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<PCシチュエーションノベル(ツイン)>


かわうそ?にお礼を

 先日に神崎美桜が、誘拐されたが、一緒に巻き込まれたかわうそ?のおかげにより何とか逃げ出せた。神崎美桜は彼に恩を感じており、従兄で親族の中では唯一心を許せる親類、都築・亮一にそのことを電話で話した。
「それは、彼に礼をしなければなりませんね。彼に会わなければなりません」
 と、言うわけで、美桜は、
「其れでしたら、私が会ってその旨を伝えますね♪」
 と、出かけるわけであった。
 どこで彼と会えるのか考えながら、東京を歩く。少女の足では結構辛いモノはあるが、あの小麦色が出る場所はある程度特定できるモノだ。ただ、アレが確実に連絡を取り合えるという、場所が見当付かないのである。
 一番可能性として高いのは、実はとある剣道場なのだが、あそこは猫が多いし、愉快な仲間達がよくたむろするのだから。あとは神聖都学園だろう。
 道場の方は留守だったので、神聖都学園に向かう美桜。
 中庭当たりに、猫にえさをやる60cmの小麦色がいた。
「こんにちは、かわうそ? さん」
|Д゚) ……
|Д゚) 美桜美桜〜♪ にゃー♪
 かわうそ? は相変わらずマイペースで美桜に挨拶した。
「先日は本当にありがとう」
|Д゚) きにするにゃ
 かわうそ?にとっては、アレは些細なことであるようだ。
「あの、兄がお礼したいと言っているのですが、確実に連絡が取れる方法を教えてくださいませんか?」
|Д゚) 連絡……
|Д゚) まあ、かわうそ? 気が向いたら携帯持ってる
 携帯は気が向いて持つ道具ではないだろう、と思うが、これの性格上、余り持ちたがらない。縛られるのが嫌なのだろう。最も、連絡方法は遠くからメッセージなど送受信できる占術系統があり、大抵其れで済んでしまう。彼にとっては、携帯という文明の利器は要らないのだろう。いやはや面倒なナマモノである。
「うーん、困りましたねぇ」
|Д゚) なに、かわうそ? 携帯もって無くても携帯に出られる
|Д゚) 無問題
「なら良いのですが」
|Д゚)ノ はい、電話番号
|Д゚) 持たない理由、他にある、かわうそ? だし
 理由としては凄い謎だ。
 とにかく、かわうそ?から電話番号を貰ったのだった。
 これは、信頼のあかしの一つでもある。
 数時間後には、亮一が美桜を経由して、電話をかけることになったのだが。
「お久しぶりです。このたびは美桜を救って頂きありがとうございます」
|Д゚) くるしゅうない。つか、気にすることちゃう
|Д゚)ノ 美桜も大変なり
|Д゚*) 美桜美桜可愛い
 相変わらず電話の対応も、かわうそ?らしく、平穏な世間話になる。
「できれば、今度お礼をしたいのですがいかがでしょうか?」
|Д゚) 大阪まで又はるばる?
|Д゚) 美桜美桜に会いたい? 会いたい?
「それは、もちろんですよ。でも、今回はあなたに会ってしっかり話をしたく」
|Д゚) OKなりよ
 と、ある程度、約束を取り付けたのであった。ただ、どこで何をするかは内緒だったので、
|Д゚) うみ、楽しみにしているなりよ、亮ちゃん
「亮ちゃん……ですか……」
 すっかり、ちゃん付けになったようだ。


 数日後、十三夜という月の綺麗な日のことだった。美桜は兄から送られた、松茸、栗、薩摩芋、銀杏、梨で、色々料理を作っていた。十三夜の月見を楽しむための供え物やらこっちが食べるものを作っているわけである。すでに、かわうそ?に招待の連絡は入れていた。なので、
|Д゚) おじゃしまんもす
|Д゚) 美桜美桜のエプロン姿
|Д゚*) かわいい
「もう、かわうそ?さん……恥ずかしいです」
 と、まったり美桜が領しているところを、じっと眺めて垂れている。そう、猫が、人が何かしているのを“手伝っている”と思っているように、だ。
 十五夜の方が良くTVやニュースに出るのだが、実のところ日本の月見は十三夜が好ましいらしく、十五夜が忌み嫌われていたらしい。過去にとある天皇が「無双」とか月を愛でたとか何とからしい。
 そんな折に、美桜の携帯が動いた。バイブレーション機能にしていたようだ。
「兄さんから? ……もしもし」
 一言二言電話で話すと、彼女は電話を切ってかわうそ?に言った。
「デザイナーさんに頼んでいた秋物の服が色々出来たから、来てくれって……? どうしましょう?」
|Д゚) 行くべきかと
「そうですか」
 と、まだ下ごしらえ段階で、後は焼いたり揚げたりするだけである。それは、その用事が終わってからでも出来るし、暖かいものが食べられる。
「お料理は、帰ってからがいいですね」
|Д゚) 火事、危険 天麩羅だと余計に危険
「ですね」
 美桜は火を消して、火事にならないように細心の注意を払って、後かたづけをし、着替えて出かけることにした。

 そして、ブティックに着いたが、美桜は自分が場違いではないかと思うのだ。
 それほど対したことのない、大きな催し物ではないがファッションショーの様なのだ。そこそこいけそうなモデル達が数人や、デザイナーとこの主催らしい人が裏方などで話をしている。
「兄さんは? どこでしょうか? 都築亮一という人なんですけど」
 と、捜すも、係の人に、
「……亮一さんは、今用事で席を外して居られます。美桜さんは、こちらに……」
 と、美桜は様々な服が並んだ部屋に連れて行かれる。
|Д゚) 謎だ
 謎そのもののそれに言われるほど状況はおかしいらしい。
 しばらくして、綺麗な水色のイブニングドレスを着た美桜が現れると、
|Д゚) おお、萌え
 かわうそ? 萌えている。
 そこは“萌える”と言うころではないのだが、まあ良いだろう。かわうそ?だし。
「恥ずかしいです」
|Д゚) なに、ノリノリに遊ぶ
|Д゚) スーパーモデルみたい、裏でガチガチチリチリじゃないらしいし、これ
「……はい♪」
 と、舞台に向かう美桜であった。
 イブニングドレスに、秋にふさわしいスーツ、そして女性の夢の一つであるウェディングドレスも着る美桜。其れをかわうそ?と一緒に撮る亮一という流れを作っていた。ノリノリなかわうそ?と、恥ずかしがっているが頑張ってポーズなどを決める美桜のツーショットが多い気がする。まあ、かまわないかも知れない。
 ファンションショーといってもよく見る、大仰なモノではなく、どちらかと親しい人との会合で、比較的和気藹々としていた。
 亮一らしく、美桜に喜んで欲しいと言うことがあったらしい。そして、かわうそ?にも喜んで欲しいと思う仕掛けだったのかも知れない。
 彼がかわうそ?に近づいて、
「先日はどうも、ありがとうございます」
 と、礼を言う。
|Д゚) だから気にすることないなり
|Д゚) 美桜美桜が元気に、また前向きになれば良いと思うなりよ
|Д゚) うひ
「ですね、どんどん彼女が明るくなっている気が致します」
|Д゚) かわうそ? 人を和ます か からかう事しかでいない
|Д゚) でも、美桜、元気なる。それうれしい。亮ちゃんも嬉しい。OK?
「ですね」
 と、デザイナーと何やら話している美桜を見つめている亮一であった。
 美桜が二人を見つけて嬉しそうにこういった。
「かわうそ?さん用の服も着くってくれるそうですね! それも新しく!」
 と。
|Д゚) かわうそ?の服 ペット服になるにゅ! かわうそ?ハーネスつけて散歩でつか?
「ハーネスは要らないですよ。私と一緒に手とつなぐか抱っこして歩くんです!」
|Д゚) うは♪ 其れ最高♪
 と、ファッションショーが終わっても、話題が尽きなかった。

 家に戻ると、灘の地酒を持ってきた亮一とかわうそ?は晩酌をして、二人は美桜の手作り料理が出来るところを待っている。なかなか有意義な時を過ごしたと思う三人であった。
「今日は茶碗蒸しに天麩羅、吸い物などです」
「うん、美桜、料理腕を上げましたね」
「ありがとう。兄さん」
|Д゚) うまー
 こうして、このささやかな“家族”の十三夜はファッションショートは逆に静かに経っていくのであった。

END
20061021