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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


東京百鬼夜行 +始+



◆□◆


「・・・すまない、もう1回言ってもらえるか?」
 草間 武彦はそう言うと、目の前で不機嫌そうな顔をして座る少年に視線を移した。
「何度も言わせんなよ。だぁらぁ、百鬼夜行だっつの!ひゃっきやこー!!あっちとこっちを繋ぐ結界が破られたらしーんだよ」
 この、一見すると少女にしか見えない少年の名前は御来屋 左京(みくりや・さきょう)
 その筋のものならば一度は聞いたことのある、京都を本拠地とする結界師団の御来屋の血筋だ。
「あの世とこの世を・・・か?」
「ちっげぇよ。封印した妖怪どもが暮らす“あっち”のことだよ」
「・・・残念ながら俺は結界の家系じゃないから詳しいことはわからないんだよ」
「だったら聞くなよ」
 左京はそう言うと、傍らに置いた刀に手を乗せた。
 刀の名前は『左鬼』(さき)、封印した鬼が宿っている日本刀だ。
 結界を生業とする家に生まれながらも能力に恵まれなかった左京は、その力を左鬼に頼っていた。
「封印が破られたって言っても、そんなヤワな封印をしていたわけじゃないんだろ?」
「結界は東京と京都にしてあったんだ。4つずつの計8つ。恐らく、その全てが破られているんだと思う」
「敵はかなりの能力があるんだな」
「・・・言っとくけど、俺は結界を破ったヤツが誰なのかを突き止めるためにここに来たわけじゃねぇ」
「百鬼夜行・・・のため、か?」
「今夜、あっち側を出た最初の一団が東京に襲来する」
「最初の一団・・・?」
「あいつらも馬鹿じゃない。こっち側の世界の能力を調べに、まずは第1陣を送り込もうって気なんだよ。弱っちそうなら一気に潰しちまおうって案だな」
 あっけらかんとそう言うと、左京は真っ直ぐな視線を武彦に向けた。
「妖怪と戦える術のあるヤツを探して欲しい」
「妖怪と・・・か?」
「ただし、術か刀で倒せるヤツをだ」
「なにかあるのか?」
「良いか?さっきも言ったと思うが、妖怪だって馬鹿じゃない。最新鋭の力でこちらが抵抗すれば、あっちだって何か悪知恵を考え付くんだ。例えば銃で攻撃したとしてみろ。あっちだってそのうち銃を持って攻撃してくるぞ」
 忌々しそうにそう言うと、左京は傍らに置いた刀を抜いた。
 銀色の刃が蛍光灯の光を受けて鋭く光り、網膜に焼きつく。
「今回、妖怪の軍団を引き連れているのは・・・茨木童子だ」
「茨木童子?」
「腕の無い鬼だ」
 左京はそう言うと、武彦に電話番号が書かれた紙を手渡して立ち上がった。
「1人で来たのか?」
「いや」
「これからどこへ行くんだ?」
「・・・4つの封印のうち、1つ目の封印が施してあった場所に行く。誰が封印を破ったのかを突き止めるのが目的で来たわけじゃないが、気になるだろう?」
「まぁな」


◇■◇


 妙な気が東京中に充満している・・・
 いや、これはきっと、東京だけの問題ではないのだろう。
 都築 亮一(つづき・りょういち)は隣で気分が悪そうに俯いている神崎 美桜(かんざき・みお)に気を遣いながらも草間興信所へと足を向けていた。
 こう言う類の厄介事は、草間興信所に行けばある程度の情報が得られるからだ。
「大丈夫ですか?」
「平気・・・です。少し気分が悪いだけで・・・。なんでしょう・・・こんな、ピリピリした雰囲気・・・今まで、感じたことないです」
「俺もです。何か起ころうとしているのでしょうか」
 亮一が眉を顰めながら上空を見上げ・・・相変わらずの澄んだ青色に首を振る。
 くすんだ色のレンガがはめ込まれた道を歩き、興信所の前の通りに差し掛かると、ふっと目の前に細身の女性が姿を現した。何がそんなに楽しいのか、上機嫌な様子で鼻歌を歌いながら興信所へと続く階段に足をかけている。
「・・・草間さんの、お客さんでしょうか・・・」
 美桜が呟いた一言に、女性が長い髪を揺らしながら振り返る。
「あら?あなた達も草間さんに呼ばれたのかしらん?」
「あ、いいえ・・・俺達は・・・」
 亮一が首を振り、ふと・・・女性が言った言葉に首を傾げる。
「呼ばれたとは・・・つまり、なにかあったんですか?」
「詳しくは分からないんだけどねん、あら、良く見れば素敵な殿方ですこと」
 妙にハイテンションな彼女は、桜塚 詩文(さくらづか・しふみ)と名乗ると階段を軽快なステップで上って行った。
「・・・やっぱり、何かあるんですね」
 美桜が不安そうに呟き・・・亮一は、その小さな頭にポンと手を乗せた。


 結界が破られていることを確認した後で、左京は草間興信所へと戻ってきていた。
「んもぅ、草間さんたらいきなり呼び出すなんて困った殿方ね」
「いや・・・その、なんだ?その妙な勘違いは・・・」
「何だかコレだけの人数が終結するとここも狭いわね」
「あ、草間さん・・・窓を開けていると風が・・・」
「や、でもな・・・香水が・・・」
「・・・なんだココは・・・」
 騒がしかった室内が左京の呟いた一言ですーっと静かになっていく。
「あ、調査のお手伝いに来てくださった方ですか?」
 樋口 真帆(ひぐち・まほ)が可愛らしい笑顔を浮かべながらパタパタと左京の傍に走ってくる。
「や・・・俺は・・・」
「それにしても、ミスター御来屋はまだお戻りにならないのでしょうか?」
 ジェームズ ブラックマンが心底困ったと言うような口調でそう呟き・・・しかし表情はいたって涼し気だ。
「草間の話では、結界が破られた確認に行ったのだろう?そうそう早くは戻って来れまい」
 ササキビ クミノがクールにそう返し「けれど、早く戻って来て詳細な説明をしていただければとは思う」と言葉を続ける。
「あなた、初めて見る顔ね。とりあえず、左京君が帰ってくるまではこちらも動けないから・・・」
 奥へどうぞ?そう続くはずのシュライン エマの言葉は遮られた。
「だぁぁぁっ!!!俺が左京だ!御来屋 左京っ!!」
「・・・え?」
 一番近くに居た真帆がポカンとした顔をして左京を見詰める。
 黒髪、碧眼、白い肌・・・身長は155程度だろう。顔のつくりは綺麗だが、苛立たしげな表情が全てをぶち壊している。パっと見てもジーっと見ても、女の子にしか見えない左京の声は、少々高かった。
「貴方が御来屋左京さんね。初めまして、私は菊理一族からの命令であなたを手伝うことになった、菊理路 蒼依(くくりじ・あおい)と申します。宜しくね、左京さん」
 妙な沈黙から一番早く立ち直ったのは蒼依だった。
 右手を差し出し、左京が一瞬左手を動かした後に右手を差し出す。
「菊理路・・・ね。俺の事、知ってるのか?」
「京都に本家を置く御来屋の一族と、東北に本家を置く菊理路の一族。分野は違うけど、名前くらいは知ってるわ」
「奇遇だな。俺も名前は知ってるぜ?あんたが居れば心強い」
 左京の言葉に、それほど力があるわけではないと、やんわり謙遜する蒼依。
「えーっと・・・とりあえず、左京君・・・その、詳しい話を聞かせてもらいたいんだけれど」
「あぁ。・・・つか、まず最初に1つ言っておくけど、俺は男だ。こんな女顔で身長が低いのは、俺が持ってる刀に宿っている女鬼の影響だ。ちなみに、年齢よりも若く見えんのも女鬼、左鬼の影響だ」
 これ以上変な目で見られてはたまるかと、左京が矢継ぎ早にそう言葉を紡ぐ。
「えーっと・・・つまり、左京君は左京君だってことだよねっ!?」
 チェリーナ ライスフェルドが両手をパンと合わせながらそう言うと、笑顔を振りまく。
「あぁ、それに今は左京のことより、今夜にでも来るって言う百鬼夜行の話をしないと」
 倉塚 将之(くらつか・まさゆき)のクールな言葉に、左京がゆっくりと頷く。
「とりあえず、ここじゃ狭すぎだ。場所を変えよう」
「どこに行くんだ?」
 武彦の言葉に、左京がクイっと親指で後方を指し示す。
「俺ん家」


◆□◆


「まぁ、こんなに沢山・・・左京ちゃんのお友達かしら??」
「違うっつの。武彦んとこで紹介してもらった人達」
「あらあらぁ〜。それじゃぁ、皆さん強いのねぇ〜さぁ、どうぞ、おあがりになって??」
 御来屋 琴音(みくりや・ことね)はそう言うと、ほにゃんとした笑顔を向けながら手招きをした。
「・・・・・・随分若いな・・・」
 ややあってから、鬼童 ナツ(きどう・−)がそう呟き、何も間違ったことは言っていないよな?と確認するかのように周りを見渡す。
「可愛らしいお母様ですね」
 安登 萌良(あと・もえら)がふわりとした笑顔を浮かべながらそう言う。
「・・・なんとなく、左京君を見てから予想はしていたんだけれど・・・」
 シュラインがそう言って、琴音の姿に絶句する。
 左京は外見年齢こそは15歳ほどだが、実年齢は17歳だ。つまり、琴音が実母の場合30は超えている計算になる。
 しかし、どうしたことか・・・目の前に居る優し気な表情の女性・・・いや、少女は、どう見ても17歳程度だ・・・!!
「御来屋って、そんなに外見年齢が若く見えたかしら?」
 蒼依が記憶を辿ってみるが、残念ながらそうした情報は思い出せない。
「こんなこと聞いちゃ失礼だろうけど・・・左京君のお母さんって、いくつなの??」
 チェリーナが幾分声を潜めて左京に尋ねる。
「あー・・・今年42かな。だって俺、上にまだ2人いるし。姉貴と兄貴が」
「そう言えば、左京君は何人兄弟なのかしらん?」
 詩文の質問に、左京が靴を脱ぎながら答える。
「あーっと、姉貴が1人、兄貴が1人、双子の兄貴が1人、あと妹が1人」
「全部で5人兄弟ですか?」
「あぁ」
 真帆が、ジっと琴音を見詰め・・・凄いと、口の中で呟く。
「まぁ、とっとと上がってくれ。玄関で詰まられても・・・ってか、あんた・・・」
 左京が目を瞑って杖を手にしているパティ ガントレットに気付き、手を差し出す。
「申し訳ありません」
「や、別にいーんだけど・・・。あんた・・・」
 何かを感じ取ったらしい左京が口を開き、軽く首を振るとそのまま何も言わずに廊下を進んで行く。
「あ!もうちょっと待っててね?今お茶の用意が出来るから」
 だだっ広い和室に、琴音がチョンチョンと座布団を置いていき・・・
「あ、お手伝いします」
 シュラインがサっと進み出て、座布団を敷くのを引き受ける。
「私も何か・・・」
 美桜が琴音の傍にトテトテと小走りに近づき、真帆もその後を追う。
「和室だからお茶が良いかな?とも思ったんだけれど、紅茶の良い葉があったの」
 琴音が無邪気にそう言って、棚の上から金色の缶を取り出すとパカリと蓋を開ける。
「紅茶でしたら、淹れるの得意です」
 真帆がそう言って、美桜がそのお手伝いに回る。
「何か甘いものでも・・・と思ったんだけれど・・・」
 何かあったかしら?と首を傾げる琴音に、苦い記憶を呼び覚まされたクミノが近づくと硬い表情で言葉を紡ぐ。
「か・・・甘味は全般的に勘弁願いたい」
 クミノは筋金入りの甘味苦手少女だ。その苦手度は、羊羹で気絶寸前になるほどと言うくらいなのだからかなりのものだろう。
「あらぁ、それじゃぁ・・・お煎餅はどうかしら?んっと、他の方にはケーキでも・・・あ、男の子もいるのよね」
 “男の子”といわれた男性諸君が微妙な顔をする。
 しかし、いくら見た目は若くても実年齢は42だ。実年齢では琴音をはるかに超える人がいるにせよ、ここにいる男性諸君は全員外見年齢20代や10代ばかりだ。琴音にしてみれば“男の子”と言う括りになってしまうのだろう。
「ミス・御来屋。どうぞお構いなく」
 ジェームズがそう言って、忙しく動き回っている琴音に声をかける。
「すみません、お盆みたいなものありますか?」
 亮一の言葉に、琴音が高い位置の戸棚を指差す。
「ここなんだけれど・・・今踏み台を・・・」
「あぁ、大丈夫ですよ」
 琴音の肩をポンと叩くと、戸棚の中からお盆を取り出す。
「えぇっと・・・」
「都築亮一と申します」
「都築さん?背が高くて良いわね。うちも、左京ちゃん以外の男の子は背が高いんだけれど・・・」
 琴音が苦笑しながらそう言い、美桜と真帆がカップに紅茶を注いでいく。
 亮一がカップをお盆の上に乗せ、和室のテーブルに乗せていく。
「簡単でゴメンナサイねぇ、とりあえず、甘いもの・・・と、甘くないものと、辛いものを用意したから、お好きに食べてくださいねぇ?」
 バタバタとした支度が終わり、琴音が最後に大きなお皿を3つ中央に置いた。
 ・・・甘いものであるケーキと、甘くないものである煎餅は分かる。
 ただ、辛いものと言って出されたスナック菓子はチョイス的にどうなのかと言う気にもなるが・・・
「さてと、とりあえず・・・自己紹介からしてもらって構わねぇか?」
 左京の言葉に、シュラインから右回りに自己紹介をして行く。最後、将之まで言い終わると左京が口を開いた。
「とりあえず、今現在戦力になりそうなのは・・・誰だ?」
「今現在とは、どう言う意味だ?」
 クミノが紅茶に息を吹きかけながら呟く。
「つまり、準備なしに今すぐに妖怪と戦えと言われて動けるやつは誰だ?って聞いてるんだ」
「俺は平気だぜ?」
 将之が名乗りを上げ、ややあってからパティが「わたくしも、大丈夫です」と控え目に声を上げる。
「俺も大丈夫ですけれど・・・」
「けど?」
 亮一の言葉に、左京が視線を上げる。
「なるべくでしたら、後方で援護をしている方が・・・」
 チラリと視線を美桜に向ける。それだけでおおよその察しがついたのか、分かったと言うように左京が右手をひらひらと振った。
「私もいつでもOKよん♪」
 詩文が右手の親指と人差し指をくっつけてバチリとウィンクをする。
「あの・・・私、戦闘能力はないんですけれど・・・治癒能力で、怪我をした人達の治療が出来ます」
 美桜が小さな声でそう言い、真っ直ぐに左京を見詰める。
「それは大分心強いな。治癒が出来るの、琴音さんだけかと思ってたからな」
 左京の言葉に、美桜の表情が緩む。
 自分の力が役に立てる・・・その事が美桜には酷く嬉しかった。
「んじゃぁ後は、能力に応じて刀か術かに分かれてもらおう。そこら辺は後で考えるとして・・・」
「左京君に聞きたいことがあるのだけれど」
 考え込もうとした左京の耳にシュラインの声が聞こえ、顔を上げる。
「なんだ?」
「どうして来襲時期や、今回の隊を率いている鬼の詳細が判明しているのかしら?」
「色々理由はあるんだが・・・とりあえず、結界が破られても道自体は御来屋の力が働いている」
「どう言う事なんだ?」
 壁際で大人しく成り行きを見守っていた武彦が口を挟む。
「今回、こっちとあっちを繋ぐ“壁”が破られただけであって、道に施されているセンサーみてぇなのには引っかかるんだよ。その上をどんな妖怪が通ったのか、御来屋の現当主である俺の親父の持つ古い手鏡に全てが映る。それに、御来屋の元にいる霊獣や妖獣の類が見に行くことも出来るしな」
「霊獣に妖獣・・・ですか?」
「俺も琴音さんも、俺の双子の兄も飼ってねぇけど・・・」
「妖獣は、左京ちゃんと双子のお兄さん以外の3人が飼っているんです」
 琴音が補足をいれ、首を傾げていた真帆が頷く。
「あともう1つ・・・結界が破られた原因だけれど。大規模の結界張り直しのためとか、元々時限式封印・・・は、流石にないとは思うけれど、一応・・・」
「どっちも違うな。時限式であれば、切れる前に新しいものを張ってるだろう。あれは、無理矢理破られたんだ」
 苦々しい表情の左京に、蒼依が目を伏せる。
「本当・・・御来屋の結界が破られるなんて・・・こっちも同族を探して東奔西走・・・この状況、あんまり良い事じゃないわ。早く解決しましょ」
「なんだか本当に物々しいですよね、百鬼夜行だなんて」
 ポツリと真帆が呟き、紅茶の入ったカップを手にしながらその茶色い液体に視線を落とす。
「東京見物に来るって訳でもなさそうですし・・・」
「みやげ物は人間の魂っつーなら、見物していく気はあるんじゃねぇか?」
「むぅー、そんなの見物じゃないです」
 左京の言葉に、真帆が頬を膨らませる。
「でも、思うに・・・結界ってそんな簡単に破れるものなんですか?しかも向こう側から・・・」
「いや。違うな。結界はこちら側から破られてるんだ」
 左京がそう言うと空になったカップを手に立ち上がる。
「とりあえず、道場を整えてから結界が施されてあった場所に連れて行ってやるよ。道場の片づけが終わるまで、そこでゆっくりしていれば良い」
 大またで和室から出て行く左京の後姿を見ながら、真帆が何か余計な事を言ってしまったのかと首を傾げる。
「・・・誰が、結界を破ったのでしょうか・・・」
 美桜がポツリと呟き、その言葉に蒼依がふっと・・・もしもの展開を考える。
「ふふ・・・貴方、菊理路さんって仰ったかしら?」
「はい・・・」
 琴音に突然呼ばれ、はっと顔を上げる。
「奇遇ねぇ。左京ちゃんも同じようなことを考えていたのよ」
「・・・え・・・?」
「あら?違ったかしら?・・・あぁ、別にねぇ、考えを読んだとかそう言うんじゃないの。ただ、表情の変化で大体どんなことを考えているのか分かるって、それだけ」
「あ・・・」
 蒼依の頬がほんの少しだけ朱に染まる。
「ほとんどの御来屋の人間が貴方と同じようなことを思って、疑ってるのよ」
「どう言う事ですか?ミス・菊理路?」
 ジェームズの言葉に、蒼依が意を決したように口を開く。
「私・・・破ったのは左京さんの同族・・・御来屋の中の誰かじゃないかって少し疑ってるの」
 チラリと心配そうに視線を上げれば、琴音が軽く頷いているのが視界の端に映る。
「確かに・・・御来屋の中で力のある方ならば、結界を破るのも他の人よりは容易かも知れませんが・・・」
「ブラックマンさんの仰りたいことは分かりますわ。力のあるものとは、即ち・・・誰なのか」
「・・・誰、なんです?」
 やや緊張した面持ちでチェリーナが琴音に質問する。
「御来屋の大規模で強力な結界は、代々直系の者が施すんです。1番御来屋の血を濃くひいている・・・即ち、今疑いの目を向けるとしたならば、直系の6人ね」
 琴音はそう言うと、右手の指を1本1本折っていく。
「当主である御来屋 緋咲(みくりや・ひざき)長男の疾風(はやて)長女の桔梗(ききょう)左京、左京の双子の兄の右京(うきょう)末っ子の桜子(さくらこ)」
「あなたは数に入っておられないのですか?」
 パティの言葉に、琴音がゆっくりと頷く。
「いくら当主の妻と言えど、御来屋の血筋ではありませんから・・・」
「・・・待ってください。俺が思うに、御来屋さ・・・っと、左京君は除外できるんじゃないですか?」
「亮一兄さん・・・どうしてですか?」
「琴音さん、左京君には結界師としての力がない・・・そうですよね?」
「えぇ」
「・・・でもよー、ほら、なんつったか・・・あいつの持ってる刀、あんなかに居る鬼は結界が張れるんだろ?」
 ナツが出されたケーキをぱくつきながらそう言って、隣に座っていた詩文が「左鬼さんよん♪」と丁寧に名前を教えてあげる。
「確かに、左鬼ちゃんには結界の力があります。でも・・・いくら左京ちゃんの体に憑依している状態で御来屋の結界に触れようとしても、ダメなんです。結界展開時、左京ちゃんの意識はありません。意識喪失状況下ではいくら体自体は御来屋の血筋のものとは言え、展開された結界は御来屋のソレとは認められないのです」
「ミス・御来屋、つまり・・・体はミスター・御来屋・・・ん、少しややこしいですね。・・・ミスター・左京のものでも、展開時の意識が彼のもので無いのではダメだと、そう言うことですか?」
「えぇ。それに、左鬼ちゃんの展開する結界は御来屋のソレとはまた違った形になります」
「・・・そうすると、残りはあと5人ですか?」
 真帆の言葉に、琴音は軽く首を振ると4本の指を上げた。
「桜子ちゃんにもその力はありません。桜子ちゃんの結界能力は左京ちゃんの次に弱いものですから」
 一体誰が結界を破ったのだろうか?
 ・・・いや、その4人のほかに、第3者が居ると言う可能性もまだ捨ててはいけない。
「あの、1つお願いがあるのですが・・・」
「なんでしょう?」
 琴音の言葉に、ジェームズが考え込もうとしていた思考をいったん停止させる。
「左京ちゃんには、今のお話・・・言わないで頂きたいんです。左京ちゃんも十分、そのことには気付いていますから」
「勿論です・・・」
 蒼依がやや語気を強めながらそう言って、ふっと・・・悲しそうに視線を落とした。


◇■◇


 御来屋の4つの結界のうち、1番最初に破られたのは朱雀だった。
 北の玄武、南の朱雀、東の青龍、西の白虎・・・その4つの結界をそれぞれの方角に施すことによって、御来屋の結界は完成する。
 小さな地蔵がバラバラにされている・・・その足元には、炎を纏った鳥を描いた1枚の符が半分に破られている。
「これが封印ですか?随分普通の場所に置いてあるんですね」
 真帆が興味深げに手を伸ばし・・・
「触んねー方が良いと思うぜ?」
 左京の言葉に慌てて手を引っ込める。
「可哀想・・・」
 感受性の強い美桜が、バラバラにされた地蔵に、二つに裂かれた朱雀の絵に感情移入する。
「とりあえず、この場所での目撃情報を・・・」
「それなら、私が・・・お手伝いできるかも知れません」
 美桜がそう言って目を閉じ、この場に漂っている残留思念や周囲の動物、木々達に声をかける・・・
「無理だと思うけど」
 ポツリと呟く左京の言葉に首を傾げながらも、シュラインがその場に跪き、破られた封印には手を触れぬように注意をして念入りに調べ上げる。
 真上から押しつぶされたようにバラバラにされている地蔵に視線を向け、なにか他に手がかりになるようなものは落ちていないかと入念に地面を調べていく。足跡1つでも、重大な手がかりになる可能性がある。
「ダメです・・・何も・・・」
 暫く沈黙していた美桜がそう言って軽く首を振る。
 シュラインもズボンについた砂を払いながら首を傾げる。
「ダメね・・・」
「大体、本当にこの場に来て破ったのかは怪しいもんだぜ?」
「どう言う事です?ミスター・左京?」
「うちの封印を破るくらいだ。相手だって相当な力の持ち主だろ?そんなヤツが、のこのこ現れるか?この場に?そんなの、見つけてくれって言ってるようなもんじゃねぇか」
「それなら、他にどんな方法があると言うのです?」
 亮一の言葉に、左京が目を伏せる。
「何度も言うが、俺は結界の能力がねぇんだ。ンな詳しくねーんだよ。大体、この場には調査に来てるわけじゃねぇ。どうやりゃぁこの場に来ねぇで結界破れンのかとか、誰がやったのかとか、ンなことは誰か能力があるやつが来て調べるだろ、そのうち」
「でも・・・他の結界まで破られてしまったら・・・」
「全部破られてんだ・・・って、コレはまだ武彦にしか言ってなかったか」
 左京がふと思い出したようにそう言い・・・蒼依がサっと顔色を変える。
「全部・・・ですって・・・?」
「あぁ。東京と京都、どっちも破られてるはずだ。8つ全部な」
「8つも破られるまで気がつかなかったわけではないんでしょう!?御来屋の優秀な結界師が・・・」
「蒼依、優秀な結界師が来たら、その辺の事情を聞けば良い。俺にはわかんねーんだよ」
「でも・・・」
 チェリーナが何か言おうとするのを止めると、左京が悲しそうにポツリと呟いた。
「能力のねぇやつには、秘儀は教えねぇ。そういうモンだろ?」


* * * * *


 広い道場の中、目の前で派手に転んだ人物に盛大な溜息をつくと頭を抱える。
「お前・・・才能なさすぎ」
「・・・そうですよねぇ。刀ってかっこ良いなぁって思ったんですけど・・・やっぱり無理ですね」
 真帆が苦笑し、左京が琴音の方を指で指し示す。
「お前、あっちな」
「はい、分かりました」
 素直に頷いた真帆が術組みへと加わり・・・
「んじゃ、残ったのは3人・・・か?」
 左京がそう呟き、ジェームズとチェリーナ、ナツを順番に見詰める。
「フェンシングなら経験あるけど・・・左京君宜しくね!」
「フェンシング経験あんなら結構いーんじゃねぇ?」
「一応扱えるのですが、自己流なので本職の方に見てもらうのが良いかも知れません」
「んー、まぁ、俺が教えるのでしっくりくりゃぁコッチ使って構わねぇし、どうにも合わねぇってんなら自己流でもいーんじゃねぇ?自分に合ったやり方でやんのが一番だと思うしな」
 左鬼を左手に持った左京がそう言い・・・
「妖怪を斬れる刀を作ってやるけど・・・利き手どっちだ?」
「私は右だよ!」
「私、本当は左利きです」
 チェリーナが右手を振り、ジェームズが左手首を回しながらそう呟く。
「・・・ナツは?」
「なー、左京の力って刀しか作れないのか?」
「はぁ?」
「俺、普段素手で戦ってんだよ」
「・・・素手かよ・・・」
「篭手とか作れないのか?まぁ、刀でもいーんだけど」
「作れるけど、篭手での戦闘方法までは知らねぇぜ?」
 左京が左鬼を胸の前に抱きながら何かを念じ・・・3人の目の前にそれぞれの武器が現れる。
「うわー、キレー!なんか、光ってる!」
 チェリーナが興奮したようにそう言って刀を掴み・・・すっと、刀が手に馴染む。
 馴染むと同時に刃先で輝いていた光が失われ、銀色のスラリとした刃に自分の顔が映る。
「んじゃ、2人にはある程度の使い方を教えるな。俺の利き手は左だから左で説明するけど・・・チェリーナ、良いか?」
「うん、良いよ」
「まず、刀を胸の前で真っ直ぐに立てて頭の中で『縛』と念じる。すると、刀の色が青に変わる」
 銀色だった刃先が青色を帯び始める。
「この状態で妖怪を斬ると、弱い敵なら一定時間動けなくなる。殺すと面倒な妖怪や話の通じそうな妖怪にはコレを使った方が良いな。んで、次に刀を胸の前で水平に寝かせて頭の中で『滅』と念じる。すると、色が赤に変わる」
 青色だった刃が赤く燃えるように輝き始める。
「これは、妖怪にかなりのダメージを与える。強い敵と対戦する時やどうしたって話しの通じない危険な相手にはこっちを使う方が良いだろうな。最後、解除の仕方は簡単。頭の中で『解』と念じながら刀を宙で一振りすれば良い」
 大きく振られた刀が輝きを失い、銀色の刃先が蛍光灯の光を鋭く反射している。
「ナツの篭手も同じ使い方。必ず最後、能力解除しろよ?コレは持ち主の体力を養分にしてるんだ。解除しない限り、どんどん体力がなくなっていくぞ」
「なるほどね・・・でも、縛ってなんか良いね。無益な殺生は好まないって感じで」
 チェリーナの言葉に、苦笑しながら左京が首を振る。
「ンな生易しいために縛があるわけじゃねぇよ。妖怪と言えど、魂を狩るものには少なからず不幸が訪れる。・・・少しでもその不幸を軽減するために、縛はある。あと、言葉が通じる妖怪なら、生かしておいた方が後々情報を引き出せたりするからな」
「えーっと・・・『縛』・・・『滅』」
 慎重な手つきでチェリーナが刀の色を変えていく。
「体力を養分にしている・・・か」
 同じように篭手を動かしていたナツがそう呟き・・・
「縛も滅も、滅多に使わない方が良い。俺もあんま使わねぇし・・・」
 左京がそう言いながら刀を複雑に動かし・・・刃先が紫色に変わる。
「ミスター・左京。他にも能力付加が出来るのですか?」
「ん?あぁ。出来るっちゃぁ出来るけど・・・最初の内はその2つをマスターすることに神経を使った方が良い。他のを色々言っても混乱するだけだと思うしな」
 それもそうかも知れないと頷いたジェームズの隣で、色々と試していたチェリーナが顔を上げると左京に笑顔を向けた。
「なんか、慣れてきた気がするよ。・・・でもまぁ、達人って訳には行かないから、調子に乗って最前列にでしゃばらないように心がけるよ。有難う、左京君!」
「・・・まだ礼を言うには早いぜ?本番はこれからなんだからな」


* * * * *


「まずねぇ、御来屋の結界には手順があるの」
 琴音がそう言いながら、シュラインと真帆を交互に見やる。
 なまじ知識はあるシュラインだったが、先入観があってはダメだと、頭を空っぽにしてから琴音の特訓に参加することになった。
 細長い紙を人差し指と中指の間に挟んでピンと立てる。
「これが御来屋の結界術のための符よ」
「御来屋の方は全員その符を使っているんですか?」
「いいえ。能力の高い人はコレなしでも展開できるの。直系は勿論の事、御来屋結界師団の中でも古来から御来屋と繋がりのある家系の中の優れた人は頭の中で念じながら結界を展開することが出来るわ。まったく御来屋とのつながりのない私は、符に頼らなくてはダメだけれど・・・」
 琴音はそう言うと、すっと目を閉じた。
 何かを念じるように眉根を寄せ・・・符が白い光を発し始める。
「定(てい)」
 ゆっくりと目を開けた琴音が真っ直ぐに符を投げ、地面にピタリと張り付く。
「開(かい)」
 符から淡い色をした円柱型の光が天井へと伸びる。
「結(けつ)」
 ピンと空気が張り詰め、高さ10cmほどの円柱の結界が出来上がる。
「解(かい)」
 人差し指と中指を合わせ、結界を指差せばパチリと軽い音がして結界が跡形もなく消え去る。
「これが結界の一連の流れになるわ」
 一仕事終えたように息を吐き出しながらそう言って、パンと手を叩く。
「それじゃぁ、個々の説明をするわ。はい、符を持って〜」
 琴音から手渡された符を人差し指と中指の間に挟んで、ピンと立てると顔の前に手を持って来て目を閉じる。
「それぞれ符の展開によって違うんだけれど、結界ならば“防”(ぼう)と念じるの。そうすると、符が白く光るから」
 シュラインの符が白く輝き、一拍遅れて真帆の持っていた符も輝きを放つ。
「符を結界の張りたいところに真っ直ぐに投げるの。投げるの下手とか、そう言う問題じゃないから安心してね?どこに結界を張りたいって、その気持ちを強く思えば符が勝手にそちらに飛んで行くわ」
 それじゃぁ、ここに飛ばしてくれる?と言いながら琴音がパイプ椅子を2つ、それぞれの前に置く。
「投げるタイミングはコツさえ掴めば簡単なんだけど・・・最初の内は、ピーンって甲高い音が聞こえたら投げてみて?慣れてくれば、大体の感覚で投げられるから」
「定」
「定」
 シュラインと真帆が投げた符が真っ直ぐにパイプ椅子の上に落ちる。
「次は符を展開して結界を開くんだけど・・・頭の中で結界の大体の大きさを決めて念じるの」
「開」
「開」
 パイプ椅子よりもやや大きめの円柱型の光が天井へと伸びていく・・・
「結で最終的な大きさを決めて・・・」
「結」
「結」
 ピンと空気が張り詰める。パイプ椅子よりもやや高い結界が完成し、琴音がパチパチと拍手を送る。
「上出来ね。強度は術者の集中力次第よ。まだ慣れないうちは、強い敵の攻撃を受けると結界が破られる可能性があるわねぇ。それと、慣れるにしたがって重複して結界を展開できるようになるけれど、相当な集中力がないとダメね。・・・あぁ、もう解除して良いわ」
 人差し指と中指をあわせて真っ直ぐに結界を指差し、シュラインと真帆が声を合わせる。
「「解」」
「結界の強度を高めるために、壁状にして展開することも可能だけれど、御来屋の結界は円柱型に展開されるのが主だから、練習してコツを掴むしかないわね。攻撃系の術もあるのだけれど・・・今日のところは結界の展開だけで精一杯かな。あまり無理に知識を入れても混乱するだけだし・・・」
 琴音の言葉にシュラインが頷き、真帆が顔を上げる。
「あの、私魔法が出来るんですけれど・・・」
「魔法?・・・んっと・・・自分の能力があるのなら、それを使った方が良いわ。あくまで私が教える結界は、御来屋流に乗っ取っているわけだから、魔術との併用をするのは危険ね。東洋と西洋の相性の問題もあるし・・・」
 その言葉に頷くと、持ってきたバックの中から魔導書を取り出し睨めっこを開始する。
「刀の方の補助になるような術など使えたらと思うんですけれど・・・動きを抑えたり・・・」
「縛(ばく)の結界ならどうかしら?展開の仕方は普通の結界と同じ。ただ、最初の念を“縛”にするだけよ。1つ気をつけて欲しいのは、縛は大規模な展開が出来ないの。つまり、明確にどこを縛りたいのか決めなくてはならないの。足なら足、腕なら腕。これはかなりの集中力を要するわ。相手の動きの先を読んで結界を展開しなくてはならないからね」
「頑張ります」
 シュラインがそう言って、符を右手に集中する・・・


◆□◆


「それにしてもアンタさ、なんも出来ないのになんでいるわけ?」
 ともすれば非難とも聞こえそうな口調で、左京が萌良に視線を向ける。
「確かにわたくし、戦うような技量も体力も持ち合わせていませんし、魔法や霊力といった類のものも全く心得がありませんの。それでもこちらへ参りましたのは・・・面白そうだからですわ」
 あっけらかんと言われた言葉に、左京の表情が引きつる。
「・・・あら、すみません。からかったつもりではないのですけれど・・・」
「別にからかわれたとは思ってねぇよ」
「ただわたくし、空間のゆがみや穴を見て、その構造を解析することが出来ますの。なぜ出来るのかは・・・そう言うものだと思っていただければ幸いですけれど」
「・・・や、俺らの能力だって何で出来るのかっつわれても言葉が返せねぇしな」
「その力で、結界がいかなる力でいかに破られたのかを知ることが出来ればと、些かなりともお役に立てるのではないかと思いまして・・・」
「つったって、結界調査の時お前いたか!?」
「あ、後で参りましたわ。わたくし、長く歩けないもので・・・リムジンを呼んでおりましたの」
「お前、帰れぇぇぇっ!!!」
 左京が立ち上がってそう言い、隣に居たチェリーナがなんとか宥める。
「まぁまぁ左京君、落ち着いて!・・・えっと、それで・・・安登さん、結界の方はどうでしたか?」
「えぇ・・・結界は恐らく上から押しつぶされたのだと思いますけれど・・・よく、分からないのです」
「ちっ・・・随分力任せなやり方だな」
「さぁ、皆さん・・・お夕飯の時間ですよ〜」
 琴音ののんびりとした声が響き、美桜と真帆がお盆を持ってやってくる。
 テーブルの上にトントンと食事を並べていき・・・
「シュラインさんも蒼依さんもお料理がお上手で・・・」
「いえ、琴音さんよりは・・・」
 一緒に食事を作っていたシュラインと蒼依が視線を合わせて苦笑する。
 お手伝いをしていた美桜と真帆がテキパキと食卓を整えて行き、ジェームズと亮一もそれに手を貸す。
 チェリーナと詩文がお茶を入れ、クミノが座布団を敷いていく。
「随分豪華だな」
 テーブルいっぱいに並べられたおかずを見ながら将之がそう言って、箸を持つと手を合わせる。
「いただきます」
「おかわりはまだあるから、沢山食べてねぇ〜」
「美味いっ!!」
 既に食べ始めていたナツがそう言って、無邪気な笑顔を琴音に向ける。
「煮物など、味がしみていて美味しいですね」
 パティがポツリと呟き、ほんの少しだけ・・・口元に笑みを浮かべる。
「今のうちに食っとけ。食い終わって暫くしたら百鬼夜行襲来だぞ?」
「そうだね、いっぱい食べて元気つけないと!」
「・・・腹八分目に抑えておく方が良いだろう」
 チェリーナが張り切ってそう言うのを聞きつけたクミノがやんわりと釘を刺す。
「・・・それにしても、茨木童子ですか・・・。伝奇の通りであれば酒呑童子の弟子ですから、影に何か居るかも知れませんね。気を抜かず行きましょう」
 ジェームズがレンコンをつまみながらそう言って、ゆっくりと口に持っていく。
「茨木童子・・・日本の伝説に出てくる鬼なんでしょう?出来れば昔の日本の話なんて聞いてみたいけど・・・いや、そんな事言ってる場合じゃないよね」
 チェリーナが慌てて口を噤み、ソレを見ていた琴音が優しい笑顔を向ける。
「酒呑童子も茨木童子も、日本ではいくつか出生についての解釈があるの。1つの説では、どちらも美男子だった・・・って言うのもあるわね」
「茨木童子で有名なのは一条戻橋、または羅生門かしら?」
 蒼依がの言葉に左京が肯定するかのように軽く頷く。
「さしずめ、左京さんは渡辺綱かしら?」
「・・・これだけ仲間がいんだ。みすみす腕を取り返させやしねぇよ。つか、持ってねぇしな」
「なぁなぁ、さっきから話聞いてると、茨木童子っつーのは腕がないもんなのか?」
 口の中いっぱいにご飯を詰め込みながらナツがそう言い・・・
「口の中に物を入れて喋るな・・・」
 クミノにスパっと注意をされる・・・が、当の本人はさして気にする素振りはない。
「そう言えばそうね、左京君。茨木童子の腕はどうなっているのかしら?」
「あると思うぜ?」
「んじゃ、なんで腕がないとか言う話になったんだ?」
「・・・茨木童子の話の中で有名な部分がそこなのよ。渡辺綱に腕を切られて、後で茨木童子が取り返しに来るの」
 ナツの言葉に蒼依が説明をいれる。
「ふーん。なんかよく分かんねぇけど、茨木童子って美味いか?」
「・・・食べる気か?腹を壊しかねないぞ?」
「つか、喰うなよ」
「でもさー、百鬼夜行っつ−ことは妖が沢山喰えるんだよな?」
「だから、喰うなっつーーーのっ!!!」
 ナツの天然な言葉に左京が渾身のツッコミをいれる・・・が、その威力は皆無に等しい。
「左京さん、百鬼夜行が現れるおおよその場所は分かりますか?」
「百鬼夜行が近くまで来たら、所定の場所におびき寄せます。ここの結界は一応・・・私の意思内でどうにかなりますし・・・」
「今現在、琴音さんが東京付近の結界を施しているんですよね?」
 シュラインの言葉に琴音が頷き、部屋の奥に飾られている1枚の掛け軸を真っ直ぐに指差す。
「私の力で全てを行っているわけではありません。私の力でするにはあまりにも広範囲で複雑、かつ強力な結界ですので・・・大部分は緋咲さんの力に頼っているんです」
「つまり、あの掛け軸が符の役割をしてるっつーわけ」
「結界は、術者の能力・集中力の他に、符の威力も関係してきます。私は符に込められた強力な結界をただ展開しているに過ぎないんです」
「・・・うーん、難しいけれど、とりあえず・・・あの掛け軸が強力な符だってことは分かったよ」
 チェリーナがお味噌汁を一口啜ってほっと溜息をつく。
「今回は様子見の1陣目だが・・・気は抜かないで欲しい。あいつらだって馬鹿じゃない。此処に到着するまでに何かしらの知識をつけていると思う」
「どう言う事ですの?」
 萌良の言葉に、左京が箸を置く。
「・・・妖怪をなめるなって言いたいだけだ。本来の力・・・古来の力、それしか持ち得ない、進歩しないモノだとは思うな。いくら封印されていたとは言え、その分だけこちらが進んでいたわけじゃない。あっちだって、それなりの進化はしているはずだ」
「実際対した者なら猿知恵とは浅知恵の事ではないと知っている。根本が人類とは違うものの行動が人を評して、その思考を類推して言う言葉だ」
 クミノが低くそう呟き、お茶を一口飲む。
「昔話、寓話童話の妖怪や悪魔達の行動を想起すればいい。法には従わないが、人よりも約束や契約に縛られる。悪知恵に長けても構知とは程遠い。あくまである意味ではあるが、純粋無垢とすら言える。つまり、戦術は抜く手を見せず・・・」
 すっと目を細め、何かを考え込むように口を閉ざすと再び言葉を紡ぐ。
「結界内の戦いとは言え、数に術に劣るこちら側が何故防衛に成功するかは個々の強力さと誤解させておく方がいい。本当は個々の協力さ、だ。一闘毎においては多対少を厳守。特殊部隊や新撰組のマニュアルを参照する方が良いだろう」
「・・・あー、まぁ、言ってることに間違いはねぇんだけど、お前・・・いくつだよ」
 疑いの眼差しを向けられて、クミノが「13だ」と端的に言葉を返す。
「まぁ、浅知恵云々は置いといて、最後の部分はまったくもってその通りだな。特殊部隊や新撰組なんてカッコ良いもんじゃねぇけど、個人行動は控えた方が良いだろう。数が数だし・・・。まぁ、自分の力を過信しないことだな」
「力を過信しないとは言っても、あまり強力な力を使われては結界が破損します。そうすれば、一般人に被害が出る恐れがあります。それは、絶対に避けなくてはなりません」
「誰にも・・・傷ついて欲しく、ないです」
 美桜がポツリと呟き、小さなお茶碗をテーブルに置く。
「私、運動神経良いんだ。・・・だから、その運動神経を生かして妖怪と戦うよ!パパやママや友達を守るために!・・・勿論、この場にいるみんなも・・・守るために」
 チェリーナの言葉に、左京が小さく微笑むと小声で呟いた。
「その気持ちがありゃ、妖怪になんて負けねぇよ・・・」
「・・・そろそろ時間になりますね」
 壁にかけてあった時計を見上げてそう言うと、琴音が席を立つ。
 空いたお皿を流し台へと持って行き、すかさずシュラインと蒼依がお手伝いに立ち上がる。
「左京さん、妖怪をおびき寄せる具体的な場所を教えていただけませんか?」
「あぁ・・・」
 亮一の言葉に、左京が地図を引っ張り出して来て丁寧に説明を入れる。


「・・・何だか、胸騒ぎがするわ・・・」
 食器を洗っていた琴音の低い呟きに、ジェームズが首を傾げる。
「どうしましたか?ミス・・・」
「もしかして、結界を覚えたのかしら。でも、そうなったら・・・厄介だわ」
「ミス・御来屋?」
「・・・あっ・・・」
 手に持っていた白いお皿がツルリと滑り、ジェームズが慌ててキャッチする。手に真っ白な泡がつき、スーツの袖部分には点々と水が飛び散って濃い水玉を描く。
「ごめんなさいね、ブラックマンさん。怪我はないかしら?」
「えぇ、平気ですよ。それより・・・今の言葉は・・・」
「取り越し苦労なら良いのだけれど・・・・・・」


◇■◇


 風が生ぬるい・・・
 そう感じるのは、ただ季節の変わり目だからと言うだけなのだろうか?
「何だかイヤな風ですね」
 萌良が琴音の背後から声をかける。
「安登さん、動かないでくださいね。今から結界を張ります」
「お願いします」
 琴音が符を取り出し結界を展開する。透明な円柱型の光の中にいる萌良が興味本位から結界に触れ・・・その感触を確かめる。
「武彦さん、これ・・・お守り代わりに」
「ん?なんだ?」
「柊の葉は邪気を払うと言われているの。昼間調査に行った時に、たまたま柊を植えているお家があって、お願いしてひと枝頂いて来たの。私も持つから、武彦さんも・・・」
「有難う」
 武彦がシュラインの手からお守りを受け取り、大事そうに胸に抱く。
「草間さん、本当に結界を張らなくて宜しいんですね?」
「あぁ。大丈夫です。・・・左京、頼んだぞ」
「俺に頼むな!自分でどうにかしろ馬鹿っ!」
「大丈夫よん♪私が守ってあげるからねん」
 詩文の言葉に、武彦が苦笑しながら頭を掻く。
「おいそこぉっ!!今からなにやるのか分かってんのか!?」
「あら〜??もしかして、左京君、ヤキモチ??」
「ンなわけねぇだろうがよぉっ!!」
「んー、確かに左京君も可愛いから、私が守ってあげても宜しくってよん♪」
「聞け!人の話しをっ!」
「なんだか、これから戦闘だって言うのに和やかで良いねぇ〜」
 チェリーナの言葉に真帆が頷き、一部始終を見ていた美桜も口元に笑みを浮かべる。
「・・・もっと緊張感をもてないものなのか・・・」
「まぁ、ガチガチに緊張しているよりは、このくらいの方が良いんじゃないかしら?」
 クミノの溜息交じりの言葉に蒼依がそう返し・・・パティが、すぅっと目を開く。
「来ます・・・」
「あぁ。お出ましだな。つかやっぱお前、目見えんだろ?」
「えぇ。ただ・・・剣士が抜き身の剣を晒さないのと、同じことです」
 パティの瞳が真っ直ぐに、空へと向けられる。
 黒い一団がゆっくりと此方に下りて来ている・・・禍々しい妖気が広がって行き、美桜が隣に立つ亮一の袖を掴むと怯えたように半歩下がる。
「皆、気をつけて」
 あまりの圧倒的な妖気を前に、シュラインが声をかける。
「とりあえず・・・まずは前線にいる力のなさそうなヤツから・・・」
「・・・遠慮は必要ないのですね?」
 左京の言葉を遮るようにしてパティがそう呟くと、一度俯いた後でパっと顔を上げる。
「実に血が滾る。このような闘技の場を催してくださったことを、心より感謝します・・・・・・!」
 暗器、拳法を開放したパティが高らかにそう言い放つ。
「勝利することが依頼ですから。どんな手でも使いますよ?わたくしの最終目標は、全ての怪異を滅ぼすこと。人の理解し得ない理不尽を壊滅させること。この手でそれらを為す快感を得られるなら、それに越したことはないですから」
「・・・おい!?ちょ・・・」
 左京の手をスルリと抜けると、パティが地面を蹴った。
「全力で、戦います。ふふふ、あはははははははっ!!!!」
 妖怪に体当たり気味で走り出したパティの背を見つめながら、左京が舌打ちをする。
「とりあえず、あいつを援護しながら・・・」
「なぁ、茨木童子ってあいつか?」
 ナツが妖怪軍の中で一際目を惹く鬼を指差して呟く。
「ん?あぁ、だろうな。だがまずはあいつよりも他の・・・」
 左京が言い終わる前にナツが飛び出し、茨木童子への単機特攻を仕掛け始める。
「あんの馬鹿っ!!!単独で倒せるような相手じゃねぇって言ったよな!?」
「今はそんなことを言ってる場合じゃないわ!左京さん!」
「とりあえず、突っ込んでったあいつらが危険だ!全員そっちに向かってやがる!」
「私が何とか出来ますっ!」
 真帆がそう言って、箒を握り締め魔導書を左手に持ちながら詠唱を開始する。
 小さな光り輝く鳥・・・小型の朱雀を思い起こさせるような1羽の鳥が魔導書から放たれると、一直線に妖怪の方へ飛び、その上空を旋回しながら七色の光の粒を撒き散らす。
「真帆、あれは?」
「夢幻術です。・・・幻なので、攻撃されれば消えてしまいます」
「どれくらい持つ?」
「・・・分かりません。でも、それほど持たないとは思います」
「まだ数が多いな・・・苦戦してる・・・」
「んふふー、ここは私の出番かしらん?」
 詩文が長い髪をバサリと背に払いながらそう言って、すぅっと目を細める。
 足元に落ちていた小さな石を拾い、そこにカタカナの“レ”を逆さまにしたような文字を刻み付ける。
 “laguz”と読む水のルーンを刻まれた石が、仄かな緑色の光を発しながら小さな妖精を作り出すと妖怪の上空へと飛んで行く。
「ルーンか」
「簡単な幻術だから、あまり長い間は形を保っていられないと思うわ。とりあえずの応急処置ってところかしらん?とりあえず、幾つかトラップを仕掛けておこうと思うのだけれど・・・」
「・・・妖怪が4つのグループに分かれたわ」
「ナツとパティの周囲にいるやつは・・・蒼依、クミノ、どうにかできるか?」
「縛るくらいなら出来ると思うけれど」
「それで十分だ。あいつらだって周囲が見えてねぇわけじゃねぇ。補助をしてくれりゃぁ良い」
「了解した。弱符でどうにか足止めくらいならできるだろう」
「詩文はトラップの仕掛けを頼んだ。あと、真帆と詩文の幻術に引き寄せられてるヤツを・・・ジェームズ、将之、詩文の方を頼んだ。チェリーナと俺は真帆の方に行く」
「分かった」
「こちらはお任せ下さい」
「左京君、頑張ろうね!」
「こっちの後方援護は、真帆とシュライン・・・頼めるか?」
「琴音さんに教えていただいた、縛と防の結界しか出来ないけれど、大丈夫かしら?」
「あぁ、十分だ。シュラインは俺とチェリーナの方でそれを使ってくれ。それほど負担はかけないつもりだ。囲まれてるのに気付いたら、結界を展開してくれりゃぁ良い」
「分かったわ」
「真帆はジェームズと将之の方を頼む」
「が・・・頑張りますっ!」
「宜しくお願いしますね、ミス・樋口」
「背中は任せたからな」
 ジェームズと将之の信頼の言葉に、真帆がキュっと表情を引き締める。
「最後、美桜は怪我人が来た場合の手当てを頼む。亮一は・・・」
「この場を守ります」
「あぁ。こっちには来させねぇようにするが、もしもの場合はお前が頼りだ」
「分かってます」
「それじゃぁ、行くぞ・・・!!!」


◆□◆


 左手に持った刀を真っ直ぐに振り下ろし、目の前で不気味に動いていた骸骨を粉砕する。
 ジェームズの動きを視界の端で捉えながら、将之が両手に持った風鳴と神楽を器用に交差させながら周囲の妖怪を斬りつけていく。
「夜を渡る冷たき風よ、一陣の蒼刃となりて花を散らさん」
 真帆が箒を水平に構えて詠唱し、真一文字に振り抜く。
 無数の鎌鼬を孕んだ突風がジェームズと将之の背後から直進して・・・2人をすり抜けると魍魎に襲い掛かる。
 かなり派手な発動の仕方だが、1つ1つの威力は弱い。
「・・・驚きました」
 ジェームズがさして驚いてなさそうな表情でそう言うと、トンと高く跳躍する。
「俺らもあの風にやられるのかと思ったけどな・・・」
 将之が風鳴を魍魎の体に突き刺しながらそう言って、飛んできた骨傘を神楽で弾き飛ばす。
「強い敵とは言いがたいが、なにしろ数が多いな」
「えぇ。けれど、無限と言うわけではないのですから、頑張りましょう。ミスター・倉塚?」
「OK、やってやるさ」


* * * * *


 蒼依の腕から伸びた細い糸が妖怪の体を絡め取る。
 紅糸に縛られた以津真天が奇声を上げながら暴れるが、グっと力を入れなんとか押さえ込む。
 それを横目で見ながら、クミノが威力の弱い符を連射してパティの周囲を囲んでいた妖怪の動きを押さえ込む。
「左京君もチェリーナさんも、結界の心配がいらないくらいなんだけれど・・・気を抜いたらダメね」
 シュラインが右手に符を構えながらそう言って・・・美桜が何かに気がつくと目の前に立っていた亮一の服をグイグイと引っ張った。
「何か・・・」
「鬼童さんがっ!!」
 美桜の言葉に視線を上げれば、丁度ナツが茨木童子の前に立ちはだかった場面だった。
「貴様が茨木童子・・・だな?」
 篭手が赤く燃えるような光を発し、右手を大きく振りかぶって茨木童子に殴りかかり・・・
 キィンと、高い音が鳴った。
 ナツが後方へと弾き飛ばされ、地面を滑りながらこちらにやって来る。亮一が飛んできたナツの体を受け止め、美桜が青い顔をしながら走り寄ると傷の有無を確認する。
「・・・少し掌が切れてるだけですね。これなら直ぐにでも・・・」
 祈るように目を瞑るとナツの傷ついた掌に自身の手を重ねる。
「なんだったんだ今のは・・・!?」
「結界ですね、きっと」
 ナツの言葉に琴音がそう呟き、額から汗が流れ落ちる。
「相手も結界が使えると、そう言う事ですか?」
「えぇ・・・けれどこの結界は・・・破るのは難しくないです」
「どうすれば良いんだ?」
「きっと・・・符を持っている妖怪がいると・・・思います。その符を焼き払えば・・・」
「符を焼かない限り、茨木童子の守りは完璧ってわけね」
 シュラインがそう呟きながら、右手に持った符を真っ直ぐに飛ばし展開させる。
 左京の周囲に結界が出来上がり、それに気付いたチェリーナが結界の周囲に集まった魍魎を斬って行く。
「なんか、メンドイな・・・」
「結界を壊せるような術があるにはあるけれど・・・発動に時間がかかるし、琴音さんの施している結界が壊れる可能性があるから無理ね。使えないわ・・・」
 蒼依がそう言いながら、紅糸に力を込めていく。
「結界を解いてしまえば、私でもあの手の結界ならば・・・破ることは出来ます。ただ、結界を解いてしまうと一般人に迷惑がかかる可能性があります。この周囲に人が居れば、命の危険も・・・」
「それは大丈夫です。あらかじめ鳴り五鈷杵を配置して人払いの術を施しておきました」
 亮一の言葉に、蒼依が紅糸に集中しながらも言葉を向ける。
「だから左京さんにあんなに場所を尋ねていたのね?」
「えぇ。用心に越した事はないですから」
「一度結界を解いて、アレを壊してしまった方が早いかも知れないな。どの妖怪が符を持っているのかは分からない。それに、前線の者達にも疲労の色が見えはじめている」
「クミノちゃんの言う通りね」
 琴音がそう言うと、苦しそうに息を吐き出す。
「あの・・・体・・・」
 美桜が心配そうに近寄り、自分の能力でなんとかならないかと手を差し伸べるが、優しい笑顔を浮かべて軽く首を振ると琴音が蒼依に視線を向ける。
「菊理路さん、貴方にお願いがあります」
「お願い・・・ですか?」
「いったん結界を解き、茨木童子の結界を破ります。ただ、私にはもう体力がそれほど残されてません。結界の修復は左京ちゃん・・・いいえ、左鬼ちゃんに任せます。そのことを、左京ちゃんに伝えてください」
「分かりました」
 蒼依が頷き、紅糸で縛っていた以津真天を締め千切る。
 美桜が琴音の辛そうな様子に1歩足を踏み出し・・・亮一がその腕を引っ張ると首を振った。
「美桜、ここは琴音さんの指示に従おう」
「でも・・・凄く、つらそう・・・」
「今は、ヘタに手を出してはいけない。でも・・・琴音さんがやり遂げた後は美桜の力が必要になる。そうだろう?」
「・・・・・・はい」
 やや迷っていた美桜だったが、亮一の言葉に素直に頷くと祈るように胸の前で両手を組み合わせる。
「それでは、今から結界を・・・」
 琴音が言いかけたその時、ドンと言う凄まじい轟音とともに地面が揺らいだ。
 茨木童子の周囲を囲んでいた魍魎が吹っ飛び、パチンと大きな音を立てて何かが割れる音が響く。
「今のはなに・・・!?」
「雷神(トール)様の一撃よん♪」
 どうやらそう言う仕掛けを施していたらしい詩文がそう言って・・・
「おい!!結界が破れたっ!!」
 左京が叫びながら後方へと走り、チェリーナもその後を追う。
 異変に気付いたジェームズと将之がいったんその場を退き、パティも後退してくる。
 琴音が符を取り出して何かを念じるように目を閉じ、カっと目を見開くと息を吸い込む。
「壊っ!!!」
 バチっと言う音ともに符が茨木童子へと一直線に飛んで行き、七色の電流を四方に散らしながら甲高い音を響かせ・・・やがてパチリと何かが割れる音が響いた。
「茨木童子、結界を張ってやがったのか!?」
「左京さん!琴音さんが、結界の修復を左鬼さんに任せると・・・」
「ちっ・・・そう言うことか」
 蒼依の言葉に左京が頷き、日本刀を真っ直ぐに地面に突き刺す。
「ジェームズ!後の攻撃の指揮はお前が取ってくれ」
「分かりました」
「亮一!守りはお前に任せた」
「はい」
「シュライン!皆をまとめてくれ」
「えぇ、分かったわ」
「・・・あと、美桜。琴音さんを、頼んだ」
「はい」
 意識を失ってその場に倒れこんだ琴音の傍にしゃがみながら、美桜が強く頷く。
「良いか、茨木童子さえ倒せば終わりじゃねぇ。茨木童子を倒せば、妖怪はバラバラに散って行くことになる。左鬼の張る結界は、妖怪をこの場に閉じ込めるまでは出来ねぇ」
「心配しなくても大丈夫よん♪逃がさないからねん」
「わ・・・私も頑張ります!」
「足止めなら任せて」
「心配しなくて良い。後はしっかりやっておくさ」
 詩文が笑顔を向け、真帆が魔導書を胸に抱く。蒼依が紅糸に集中し・・・クミノが、左京に真っ直ぐな視線を向けると強く頷いた。
「パティ、ナツ、将之、チェリーナ・・・ジェームズの指示に従ってくれ。お前らが力をあわせれば、絶対に茨木童子を倒すことが出来るはずだ」
「全ての怪異を滅ぼすことが私の目標です」
「あぁ、茨木童子は任せときな」
「お前が目覚めた時に全滅してたってオチはねぇから安心しろよ」
「左京君、絶対・・・みんなを、守るから」
 チェリーナが左京の肩に手を置いて力強くそう言い・・・左京が地面に刺さった日本刀に手をかざすと目を閉じた。
 黒髪が色を失っていき、金色の柔らかそうな色に変化すると短かった髪が背中まで伸びて行く。何かを呟いていた唇がふっと動きを止め、ゆっくりと目をあければ碧い瞳は妖しい紫色へと変化し・・・ふわりと、絶対に左京では作れないような笑顔を浮かべると右手を頭上に高く上げ、指先を動かし宙に文字を描く。
「・・・あれが、左鬼なのか・・・?」
『さぁ、ジェームズさん、結界は完成いたしました。今こそ、茨木童子を討てましょう』
 ゆっくりとした口調は、それでも・・・強い意志を含んでいた。
「それでは参りましょう」
「茨木童子以外の妖怪は私達に任せてねん♪」
「・・・夜を渡る冷たき風よ・・・」
 詩文が艶やかな笑顔を浮かべながらルーンの刻まれた宝石を取り出し、ルーン魔法を発動させる。
 真帆が魔導書に記された言葉を正確に紡ぎ・・・風の魔法が妖怪達に襲い掛かる。
「援護は任された」
「私も、結界で援護するわ」
 クミノの言葉にシュラインが表情を引き締め、符を手に展開していく。
 将之が風鳴と神楽から、大太刀の破神へと持ち替える。
 パティが素早い動きで妖怪を蹴散らし、ジェームズが口元にだけ残酷な笑みを浮かべながら刀を振り回す。
 ナツが高く跳躍して茨木童子の前に立ち、その隣に将之もつく。
 1歩遅れる形でチェリーナが走ってきて、それを合図に一斉に飛び掛り・・・・・・・・


* * * * *


 美桜が辛そうにその光景から目を背ける。
 誰にも傷ついて欲しくない。それは、妖怪でも同じ事。
 ・・・だからこそ・・・
「可哀想・・・」
 美桜の直ぐ近くで瀕死の状態に陥っている狐に似た妖怪・・・飯綱が弱々しい瞳でこちらを見詰めている。
 ・・・そっと、手を伸ばすとその体を回復する。
 ポワっと淡く優しい光が飯綱の体を包み込み、そして・・・キっと、鋭い光を放つ瞳を向けると突然美桜へと襲い掛かってきた。
「きゃぁぁぁっ!!!」
『結』
 バチっと言う音とともに、飯綱が美桜の前で後方へと吹き飛ばされ、地面へと叩きつけられる。
「美桜っ!!」
『解』
 左鬼が結界を解き、その様子を見ていた亮一が美桜に駆け寄る。
「大丈夫か!?怪我は・・・」
「大丈夫です・・・」
「・・・あれか」
 美桜を襲った飯綱を睨みつけ、亮一がすっと立ち上がる。
「亮一兄さん!お願いですっ・・・!殺さないで・・・殺さないであげてください・・・」
 懇願に近い必死の声に、亮一の心が揺れ動く。が、やはり美桜を襲った相手を許せるわけがない。・・・けれど、瀕死の妖怪に全力の力を使って止めをさすのは流石に可哀想な気がする。
「・・・左京さん・・・じゃないですね、左鬼さん」
『なにか?』
「美桜を守っていただいて有難う御座います。・・・1つ、お願いがあるのですが宜しいでしょうか?」
『左京の意に背くものでない限りは極力お手伝いいたしましょう』
「左京さんに頼まれた手前、お願いするのは心苦しいのですが、左鬼さんに守りを頼んでも宜しいでしょうか。やはり・・・このまま黙って見ているわけにはいかないですから」
『引き受けましょう』
 左鬼に視線だけで礼を述べると、前線へと走り出す。
「亮一兄さんっ!!」
「安心して見ていなさい」
 ・・・決して美桜の悲しむような展開にはしないから。
 つまりは、殺さなければ良いのだ。・・・半殺し程度に留めておけば問題はないだろう。
「自分の手の内は見せたくなかったんですが、少しだけ特別に見せてあげましょう♪」
 自分の正体を知っている妖怪がいたらどんな行動をとるのだろうか。逃げる?それとも、果敢に戦いを挑んでくる?・・・どちらにしろ、構わない。
 茨木童子に苦戦している将之達に合流し、陰陽術を ―――――――


「・・・亮一兄さん・・・」
『貴方、神崎さんって仰いましたっけ』
「はい」
 不意に話し掛けてきた左鬼に顔を上げる。
「名前・・・」
『私は、左京の中にいる時でも外の様子が分かります』
「そうなんですか。左京さんは、左鬼さんの中にいる時は意識がないんですよね?」
『えぇ。・・・まぁ、そんなことはどうでも良いです。それより、神崎さん』
「はい」
『貴方は、優しい心の持ち主です。けれど、貴方は全てを守るだけの力がありません』
 キッパリとした左鬼の言葉に、美桜が言葉を失う。
『飯綱に襲われた時、私ではなく左京だったとしたならば、どうなっていたか分かりますか?左京には結界を展開する力はないんです。どうなっていたか、想像できますか?』
 もしも左鬼ではなく、左京だったならば・・・どうなっていたのだろうか・・・?
『左京の運動神経から言って、飯綱を斬ることは可能だったでしょう。でも、貴方を傷つけないことを前提としたならば、左京は刀を抜くことが出来なかった。何故なら、貴方に刃が当たってしまう危険性があったから』
 美桜に襲い掛かった飯綱に反応できたとしても、刀を振り下ろしてその切っ先が美桜を傷つけないとは限らない。振り返り、刀を振り下ろす。その一瞬の動きの中ではたして加減が出来るだろうか・・・?
『きっと、左京は咄嗟に貴方を突き飛ばしたでしょう。それをするだけの時間と瞬発力はあったはずです』
「左鬼さん・・・」
 後ろで聞いていた萌良が思わず声をかける。
『飯綱は人に憑く妖怪です。貴方を突き飛ばした後、左京が飯綱を回避することはほぼ不可能でしょう。他の人がこのことに気付いて何とかしようとしても、間に合いません。エマさんの結界も展開するまでに時間を必要とします。菊理路さんの紅糸も、樋口さんの魔法も、ササキビさんの符も、桜塚さんのルーン魔法も、間に合いません』
「・・・はい」
『貴方が守ろうとしているものは何ですか。貴方は、全てを守るだけの力がないのに守ろうとし、結果・・・誰かを傷つける。勿論、救われる人もいるでしょう。貴方の心は、能力は、人の助けになる。でも、守るべき相手を見間違うと・・・どちらも、助からないんですよ』
「でも・・・私は・・・誰にも、傷ついてほしくない・・・」
 今にも泣き出しそうな美桜の肩を萌良が優しく抱き締める。
「美桜さん・・・」
『傷ついて欲しくないと言う、優しい心はとても素敵です。でも、人には戦わねばならぬ時があります。傷つけること、傷つくことを覚悟で、それでも譲れないものをかけて必死になる。貴方の生ぬるい慈悲の心は、それを全て踏みにじっている。可哀想と言う気持ちで、傷ついて欲しくないと言う主観で』
「左鬼さん、それは言いすぎではないでしょうか?」
『いいえ。今は条件的に良かった。貴方も生きているし、私も生きている。飯綱だって、瀕死ですがまだ息はあります。まぁ、放っておいたらこのまま死ぬでしょうけれど』
 “死ぬ”
 その言葉に、美桜が咄嗟に飯綱に駆け寄ろうとし・・・左鬼の結界によって阻まれる。
『学習能力のない人ですね』
「でも・・・でも、誰にも死んで欲しくない・・・」
『それでまた、貴方が能力を使い飯綱を回復させ、飯綱が貴方に襲い掛かり、私が結界を展開し、飯綱は痛い思いをして再び瀕死の重体になる。永遠に続くソレは、拷問ではないのですか?』
「でも・・・でもっ・・・!!」
 冷たい結界の向こう側、今にも散ってしまいそうな命を見詰め、美桜は自分の無力がたまらなく悔しかった。
 自分の能力さえ使えれば、あの子を助けられる。けれど、目に見えない結界はあまりにも硬く無情だった。
『飯綱は使役の妖怪です。つまりは、誰かの命によって動いている。ならば、その命を断ち切れば良いだけの話しではないのでしょうか?』
 左鬼がそう言って、右手を飯綱に向けると何かを呟く。
 バチリと言う音が響き・・・
『ここから先は貴方の役目です』
 美桜の前にあった結界が解け、這うようにして飯綱に近づくとその体に力を注いでいく・・・
「随分、意地の悪いことをなさるんですね」
 萌良が非難の感情を滲ませながら、それでも笑みを浮かべて左鬼に言葉を向ける。
『それが性分ですから』
 さらり、長い金色の髪が揺れる。
 その髪の向こうに茨木童子との決戦を見ながら、萌良は膝の上に置いていた手をギュっと握り合わせた。


* * * * *


 いくら鬼といえど、多勢に無勢。
 蒼依が紅糸を使って鬼の動きを抑え、シュラインも縛の結界を施す。
 クミノが周囲に残った妖怪を足止めし、真帆と詩文がそれぞれ目の前に居る妖怪を術で吹き飛ばす。
「ふん、なかなか喰いでがありそうだ」
「喰うなって言われなかったか?」
 篭手を使って戦うナツの背後で破神を振り下ろす将之。
「あともう少し・・・」
 チェリーナが歯を食いしばりながら刀に滅の力を施し、ジェームズが茨木童子を翻弄しながら身軽に跳びまわる。
「大分動きが遅くなってきましたね」
 ジェームズの言葉に、周囲の妖怪を相手にしていたパティが顔を上げる。
 茨木童子の長い腕を避け、将之が渾身の力を込めて破神を振り下ろし切断する。
「うわ・・・痛そう・・・」
「そんな事を言っている場合ではない。来るぞ・・・」
 思わずそう呟いたチェリーナの背後からクミノが声をかけ・・・地響きを鳴らしながら近づいてくる茨木童子を何とか右に避けてかわす。
「シュライン!蒼依!一瞬で良い、茨木童子の動きを止められねぇか!?」
「やってみるわ!」
 ナツの言葉にシュラインと蒼依が頷き、縛の結界で右足を、紅糸で左足の動きを止める。
「・・・くっ・・・力が強い・・・このままじゃ・・・」
 蒼依が歯を食いしばりながら言い・・・シュラインの結界が音を立てて壊れる。
「よし、さんきゅ。十分だぜっ!!」
 ナツが高く跳躍し、将之がその後に続く。
 残ったもう1本の手で何とか2人を防ごうとするのを、チェリーナとジェームズの刃で止め・・・ナツが首筋を滅の能力を施した篭手で強く殴り、将之が背中側から心臓を突き刺す。
 茨木童子が長い断末魔を上げ・・・ゆっくりと、その体が地面に倒れ込む・・・
「やった・・・!」
「んふふー、逃がさないわよん♪」
「・・・一陣の蒼刃となりて・・・」
「左京さんとお約束いたしましたしね。逃がして差し上げることは出来ません」
 主を失った妖怪がばらばらに散って行こうとするのを、詩文のルーン魔法が、真帆の魔法が、亮一の陰陽術が阻む。
「わたくしもお手伝いいたしましょう」
 パティがそう言って走り出し・・・チェリーナも、少し疲れたような表情を浮かべながら頬を両手で叩くと気合を入れて刀を片手に走り出す。
 深く突き刺さっていた破神を抜いた将之がその場にしゃがみ込み、ナツのお腹が音を立てる。
「腹ヘッタぁぁぁっ!!」
「・・・はぁ。茨木童子は流石にヤバそうだが、他のなら喰っても良いんじゃねぇ?」
「マジか!?」
 将之の言葉にナツが瞳を輝かせ、パタパタと走って行く。
「お元気ですねぇ」
「・・・あんたは疲れてなさそうだな」
 ジェームズが涼しい顔で刀の能力を解除し、将之の言葉に軽く首を振る。
「いいえ、ただ顔に出ないだけです」


* * * * *


 無残に荒れ果てた荒野とは、このことを言うのかも知れない。
 妖怪の亡骸がばら撒かれ、まだ息のあるものが時折思い出したように痙攣する。
 美桜がその状況に目を背け、それでも・・・能力を使わなかったのは、先ほどの事があったからだろうか。
「さて、ここをどういたしましょう?」
「片付けるって言ってもかなり時間が掛かるわね」
「まさかこのままで良いってわけじゃねーもんな?なんなら、俺が全部喰って・・・」
 ナツの言葉を遮るように、左鬼が1歩前に進み出ると目を閉じる。
『全てを集め、この玉の中に封印します』
 紫色のビー玉ほどの大きさの玉を取り出すとそう言って、掌で包み込む。
『能力使用後、私は体を左京に返します。左京の意識が戻るまで暫く時間がかかるでしょうけれども・・・』
「そのところはこっちに任せといてくれ。家まで運んどきゃ良いんだろ?」
「私が車を呼んで無事に送り届けますわ」
『琴音さんの意識はもうじき戻ると思いますので、後のことは彼女からお聞き下さい』
 左鬼がそう言って深く頭を下げると、何かを小さく呟きながら手を組み・・・淡い色をした光がバラバラになった妖怪達の上にふわりと乗り、パチンと音を立てて消し去っていく。1つ、また1つ、妖怪の体が消えるたびに左鬼の組み合わされた指の隙間から紫色の濃い光が漏れ出し・・・全ての妖怪の姿が消えると、溢れていた光が唐突に消えた。
 すぅっと眠るように目を閉じた左鬼・・・左京の体を、ジェームズが受け止める。
「終わったのね」
 蒼依の言葉が吹いた風に流され、儚い余韻を残しながら消えて行く。
「んっ・・・」
「あ・・・気がつかれましたか!?」
 琴音の声に美桜が反応し、寝かせていた体を起こす。
「これは・・・そうですか。全て、終わったんですね・・・」
「えぇ」
 シュラインが頷き、琴音が「そうですか」と小さく呟いた後でふわりと柔らかい笑顔を浮かべ・・・
「皆さん、本日はご苦労様でした。・・・けれど・・・きっと妖怪はまた襲ってくるはずです。今回よりもより強い妖怪が・・・」
 笑顔を引っ込め、視線を彷徨わせる琴音。
 その視線を追い・・・何事も無かったかのように静まり返ったその場所に、北からの風が冷たく吹いた。



               ≪ E N D ≫



 ◇★◇★◇★  登場人物  ★◇★◇★◇

 【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】


  0086 / シュライン エマ / 女性 / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員


  6625 / 桜塚 詩文 / 女性 / 348歳 / 不動産王(ヤクザ)の愛人


  1166 / ササキビ クミノ / 女性 / 13歳 / 殺し屋じゃない、殺し屋では断じてない。


  5128 / ジェームズ ブラックマン / 男性 / 666歳 / 交渉人 & ??


  6077 / 菊理路 蒼依 / 女性 / 20歳 / 菊理一族の巫女、別名「括りの巫女」


  0622 / 都築 亮一 / 男性 / 24歳 / 退魔師


  0413 / 神崎 美桜 / 女性 / 17歳 / 高校生


  6458 / 樋口 真帆 / 女性 / 17歳 / 高校生 / 見習い魔女


  4538 / パティ ガントレット / 女性 / 28歳 / 魔人マフィアの頭目


  5625 / 安登 萌良 / 女性 / 28歳 / ディレッタント


  2903 / チェリーナ ライスフェルド / 女性 / 17歳 / 高校生


  6720 / 鬼童 ナツ / 男性 / 21歳 / 資料管理


  1555 / 倉塚 将之 / 男性 / 17歳 / 元高校生 / 怪奇専門の何でも屋


 ◆☆◆☆◆☆  ライター通信  ☆◆☆◆☆◆

 この度は『東京百鬼夜行 +始+』にご参加いただきましてまことに有難う御座いました。
 かなりの長文になってしまい申し訳ありません・・・!
 今回出現した妖怪は『魍魎(もうりょう)』『骸骨(がいこつ)』『骨傘(ほねからかさ)』『以津真天(いつまで)』『飯綱(いづな)』『茨木童子(いばらぎどうじ)』です。

 シュラインさん
 今回もご参加いただきましてまことに有難う御座いました。
 いつもはお姉さんとして皆さんを引っ張って行ってくださるシュラインさん。
 今回、琴音に術を教わっている時の真剣な様子を想像し、微笑ましく思いました。
 見かけは若い琴音ですが、シュラインさんはそんな事を気にせず真面目に術に取り組んでいそうだなぁと思いました。


  それでは、またどこかでお逢いいたしました時はよろしくお願いいたします。