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IF 〜神様と巫女3〜
世界の人口の半分が神様。
もう半分が神様に仕える巫女。
この世界においてみなもは巫女に分類する存在だ。
お仕えする神様はとても強い力を持っているけれど、見た目や行動が子供のような方なのである。
すぐに仕事を終えてしまう力を持っているのにいつまでも遊んだり。
楽しそうにみなもをおもちゃにするのだ。
偶に心配になってくるが、そんな筈はない。
多少変わった表現方法だとしても、好かれているからこそ。
今日も頑張ろうと扉の前で気合いを入れ直し、扉を開く。
「おはようございます、神さ……」
「さあっ、今日も元気にお仕事だ!」
開口一番。
すぐ目の前には元気よく手を挙げた神様が居る。
表情はやる気に満ちていて、普段みなもが知っている神様とは別人のようだった。
確かにほんの少しは真面目になってくれたらとは思った。
けれど、これは………。
あやしい。
とにかく怪しい。
素直に受け取るのならとても喜ばしいことなのだが、何かあると言った感想の方が上回ってしまう。
「みなも?」
「い、いえっ!? おはようございます神様、今日も頑張りましょう」
そうだ、疑うなんてどうかしている。
いつも気まぐれな神様のことだ、唐突に気分が良くなってやる気を出してくれたとしても何もおかしくはない。
こんなにも元気よく言ってくれたのである。
神様を信じよう。
部屋の中も、きれいに整っていた。
ゲームや本もないし、床に食べかけのお菓子もない。
広々とした空間は神殿と呼ぶのに相応しい内装へと作り替えられている。
奥にあるのは緻密な細工の施されたパイプオルガン、高い天井に見合うように作られた見事な物だ。
少し前には指揮者が立つような白い大理石で出来た指揮者が立つような台が一つ。
その全てを照らすのは天井にはめ込まれた窓から降り注ぐ光の帯。
全てがまるで一つの絵画のように幻想的な絵のようだ。
「どう、やる気出したらこれぐらい簡単なんだから」
「はいっ、凄いです神様」
胸を張る神様にみなもも頬を上気させて喜んだ。
何度か頷いてから、はたと我に返る。
力を使うのにこれほどの祭壇は必要なのだろうか?
いつも渋々ではあったが、指先一つでお勤めを済ませてしまうのを見ているのだ。
それに気付いたみなもが見たのは、満面の笑みで笑いかけている神様。
「凄いよね?」
「はい、とても……」
「凄い祭壇に立つから、それに見合う服も必要だと思うんだ」
「そ、そうです、ね」
「でも服は作り忘れちゃってさ」
「………」
嫌な、予感。
動揺するみなもの手を握り、神様は目的を明らかにした。
それはきっと、初めから狙っての行動。
「みなも、服になって」
それはそれは嬉しそうに言われ、みなもに拒否なんか出来るわけがない。
こうしてみなもは、服になることになった。
パイプオルガンの前にある台の上へと横になる。
神様より先に良いのだろうかと思わないでもなかったが、特に気にする様子もなかった。
元々神様にとってここに立つことにそれ程の意味もないのだろう。
横になり、天井から差し込む光を見ていると祭壇に捧げられたような気持ちになってくる。
実際、似たような状況なのかも知れない。
「楽にしてて良いからね」
「は、はい」
言う通りに出来る様に手足を伸ばし、深呼吸を一度。
それでも完全に力を抜いたとは言い難い体を楽しそうに撫で、引き延ばしていく。
薄く滑らかにのばした指先から厚みが消え、端の方に行くにつれて広がった形の青い袖へと変化した。
次に足。
しっかりと閉じたままの足はそのまま一つになり、長いコートの裾のよう。
胴と頭も同じように作り替えられていく。
おうとつを押され、無地の青い服へと替わったみなもの上を小さな手がなぞる。
踊るように動く指先が描くのは美しい銀の模様。
まじないのような柄が増えていく度に、もうすぐ出来上がるだと嬉しくなった。
例え服にされる為であったとしても、美しく飾られていくのはとても嬉しい。
それが大切に人の手による物なら尚のこと。
やがて完成したのは一枚の祭服。
台から持ち上げ、少し距離を取って着やすい位置へと運ばれた。
長い裾は神様が来たのでは引きずる程になるだろう。
でもそれでもいい。
最初のほうこそ変化に戸惑っていたが、少しずつ考えが変っていく。
神様が着るのに相応しいのなら、それで構わない。
早く着てもらいたい。
神様を抱きしめることが出来るなんて、この上ない幸せだ。
多とへ変わった感情だとしても、これでも構わない。
「あせらなくてもちゃんと着てあげるからね、みなも」
肩にはおり、右手の腕を袖に通す。
服になったみなもは、とても良く神様の腕に良く馴染む。
神様の手による物なのだから当然なのだが、その他に理由があるとしたら服としての仕事をまっとうしたいからだ。
着心地が良いと感じてくれるように。
神様がより映えるように。
それが巫女としてのつとめであり、みなもの今の願望だ。
けれどもどかしいのは、今のみなもは服であり動けない状態に置かれていること。
動けたのなら、神様に不自由させずとも着せることが出来るのに。
「………神様」
唯一許されているのは、話すこと。
声帯を震わせる物ではなく、神様が話すことが出来るようにしてくれたからこそだ。
それ以外は何も出来ないのがとても悲しくて切ない。
「心配しなくていいよ、こうして着るのに手間をかけるのも楽しいから」
両袖を通し、きちんと服を着てから長い裾を引きずるように台へと上がる。
まるで神様を背中から抱きしめているかのようだ。
隙間無く重なり、両手に抱いているかのような感覚。
背中から伝わる体温はとても暖かくて優しい。
「うれしそうだね、みなも」
「はい、神様」
「じゃあいこうか」
スルスルと軽やかな音を立てる裾は段差の形も解るほどきれいに広がった。
中央に立った神様はいつの間にかタクトを握り、軽く振り上げる。
背後から見ることが出来たのなら、今度こそ完璧に完成した絵になったことだろう。
「始めるよ、みなも」
その一言で全ての支度は調ったのだと悟り、邪魔をしないようにしっかりと口を閉じた。
一泊ほどの間を置いて、神様はタクトを振るい指揮を始めた。
音を奏でるのは目の前にあるパイプオルガン。
タクトを振るう動きに会わせ、鍵盤が見えない何かに押されたように沈み込んだ。
鳴り響いた音は空気を振るわし、神様とみなもの全身をびりびりと振るわせる。
獣のような咆吼。
この音は神様の力を具現化した物だ。
とても激しい力を爆発的に放出し、ねじ伏せ、従わせる。
繊細さこそないけれど、猛獣を従わせているかのような迫力があった。僅かでも気を抜けばその瞬間に操る力にその身を引き裂かれてしまうだろう。
けれど不思議と恐ろしくはなかった。
この力を操っているのは、みなもが仕える神様だから。
長くて短い時間をかけて、神様は無事お勤めを果たし終えた。
トンと軽い音を立てて台から降り、長い裾を大きく翻しながら振り返る。
「どう? みてくれた?」
楽しげな口調に、我に返ったみなもはすぐに言葉を返す。
「は、はいっ! 何時もこんなに大変なことをなさってたんですね」
「凄い?」
「はいっ」
首が動けば何度も頷いていただろう。
手があれば手を組んで感動を表していただろう。
それが無くとも解るぐらいにみなもの声は上擦っていた。
満足げな表情で聞いていた神様が軽く首を左右に振る。
「そうでもないよ、今日はみなもと一緒だったから楽しかった」
くすくす笑い、両手を広げてその場手くるりと回ると長かった裾はちょうど良い短さへと変化した。
「………?」
嫌な予感。
つい最近も似たようなことがあったばかりだ。
別途にされて、中々戻して貰えなかったと言うことが。
「か、かみさま?」
「折角だからこのまま出かけよう」
「神様!?」
とっさに呼び止めては見る物の、もちろん聞き入れてくれるわけもなく。
色々な場所へと連れ回され、元の姿へと戻してもらえるのは、今回もまだまだ先の事になりそうだった。
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
【1252/海原・みなも/女性/13/中学生】
→もしも、全人口の半分が神様だったら?
そして、残り半分がその神様に仕える巫女だったら?
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■ ライター通信 ■
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※注 パラレル設定です。
本編とは関係ありません。
くれぐれもこのノベルでイメージを固めたり
こういう事があったなんて思わないようお願いします。
3話目の発注ありがとうございました。
今回はこのようになりましたが楽しんでいただけたら幸いです。
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