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お菓子迷路食べ歩きツアー
目が覚めるとそこは、甘い匂いの漂うお菓子の迷宮でございました。
「またお菓子迷路に迷い込んだ者ぢゃな?」
と、頭上から声が響いてくる。
見上げるとそこには、14歳くらいの少女がバームクーヘンの塀に座りにこにこと笑顔を浮かべていた。
「どこから来たのか知らないが、折角だ。迷路をクリアしていくとよいのぢゃ。ゴールにはきっとお前の好きな菓子があるぢゃろう」
と、言われたならば、行くしかないだろう。
そういうと少女は身軽に迷路の中へと、消えていった。
入り口は、目の前に。
「甘い匂いがものすごい……夢だろうと思うけど……まあ、扉を開けたら海だったこともあるしありえるか。迷路ね……」
法条風槻はお菓子の壁をちょっとつついて、観察。
自身の能力を使えば最短でゴールするのは簡単なのだけれども。
「情報やの性かなぁ。マップ作って全部網羅もしてみたいのよね。うん、のんびり行きますか」
と、小型のモバイルは充電が持つか不明だったので取り出したのはアナログに、ノートとペン。
最初の位置をしっかりその1ページ目につけて。
「出発。間違えないように注意しないと。あ、トラップもあったりするのかな……」
最初の角、右に行くと、そのまま一本道。ぐるっと『の』の字を書くように行き止まり。
「行き止まり……戻って左ね」
うきうきしながら一つずつ地道につぶして行く。
時々お腹が減れば、お菓子をちょっとつまんで。
ノートを1ページ、2ページとどんどん黒く染めていく。
そして、3ページ目も半分以上埋まった頃に。
「あら、なんであなたがここにいるの?」
「う、風槻か?」
いくつかの角を右左に曲がってそこにいたのは。
「ふがし、食うか?」
「このいっぱいお菓子のある中でふがしを選ぶのがさすがというか何というか……でも食べてる姿がちょっと似合ってるわね。そうね、じゃあ少しもらおうかな」
「うむ」
ふがしひとかけ。
口の中にいれてもぐもぐ。
味はやっぱりふがし。
「……これ好きなの?」
「うむ、なんとなく好きだ。そういえば汝は何をしておるのだ?」
ひょい、とノートの中を覗き込む藍ノ介。
その中に描かれる線を見、そして風槻を見る。
「何?」
「汝一人でやっておるのか?」
「そうだけど……」
「楽しそうだな、わしも一緒に行こう」
そう言われて、なんだか足引っ張られそうと思いつつも、特に断る理由もなく。
二人は迷路のそこから先へと歩みだす。
「ふがしは、離さないのね」
「うむ、せっかくあるのだからな、食べねば損だ」
「確かにそうだけど……太りそうだしもたれそうだし……もう甘い匂いは十分よ」
「そうか?」
「そうなの」
と、無駄話などもしつつ、くるくる迷路を歩き回る。
道一本違うだけで、反対方向。
ひとつ曲がる角が違うだけで、元の道に戻ったり、はたまた行き止まりだったり。
「複雑だな……同じところをさっきからぐるぐるしておるぞ」
「わかってるわよ。それは私の所為じゃなくて、迷路がぐるぐるしてるんだから」
「そうだな……迷い迷って、辿り着くのはどこだろうなぁ……不思議な娘っ子は、ほしい菓子があるとかなんとか言っておったが……」
「え、もしかしてふがし? まだふがし? 際限なくふがし?」
「良いではないか! ふがしを馬鹿にしてはいかんのだ!」
そんなに好きなのかな、と思うほど強く強くふがしを推奨する藍ノ介にプッと風槻は笑いを漏らす。
「ふがしがとっても好き、ね。覚えておくわ」
一つ、データをインプット。
風槻は笑顔で言う。
「あ、多分この角曲がってそのまま進んでいくと……あら、行き止まり。そろそろゴールかなと思ったんだけど」
「ふむ、結構歩いておったからなぁ……」
「あ」
「どした?」
ノートをじーっとみていた風槻は一つ間違い見つけたと呟く。
「ここがずれてるから、ここがこうで……こっちの出るところは……」
「……間違っておったのか」
こくこくと頷きながら風槻はおかしなところを直していく。
そして一通りそれが終わって。
「これでいいわ、ということは。あそこ左」
「左」
左に曲がって分かれ道。
「ここはさっき右にいったのだったな」
「良く覚えてたわね、ここは左」
先ほどとは反対方向に行き、そして右左左左右。
角を順々に曲がって行く。
「なんだか狭くなっていっておらぬか?」
「そうね……」
と、迷路は一本道になって、どんどんと狭く暗くなっていく。
よいしょよいしょと狭い道を通って、明るい光が差し込む場所へ辿り着く。
「眩しいな……」
「そうね……え、あれ?」
「うお……」
狭く暗いところからいきなり明るいところへ出て立ち上がったからか、くらりと頭が揺れる。
「あれ? え?」
そのまま意識は遠のいて。
また真っ暗。
視界は、真っ暗。
「…………あれ?」
ぱちっと目を覚ますと、そこは良く知っている自分の寝台。
「……夢……夢ときたのね……」
と、思いきや。
ひんやり冷たい感触が指に当たる。
「何かしら……」
それを持ち上げると、ひんやりなぜか冷たい、フルーツゼリーが透明な袋に入って。
「あんなに甘いものばっかりの夢だったものね。爽やかでいいかも」
後で食べよう、と思いながら風槻は今日も一日をはじめる。
<END>
━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【6235/法条・風槻/女性/25歳/情報請負人】
【NPC/藍ノ介/男性/897歳/雑貨屋居候】
ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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法条・風槻さま
いつもお世話になっております、志摩です。
色々お任せいただきましたので楽しく書かせていただきました!
迷路ぐるぐる、楽しんでいただけたら幸いです。マッピングマッピング!
ではでは、またお会いできれば嬉しいです!
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