コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


真神の寄り代


 「オイ、草間いるか!?」
 ノックもなくいきなり開け放たれた扉。
 飲みかけの珈琲をこぼしかけて慌てる草間は、一体誰だと戸口を振り返る。
「何だ、善じゃないか」
 北城善。妖獣絡みの事件ではよく協力を要請される。
 だがビジネスパートナーというより、腐れ縁といった方がしっくりくる。そんな仲だ。
「そんなに慌ててどうした。何かあったのか?」
「あったもあった…てかあったどころじゃねぇよ」
「……とりあえず落ち着け。その状態で話されても多分理解できん」
 珍しく取り乱しているな、と、思った。
 しかしその理由を聞いて草間も表情を変える。
「…ミスった。山神を騙る妖物を退治すんのに山に入ったんだが…そこの真神にとり憑かれた」
「お前が!?」
「いや、違う…彩だ」
 彩とは、彼が操る使役獣のことだ。その使役獣が彼に人以上の身体能力を齎している。
「…真神が彩の体を乗っ取った。そのまま山奥に行っちまってな…悪いが手を貸してくれ」
 急な上に相手が真神となれば、草間一人では手を貸すどころの話ではない。
「ああ、わかった。だがちょっと待ってくれ。人手を集める」

===============================================================



 「別説あれど一般的に真神は狼。 彩君なら同調し易そうよね」
 事情を聞いたシュライン・エマは、善と共にある妖獣のことも少なからず知っている。
 それゆえ事由の如何にかかわらず、真神にとり憑かれる隙を見せたことで、善は面と向かってシュラインと話せず、ああだの何だのと相槌だけで返していた。
 山神を騙るといっても、本当の山神が既に不在である場合が多く、山神を騙る妖かしは人間たちが抱く過去の畏敬の念を利用するのだ。
 善がその山の地元から依頼を受けた時、昔以上に山神の要望がひどすぎるということで説得するという名目で引き受けたのはよかったのだが、調べを進めていくうちにその山の主が真神であると知り、今は山の中に立てられた祠にもその姿はないと分かり、典型的な妖かしによる騙りの手口だと思ったわけだ。
 地元の方にも、山神を騙る妖かしの仕業であることを告げ、後日それを退治しに行くと言って山に入ったのだが、妖かしを見つけて追いつけたその時、消えたはずの真神が現れ彩臥の体を乗っ取ったのだという。
「…どんな事情があるにしろ、もとの山神がその土地にいられなくなったのは人間のせいだろうが」
 草間から要請を受けてやって来た天波・慎霰(あまは・しんざん)は、今日も元気に口が悪い。
 そんな慎霰を見て、シュラインや草間は微苦笑する。
 慎霰はもともとは普通の人間だったが、天狗に攫われた子供は天狗になるという言い伝えどおりに天狗と化した少年である。
 天狗として生きている彼にとっては、人間のエゴに翻弄される山神に共感する部分が多いのだろう。
「ま、いいや。 とりあえず俺は先に山へ行くぜ。 アンタらは後からきな」
 神魔人妖間の揉め事を解決する存在だと自負している天狗の身としては、こういう問題は専門だと意気揚々としている。
 実際はその性格から何処かの勢力に付く事が多いらしい。
 慎霰は興信所の屋上へ駆け上がると、漆黒のカラスの翼で一足先に問題の山へと向かった。
「この手の話だと行動が早いみたいねぇ」
 事務所の窓から空高く舞い上がる慎霰の姿を見送るシュライン。
 その隣で思案しつつ唸っていた桐嶋・秋良(きりしま・あきら)は、彩臥にとり憑いた真神を落とす方法について悩んでいた。
「相手が相手だから、浄化なんて行為は無礼に当たりますよね…う〜ん…一応いつも通り攻撃用のトルマリン、不安解消用のアポフィライトとアラゴナイトがいるかなぁ」
「彩臥さんに取り付いた神様は…騙されてるんだよね? その騙してるモノを何とかすれば…解決の糸口になるかも…」
 そう呟いたのは菊坂・静(きっさか・しずか)だ。
 しかし今までの話の中で、どのへんで騙されているという発想に至ったのかは謎である。
 そんな静に、善が珍しくフォローを入れた。
「あ〜〜〜〜…まぁ、騙されたってんなら、山神を騙った妖かしに騙されたのかもなぁ。 普通自分の領土である山から守護を司る神が離れるなんてこたぁまずないし…何かしら妖かしの口車に乗せられたか、もしくは妖かしのせいで一時的に山を追い出されていたか…そんなとこかもな」
「で。 肝心の妖かしは退治できてないんですよね?」
 要は現時点で善が受けた依頼そのものが完了していないということだ。
 軽くしか触れなかったのに、なかなか痛いところをつかれてぐうの音も出ない。
「とにかく、慎霰クンは先に行っちゃったし…私たちもその山へ向かいましょう。 善さん、道案内お願いね」
 シュラインの言葉に浅く頷く善。
「あ〜あと、話聞く限り山の規模は開かれた里山って感じなんだが…その辺はどうなんだ? 善」
「俺の軽装みりゃ大体わかるだろが」
 そう言われて改めて善の服装を見ると、いつもの黒いスーツの上下と革靴ではなく、黒の綿パンに山歩きを意識したごつめの紐靴を履いていた。
 彼にしては珍しくカジュアルな格好である。
「……とりあえず、動きやすいパンツとスニーカーは必須みたいね。 ちょっと待ってて、支度してくるわ」
 シュラインは自分の身支度も含め、草間の分も用意を始める。
「菊坂と桐嶋、お前らその格好で大丈夫か?」
「僕は大丈夫ですよ」
 控えめに微笑む静。 そして秋良も普段からカジュアルで動きやすい格好をしているのでこれと言って問題はないと告げる。
「よし、それじゃあ各自必要な装備品を下の車につんでくれ。 シュラインと草間は準備が出来次第下に来てくれ」
 各自指示に従って動き出したと思いきや、秋良は善の顔をいかにも物珍しげな様子で見つめる。
「あん?」
「…北城さんて、免許持ってたんだ…」
 定職を持っているわけでもない、いかにも怪しいこんな商売をしているのに、身分を証明するものがあったのかと、かなり意外だったようだ。
「あるにきまってんだろ! なかったらこんな何でも屋と同義な仕事なんざしてられっかよ。 ねぇのは保険証ぐれーだ」
 どうにも緊張感に欠ける。



  一足先に聞いておいた山までやってきた慎霰。
「―――…確かに、こりゃあ山神が治めてる状態じゃねぇな…」
 上空から見下ろす里山の姿は、自然がもつ悠然としたオーラがない上に、よくよく見通せば木々の状態も、山を抜ける風の流れも、果ては山を下る水の流れさえもおかしい。
「…全体的に澱んでやがる…」
 まさか主が妖かしに挑んで倒れたか。
 嫌な予感がしつつも、慎霰は人に見つからない程度に高度を下げ、地表を見回した。
 肉体を持たぬ神が肉体を求めたのだから、何らかの要因が働いている。
 大抵はそれが人間による環境破壊なのだが、山の中へ妖かしを追って言ったというなら、些か勝手は違ってくる。
「…自分の領域なら肉体があるほうがむしろ邪魔なんじゃねーのか?」
 山が己に力を与え、害なす者を排除する為に山も力を貸すだろう。
 しかし、どうにも腑に落ちない。
「……まさか、媒介を必要とする神か…?」
 たまにあることだが、山の中で古くから生きている古木や、沼のナマズや大蛇、霊脈の影響を受けた大岩など、寄り代となるものは数多く存在する。
 その場合は、媒介としているそれが失われることでその山の神も死に、神の代わりに人が神佑地に立ち入り、これを里山として切り開いてゆくのだ。
 人は強く、時として神は何よりも脆い。
 だが、大抵は山全体が神であり、それを一時的に具象化したり、神降ろしをする為に社を建立して崇め奉るものだが、大口真神はそれとは異なるものなのだろうか。
 天狗という立場から、神魔精霊の存在を直に感じ、そちらの側に立つ身としては、逐一その情報を求め得ようとはしない。
 肌で、感覚で感じるものこそ全てだ。
 草間やシュラインのような豊富な知識こそないが、修験者の魂の変化とも言われる天狗は、この身は神々と人間、そのどちらの領域にも存在している。
「――…とりあえず、もう少し見て回るか」
 確証をもって行動しているわけではないので、まずは後からやってくるメンバーの為に、そのサポートに回れるように、少しでも多くの情報を得ておかなければならない。



 「神社の札?」
「はい、大口真神の神社のお札を借りて…あ、あとお仮屋? でしたっけ。 仮のお宮。 そこもお参りしていきましょう」
 真神を、狼を祀ることは祖霊信仰の一部であり、山に異界があるとする、日本古来の山中他界観を見出すことが出来る。
 三重の狼宮や、岡山の木野山など、祖霊信仰が深く根付いている場所は今でも各地に数多く残っている。
 目的地の山神も、そういった祖霊信仰の対象である。
 だが人に祀られるでもなく、ただその場で力を揮えるほど神は強くない。
「………あー…そーいや、ふもとの町にも神社があったな。 仮宮……宮はたしか山の中心部にあったな。 樫の古木の根元に置かれた宮が」
「…って、善さん? まさか下調べもそこそこにいきなり山に入ったの?」
 シュラインが訝しげに眉を寄せ、問いかけてくる。 勿論、図星だ。
 妖かしが山神を騙る時点で、本当の山神が既にその地にいないというのはある種常識と化している部分があった為、妖かしの素性を探るべく山神を祀る神社や仮宮を回り、文献などもある程度は調べた。
 だが、いるはずのない山神がいたことで、固定化されていた認識が崩れ、咄嗟の判断ができなかったのである。 
「まぁ過ぎたこといつまでも言ってたんじゃしょうがないわ。 善さん、彩さんと繋がっているなら今どの辺りにいるか…感知できる?」
「ここからなら、な」
 ふもとの町から山を見上げ、一番波長の強いポイントを地図上で示す。
「――妖かしを追ってるせいか、どんどん現在地が移動していってる。 だが、これは山を外から見ているからわかるだけで、山に入ったら俺には無理だ」
「何故ですか?」
 静が首をかしげる。
 確かに、契約者としてまだ彩臥と繋がっている感覚はある。
 だが、感覚はあっても山の中だとその感覚が一点に絞れなくなる。
 山の象徴である真神の波長が彩臥を通して山全体から感じられる為、何処にいるという確証ある答えが出せないのだ。
「真神と融合しているために…か。 善さんが山に入らないとなるとちょっと戦力的に痛いかもね」
「いや、俺自身の感知能力は確かに下がるが、別に彩の気配を探す必要はねぇんだ」
「あ! そっか。 大口真神が追いかけている妖かしの気配を探ればいいんですね?」
 ハッと思いついた静が善の顔を見やる。 それに善はにやりと笑って返した。
「用が済めば彩を解放してくれるはず…だが、神の存在に彩の器と魂が耐えきれるかどうかわからない。 一刻も早く見つけ出して分離させる為には先回りして妖かしを始末する方が早いと思う」



 「お、ようやく到着か」
 背の高い木のてっぺんから、ふもとの町を見下ろすと、山に向かって歩いている一行がいる。
「……女子供ばっかで大丈夫か?」
 草間や善以外は女性と未成年者なのだが、その辺の一般人とは異なる為、体力面以外での心配は無用である。
 しかし、女性と接するのが不得手な身としては、足手まといにならないかとか、体力切れで途中で離脱とかにならないかとか、その辺の心配もしている。
 そうなった場合はおそらく自分がフォローしなければならないのだろうと思っている為、やや不安げな慎霰であった。
「…とりあえず、現状報告しとくかな」
 草間達が来るまでに、上空から見て得た情報を知らせるべく、慎霰は一行が山に入ったのを確認してから、山中に舞い降りた。
 山道を登ってくる姿を遠目に確認しつつ、自分のところまで登ってくるのを待つ。
 妖かしがいることで一般人が山に近づこうとしないのはわかっているが、万が一、今の自分が目撃された際に騒がれると何かと面倒だ。
「よぉ、遅かったな」
「悪ィな。 で? そっちの方はどうよ」
 善の問いに慎霰は深刻そうな顔をしてため息をつく。
「…ひどい状態だ。 山全体の気が澱んでやがる…とても真神が守っている山とは思えねェ。 まぁ妖かしがのさばってるってなら合点がいくがな…」
 だが、善の話では真神がいることになる。
「真神に関しては、この先にある社を調べてみるしかねェかもな。 妖かしの気配は今ちぃっとばかし読みにくくなってやがる」
「読みにくく? それはどういうこと?」
 シュラインの問いに、慎霰は恐らく神佑地に立ち入ったのだろうと返す。
「そーいえば、その妖かしがどんな物だか分かってるんですか?」
 秋良の問いに、一同は善を見やる。
「―――狒狒だよ。 猿の妖かしだ。 猿神…山神の一種だったとは思うが…恐らく元の山での祀りが不十分だった為に落ちぶれて神格を失ったんだろう」
 その話を聞いた途端、慎霰の表情は一変し、ムスッとしたまま黙り込んだ。 結局のところ人間が元根本の原因であることが、慎霰の機嫌を悪くしている。
「まるで信州信濃の早太郎ね。 山神を騙ろうとも相手の行動範囲に制限はない…それゆえ、山から出られることを考えて彩さんを乗っ取ったのかしら?」
「でもそれだとおかしくないですか? 守護する山から追い出すことが出来れば、必要以上に追うことはないと思うんですが…」
 静の言うことはもっともだ。
「…何か訳があるのかもしれませんね。 お宮はこの奥なんですよね、行ってみましょう」
 神社からお札は借りてきた。
 異変が起こってから神主ですら山にあるお宮には行っていないと言う。
 山にある宮に何かある。 そう思った秋良は慎霰の案内に続いて山道を登っていった。



 山が啼いている
 川が啼いている
 空気が、空が啼いている
 あやつが我を謀った
 あやつのせいで氣が乱れている

 赦さぬ
 山を護る義務を忘れ、山を荒廃させ護るべき祀り手にまで害を成すなど

『神佑地を穢すなど万死に値する! そこへなおれ狒狒め!!』



  山が揺れる。
 真神がその咆哮をもって山を揺らしている。
 地震という、直接的な振動ではないが、山の揺れを大気が、動物たちが感じ取っている。
 山から次々に鳥や小動物が逃げ出し、神の怒りから逃げ惑う。
 山を中心に暗雲が立ち込め、雨など降っていないのに川が氾濫する。
 そんな山の異変を山中にいる一同はダイレクトに感じていた。
「…頭がガンガンする…」
「きつければ降りてもいいぞ、桐嶋」
 ひどい頭痛により視界が揺れ、足元がおぼつかない秋良の肩を支え、善が囁く。
 しかし、やると決めた事を途中で投げ出すことはできない。
 秋良は大丈夫です、と笑って見せてそのまま足を進める。
「山全体が蠢いてる感覚ね…実際に山が揺れている訳でもないんだけれど、磁石も役に立たないわ」
 持ってきた磁石が方位を示さず、ぐるぐると回り続けている。
「…ふもとの町で聞いた話以上ね。 磁石はまったく使えないわ」
「ああ。 それに町の川では次々と魚が死んでいるにも関わらず、水質調査では何の問題もない。 だが、川の水を使って育てている作物の成長は悪く、農薬など関係なく鳥も虫も近寄らない。 そんな状態が一年近く続いててな…山にある宮へ神主が向かおうとしたところ、山神を騙る妖かしが現れたって話だ」
 山に立ち入るなと。
 木霊のように神主の耳に届いた。
「だけどこの山の山神は真神だし、今まで祀りを欠かしたこともないのに、山を護る真神が山や町に害を与えるなんておかしいと思ったから、依頼してきたんですね?」
「らしいな」
 シュラインや秋良が善と話しながら進んでいると、静が前方を指し、お宮が見えたと声をあげる。
 すると、慎霰は皆から一歩離れ、再び翼を広げた。
「それじゃあ俺はまた上空から様子を見る。 山で直接動きまわるのはお前らに任せた。 サポートはするつもりだから安心しろ」
「わかった。 だがトランシーバーも使える状況じゃねーからな。 お前のその羽、一枚貰うぜ」
「痛ッ!」
 有無を言わさず慎霰の鴉の羽根を一枚抜き、懐から出した呪符にその羽根を刺した。
「おまっ! いきなり何しやがんだ!?」
「普通の通信手段が使えねぇんだ。 こうなりゃ霊的な手段しかねーだろが。 上空のお前と逐一大声でやり取りしてたら先回りも何もあったモンじゃねーだろ?」
 霊的通信手段なら他にも下準備できただろうと、ぶつくさ言いながら慎霰は空に舞った。
「聴こえるか―?」
『聴こえてるっつーの! ったく…俺が見てやってんだからサッサと動けよな』
「了解」



 「――ところで武彦さん、さっきからだんまりだけどどうしたの?」
 仮宮の前にいる一行。 ところが草間は眉間にしわを寄せて黙ったままだ。
 気分でも悪いのかと心配するシュラインに、草間は別にと一言。
 だが、善にはその理由が分かっている為、声をあげて笑いたいところを我慢して口元がぴくぴくと痙攣している。
「…北城さん…? 何がそんなにおかしいんですか」
 静の問いに、善はこっそりと懐の煙草を見せて、草間を指差した。
 それで静は相槌を打って納得する。
 つまりは煙草が吸えなくて機嫌が悪くなっているのだ。
 依頼の最中でも普段だから煙草は手放さない草間だからこそ、山という場所ゆえそれを我慢しなければならないことに、少々精神的に不安定になっている。
 煙草のみの悲しい性と言ったところか。
「―――…見えてるわよ善さん。 まったく、武彦さんも善さんも緊張感に欠けるわよ。 もっとしゃんとしてもらわないと」
「まぁ待て。 闇雲に動いてもここは山だ。 足場も悪けりゃ天候も悪い。 下手打って動いて体力消耗してたら、慎霰から情報が入ってもすぐに動けなくちゃ意味ねぇだろ」
「北城さん、ここ開けてみました?」
 ここも神佑地の一部であることには変わりない。 むしろ神佑地の入り口ともいえる宮だ。
 調べるといってもおいそれと開けるわけにはいかない。
 普通ならば…の話だが。
「開けてみたよ。 だが今そこには何の力も宿っていない…そこにあるべき核がねーんだ。 神佑地…異界と現世を繋ぐルートがな」
 それを聞いて秋良はおそるおそる宮の扉を開けた。
 善が言った通り、その小さな宮の外にも中にも何の力もない。 何の力も感じない。
「おかしいですね。 寄り代すらなくなってます。 祀り用の祭具しかない…祖霊信仰って偶像はないんでしたっけ?」
「場合によりけりだ。 ちなみにここの宮には山犬の頭蓋が祀られていたらしい。 その辺は神主に確認済みだ」
「―――…なんだか色々な物が混ざってない? 山犬の頭蓋って…まるでタタラ神のカナヤコ神みたい」
 シュラインの言うことはもっともだ。
 それに関しては善も不思議で仕方ないらしい。
 確かに、祀っているのは真神…狼(山犬)であることには間違いない。
 ただ、祀り方に複数の地方のやり方が混ざっている。
 調べてもここの祭神のルーツがはっきりしていないのだ。
「まぁ、もともと八百万の神を言われる日本の神々だ。 それ以外にも廃止令に伴い追われた外宮の神々…それだけじゃなく御霊として祀りあげられ御霊神、オオチとされた人や動物など、色んな形で神格化されるものは増えている。 必ずしも文献や専門書の知識にあるだけの神しかいないってわけじゃないさ」
 手持ち無沙汰な草間の手が不自然にふらふらと動く。
「この地は鉄鋼で栄えているところじゃないし、それなら山犬の頭骨が祀られているってことは…御霊神ってことになるのかしらね。 分類としては」
 秋良とともに宮を覗き込むシュラインは、真神とされるここの山神が、ある種狗頭のような存在であると仮定した。
 狗頭とは狗神の逆。 呪いの産物ではなく神格化された謂わば神の眷属。 犬頭糸でも有名な、犬を祀り上げ神格化したものに類似していると考えたのだ。
「…じゃあ、ここの真神はその寄り代である山犬の頭骨を破壊されたか、持ち出されたかした為に、この地にいられなくなったってことかも?」
「なかなかいい線いってるぜ、菊坂。 ―――っと、慎霰から通信だ」
 にんまりと笑う善は、懐から先ほどの羽根を刺した呪符を取り出し、慎霰に応答した。
「――見つけたか?」
『視認したわけじゃねぇよ。 ただ…ものすげェ力の衝突を感じる場所がある。 お前ら今仮宮前にいるんだよな? その宮が置かれてる古木の真裏からだいたい一キロぐらい進んだ先だ』
「――了解! シュライン、桐嶋、菊坂! 俺と草間が先に行って足止めを試みる。 お前らは慎霰の誘導に従って移動してくれ」
 そういって呪符をシュラインに預けると、二人はわき目もふらず走り出した。
「あっ!ちょっ…北城さ――ん! 私も行きます〜〜〜!」
 シュラインが止める間もなく、秋良も二人についていってしまった。
「仕方ないわね、私たちは慎霰くんの指示に従って、先回りできる場所へ行きましょう」
「そうですね、どうにか戦闘にならないように策を講じましょう」
 シュラインと静は慎霰のサポートを頼りに、道なき道に足を踏み入れた。



  一直線に走っていく善と草間。
 しかし、後方からついてくる気配に気づき、振り返ってみれば、秋良が息を切らして二人について行こうと必死に走ってくるのが見えた。
「桐嶋!? シュラインたちと一緒に行けって…」
「私が神社のお札持ってるのにこっち来ないでど――すんですかッ! 二人で足止めったって…今、善さん彩クン使役できないじゃないですか! ううん、もし半端に使役できる状態なら直のこと彩クンの身が危ないわ。 狒狒の妖かしを追って、今交戦してるかもしれないんでしょう? 下手に善さんが声かけたりして動きが鈍ったら…」
 彩臥の体が重傷を負う恐れがある。 それを失念していたことの自己嫌悪から深いため息をつく善。
「……悪ィ、桐嶋」
「焦るなと人に言う割には、お前自身が内心焦りまくってんだからどうしようもないな」
 悪戯な笑みを浮かべる草間と凄んでくる秋良を前に、立つ瀬ない善。 苦笑しかでてこない。
「とりあえず先を急ぎましょう。 こうしてる間にも情報位置からずれちゃってるかもしれない」
「…そうだな、先を急ごう」
 だが、秋良が合流したからといってそれまでのペースを落とすわけにはいかない。
 そこで善は神社の札を持っている秋良に体力の温存を図ってもらう為、一言悪いと告げてから横抱きに秋良を抱えた。
「え、えええっ!? きゃっ、やだ、ちょっ! 北城さあああああああん!!」
「喚くな! ペース落としたくないんだよ、お前抱えるぐらいどーってことねェからとりあえず大人しくしてろ!」
「うぅ……ものすごく足手まとい感がぁ〜〜…」
 秋良を抱えて走り出すも、先ほどとあまりペースは変わらない。
 ものすごく軽いというわけではないのに、何だかんだと体力・持久力に優れた男である。
 情けない顔で横抱きにされている秋良を見やる草間は、彼女の善に対する気持ちを少なからず知っている為か、気の毒に…と呟いた。
 そのまま走ること十分あまり。 それまで山全体を覆っていたはずの違和感が、すぐ目の前に集約される。
「! あれか!?」
 進行先に見える、空間の歪み。
「真神と妖かしが対峙することで霊的磁場が発生してるのか!?」
「―――善さんこれ以上進んではダメです! 巻き込まれる!!」
 秋良の言葉に、咄嗟に足を止める善。
 彼女には見えているのだろうか。
「見えるのか?」
「視えます。 多分…神社のお札のせいかもしれませんけど」
 降ろされて体勢を整えてからウェストポーチに入れていた札を善に渡した。
 すると今まで空間の歪みでしかなかったすぐ目の前に、ここに来た時追い詰めた狒狒の妖かしと、真神がとり憑いた彩臥の姿があった。
「こっ…こんな近くに!?」
「どれ…うぉっ!? なんだこりゃ!」
 善が握る札に、草間も触れてみたところ、突如視界に二つの拮抗する力の正体が映りこんだ。
 ここは真神が治める領地。
 それゆえ、真神の力を受けた札を持っていたからこそ、見通せたのかもしれない。
 思わず彩臥の名前を呼ぼうとして秋良と草間に止められた。
 このままでは真神も彩臥も、この山も危ない。
「お前ら近寄りすぎた! 余波喰らってもしらねーぞ!?」
「慎霰!」
 急降下してきた慎霰が草間たちの前に降り立つ。
 それと同時に、逆の、狒狒の背後を取る形でシュラインと静も顔を出した。
「互いが出す瘴気と霊気のせいで動けなくなってんだ。 このままじゃ山が崩壊するぞ!」
「このお札…どうにか活用できないのかしら…」
 札を見つめたまま考え込む秋良。
「とにかくまずはこの力の衝突を抑えなきゃならねェ…双方の意識をそらす事ができれば――…」
「そうだ、慎霰! お前の能力で突風をあいつらないぶつけられるか!?」
 出来ないことは無いと言うが、慎霰はあまり乗り気ではない。
 天狗の立場としては両者において中立の身。
 どちらかに加担するような真似はできない。
 妖かしとしても神としても。
「このままでは山津波が起こる。 そうなればこの自然全てが…ふもとの町までめちゃめちゃになる。 頼む…双方の気が一瞬でもそらせればいいんだ。 後は桐嶋が持ってる神社の札を使えば…」
「これを…ですか? でもどうやって…」
 秋良から札を受け取った善は、慎霰にシュラインたちが先ほどの呪符を持っているか確認を取った。
「ああ、まだ持ってるぞ」
「それならお前が直接関わらなくても済むように出来るはずだ。 突風を吹かせた後、この札をシュラインたちのところに届くように風をコントロールできるか?」
 それを聞いた慎霰は、にやりと笑い、なるほどねと得心いった様子。
 何をしようとしているのか分からない草間と秋良は首を傾げるばかりだ。
「オイ善、何をさせる気だ?」
「さっきこの札、双方の力が混ざり合って発生した磁場を崩して俺らにも姿が見えるようにしただろう? 本来ならばこれは真神を鎮める為に奉納されているものだが、力が混ざり合ってる状態の今なら両方を鎮めることが出来るかもしれないと思ってな…あと――」
 そう言って善は皆に札を握らせ、狒狒の方を指差す。
「アイツの手元見てみろ」
「―――あ!」
 狒狒の手…前足には小さな骨が一つ。
 あれは仮宮の寄り代である山犬の頭骨だ。
「力が消えたその瞬間に、俺があれを奪取する」
 そんな無茶な、と言いかけたが、秋良の言葉は草間に止められた。
「シュラインたちに伝えてくれ。 狒狒は俺が抑えるから、その後のフォロー頼むってな」
 慎霰がその旨をシュラインたちに伝えると、明らかにあちら側では動揺の動きが見られた。
 しかし、迷っている暇はない。
「―――風は山神の支配下ではないにしろ…こんだけ近いと出来るのはホンの一瞬かもしれねーぞ」
「一瞬ありゃぁ十分だ」
 磁場の影響からこちらの存在に気づいていない妖かしと真神の斜め上空に舞い上がった慎霰は、お得意の風を巻き起こし磁場に向かってそれを叩きつける。
 風がぶち当たり、双方が慎霰の存在にようやく気づいた。
『【何奴!?】』
「静くん!」
「はい!」
 静が手にした札を空間の歪みに向かって叩きつけるように押し出した。
 途端、それまでぐにゃぐにゃと歪んで見えていた空間が正常に戻り、妖かしも真神もそれに困惑した。
 歪んだ磁場が修正され、力場が消えたその瞬間、狒狒の懐に飛び込み頭骨を奪取し、離脱する。
【!?寄り代が!】
 慌てて己の手元と、既に距離を取った善の手元を視線が往復する。
 即座にいま自分が置かれている状況を判断した狒狒は撤退を試みたが、真神の体当たりで大きく転倒し、そのまま上から抑えつけられた。
『逃がさぬ! 己小童、よくも我を謀り神佑地を穢したな!! その罪万死に――』
「待って!」
 狒狒の首に喰らいつき、今まさに食い破ろうとしたその瞬間、待ったをかけたのは静だった。
「アイツ何を!?」
 一同一気に血の気が引いていく。
 シンと静まり返ったその場で、静の声だけが小さいが確かに響いている。
「――確かに、この狒狒は貴方を騙して山やふもとの町に悪い影響を与えたかもしれないけど、元はこの狒狒も山神だったんでしょう? だったら仲間じゃないですか。 今ちゃんとした山神がいる山なんてこの国にはすごく少ないと思います…しかも、そうさせてるのが人間だってこともわかってます。 護るべき山を失ったら大口真神の貴方も同じ事をするかもしれないんですよ?」
 そう考えたら、狒狒の妖かしが騙して名を騙ったことも、再び山神という存在に戻りたかったからと思ってあげられないものかと、静は問うのだ。
「アイツ…そんな都合のいい話のめる訳――」
 一人ごちていたその最中、慎霰は静から異様な気配を感じ取った。
「…なんだこれは…」
『―――そなた菊理の…?』
【……まさかあの媛神の…】
 狒狒の抵抗する力がなくなった。
 真神の抑えつける力が緩くなった。
「っそだろ……!?」
 己の目が見ている光景が信じられない。
 あれほどぶつかり合っていた力が完全に消えているのだ。
 山を覆っていた怒りの波動も、まとわりつく様な空気も、まるでそんなことはなかったかのような清浄な空間。
「――あのお札のせいかしら…」
 静が手にしたままの、ふもとの神社の札。
 山神の鎮魂の為の札。
 かつてのどこかの山を治めていた山神とこの地を治める山神が、あの少年の話に耳を傾けている。
「すごい…なんで…?」
 自分が持ってきた、不安解消効果のあるパワーストーンまで、自分の意思とは関係なくその場で作用しているではないか。
「これがアイツの力なのか…?」
「菊坂、こんなことも出来たんだな…」
 善も草間も驚きを隠せない。
 何度か共に仕事をしている草間でさえ、こんな芸当ができることなど今まで知らなかった。
「―――殺さないで下さい…たとえこの地には、彼が治める場所などないとしても…他の地ならあるかもしれない。 どうか赦してあげてください。 そして彩臥さんを解放してあげてください」
 嘆願する静の言葉が終わると、あたりを沈黙が支配した。
 そして―――どのぐらいの時間が経っただろう。
 やけに長く感じられたその沈黙を破ったのは真神だ。
『―――菊理の者の言葉ならば聞かぬわけにはゆくまい…いいだろう。 そなたに免じてこのはぐれ山神は、この地よりの追放だけに留めておこうぞ』
【………菊理の言葉ならば、違える訳にはゆかぬ。 ワシは直ちに山を出よう】
 それぞれがそういった途端、狒狒は消え、真神が彩臥の体から抜け、善が手にしていた頭骨に向かって光の塊が飛んできた。
「うわっ!?」
 強烈な光に思わず目を閉じた善。
 目を開けると、手にしていたはずの頭骨が消えている。
「……戻ったのか……?」
 あの仮宮に。
 何がどうなっているのか分からず、混乱していた善だが、真神が戻ったということは彩臥も元に戻ったということに気づき、慌てて静の近くに走った。
「彩!」
 伏せった状態からヨロリと立ち上がり、善の顔を見やるその姿はまさしくいつもの彩臥の姿だ。
『――どうやら、納得されてお戻りになられたようだ。 主、大事はないか?』
「こっちは何ともねぇよ…それよりここにいる連中全部、お前を助ける為に来てくれたんだぞ?」
「よかったね、彩クン…無事でよかった」
 秋良が彩の首に抱きつき、ほお擦りしてくる。
『桐嶋殿…』
「ホント、どうやることかと思ったけど、貴方も真神も、ここの山神を騙っていたという狒狒も…何とかなってよかったわ」
 シュラインが彩臥の頭を撫でる。
「ったく、次はこんなことがねぇように、もっと気ィ引き締めとけよな!」
 慎霰の言葉に、善も彩臥も面目ないといった様子だ。
「―――とりあえず、一件落着ってことでふもとまで戻らないか? いつまでも神佑地の中にいる訳にはいかんだろ」
 それもそうだと、一同は下山を開始した。
 途中、人が本来立ち入れる境界線である、仮宮の傍を通りかかった時、それまでなかった清々しい気が宮の周囲を覆っている。
「…ちゃんと神様が戻ったんですね」
 さすがに中にキチンと頭骨が納まっているかどうかの確認ができないが、この清々しさだけでも十分確認できたといえよう。
「本当によかったぁ…僕なんかの説得を聞いてくれて。 あれでまた暴れられたらどうしようかと思った」
 運が良かったと言う静に、シュラインは聊か納得がいかない様子。
 あんなことがただの偶然で片づけられるはずがない。
 何かしらの能力がなければ、もしくは巫女と言えるほどに神々と交信する立場の者でなければ出来るはずがない。
「――菊理媛神…? 黄泉平坂においてイザナギ・イザナミの仲を取り持ったとされる媛神が……何故?」
 先を歩く静の背中を見つめるシュライン。
 先ほどの彼の言葉には嘘偽りはない。
 わざとらしさなど微塵も感じられなかった。
 もしや自分の能力などについて未だ知らぬ部分があるのだろうか。
「―――…まさか、ね……」





  真神が仮宮に戻ったことで、ふもとの神社のご神体の様子も変わったと、嬉々として話す神主が一行を登山口で出迎えた。
 山神を騙った妖かしについては、下山途中で「退治した」ということで一同賛成したらしい。
 誰にとってもいい解決、というわけではなかったが、無駄に血が流れなかっただけでもよしとするべきなのだろう。
 謝礼を受け取り、興信所へ戻った面々は、幾つか疑問が残った為に、とり憑かれていた彩臥に覚えている限り話してくれるよう頼んだ。
『―――暫し体を借りると、そう言われました。 状況から判断し、私は神に体を貸しました』
「!? じゃあ、お前の意思で貸したってのか!?」
 善が驚くのも無理はない。
 てっきり乗っ取られたのだと思っていたのだから、その驚きは当然である。
 更にはその身を案じて慌てて草間に助力を求めたのだから。
『神の意図を伝えようとしたんですが…入られてすぐに私の意識は奥底に追いやられてしまい、伝えることが出来なかったのです』
「まぁ、それなら合点もいくわね。 善さんには……気の毒だけど」
「要はアンタの早とちりって訳かぁ?」
 誰もが触れなかった一線に、クリーンヒットを与えてきた慎霰。
 善は情けないやら何やらで、誰とも目をあわそうとせず、ひたすら煙草をふかしている。
「…まぁ、そう言わないであげて? 善さんだって彩クンがすっごく心配だったわけだし、それに、私たちが行かなきゃそのまま共倒れになってたかもしれないわけだし」
 秋良のフォローが身にしみる今日この頃。 そして更に自分が情けないと善は身にしみて思う。
「何はともあれ、無事に事が解決してよかったですよ」
 にこにこしながら出されたお茶を飲む静。
「最後に一つ…山神を騙る別の何かがいるって祀り手は分かっていたのに、どうして真神は山やふもとの町へ害を成したのかしら?」
『神の怒りはそのまま山全体…ひいてはそれに関わる、力が及ぶ範囲全てのものに影響します。 暗雲が広がり、水が変質し作物を枯らしたのもその為です。 町や祀り手である人々に害を成そうと思ってしていたのではありません。 神の怒りはそのまま納める領地の異変となるのです、エマ殿』
 それを聞いて、なるほどねと相槌を打つシュライン。
 要は町の異変も山の異変も、真神の、あの狒狒に対する怒りから起こったとばっちりであったのだ。
 それを思うと町の人々や動植物、そして依頼人である神主が気の毒でいたたまれない。
「…本当のこと、言わなくてよかったですね…」
「まったくだ」
 秋良と草間が苦笑し、そんな二人に同意するようにシュラインも苦笑した。



―了―
□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【0086 / シュライン・エマ / 女性 / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員】
【1928 / 天波・慎霰 / 男性 / 15歳 / 天狗・高校生】
【2981 / 桐嶋・秋良 / 女性 / 21歳 / 占い師)】
【5566 / 菊坂・静 / 男性 / 15歳 / 高校生、「気狂い屋」】

□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■         ライター通信          ■
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□

 こんにちは、鴉です。
コラボノベル【真神の寄り代】に参加頂き、まことに有難う御座います。
緋烏絵師のところで善さんと関わりを持っていらっしゃる方もいらして下さいましたので、
不自然な点がなかったかどうか聊か不安もありますが、お気に召しましたなら幸いです。

ともあれ、このノベルに関して何かご意見等ありましたら遠慮なくお報せ下さい。
この度は当方に発注して頂きました事、重ねてお礼申し上げます。