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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


人形たちの芸術祭


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投稿者:グラディス他、人形一同

 人形博物館にて、内輪の芸術祭を催したいと思います。
 けれど私たちでは材料を揃えることもままなりません。
 日は三日後。刻は深夜0時。
 材料持参でいらしてください。

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 掲示板の書き込みを見つけてセフィアはぱぁっと瞳を輝かせた。
 その書き込みの主はグラディス。以前に会った事のある、動くお人形さんたちの一人だ。
「久しぶり……」
 ここ最近、彼女たちは大人しく『博物館のお人形さん』をやっていたようで、こういったお遊びをしていなかったのだ。
 じっと掲示板の記事内容を眺めてから、セフィアはこくん、と首を傾げた。
「ん……お祭りの後も使えるのがいい……かな」
 芸術といわれると、絵とか粘土とか紙工作とか。いろいろ浮かぶものはあるけれど、お祭りの後それをどうするか……と考えると。ただ飾るだけのものではなくて、なにか使えるものがいいなと思う。
「んー……」
 しばし掲示板と睨めっこしながら考えて、ふとひとつ、案が浮かんだ。
「うん、そうしよう……」
 芸術っぽくて、お祭りの後まで使えるもの。
 それでいて人形さんたちも一緒に作れるようなもの。
 そうと決まれば、材料を揃えに行かなければ。お祭りまで、あと三日しかないのだ。
 材料を買って、準備をして。
「喜んでくれるかな……」
 少し楽しくなって、パソコンの前で少し微笑み。それから、財布を片手に外へと出かけて行った。


◆ ◆ ◆

 博物館の前には、亜真知のほかに二人の女性もやってきていた。
 話してみれば、同じ目的を持って――つまり、グラディスの書き込みを見て――やってきたのだと言う。
「それでは、入りましょうか」
 青い髪が一際目立つアンネリーゼ・ネーフェの一言に、二人もにこりと頷き館へ入る。
 玄関へと足を踏み入れたその瞬間。
「いらっしゃいませ」
 優雅な声とともに、一斉にホールの電気に明かりが灯った。
「セフィアさんっ!」
 こちらが何か言うより早く、黒髪に藍色の瞳のお人形さんがふわりと上から飛び降りてきた。
「……久しぶり」
 にこりと。呼ばれたセフィアが微笑む。
「お久しぶりですわ、皆様」
 続いてホールに降りてくる人形たちに、亜真知もにこりと笑みかけた。
「はじめまして。お誘いありがとうございます」
 ここの動く人形たちに会うのは初めてだというアンネリーゼがぺこりと頭を下げると、人形たちも初めましてと礼を返して、自己紹介の応酬が始まる。
 そうして一通り名乗りあったのち、芸術祭という名の工作大会が始まった。

◆ ◆ ◆

 何を持ってきたの、と尋ねてくる人形たちに、セフィアは持ってきた布をばっと広げて見せた。
「……これ、どうするの?」
 いつの間にやらちゃっかりセフィアの肩の上を占拠していたアデライトが、きょとんと目を瞬かせて布を見つめる。
「お布団を、作るの」
「えっ、お布団!?」
「すごいすごいっ、お布団って作れるものなんだねー」
 大きな――と言っても人形用のお布団サイズだからセフィアにしてみればそれほどではないのだけれど――白い布を広げるさまは、結構目立ったらしい。
 それぞれ別のものを用意してきた三人に、どうしようかと悩んでいた子のうちの何人かもセフィアの方へと寄って来た。
「お布団を縫うのは……大変だと思うから……」
 言ってセフィアは、布団用の布とは別に持ってきていた色とりどりの布を見せる。
「うわあ、綺麗。これ、どうするの?」
 わくわくと弾んだ声音のアデライトに、セフィアはにこりと笑顔を浮かべて、すでに切ってある布のいくつかを白い布の上に並べておいた。
「あ、わかった!」
「私たちの顔だね。すごい可愛い〜っ!」
 セフィアも、いろいろ考えたのだ。布団を全部お人形さんたちに縫ってもらうのは大変だ。
 アップリケにしたって、切るところからはじめたら、大変なことになってしまう。針と糸はもともと軽いからいいけれど、ハサミはお人形さんたちには大きすぎる。
 だから先にもう布は切っておいて、あとは貼り付けるだけの状態にしておいたのだ。
 きゃいきゃいとはしゃぐアデライトの様子に、セフィアは少しほっとした。いろいろあったし、一応和解はしているけれど……あまり仲良くできていないのでは、と心配していたのだ。
「ありがとう、セフィアさん」
 見上げてくるアデライトと出来るだけ視線が近づくようにしゃがみ込み、それからセフィアは、そっとアデライトに耳打ちをした。
「もっと仲良くなる、きっかけになれば……て、思ったの」
 だから、使えるもの。
 皆で一緒に使えるもの。
「……」
 アデライトは瞳を大きくして、しばらく、セフィアを見つめていた。
 そうして、にこり、と。
 とびっきりに明るい表情で笑う。
「うんっ!」
 出会いはいろいろあったけれど、仲良くなれたことに感謝を。
 面と向かっては言葉にしづらい感謝と気持ちを、手作りの品に込める。

◆ ◆ ◆

 まず一番に完成したのは、貼り絵をしていたキャロライン。
「見てみてーっ!」
「私もできましたわ」
 一緒に貼り絵をしていたエレノーラも、自慢げに出来上がった貼り絵を見せる。
「こっちもできたよー!」
 そう言ったのは、セフィアと一緒にお人形さんたちの顔アップリケ入り布団を作っていたアデライト――と言っても、布団自体を縫ったのはセフィアで、人形たちはほとんど仕上げしかしていないのだけど。
「お布団大きすぎるかな……飾れるかな……少し、心配」
 全員で眠れるようにしたら、少々大きくなってしまったのだ。小さなお人形サイズとはいえ、十一人分ともなれば、それなり大きくなるのは仕方がない。
「大丈夫だよ」
「うんうん」
 一緒に布団作りに参加していたミュリエルとジェシカが笑いあい、わかっているのかいないのか、エリスがこくこくと頷いている。
「私たちもちょうど終わったわ」
 そう告げたのは、グラディスだ。手には編んだばかりの毛糸のマフラーを持っていた。
「アンネリーゼさんも何か編んでましたよね……何を編んでらっしゃたんですか?」
「レティキュールを編んでいたんです。オマケのプレゼントですよ」
 毛糸が予想以上に余ってしまったので、お人形さんサイズのレティキュールを編んでいたのだ。
 広いホールが少々狭く感じるくらいに賑やかになり、そうして、それぞれ自分の手で作ったものを自慢しながらのお茶会が始まる。
 夜明けまではもう少し。
 ホールには楽しげなおしゃべりの声が響いていた。

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   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  
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整理番号|PC名|性別|年齢|職業

1593|榊船・亜真知     |女|999|超高位次元知的生命体・・・神さま!?
2334|セフィア・アウルゲート|女|316|古本屋
5615|アンネリーゼ・ネーフェ|女| 19|リヴァイア

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         ライター通信          
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大変お久しぶりでございます。
ここのところあまりシナリオを出せずにおりましたが、久しぶりのお人形さんはどうでしたでしょうか?
少しなりと楽しんでいただければ幸いです。

それでは、短い挨拶となりますが……(汗)
またお会いする機会がありましたら、その時はどうぞよろしくお願いします。