようとも、これだけの重火器による連続砲撃に耐えられるはずもなく、バンは瞬く間に炎に包まれた。

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From: 「レヴ」
Subject: 感謝する

 実に見事な活躍だった。
 諸君らのおかげで、こちらも計画通りに作戦を進めることができそうだ。
 また何かあったら、その時は是非よろしく頼む。

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結果:「キースミス」の抹殺に成功(目標達成)

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

 6691 / 人型退魔兵器・R−98J / 女性 /  8 / 退魔支援戦闘ロボ
 6377 / フィアー・ボルカニクス  / 男性 / 25 / 実体化データ

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■         ライター通信          ■
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 撓場秀武です。
 この度は私のゲームノベルにご参加下さいましてありがとうございました。
 また、ノベルの方、大変遅くなってしまって申し訳ございませんでした。 

・このノベルの構成について
 このノベルは全部で六つのパートで構成されております。
 そのうち、五つ目のパートにつきましては、それぞれ違ったものになっておりますので、もしよろしければもう一方のノベルにも目を通してみていただけると幸いです。

・個別通信(人型退魔兵器・R−98J様)
 はじめまして、撓場秀武です。
 今回はご参加ありがとうございました。
「個々の機体は撃破されても」「数で押し切る」ということでしたので、最後あのような形になりましたが、よろしかったでしょうか?
 ともあれ、もし何かございましたら、ご遠慮なくお知らせいただけると幸いです。