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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


緋色の珠玉

オープニング

 緋色の珠玉、それは使用者の願いを一つだけ叶える宝石。
 しかし、願いを叶えるというだけあって、支払わなければならない代償は大きいものだと伝えられる。
 この日、草間興信所には三人の依頼者がやってきた。

 一人目の依頼者『沙庭ナオト』
 派手なスーツで着飾った彼は、母親が病気で入院しており、その治療代を稼ぐためにホストをしているのだという。
 治療といっても現状維持で決して良くならない母親の体を心配していたときに客の一人から緋色の珠玉の事を聞いたのだという。

 二人目の依頼者『姫川ヨーコ』
 良くもわるくも、特徴のない彼女は近くのコンビニエンスストアで働いているのだとか。
 毎日働きづめの彼女が緋色の珠玉に願うのは『お金』。
 遊び暮らしたいがために緋色の珠玉を手にしてほしいと依頼をしてきた。

 三人目の依頼者『溝口ショータ』
 小学生の彼が緋色の珠玉を欲しがるのは、自分の将来を自分で決めたいからだという。
 とある財閥の一人息子である彼は動物園の飼育係になりたいのだという。
 しかし、跡取り息子である彼には許されない道だった。
 そんな場所から逃げたくて、自分の将来を自分で決めたいから、彼は緋色の珠玉を手にしたいのだという。

「依頼者は三人。しかし、手に入れられる珠玉は一つのみ、か」
 草間武彦はポツリと呟く。
 さて、あなたは誰の依頼を受けますか?

視点→桜小路・花


「………………………」
 草間興信所には今、気まずい沈黙が流れている。 
 先日、草間興信所で請け負った人探しの仕事があったのだが、花は簡単なミスをしてしまい失敗してしまったのだ。
「…ここに一つの依頼がある。本当なら失敗をしたキミに任せるのはしたくないんだが…」
「あたしにやらせてください!一つ仕事を潰しちゃったお詫びに…」
 花の言葉に草間武彦は暫く「うぅむ…」と唸る。草間武彦としては、失敗をした花に次の仕事を間髪いれずに請けさせるのはさせたくないという気持ちもある。だが、今動ける人間は花しかいないという事もある。
「…無理だけはしないように。この間の人探しと違って、こちらは危険そうな依頼だから」
 はい、と花は返事をしながら渡され依頼書を受け取った。
「依頼人はホストの方ですか…」
 依頼書を見てみると、病気の母親の治療代の為にホストをして稼いでいると書いてある。
 この『緋色の珠玉』は願いを叶える代わりに代償を求められ、それは計り知れないほど大きなものだとも書いてある。
「…この方は代償の事を知っているんでしょうか…」
 花が小さくポツリと呟く。すると「知っているらしい」と草間武彦から短い返事が返ってきた。
 家族の為に失うものがあるのを承知で玉を捜す事、その事に花は心を打たれる。そして、やれるだけの事を頑張ってこの依頼人の母親を助けてやりたいと思った。
「それでは、草間さん。この依頼書はお借りしていきますね。あたしはあたしのやり方で頑張ってみようと思います」
 そう言って草間興信所を出た花だったが、実際にどうやって情報を集めようかと思案していた。
 学生である自分に出来る事と言っても限られてくる。
「…ネットで調べてみるかな…」
 依頼書を見てみると、依頼人は客から聞いたと書かれている。そうなれば緋色の珠玉の存在は依頼人だけでなく、それなりに広がっていると考えて間違いはないだろう。だから、ネットで調べてみれば、必ず該当するページが存在するだろう。
 幸いにも近くにネットカフェが存在する。それに近くには学校もある。学生などがネットカフェを利用することだろう。上手くいけば緋色の珠玉について何かを聞き出せるかもしれない。
 よし、と一つ掛け声をあげて花はネットカフェへと入った。

 学校帰りという事もあって、中は学生服を着た人間でいっぱいだった。
 その中で空いているパソコンを見つけ、花は椅子に腰掛け、電源を入れた。そして検索画面を立ち上げて『緋色の珠玉』で検索を始める。
「…あった、えぇと…」

 緋色の珠玉、それは人の欲望を集めたものである。人の欲望が最高に達したときに、どこからともなく生まれてくる血のように赤い宝石。
 それを手にしようと考えてはいけない。
 きっと、手にした瞬間に魅入られて大切なものをなくすだろう。
 私も妻と子供…『家族』を失った。
 贅沢な暮らしをしたいという傲慢な願いの為に…。家族を犠牲して手に入れた贅沢など楽しめるはずもない。

「…だから、決して願ってはいけない…ここで文章が切れてる…」
 きっとこれを書いた人は願って手に入れたものを使うことが出来なかっただろうと花は思った。
「…こんなにも後悔してるんだもの…」
 使えるはずがない、そう呟いたときに一人の男性が隣に座った。その人物を見て「あ」と声を漏らした。
 何故なら、依頼書に挟んであった依頼人の写真と同じ顔だったから。
「……あの、沙庭…ナオトさん、ですよね?」
 話しかけられた男性は「そうですが…」と言いながら怪訝な顔で花を見る。、
「…あ、あたし桜小路・花って言います。草間興信所であなたの依頼を受けて…」
 そう、それだけ言うとナオトはパソコンの画面に視線を移した。
「貴方は…代償のことをご存知で、なおかつ珠玉を欲するのですか?」
 そう花が問いかけるとナオトはキッと花をにらみつけてきた。
「母さんのためだったら、命を無くしても構わないさ。捨て子の俺をここまで育ててくれたんだ。命くらい賭けないと恩返しが出来ない」
 彼の言葉は本物のようで、目に涙を浮かべていた。
 だけど…。それで果たして本当に母親は喜ぶのだろうか?
「あった」
 突然ナオトが呟き、あわてて外へと出て行った。何を見てたんだろう、と切られなかったパソコンの画面に目を向けると、過去に珠玉を手にした人間のページだった。先ほど花が見ていたページとはまた別のページで、住所がこの近くになっている。
 きっと、ナオトはその人間に会いに行くために急いでいたのだろう。
「あたしも行ってみよう…」
 花はパソコンを切り、代金を払うとナオトが向かった場所へと足を急がせた。


「教えろ!緋色の珠玉はどこで手に入れた!?」
 目的の場所に到着すると、一人の老人に掴みかかっているナオトを発見した。
「ちょ…何やってんですか!」
 今にも殴りかかろうとするナオトを必死で花は止め、老人との間に割って入った。
「お若いの、珠玉を求めるのは止めておきなさい」
「…早くしないと、母さんが死んじまうんだよ!」
 そこで花はようやく理解した。ナオトが何故こんなにも急いでいるのかを。
「…わしは昔、妻を亡くした。妻の病気を治したいばかりに珠玉を手に入れた…。願い通りに妻は回復した…が、二日後に死んだよ。代償として珠玉に殺された」
「なっ…」
 これには花も驚きで目を見開いた。まさか助けたいと願った者さえも代償として奪っていくとは思わなかった。
「これでもお前さんは珠玉を求めるかね。助けたいと願う者を奪われるかもしれぬというのに」
 老人が問いかけるとナオトは暫くの沈黙の後「求めるさ」と短く告げた。
「求める。母さんの命の代わりに俺の命を差し出す。誰だって自分の命は大事だろう?代償には十分なるはずだ」
「…待って、鳥達が…」
 騒ぎ出している鳥を見つけ、花は駆け寄ると意外なことを聞くことが出来た。
『あの人を止めて、あの人が騒ぐたびに…この辺の空気に淀みができちゃうの。このままだと―…』
 鳥達の言葉に言葉を返そうとしたとき、周りがパァッと赤く染まり、ナオトの前に赤い宝石が浮かんでいた。
「…これが、緋色の珠玉…?これで母さんは…」
 老人は悲しそうにナオトを見ている。かつての自分を思い出しているのだろう。
「待って、これを…」
 そう言って花が取り出したのは手作りだと窺える小さな人形だった。
「これは…?」
「おまじない程度の力しかないですけど…ないよりはマシだと思って作った身代わり人形です」
 ナオトは人形と花を交互に見比べながら「…さんきゅ」と小さく呟いた。



 後日、沙庭ナオトから連絡があったと草間武彦から連絡があった。
「どうやら、母親の病気は完全ではないが、命に別状がない程度で回復しているらしい、本人も何事もなく無事に生きてるそうだ」
 もしかしたら、花の渡した身代わり人形が緋色の珠玉の効果を弱めたのかもしれない。
 だから、ナオトは何も起こらず、願いを完全に叶えていない緋色の珠玉は代償を奪うことが出来なかったのだろう。




                 END

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

 6675   /桜小路・花 / 女/ 15歳/女子高生かつ(自称)魔女見習い

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■         ライター通信          ■
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桜小路・花様

再度の発注をありがとうございます^^
緋色の珠玉(沙庭ナオトver)はいかがだったでしょうか?
少しでも面白かったと思ってくださったら幸いです^^
それでは、またお会いできる事を祈っております^^


             −瀬皇緋澄