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聖ワルバーガの前夜
死者よ目覚めよ
万聖節の裏を返せば我らが祭
全ての逆をせよ
さすれば 我 汝の前に姿を現さん…
「お兄さん、どうですか?」
「お、美味そうだな」
子供たちも喜ぶぞ、と草間は微笑む。
零が前日から一生懸命、子供たちの為に作ったたくさんのお菓子。
そう、今宵はハロウィン。
万聖節の前日。
ところが…
「あ、来たようです」
パタパタと駆けてくる子供たちの足音。
お菓子を準備して待っていると、扉が開きお決まりの文言が聞こえてくる…筈だった。
「零姉ちゃん!助けて!助けて!!」
「どうしたんですか!?」
子供たちの表情は皆怯えている。
わけを聞こうと子供たちを中に入れると、いつも一緒にいるメンバーのうち一人足りない気がした。
「洋介くんは、一緒じゃなかったんですか?」
「よっちゃんがいなくなっちゃったんだよぉ」
「黒いマントに食べられちゃったんだよ!」
「帽子とマントだけしかなかったの!」
それは洋介が黒い帽子とマントを着て仮装していたということなのか。
泣きじゃくるせいで言葉がうまく伝えられず、子供たちは更に慌てる。
「どうした?」
玄関先が妙に騒がしいなと、出てきた草間が零の周りで泣いている子供たちを見て驚いた。
「どうしましょう…お兄さん。洋介君が仮装行列から仮装だけ残して消えたらしいんです」
「なんだと?」
こんな祭の最中にまた厄介ごとが?
草間の表情は自然と険しくなる。
突然消えたというなら、それこそ人ならざるものの仕業…
「――わかった。こっちも人手を集めて探そう」
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■―20:45―
「悪いな、急に呼び出して。 一刻を争うことなんでな」
煙草に火をつける草間の前には、五人の男女。
「魔物が徘徊するという現象がそのまま起こるとは考えにくいな…結社とか人為的な力が介入している気がするね。 攫った奴はきっと石鹸を沢山作る気だ…というのは冗談で、日にちが魔女の集会に重なっている事、被害者が子供である事から何らかの儀式の生贄か食用に使うものって考えられるかな」
内山・時雨(うちやま・しぐれ)の見解に、草間は眉をひそめて聞き返す。
「…魔女の集会…? それもハロウィンに関係あるのか?」
「ハロウィンの原型で有名なケルトのサーウィンは霊界と人界が最も近くなる日と言われていたわね。 結婚、運、死関連の占いや目的の為悪魔の助けを祈願する日との話も聞いた事があるわ。 ウイッカの大サバトのひとつの前夜祭でもあれど真っ当なウイッカは人傷つける事は考え難いけど…」
そう答えるシュライン・エマは、説明を終えた後少し考え込んでしまう。
子供たちが話していたことが少し気になっているのだ。
元々死霊怖がらせて追い返すのが目的の仮装だけが置いていかれてることに一抹の不安を覚える。
ただ、それゆえ反抗を行った者が生身の人間であると想定できる。
勿論、通常の誘拐とは手法がかなり異なると思われるが。
「日本人なら変なかぼちゃじゃなくて、山とかオレ達天狗とか、古来より日本にいる神を拝めよな―」
そう呟く天波・慎霰(あまは・しんざん)はどこか拗ねているようにも見えた。
天狗となった身には忘れてしまった経験ゆえ、妙な嫉妬が芽生えているのである。
「まぁそうむくれんなって。 ほら、お前も食えよ」
そういって手にしていた袋から鯛焼きを慎霰に差し出す氷室・浩介(ひむろ・こうすけ)は、事情を聞く為に親の了解のもと興信所に残ってもらっていた子供たちに、買ってきた鯛焼きを配った。
「洋介君たちは必ず助けてやるからな。 どんな小さな事でもいいから、消えた時の様子聞かせてくれ」
子供の目線にヤンキー座りでしゃがみ込み、笑顔で尋ねる浩介だが、子供たちは浩介の格好を見て萎縮している様子。
「? どした」
「……氷室君…さすがにその格好は…」
「ちぃとばかし古風なんじゃないか?」
シュラインも時雨もなんともいえない顔で浩介の格好を見ている。
「何だよ〜これだっていちおー俺なりの理由があんだぜ!? 今回はちゃんと調べても来たんだからさ!」
とは言うものの、浩介の格好は一昔前のヤンキースタイルそのまんまだ。
白い特攻服に昇り龍の刺繍。
そして外に出てから頭につける気なのであろう、懐中電灯が数本。
某探偵映画に出てくる殺人鬼+ヤンキーといったなんともミスマッチな格好で、尚且つ鯛焼きの入った袋を持っているのがまた何とも珍妙だ。
「…百鬼夜行をやり過ごす為の祭なのですよね…? このような格好でねり歩くんですか…さすがにこれは勇気が要りますね」
冷静に、というかそもそもハロウィン自体をよく知らないのであろうパティ・ガントレットが浩介の姿をまじまじと眺めながらそう呟く。
「いや、パティ。 これはハロウィンの仮装じゃないから……ほれ、ガキどもがしてるようなジャックオーランタンとか魔女とかゴーストとか吸血鬼とか。 こういう仮装をして子供たちが家々を回って菓子をくれなきゃ悪戯するぞって言って菓子を貰って回るんだよ」
シュラインが言ったような原型にそったものとか、本国で催されているような本格的なものではないが、それに近いことを今時は日本でもよくやっていると草間はパティに説明した。
ハロウィンの意図に関しての調べはしたようだが、実際にどのようにして参加しているのかまではパティも調べていなかったようだ。
「とにかく! …ハロウィンは元々悪霊の蘇る日、子供達の仮装は身を守るための物…万聖節の前夜に、ワルプルギスの夜のような悪魔の祭りを行えば全ての聖人を否定できる、子供達は祭りの参加者か生贄か…だと思う。 ならばブロッケン山と同じ高さの場所で行うつもりか。 実際のワルプルギスの祭りは魔女を追い払うため焚き火を行う…だから! 俺なりに試行錯誤した結果こうなっただけなんだって」
焚き火=光と思い、対抗策として懐中電灯を用意したというのがこの格好の理由らしい。
「…というか、焚き火…火というのは浄化と再生の象徴だから、火による浄化ってことじゃないかしら?」
「浄化!」
シュラインの考察に、なるほどそういう解釈があったか、と、浩介は思わずポンッと手を打つ。
「火で浄化できない物はこの世にはないですからね。 惜しいと言えば惜しい…そんなところでしょうか?」
パティのフォロー(?)が僅かばかりの救いとなった。
「さて、夜も遅いことだし…子供たちを同行させるわけにもいかないから、さくさくと話を聞いていきましょ」
最近の子供は特に夜更かしが過ぎるものだが、今ここにいるのは幼稚園の年長から小1の子供たち。
十時を回れば眠くもなってこよう。
ましてや今夜のような出来事があってパニックを起こして泣きじゃくっていたのだからなおさらだ。
眠くなってきてぐずりだしそうな子もいる中、シュラインや浩介、パティがそれぞれ子供に尋ねていく。
時雨や慎霰はというと、少し離れてそれぞれソファーに背を預け、彼らの様子を伺っている。
「質問しないのかい?」
「泣いてるガキは嫌いだ」
なるほどね、と笑う時雨。
「アンタはどーなんだよ?」
「私かい? 私はホレ、さっきチラチラと脅かすような推察をしたからね。 見てご覧よ、僅かばかりこちらを警戒している空気を感じないかな?」
いわれてみると、時雨の一挙一動にチラチラと視線を向けてくる子供が一人二人いる。
わかっているなら脅かすような発言をしなければいいだろうに、と、慎霰はため息をついた。
「まぁそれでもこっちの聞きたい事はあちらが全部きいてくれるさ。 洋介君がどの辺で消えたのか…また消えた時に怪しい人物を見かけなかったか」
ねェ? と、シュラインを振り返る時雨。
シュラインは今時雨が言った内容の返答を子供たちに求めた。
勿論、他の行列にいた子供たちにも、それぞれの行列で友達が消えたその時、何かを見なかったかどうか。
浩介も自分で調べたなりに見当をつけた事項に関して子供たちの記憶を探っていく。
「さらわれた子供たちは何の仮装?」
「よっちゃんは魔法使いだよ」
洋介少年と同じ行列にいた子供が答える。
また別の子供が、自分のいた行列で消えた子供の仮装を言う。
「マナちゃんね、妖精さん。 後ろ見たら羽と棒だけしかなかったの」
判断するところの妖精の羽とその仮装にあわせたステッキか何かだろう。
「玲子ちゃんはね〜ホネホネ〜 黒い服のホネホネが残ってたの〜」
黒い服のホネホネとは何のことだろうか。
さすがにわからない。
するとそれまで脇で控えていた零が、玲子ちゃんなら黒い全身タイツに蛍光色で骸骨の絵柄がプリントされている物だったはずと言った。
「ああ、なるほど。 暗闇の中で骨の部分だけ光って、黒タイツの部分は闇に溶け込むからね」
「…氷室さんは子供たちの衣装に何らかの関連性があると?」
パティの問いに、浩介は生返事。
どうやら推理が外れたようだ。
実際浩介が考えていたのは、帽子とマントだけの化け物に攫われたのではないかということ。
もしそうならば何か言っていなかったかと聞くつもりだったのだが、ものの見事にバラバラである。
仮装の内容もポピュラーなハロウィン衣装だ。
「あ」
子供の一人が何かを思い出したように声をあげる。
「何か思い出したのか?」
声をあげた子供の前にしゃがみ込む浩介。
「手」
「てぇ?」
鸚鵡返しする浩介に、子供は首を大きく縦にふった。
「よっちゃんね、振り返ったら消えちゃったの。 よっちゃんのお腹の上に手があった!」
お腹の上に手。 どういう状況なのか見えてこない。
「どんな感じだったか隣のお友達にしてみてくれる?」
ソファー越しに時雨が頼むと、隣にいた吸血鬼の格好をした子供のマントをめくり上げて、背後から胴に腕を回した。
「よーし、有難う坊や。 それじゃあ最後に、どの辺で洋介君が消えたのか案内してくれるかね?」
■―21:34―
保護者同伴で洋介君と共にいた子供に、彼が消えた現場まで案内してもらった。
商店街のど真ん中。
彼らがねり歩いていた時分を考えれば、人目がないわけがない。
「……マントの内側から腕を回され…そのままマントと帽子を残して消えてしまった…ということは、マントに吸い込まれた…?」
パティの言葉に時雨が続く。
「おそらく、マント…というか隙間や影を利用して彼方から此方へ移動するもしくは、掴み寄せる類の術かもしれない」
特別な空間が広がる今日この日。
黒魔術方面にしても個人の能力にしても、空間を歪められる力を持っていることは間違いないだろう。
「…無作為に、ただハロウィンの行事に参加していた子供だけを三人狙った……空間を歪める人の手となれば、やはりウィッカ…? でもそれじゃ…」
「いや、共通点。 今分かった」
そう言ったのは未だに特攻服姿の浩介だ。
「わかったって、どういうこと? 氷室君」
「後ろだよ後ろ。 消えた子供ら三人とも最後尾を歩いてたんだ」
子供たちの証言はどれも『後ろにいた――…』というものだった。
消えた洋介もマナも玲子も、証言した子供たちは全員自分の後ろにいたと証言している。
誰も目の前の友達が消えたという子がいないのだ。
「そうか…! 誰も『前の〜』とは言ってないもんな」
「そゆこと」
これで少しは名誉挽回? と、浩介の声は少し弾んでいた。
保護者引率のもとでも夜の十時を超えてからつき合わせるのは酷だし、危険ということもあり、唯一の目撃者である子供たちを各々帰宅させる。
また同じことが起きないとも限らない為、仮装はやめるよう慎霰は子供たちに忠告した。
「さて…これからどうするね?」
グーッと背伸びして草間を振り返る時雨。
悩む草間をよそに、時雨は洋介が消えた地点に立ち、周囲をぐるりと一望する。
何か、何か変化はないか。
「―――しゃーねーな。 オイ草間この辺の地図だせ」
「何をする気だ?」
慎霰に言われるまま、草間はこの辺りの自治体の地図を差し出す。
じゃらりと、慎霰がいつも手にしている数珠が地図の上にたらされる。
「…ダウジング?」
数珠でダウジングとは聞いた事がないが、慎霰の自信に満ちた表情。
その信憑性は高いようだ。
「――天狗の呪具?」
興味津々に覗き込むパティ。
するとジャラジャラと翡翠色の珠が淡く発光している。
「―――…今この場に、俺以外で二人……アンタとアンタだな?」
時雨とパティの顔を見やり、慎霰はさらにダウジングを続ける。
「怪異の存在に反応するのですか」
「そうだ。 ダウジングだから周辺地域を示す地図とかがないと探りにくいが…ガキどもが消えてからまだそんなに時間も経ってねぇし、何より、何でここらの子供でなけりゃならなかったのか」
可能性の一つはその条件の必要性。
だが、これという根拠が見出せない為、これはないだろうと皆が判断をつけている。
次は距離だ。
洋介の胴に腕を回すようにして『ひっこぬいた』ということは、怪異ではなく魔の力を借りている者の仕業。
真っ当なウィッカはそんなことをするはずはない。
ならばそれ以外の、素人に毛が生えた程度の魔術集団だとすればどうだろうか。
範囲がかなり狭く限定されている上に。消え方の状況も酷似している。
異形の者の力を借りて生贄かそれとも儀式の呪具生成の為か、それは実行犯を確認しないことにはわからない。
「―――ここだ」
「外国人墓地…なるほどね。 サバトが開かれているならば十字路か墓地が最有力とふんでいたが…何の捻りもなかったわけだ」
地図上で淡く光る数珠の下に表記されている外国人墓地。
距離はこの商店街からそう遠くない。
「行きましょう。 三人の子供たちが心配です」
目を閉じたまま、この暗闇の中、パティの足取りははっきりしていて本当に見えているような走りだ。
だが、草間たちも含めて全員が地図にある外国人墓地へ向かっている最中、慎霰は一人腑に落ちないといった顔をしている。
「……数珠が反応したってことは…ただ対価と引き換えに力を借りているんじゃなくて、そこに何かがいるんだぞ?」
正体の知れない何かが。
悪魔か。
それとも違う異形なのか。
状況からしても悪魔の類である可能性が高いが、悪魔となれば話は変わってくる。
あれは自分たちとは別の次元の生き物だ。
この人界に生きている自分たちとは違う。
こちらの常識が通用しない。
「――――…俺が一番動かなきゃならないよなぁ」
小太刀・忌火丸はいつでも使える状態にある。
しかし使えるのは一日に二度まで。
「厳しいな…」
そんな慎霰の心情とは裏腹に、空には満天の星が輝いていた。
■―22:42―
この穢れに乗じて何者かが動いている。
前回の依頼で遭遇した白の堕天使が絡んでいるような気がしてならない。
悪鬼が闊歩する夜なら、アンダーテイカーとやらが復活するにも良い日だ。
いずれ貴女にも死の花を…魔性のものにそんな宣言をされたのでは魔人マフィアの頭目として、その挑戦は受けざるを得ない。
この仕事におけるパティの意志。
サバトと聞くだけで、草間もシュラインも少なからずあの存在を意識していた。
ただ今回は、あれが絡んでいる事件なのかどうか聊か判断に悩む。
だが、あれがそうやすやすと人に手を貸すだろうか?
「―――…なりあがりの魔術集団ってだけだとよいけど…」
この内に渦巻く最悪のシナリオが外れてくれることを願いながら、シュラインはバッグの中身を再度確認する。
聖水にライター、油、スプレー缶、そして聖水に浸した糸。
失踪事件直後から子供たちは商店街の練り歩きを中断した為、さらに連れ去られることを考えて用意したこれは無駄になってしまったかもしれない。
しかし、それ以外にも使い道があるかもしれない。
今宵は人界と霊界が最も近くなる日。 行く先が墓地である以上、悪霊死霊が跋扈していることは容易に想像できる。
拭いきれない不安よりも先に、まず確実に起こりえるであろう事態への備えを万全にしておかなくては。
「っと。 悪い、ちょいとそこよってくる」
視界に入ったコンビニの前で足を止め、足早に店内へ入っていく時雨。
こんな時にいったい何を買うつもりなのだろうか。
他のものには目もくれず、時雨はワインコーナーでフルボディの安物を一本購入していた。
「ワイン…? ワインなんてどうするつもりだ」
まさか酒飲みながら行くつもりか。 そんなことを考えてしまう草間だが、戻ってきた時雨は、そんな草間の表情を見て軽く否定した。
「ワインとか協会で祝別されたとされるものは御法度らしいからね。 コンビニの安ワインだが十分だろうさ」
こんなものひとつ、所詮は気休めに過ぎないだろう。
大サバトが行われる日にこのような事件。
本場の規模ではないとはいえ、相手は最低コヴェン一つ分の十二人と予想している。
「――慎重に行かなければ」
■―23:30―
慎霰が得たダウジングの結果に出た外国人墓地。
高い鉄柵に覆われ、目の前の扉には進入禁止を示す紙が一枚貼られている。
「こちら側は使われていないのかしら?」
シュラインが策の中を覗き込むが、出入り口付近は木々が多く、奥の方まではよく見えない。
「しかたない、他の出入り口を探そう」
「ちょっと待った」
草間が走り出そうとしたその時、慎霰が草間を呼び止める。
「天波さんの仰るとおりです。 ここには魔力が働いている」
パティが仕込み杖を構え、扉に貼られていた紙を切り裂いた。
すると今まで鬱そうと生い茂っていたはずの木々が消え、浅い手入れされた植え込みが柵に沿って植えられているだけになった。
「おお!?」
浩介が思わず声を上げる。
「まやかしだよ。 犯人は時間稼ぎをしたいんじゃないか?」
両断された紙切れを裏返すと、そこには黒い山羊の絵。
「…あからさまに黒魔術ね…」
念のためにその紙切れにも聖水の入った霧吹きでシュッとひと噴きしておくシュライン。
「急ぎましょう。 時間稼ぎをしようとしたならば、儀式は佳境に入っているはずです!」
パティが扉を体当たりするようにして開き、墓地の中へ進入していく。
草間たちのその後を追った。
■―23:35―
「あれ!」
浩介が示す先がほのかに明るい。
蝋燭の列。
不気味な唱和。
十二人の黒衣の者たち。
そして、中央には三人の子供たちの姿。
「まてまてまてぃ! 子供たちを返しやがれ!」
トランス状態に入っていたであろう黒衣の者の一人に体当たりする浩介。
それにより、場の空気が一瞬にして変わる。
無言のまま、黒衣の連中の意識が草間たちに向けられた。
「人に仇なす怪異を許しおくわけにはいきません」
それに加担する人間にも、ただではおかない。
仕込み杖を使って、襲い来る黒衣たちを次々となぎ倒していく。
慎霰や浩介、時雨もそれに続いた。
その場にいた黒衣の大半がそれらしい力など持っておらず、意外にもあっけなく意識を手放した。
「あと何人だ!?」
「あと一人よ!」
倒れている数を数えたシュラインは、コヴェン一つ分だとすればあと一人と。
「邪魔はさせません」
どこからともなくそんな声は聞こえてきた。
すると周囲をあっという間に炎が囲み、逃げ場のない状態になってしまった。
「―――もう暫くお待ちなさい。 子供たちの肉体も内臓も魂もすべて、余すところなく使って差し上げますから」
熱い。 ただのまやかしではない。
小手先の魔術というわけでもないようだ。
「聖ワルバーガの前夜…そのひとつの今日に洗礼を受けにこられた方ばかりだったのに…あなた方もひどいことをなされますね」
倒れている黒衣の一人に視線を落としながら話をするその男は、かぶっていたフードをはずし、草間たちに顔をさらす。
中世的な美しさ。
一瞬、女とも思えるその容姿にはある種の威圧感さえ感じてしまう。
「止まってる暇なんてあっかよ!」
慎霰の声があたりに響く。
翼を出し高く飛び上がり、黒衣に向かって衝撃波を飛ばす。
シールドを展開させ、衝撃波を無効化しようとする黒衣。
「魔術だかなんだか知らねーが、ガキは返してもらうぜ!」
「させません!」
慎霰が子供めがけて飛んでいくとまるでそこに壁でもあるかのように、その場から弾き飛ばされてしまう。
「慎霰君!」
勢いよく弾き飛ばされた慎霰はそのまま地面に落ち、地面に転がる。
「ぐっ…」
「しっかり!」
駆け寄るシュライン。
そして祭壇に寝かされている子供たちに視線を向ける。
見えない壁が祭壇の周りに存在している。
そして、祭壇の周囲に嫌な臭いを撒き散らしながら燃える蝋燭。
時雨がいうような儀式前の段階ではない。
子供の脂肪を用いて石鹸を作り、身を清め、取り出した内臓を供物として捧げるという、儀式の前段階の状況ではないのだ。
すでに何かを呼び出す為にしかれた陣。
しかし妙だ。
これはただ呼び出すためだけのものにしか見えない。
悪魔召喚をして御するのであれば、身を守る為の陣と命令をきかせる為の長剣が必要なはず。
なのにこの場には召喚するだけの準備。
だが疑問こそあるものの考えている時間はない。
呼び出す為のものならば、生贄であろう子供たちの確保が最優先だ。
シュラインは聖水を手にして慎霰が衝突したと思われる壁がある場所に聖水をまいた。
「なんてこと!」
黒衣が急に顔色を変え、こちらに向かって走り出した。
行く手をパティと浩介が阻む。
「行かせはしません」
「さっさと祭壇ぶっ潰して、子供たちを助け出すのが俺らの仕事なんだ、よ!」
黒衣に向かって殴りかかるも、あっさりそれを避けられてしまう。
しかし間を空けずパティが黒衣に斬りこむ。
「くっ!」
「私の使命は自分を含める神魔すべてを滅すること…そしてたとえ人であろうとも、それらに加担して悪事をなす輩には容赦しません!」
ドラッグかそれとも悪魔の力か、黒衣の体は見た目に反してまるで空を飛ぶように軽やかに宙に舞う。
「もう少しなのに…ッ」
舌打ち交じりにそう呟き、祭壇の方を見やればシュラインが陣の中に入ろうとしている。
パティと浩介が黒衣に迫る。
慎霰を退けた障壁のようなものであれば、神の威光さえ届かねば破られる心配はない。
だがこうして標的が自分となると、接近戦では分が悪い。
そうしている間にも、シュラインは祭壇へ向かっている。
後方でパティたちの戦いが続いている中、シュラインは先ほどの壁があったであろう場所に恐る恐る手を伸ばしてみる。
そこには何の障害もない。
今のうちだ。
「これで貴女も死霊の仲間入り」
「え…」
いやに近くで声が響いた。
おそらく黒衣の者であろう。
そして草間がこちらへ向かって何か叫んでいる。
それほど遠い距離でもないのに、音が聞こえない。
草間の口が動く。
に げ ろ
「きゃあ!?」
子供たちの寝かされている祭壇の頭上高くの空間がゆがむ。
わずかに開いた穴から続々と死霊がなだれ込んできた。
「シュライン!」
草間が駆け寄ろうとするも陣の周囲は死霊で埋め尽くされ、まったく近寄ることができない。
「シュラインさん!」
時雨はワインのふたを開け、陣に向かってそれを撒き散らす。
すると、陣を構成していた一部が祝別を受けたワインによって溶け出した。
「待ってな。すぐ助ける!」
時雨がワインを撒き散らし、死霊を払いのけて道を作ろうとしている中、シュラインは悪霊が入ってこれないよう子供たちに聖水を噴き掛けている。
「…まさか、こんな風に役に立つとはね」
聖水に浸した糸。
もう必要ないと思っていた糸は、周囲を囲む簡単な結界の役割を果たしていた。
しかしそうは言えども結局は時間稼ぎに過ぎない。
大物が出てくる前に子供たちを安全な場所へ避難させなければ。
「起きて! 起きて頂戴! 洋介君、マナちゃん、玲子ちゃん!」
迷っている暇はない。
シュラインは三人の頬を軽く叩いた。
そして洋介が軽く身じろぎする。
「気がついた? さぁここは危ないから早く逃げましょう」
「そうさ。 楽しいハロウィンはもうおしまいだよ。飴あげるからはよ帰って寝なさい。 言うこと聞かない悪い子は私が連れてくぞ」
死霊を押しのけ道を作って入ってきた時雨が、冗談交じりにそう言いながらシュラインや子供たちに手を差し伸べる。
「急ぎましょう」
まだ目覚めない子供をそれぞれ背負い、何がなんだかわからず不安げな洋介の手を引いて、二人は子供たちと共に祭壇から脱出した。
「させるか!」
黒衣が手を広げ力を揮うと、不規則にその場を渦巻いていた死霊たちがたちまち連携をなして、逃げるシュラインと時雨を背後から襲い掛かる。
子供三人が二人の足を重くする。
「くっ! 追いつかれる!」
マナを背負い洋介を脇に抱えて時雨は走った。
鬼とは言えど、この状況では思うように力が出せない。
「うらぁ!」
「「!」」
捕まる。 そう思った刹那、死霊の集団に衝撃波がぶち当たる。
「慎霰君!」
「ぼさっとしてねェでさっさと走れ! 足止めはできてもコイツ等そう簡単に消せねェんだよ!」
死霊を操れるネクロマンサーならともかく、ある程度消滅させることができても慎霰には奴らすべてをまとめて滅する方などない。
長くかまえばそれだけ自分の体力が失われてしまう。
逃げといってしまえばそれまでなのだが、本来の目的は死霊を倒すことではない。
それゆえの決断であった。
一方、シュラインと時雨が子供たちをつれて離脱したことを確認すると、草間やパティに浩介、慎霰は意識を黒衣に集中させる。
「儀式には失敗したようですね」
そう言って微笑するパティ。
しかし黒衣は悔しそうな顔をするどころか笑っている。
気でもふれたのだろうか。
「…皆さん勘違いしていませんか? 道は既に開かれた…捧げる供物が消えたところでなんだというのでしょうか。 供物がないなら我が身を差し出せばいい!」
「なっ…」
どうかしている。
その言葉に、誰もが一瞬たじろいだ。
その隙をついて黒衣は祭壇へ向かって走り出す。
「しまった!」
慌ててパティがその後を追うも、死霊の壁に阻まれ先へ進めない。
「我が肉体を糧に」
そう聞こえた瞬間、周囲を取り巻いていた死霊が弾け飛んだ。
■―23:59―
子供たちを安全な場所まで誘導して、親に連絡をいれ迎えに来てもらった後、シュラインと時雨は急いで現場に戻った。
「大丈夫かしら皆…」
生贄とされていた子供たちは無事奪還できたものの、最後に残っていたあの黒衣の存在が気になる。
「草間さん等で何とかできてりゃいいがね」
時雨もシュライン同様、何かがおかしいと疑念を持っている。
確かに、コヴェン一つ分の人数はいた。
しかしいたのはどれも参入者ばかり。
術らしい術が使えるのは一人だけ。
出来立ての団にしても何かがおかしい。
「! シュラインさん見ろ!」
「なっ…」
あれほど大量にいたはずの死霊が一体もいなくなっている。
代わりに、祭壇の上に黒い大きな穴がぽっかりと開いていた。
穴の奥で何かが蠢く。
「皆離れて!!」
シュラインが叫ぶと草間たちは一瞬びくりと身を震わせる。
まるでそれまで放心していたように、彼等は今おかれている状況を再認識しようとした。
「…何だ、あれは…」
「―――私個人としては…言うほど気分の悪いものでもないのですが、その奥にいる者は非常に気分が悪いですね」
あの穴の先は恐らく魔界であろう。
草間たちを放心させるこの陰気な気配は紛れもなく魔界の瘴気。
そして闇の中に、何か…いや、誰かがいる。
バフォメット…もしくはただの下級悪魔?
いや、あれほど黒衣の者が執着した魔物だ。 下級であるはずはないだろう。
闇がぐにゃりと動いた。
穴から、絡みつく闇を振りほどくようにして何かが出てくる。
ぐぐっと手が前に伸ばされ、一番遠い指先から現れたのは白い手袋をした手首。
一箇所が現れると、そこから瞬く間に闇が後方へ退いていく。
取り払われた闇の中から出てきたのは、更なる闇。
「―――今宵はとてもいい月夜ですね、皆様方」
■―00:00―
「先日はどうも」
パティに向かって帽子を取って優雅な挨拶をしてくる。
「お前は――…」
パティの手に仕込み杖が強く握られる。
先日の屈辱。
表向き依頼を果たせたものの、真の意味では解決などしていない。
一方的に、事が終わったに過ぎないのだ。
「……アンダー…テイカー…」
草間もシュラインも彼を忘れてなどいない。
生まれる前の彼を知っていた。 しかし今は、生まれた後の姿はなんと禍々しいのか。
姿形がではない。
存在そのものとして、肌で感じる彼の存在が禍々しい。
真っ白だったアンダーテイカー。
漆黒の闇の染まったアンダーテイカー。
「やはり現世はいい…上にいた時にはこんな事思いもしませんでしたがねぇ」
くすくすと笑いながら、深呼吸してみせる。
「あ…貴方…今日という日を使って、あの結社の連中を利用して、現世に出てきたの?」
やっとの思いで搾り出した声。 その質問。
自分がどうにかできる相手ではない。
手にしているのは残り少ない聖水と、ライターと油にスプレー缶。
嫌な予感が当たってしまった。
「今日…というか昨日ですねぇ。 本日は万聖節…我ら日陰の存在が闊歩するには聊か息が切れる」
「質問に答えろ、アンダーテイカー」
シュラインの前に立ち、いつになく凄んでいるのは時雨だ。
アンダーテイカーは時雨を見ると、そのアルカイック・スマイルを崩し、目を丸くする。
「おやおや、これは今の私の生みの親。 いいでしょう、ご質問にお答えしましょう。 半分正解で半分ハズレです」
「…半分?」
怪訝そうに眉を寄せると、アンダーテイカーの口元はにぃっと弧を描く。
「結社を利用したのではありません。 エオン…私に身を捧げて現世での受肉を手伝ってくれたあの少年が、私と繋がっていた…ただそれだけのことです」
「繋がっていた…?」
草間が首をかしげる。
アンダーテイカーが堕天したのはつい数ヶ月前。
それ以前の仕事はソウルテイカーと共に行っていて、なんら問題はなかったはずだ。
そして前回の四面の部屋となっていたマンションでパティが目撃した時は、現世に出てくる道を失ったことで、結局堕天してから今に至るまで一度たりとも現世との接触などなかったはず。
召喚されたといえども、堕天してすぐの悪魔など意図しなければ召喚などできないはずだ。
「……なんか、悪魔?が出てきちゃったみてーだけど…」
「―――外見はなまっちょろい感じだが…気配からして多少強そうではある、な…」
浩介や慎霰は一度も奴と直接関わっていない為、状況がいまいち把握できていない。
だが、今は説明している暇も説明を受けている暇もない。
目の前の敵をどう打破するか。 目的はただそれだけだ。
アンダーテイカーの口上は続いている。
「答えはシンプル。 エオンは私が堕天する前に鬼籍に名前が挙がっていた――…そして彼には私たちが見えていた」
通常の悪霊死霊などとは違い、御使いを見ることができる者は少ない。
御使いが意思を持って姿を見せようとしない限り。
ところが、稀に人の中にも通常の霊感以上の領域に達している者がいる。
それが生まれながらのものもいれば、死期が迫っている時に開花する者もいる。
エオンも、そんな死期を前にして目覚めたものの一人だった。
数ヶ月前に彼は鬼籍にあがっている者を確かめながら各所を回っていたのだ。
そこで少年と出遭ってしまった。
勿論その時は見られたことに驚いてすぐに立ち去ってしまったが、堕天後、彼の意識がアンダーテイカーを呼んだ。
自分の死期がもうすぐ訪れる。
ならば早く取りに来いと。
人ならざる者はすべて死神に見えるのだろう。
死を前にした少年の想いが、魔界へ堕ちたアンダーテイカーとの意識の扉を繋いだ。
「死の運命は天の領分…死んだ者を蘇らせる事はできない。 しかし、生きている者ならばどうとでもなる。 それが悪魔の力…私はエオンの病魔を退かせ、代わりに私をこちらへ呼び出すことを条件とした」
彼は病気の苦しみがなくなった瞬間からアンダーテイカーを崇拝し、彼の為ながら何でもしようと決意した。
一度失いかけた命。 救った相手が使えというなら使ってやる。
そう思ったからこそ、その身を捧げてまでアンダーテイカーの降臨を手伝った。
「…そんな…」
そんな手段があったとは。
偶然が偶然を呼び、繋がった縁がそのまま彼を現世へと導くしるべとなってしまった。
シュラインは思わず頭を抱える。
苦虫を噛み潰したような顔で、ただアンダーテイカーを睨みつける草間。
そして、成り行きにしろ、この闇を生み出す手助けをしてしまった時雨は、身の内に渦巻く言い表しようもない不快感にひたすら耐える。
「……御託はいい。 てめェがこっちに出てきたってことは、今倒さなきゃまた何か起こるってことだろが」
慎霰は忌火丸を構える。
「だよな。 経過や結果がどーであれ、こうしてここに悪魔が出てきちまったってんならどうにかしねーといけねーワケで」
パキポキと指の関節を鳴らし、特攻服姿で身構える浩介。
「アンダーテイカー…貴方にこそ死の花を」
仕込み杖と銀のナイフを構え、タイミングを見計らって開眼しようとしているパティ。
「…親というからには…親の言うことは聞いてもらわんとな」
時雨は一歩前に踏み出す。
どうすれば皆をアシストできるだろう。 シュラインはそればかりを考えて周囲に目を配った。
何か突破口は。
何か…
「それでは、そろそろ時間ですしお暇しましょう。 皆さん今宵はぐっすりお休みください」
「「馬鹿いってんじゃねぇぞコラァ!」」
アンダーテイカーのその言葉に思わず浩介と慎霰が同時に切れた。
「ちょっ! 二人とも危ない!」
シュラインの止める声など聞きもせず、二人はアンダーテイカーに突進していく。
「ったく!」
「…仕方ありませんね」
個々で仕掛けるより多重攻撃の方がマシであろう。
そう判断した時雨とパティは波状攻撃をかけようとする。
ところが。
「あいにく今日は私もこちらへ出てくるのに聊か疲れましたのでね」
四人の攻撃がデスサイズ一本で止められている。
「あなた方のお相手はまた今度に」
そのままスゥッとアンダーテイカーは文字通りに消えてしまった。
跡形もなく。
気配の名残すらなく。
そして、辺りを静寂が包んだ。
■―02:15―
「くそっ!」
「落ち着いて、武彦さん」
机に当たる草間を制止するシュラインの声色も、どこか苛立っているように思えた。
「………とりあえず、子供たちを救出するという依頼としては…完了さね」
壁にもたれ、ため息混じりにそう呟く時雨。
ソファーに腰掛け、やり場のない思いに落ち着きのない浩介と慎霰。
その向かい側に座るパティは、虚空を掴むように手を握りこむ。
また、逃げられた。
同じ敵にこうも続けて苦汁を味わわされるとは。
「―――次こそ、必ず」
草間に対する面子の問題などではない。
これは自分自身の問題。
瑠璃色の鳩の、アイスブルーの瞳としての沽券にかかわる問題だ。
「…とにかく、『依頼』は完了したわ…だけど…また別の、これは個々の問題として…あの堕天使の問題が浮上してしまった。 私たちは今後も奴に関する情報収集を続けるわ」
何か情報が見つかり次第、その大小を問わず逐一報告を入れると、皆に約束した。
「私の方でも情報を集めましょう。 動向がつかめ次第、こちらも各自にご連絡差し上げます」
そう言ってパティは興信所を後にした。
「……そうだね……奴がなぜあそこまでしてこちらの世界にこだわったのか…誰かに召喚されるのを気長に待つのではなぜいけなかったのか…調べてみる必要はあるね」
そう言って時雨はテーブルに用意されたお茶をグッと飲み干した。
「また来るよ。 まぁ今日は聖人の日、明後日は死者の日だ。 この年内はおそらく…何行動を起こすようなことはないと思うよ。 年末は何かと基督教の祭典が続くしね。 そう度々騒動は起こせないだろうさ」
だからと言って気を抜くことはないがね、と時雨は付け加え、とりあえず今日はもう遅いから帰るといってそのまま出て行ってしまった。
「俺も帰る。 またなんかあったら呼べよ。 特に今回の奴が絡んでるならな」
やや怒っているような口調でそういい残し、慎霰も興信所を去った。
「…そんじゃまぁ、雪崩タイムのようだから俺も帰ろうかな。 また何かあったら呼んでよ。 時間があればかけつけるしさ!」
今回の奴に限らずね。
扉の隙間から顔を出し、そう言ってにこやかに微笑んで手を振る浩介。
「―――とにかく…今日はもう休みましょう? このままじゃ今日の業務に差し支えるわ」
「……だな…」
そして草間は一本だけ吸わせてくれといって、煙草に火をつけた。
■―--:--―
時の流れも何もない虚空。
蹲るようにして、彼はそこにいた。
「……やはり…正規の手続きを踏まずにやってきたのは、拙かったようですね」
思うように動かぬ体。
魔界から出た瞬間にこれほど制限が生ずるものかと驚いたが、そうでもないらしい。
手続きの仕方があまかった。
無理をしてエオンの体を使ったのが今更響いてきている。
「……身体強度が人間並みか……まぁいい。 それでも目的は果たせなくはない」
アンダーテイカーの体はそこから更に深い闇へと消える。
闇へ
一縷の光も届かない
暁闇の彼方へ―――…
―了―
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
【0086 / シュライン・エマ / 女性 / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員】
【1928 / 天波・慎霰 / 男性 / 15歳 / 天狗・高校生】
【4538 / パティ・ガントレット / 女性 / 28歳 / 魔人マフィアの頭目】
【5484 / 内山・時雨 / 女性 / 20歳 / 無職】
【6725 / 氷室・浩介 / 男性 / 20歳 / 何でも屋】
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■ ライター通信 ■
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こんにちは、鴉です。
諸事情で納品が遅くなりましたこと、お詫び申し上げます。
【聖ワルバーガの前夜】に参加頂きましてありがとうございます。
依頼としてはきっちりと完了しましたが奴を取り逃がしたところなど、その辺はアプローチの仕方によって聊か積み残した形になります。
ノベルに関して何かご意見等ありましたら遠慮なくお報せ下さい。
この度は当方に発注して頂きました事、重ねてお礼申し上げます。
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