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<東京怪談ウェブゲーム アトラス編集部>


あなたしかいないの!

オープニング

「ちょっと!三下君!どういうこと!」
 月刊アトラスの編集部に碇・麗華の叫び声が響いた。
「へ、何がですか?」
「…何がですかじゃないわよ、このページに入る原稿がないじゃない!貴方に頼んでいたわよね!」
 確かに数日前に突然『原稿を書ける人を見つけておいて』と頼まれた。
 それを三下は今の今まですっかり忘れてしまっていたのだ。
「…あ、ど、どうしましょう?」
 聞いているのは私よ!そう再び叫び声が響く。
「締め切りは明日!今日中に原稿を書ける人を探しなさい!出来なかったら、ツブすわよ」
 分かったらさっさと探す!そう言って三下を編集部から追い出した。
「…ど、どうしよう…」
 そんな時、見るからに凹んだ三下を見つけて貴方は声を掛けた。


視点→グラハム・ペスカトーレ

 美しい海が見渡せる波止場に、一人の男、三下がいた。どんよりと沈んだ面持ちで先ほどから何度もため息をついている。
「おい、お前。そこで何をしている?」
 そんな時、釣りの帰りであったグラハムが三下に話しかける。もちろん正体を隠すため
に人間へと姿を変えて。
「へ?僕ですか?少しばかり人生に疲れてしまって…」
 えへへ、そう言って笑う三下は少しどころか全てにおいて疲れているようにも見受けられた。
「何があったのだ?」
 グラハムが問いかけると、三下は憂鬱な表情で『記事を書いてくれる人を見つけないと鬼上司に潰されてしまう』とため息混じりに呟いた。
「それなら我輩の冒険の一つを記事にしてはどうだろうか?」
 グラハムの提案に三下は「え?」と間の抜けた返事を返す。
「記事になるような話があればいいのだろう?我輩が過去に経験した冒険の一つを提供してやろうと言っているのだ」
 話を提供→記事になる→鬼上司にツブされずにすむ。
 この方程式が三下の頭の中で組み立てられ「ありがとうございます!」と手を握りながらグラハムに詰め寄るようにお礼の言葉を言う。
「じゃあ、お話してもらっていいですか?僕がメモを取りますので」
 そう言いながら三下は持ち歩いているメモ帳をとペンを取り出した。
「そうだな、あれはいつの話だったか――…」
 そして、グラハムは語りだす。過去の冒険譚を…。


 その日は宝探しに来ていた。場所は絶海の孤島に存在する古代神殿で数名の部下と共に来ていた。
 宝が眠る場所にトラップが仕掛けられているのは当然で、グラハム達の目的の場所、古代神殿も内部に入るとトラップだらけだった。
宝が眠る場所へ続く道は、幾重にも施されたトラップがグラハムたちの行く手を阻んでいた。
まず、最初にグラハム達を襲ったのは、トラップの王道とも呼べる大岩だった。部下の一人が「コレなんでしょう?」と言いながら押したのが原因で、突然ゴゴゴと神殿内が揺れたかと思うと、背後から巨大な岩がグラハム達に襲いかかってきたのだ。
「何であんなに怪しいボタンを押すのだ!」
 叫びながらグラハムたちは大岩から逃げ走りながら叫ぶ。走り回ること数十分、ようやく大岩から逃れ、次の部屋へと進んだ。
 次の部屋にたどり着くまでの長い廊下、ここにも王道と呼べるトラップが仕掛けてあった。部下の一人が足を踏み入れると突然、壁にジャキと穴が開いて槍が飛び出してくる。
「うろたえるな!槍の出現には法則があるようだ、法則を読み取れば避けることは容易い」
 グラハムは部下達に言い聞かせると、避ける手本を見せるかのように器用に槍を避けていった。部下達もグラハムに続くように槍を避けていく。
 そして、槍のトラップをクリアすると雰囲気の違う部屋へとたどり着いた。扉には何かの紋章のような印が刻まれており、グラハムたちが扉を開くと宝が奉ってある祭壇の前に巨大なヤドカリの怪物が待っていた、
 おそらく宝を守る番人のような存在なのだろう。
「さて、どうしたものか」
 どうやって巨大ヤドカリを倒すかを思案していると、ヤドカリの方が先に攻撃を仕掛けてきた。さすがに身体が大きいだけあって力が強く、地面がひび割れる。
 部下が攻撃を仕掛けるが、なかなかすばやく攻撃を受け付けない。
「単体で攻撃しても避けられるだけだ、一斉射撃で気を逸らせ!」
 グラハムの指示を受けて、部下達の一斉射撃を受け巨大ヤドカリは一瞬だが怯む。
「そこだ!」
 ヤドカリの怯んだ瞬間にグラハムは持っていた武器、サーベルでヤドカリの頭を斬り落とす。ヤドカリは奇声をあげてその場に倒れた。
 そしてグラハムは見事、古代神殿に眠る宝を手に入れたのだった――…。


「はぁ…」
 グラハムの話を聞いて、三下は感嘆のため息をもらした。
「ん?何だ、信じられないのか?」
 三下のため息を呆れたものと勘違いをしたグラハムは、少々むっとした面持ちで三下を見やる。
「あ、違います!馬鹿にしたんじゃありません。むしろ逆です」
 逆?とグラハムは首をかしげる。
「すごすぎて、言葉にならないんですよ!この話を記事にしたらきっと編集長も大喜びでしょう!…………あ」
「どうした。何か問題か?」
「…今の話を証明するものがないと…きっと編集長は信じてくれません…。何か、ありますか?証明できるもの」
 三下の申し訳なさそうな言葉にグラハムは「ふむ」と思案する。
「確か、写真があったと思うが…」
 ごそごそとポケットを探り、写真を三下に渡す。
「あ、写真があれば立派な証拠になりますね。これ頂いても――い、い…です、か?」
 三下は渡された写真を見て言葉が出ない。今では珍しいセピア色の写真で、宝の王冠を掲げて笑う骸骨の姿。その背後には倒されたであろうヤドカリの怪物の亡骸。
「ぐ、グラハムさ――」
 ハッとして写真から視線をグラハムに移す、するとそこには骸骨の姿に戻ったグラハムの姿があった。
「ぎゃああああああっ」
 骸骨姿のグラハムを直視して、三下は奇声をあげてばたんと倒れた。
「おやまぁ、情けない男だな」
 ふぅ、とため息をもらしてグラハムは倒れた三下をそのままにしてグラハムはその場を離れた。


 夕日が傾くころ、三下はグラハムから聞いた冒険譚をメモした手帳と証拠の写真を鬼上司である碇に提出する。
 余談だが、グラハムの冒険譚が掲載された雑誌は今までにないくらいの売れ行きだったとか――…。



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名      / 性別 / 年齢 / 職業】

 6175/グラハム・ペスカトーレ/男性  /446歳/海賊

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■         ライター通信          ■
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グラハム・ペスカトーレ様>

はじめまして。
『あなたしかいないの!』を執筆させていただきました瀬皇緋澄です。
今回は発注をかけてくださいまして、ありがとうございました^^
話の内容はいかがだったでしょうか?
満足いただけるものになっていれば嬉しいです。
それでは、またお会いできる機会がありましたら、よろしくお願いします^^


             −瀬皇緋澄