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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


人形たちの芸術祭


 何度使っても、これは慣れない。とはいえ、これが今のエルデで一番手っ取り早く、それなりに有用な情報を手に入れる方法であるのも確か。
「あ、また……」
 せっかく開いたwebページが、いつの間にかまったく違うwebページへと変貌していた。どこか間違ったところをクリックしてしまったのだろうけど……。
「探すの大変なのに……」
 やっと見つけた――きっと、手馴れた人ならすぐなんだろうけれど――目的のページは、もう、どうやってたどり着いたのかも覚えていない。
 ため息をつきつつ、もう一度探し直そうと思ったその時だった。
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投稿者:グラディス他、人形一同

 人形博物館にて、内輪の芸術祭を催したいと思います。
 けれど私たちでは材料を揃えることもままなりません。
 日は三日後。刻は深夜0時。
 材料持参でいらしてください。

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 見つけた書き込みに、アンネリーゼは首を傾げた。
「……人形一同?」
 普通、人形はパソコンを弄ったりはしないものである。けれどまた、この世界には自分を始め『人間の世の中』では知られていないものが多くある。
 場所も時刻もきちんと明示されているし、人形たちとの交流というのも、楽しいかもしれない。
「行ってみようかしら……」
 自分が教えられることなんて、たいしたものはないけれど。
 何をしようか、とか。どんなことを教えてあげられるか、とか。
 いろいろと楽しい計画が頭に浮かんで、アンネリーゼはくすりと笑んだ。



◆ ◆ ◆

 博物館の前には、アンネリーゼのほかに二人の女性もやってきていた。
 話してみれば、同じ目的を持って――つまり、グラディスの書き込みを見て――やってきたのだと言う。
「それでは、入りましょうか」
 青い髪が一際目立つアンネリーゼの一言に、二人もにこりと頷き館へ入る。
 玄関へと足を踏み入れたその瞬間。
「いらっしゃいませ」
 優雅な声とともに、一斉にホールの電気に明かりが灯った。
「セフィアさんっ!」
 こちらが何か言うより早く、黒髪に藍色の瞳のお人形さんがふわりと上から飛び降りてきた。
「……久しぶり」
 にこりと。呼ばれたセフィアが微笑む。
「お久しぶりですわ、皆様」
 続いてホールに降りてくる人形たちに、黒髪の女性――榊船亜真知もにこりと笑みかけた。
「はじめまして。お誘いありがとうございます」
 ここの動く人形たちと初対面のアンネリーゼがぺこりと頭を下げると、人形たちも初めましてと礼を返して、自己紹介の応酬が始まる。
 そうして一通り名乗りあったのち、芸術祭という名の工作大会が始まった。

◆ ◆ ◆

 アンネリーゼが持ってきたのは、毛糸と裁縫用具。毛糸はお人形さん用にできるだけ細いものを。編み針もお人形さんたちに持てるよう小さいものを選んできた。
「あら、編み物ね」
「知ってるんですか?」
 揃った人形たちの中で一番大人っぽい子――グラディスがどこか妖艶に微笑む。
「私はやったことないけれど、昔、私の持ち主だった娘が好きだったの」
 言ってグラディスは、ゆるりと背後に振り返った。
「リズもいらっしゃい。貴方、こういうの好きでしょう?」
「ええ」
 グラディスの呼び声に、エリザベスがにこりと答えた。おっとりと――と言うよりは、どこか控えめな様子の態度で、彼女はふわりとドレスの裾を靡かせて礼をした。
「改めまして――私はエリザベスと言います。本日は、どうぞよろしくお願いいたします」
「そんなに畏まらないでください。私も、皆さんと会えるのを楽しみにしていたんです」
 にこりと微笑みあって、さっそくそれぞれに編み針を持って、お裁縫を始めることにした。
 二人とももとより器用な性質なのか、体のサイズと少々合わない毛糸や編み針に苦戦することはあっても、編み物自体はすぐに覚えてしまった。
「お二人とも、上手ですね」
「ありがとう」
 余裕の微笑で返すグラディスの横で、エリザベスは手を止めて顔を真っ赤にして俯いている。
「……エリザベスさん?」
「あ、いえ、その、ありがとうございます」
 ますます俯いてしまったエリザベスはもう、耳まで真っ赤だ。
 グラディスが、クスクスと楽しげな笑み声を零して、教えてくれる。
「リズは褒められるとすぐに赤くなってしまうのよ」
「まあ、そうなんですか」
「はい……申し訳ありません」
「謝ることなんて何もないですよ。それにしても本当に、エリザベスさんは手先が器用なんですね」
 グラディスもなかなかのものだが、エリザベスは初めてとは思えないほど綺麗な網目を作っている。
「私……お料理が好きなんです。と言っても、火とか、使えるわけじゃないですから。管理人室からお菓子を持ち出しては、私たちサイズに、見目良くなるよう手直ししているだけなんですけれど……」
 その先はもう告げられなかったけれど。だから手先の作業は得意なのだと、エリザベスはそう言いたかったんだろう。
「それでは、機会がありましたら、今度はお料理をしましょう」
「本当にっ!?」
 ぱっと顔を上げたエリザベスはとても、嬉しそうで。本当に、料理に興味を持っているんだろう。
「はい、約束です」
 アンネリーゼの返答に、エリザベスはもう一度。ふわりと幸せそうな笑みを浮かべた。

◆ ◆ ◆

 まず一番に完成したのは、貼り絵をしていたキャロライン。
「見てみてーっ!」
「私もできましたわ」
 一緒に貼り絵をしていたエレノーラも、自慢げに出来上がった貼り絵を見せる。
「こっちもできたよー!」
 そう言ったのは、セフィアと一緒にお人形さんたちの顔アップリケ入り布団を作っていたアデライト――と言っても、布団自体を縫ったのはセフィアで、人形たちはほとんど仕上げしかしていないのだけど。
「お布団大きすぎるかな……飾れるかな……少し、心配」
 全員で眠れるようにしたら、少々大きくなってしまったのだ。小さなお人形サイズとはいえ、十一人分ともなれば、それなり大きくなるのは仕方がない。
「大丈夫だよ」
「うんうん」
 一緒に布団作りに参加していたミュリエルとジェシカが笑いあい、わかっているのかいないのか、エリスがこくこくと頷いている。
「私たちもちょうど終わったわ」
 そう告げたのは、グラディスだ。手には編んだばかりの毛糸のマフラーを持っていた。
「アンネリーゼさんも何か編んでましたよね……何を編んでらっしゃたんですか?」
「レティキュールを編んでいたんです。オマケのプレゼントですよ」
 毛糸が予想以上に余ってしまったので、お人形さんサイズのレティキュールを編んでいたのだ。
 広いホールが少々狭く感じるくらいに賑やかになり、そうして、それぞれ自分の手で作ったものを自慢しながらのお茶会が始まる。
 夜明けまではもう少し。
 ホールには楽しげなおしゃべりの声が響いていた。

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   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  
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整理番号|PC名|性別|年齢|職業

1593|榊船・亜真知     |女|999|超高位次元知的生命体・・・神さま!?
2334|セフィア・アウルゲート|女|316|古本屋
5615|アンネリーゼ・ネーフェ|女| 19|リヴァイア

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         ライター通信          
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大変お久しぶりでございます。
ここのところあまりシナリオを出せずにおりましたが、久しぶりのお人形さんはどうでしたでしょうか?
少しなりと楽しんでいただければ幸いです。

それでは、短い挨拶となりますが……(汗)
またお会いする機会がありましたら、その時はどうぞよろしくお願いします。